艦隊これくしょん ~いつかまた、この場所で~   作:哀餓え男

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朝潮編成 3

 なんでこんな事になっちゃったんだろう。

 例の決闘を今日やると満潮から呼び出されて演習場に来てみたら、動揺してオロオロしてる朝潮ちゃんとそんな朝潮ちゃんを見下ろす司令官、それに満潮と荒潮がすでに待っていた。

 

 私以外の4人とも、お通夜みたいな雰囲気だったな……。

 

 鎮守府が、今晩開催されるハロウィンの開始を待つように静まり返ってる中。

 今行われているのは、私と朝潮ちゃんによる第八駆逐隊の旗艦の座を賭けての演習だ。

 使ってるのは演習大会で使われたのと同じ火薬の量を減らした爆発だけは派手に見える模擬弾、だけど装甲を抜かれて直撃すれば当然痛いしケガもする。

 もし装甲を貫いても致命傷にならない場所を撃ってはいるけど、朝潮ちゃんを痛めつけるのは辛すぎる……。

 この演習に勝てば朝潮ちゃんを出撃しなくてもいいようにしてあげれると思って我慢してるけど、一発当てるたびに胸が締め付けられるようだ。

 

 どうしてこの子は諦めないんだろう。

 この子は私より遅い、砲撃も私より下手、戦況分析も甘い。

 開始からずっと私にやられたい放題だ。

 よく動けてるとは思うけど私の敵じゃない、だってこの子は一発もまともに避けれてないし、私に対しても反撃できていないもの。

 なのにこの子は諦めようとしない、私だったらとっくに諦めてるのに。

 

 半年前、久しぶりに神風さんとやり合った時も、私は即座に諦めた。

 粘ればいい勝負は出来たかもしれない、だけど私じゃ少し及ばないと悟って早々に砲撃を貰って意識を手放した。

 だって粘ってもいい事ないもの、神風さんだって沈めるような事はしない、だったら早めにリタイヤしてケガを最小限に抑えるべきだ。

 誤算と言えば朝潮ちゃんが中破になるまで噛みつき続けた事かな、まさか朝潮ちゃんがそこまで粘れるなんてその時は思っていなかった。

 

 一緒に過ごすうちに朝姉ぇと重なって見えるようになった。

 朝姉ぇより頭は弱いけど、根っこの部分がそっくりなんだもん。

 真面目で、努力家で、どんな出鱈目な事を教えても素直に信じちゃうくらい素直で、そして司令官の事が大好きで……。

 違うのは才能の有無くらいかな、朝姉ぇはお世辞にも才能があるとは言えなかったから。

 

 朝姉ぇが血反吐を吐きながら到達した強さに、たった半年ほどで到達するどころか追い越しちゃったもんね。

 だけどこの子にも追い越せない事はある。

 それは経験の差。

 朝姉ぇの強さの根幹にあったのは経験によって得てきた引き出しの多さだ。

 朝姉ぇは戦況によって取るべき行動を完全にマニュアル化し、几帳面に手帳に書きだしさえした。

 本来なら技なんて呼べるものじゃない、歴戦の艦娘なら戦況に応じて取るべき行動を自分の経験から取捨選択するなんて当たり前だもの。

 

 だけど朝姉ぇのソレは常軌を逸していた、敵の配置、距離はメートル単位、天候、波の高さ、果ては温度や湿度まで、戦場で把握できる全て(・・)の状況を分単位で分析し、自分が取るべき行動をマニュアルという型にはめ込んだ。

 戦闘の才能がなかった朝姉ぇが、それでも司令官の役に立とうと思いついた苦肉の策、自分が知り、自分に出来る事を踏まえて、想定しうる全ての状況を書きだした『広辞苑』。

 それが朝姉ぇの強さの秘密だった。

 

 まったく経験してない事には対応できないのが弱点ではあるけど、そんな状況は三年前のあの事件まで一度もなかった。

 だって想定してる戦況が多すぎるんだもん、私が一通り覚えるのに丸二年もかかったほどに。

 もし、三年前の朝姉ぇに戦艦棲姫と一対一で、しかも遅れて横槍が入って来るような経験があったら戦死する事もなかったかもしれない。

 姫級の旗艦が単艦で突撃、しかも迎撃するのは自分一人なんて状況はさすがに想定してなかったのね。

 それでも中破まで追い詰めたのは流石だと思うけど。

  

 ちなみにその簡易版が駆逐艦教本。

 朝姉ぇの『広辞苑』を見ながら、神風さんがアレはいらないコレもいらないと言ってどうにか教本と呼べるページ数に抑えたのが今養成所で使われている教本だ。

 5年前に教本は採用されてたから、きっとこの子もソレで勉強したんだよね……。

 

 「いい加減に諦めて、朝潮ちゃんじゃ大潮には勝てないよ。」

 

 「そう言われて、私が諦めると思いますか?」

 

 どうしてよ、勝ち目なんてないんだよ?朝潮ちゃんだって痛いのは嫌でしょ?辛いでしょ?

 ここで諦めれば、もうそんな思いしなくてよくなるんだよ?しかもずっと。

 

 「大潮さん、なんで急所を狙わないんですか?」

 

 「それは……出来るだけケガをさせたくないから……。」

 

 それくらいわかってよ……、私は朝潮ちゃんが傷つく事が耐えられないの、もう私を苦しめないでよ……。

 

 「……この演習に挑む前に司令官に言われました。『負けた場合はもう出撃はさせない』と。」

 

 よかった……、満潮は約束を守ってくれたんだ。

 満潮だったら私が勝つ事なんて予想がつくだろうから、満潮もホントは朝潮ちゃんを出撃させたくなかったんだね。

 戻ったら、あの時殴った事を謝らなきゃ。

 

 「さっきまで、司令官は私に愛想が尽きたんだと思っていました。」

 

 そんな事はないよ、それは安心していい。

 司令官が朝潮ちゃんに愛想をつかすなんて事は絶対にない、きっと司令官も朝潮ちゃんを出撃させたくないんだよ、だからきっと、こんな条件を飲んだんだよ?

 

 「だけど大潮さんを見ていて考えが変わりました。」

 

 「どんな風に……?」

 

 朝潮ちゃんが私を見据えて右手の連装砲を向けて来た。

 睨んだって無駄だよ、こんな数メートルもない距離で停止した状態からだって私は朝潮ちゃんの砲撃を避けられるんだから。

 

 「大潮さん、いえ、大潮(・・)!貴女の歪んだ性根を叩き直します!司令官もソレを望んでいます!」

 

 性根を叩き直す……か、そうやって凛とした顔で呼び捨てにされると朝姉ぇを思い出しちゃうな……。

 顔がそっくりって言うのもあるけど、雰囲気が朝姉ぇそのものだ。

 まるで朝姉ぇが戻って来たみたい……。

 

 「出来るの?さっきまで何も出来なかったクセに。」

 

 そんな事出来やしない、朝潮ちゃんの手の内は全部知ってるし癖も全部知ってる。

 私には『広辞苑』の知識もあるんだ、それに加えて朝姉ぇ以上の経験と朝姉ぇ以上の技術がある私に、朝潮ちゃんは絶対に勝てない。

 

 「構えなさい大潮、お仕置きの時間です!」

 

 そのセリフ、霞にも言ってたね。

 霞程度を一方的にお仕置きできた程度で調子に乗ってない?

 私は霞ほど弱くない!

 逆にお仕置きしてやる!

 そうよ、一気に轟沈判定に持って行って勝っちゃえばいいだけだもん。

 もう手加減なんてしてあげない!

 満潮が言った通りアゲアゲで行ってやろうじゃない!

 

 「やってみなよ!大潮の本気を思い知らせてあげる!」

 

 ドン!

 

 腕を振り上げる動作中に朝潮ちゃんに向けて『アマノジャク』で砲撃朝潮ちゃんは身を屈めてコレを回避した。

 腕の振りじゃなくて砲身を見てたのね。

 まあ当然よね、朝潮ちゃんも『アマノジャク』が使えるんだから。

 

 ドン!ドン!

 

 朝潮ちゃんも『アマノジャク』と普通の砲撃を織り交ぜて砲撃をし返してくる。

 砲撃と回避を3メートル足らずの距離でお互い繰り返す、艦娘同士のガンカタだ。

 

 バシュ!

 

 朝潮ちゃんが魚雷を一発発射、何のつもり?この距離なら魚雷が着水する前に避けられるのに……。

 考えられるのは霞とやり合った時にした奴ね、避けたところで魚雷を撃ち抜いて私の体制を崩す気だ。

 ならば。

 

 私は稲妻で右方向へ跳躍して朝潮ちゃんと魚雷の両方から距離を取る。

 

 ズドーン!

 

 直後に朝潮ちゃんが魚雷を撃ち抜き爆炎に飲み込まれる。

 撃ち抜く距離が近すぎだよ、私の体制を崩すどころか自分が爆発の被害を受けてるじゃない。

 

 ドン!

 

 爆炎を吹き飛ばすように水柱が上がった、あの水柱の高さだと稲妻じゃなくてトビウオね、どっちに飛んだ?

 前後どちらでもない、ならば上!

 

 「違う、上にも飛んでない。」

 

 ならば私から向かって右へ飛んで距離を取ったのね。

 だったら距離を詰めないと。

 私は水柱から向かって右斜め前方へ向けてトビウオで飛ぼうとした。

 だけど私に向かって海中を進んでくる魚雷一発を左目の端に捉えた。

 爆炎に紛れて撃ったのね、その直後にトビウオで移動したのか。

 

 「でも甘い!」

 

 私はトビウオをやめ、飛ぶ方向は変えずに稲妻で一回飛んで着水と同時にそこから10時の方向へもう一回稲妻で跳躍、朝潮ちゃんを捕捉しなお……。

 

 「こっちにも……居ない……?」

 

 じゃあどこに行った?朝潮ちゃんはさっきのトビウオでどこへ飛んだ!?

 

 ズドドーン!

 

 「な、なに!?」

 

 私の船尾で何かが爆発し、そのまま前に吹き飛ばされた。

 後ろから当たったというよりは下の方から何かが当たって爆発した感じ?

 威力からして恐らく魚雷、だけど誰が撃ったの?潜水艦でも潜んでたって言うの!?

 

 私が海面を転がりながら魚雷が来た方向を見ると、朝潮ちゃんが海中から飛び出して来るところだった。

 そう言えばこの子、霞とやった時も潜ってたわね、位置は変わっていない、恐らく連装砲を海面に撃ち、トビウオの水柱と私に誤認させて潜ったのね。

 じゃあ海中から私の着水した所を狙って海中から魚雷を撃ったの?駆逐艦が潜水艦みたいなことをするな!

 

 ドン!ドン!ドン!ドン!

 

 ここぞとばかりに連装砲を連射してくる、ようやく回転が止まって起き上がりかけてる私に避ける術があるわけもなく、朝潮ちゃんの撃った砲弾は引き寄せられるように私に全弾直撃。

 

 「わぁあ!」

 

 立場が逆転してしまった、今度は私がやられたい放題?

 さっきまでこんな出鱈目な事しなかったじゃない!

 まるで別の人と戦ってるような気分だわ。

 まさか……手を抜いてたのは朝潮ちゃんも同じ?

 

 「でも、まだだよ!」

 

 私は朝潮ちゃんが居る方へ向けて、着弾の煙を置き去りにするように稲妻で跳躍。

 きっと朝潮ちゃんは撃ってくる、それを躱してカウンターの砲撃なり魚雷なりをぶち込んでやる!

 

 「また……居ない……?」

 

 また潜った?

 ならば足元から魚雷が来る!

 

 ドドドドドーーン!!

 

 私が足元を警戒した途端に頭上から砲弾が降って来た(・・・・・・・・・・・・)

 今度は上!?私が煙に包まれている間に上に飛んだの!?

 

 こんな戦い方は『広辞苑』にも載ってない!

 神風さんとの戦闘も想定していた朝姉ぇでさえ、こんな出鱈目な戦い方は想定していない!

 

 「クソぉ!」

 

 ドン!

 

 私は着水しようとしている朝潮ちゃんを撃つ、だけど姿が霞んで見えるほどに集中させた装甲で防御された。

 『刀』の応用?いつの間にそんな事が出来るようになってたの!?

 

 「どうしました大潮、貴女の本気とはその程度ですか?」

 

 ダメだ……勝てない……。

 実力は贔屓目に見て互角と想定して演習に挑んだのに、たった10分かそこらで思い知らされてしまった。

 この子は私より強い、もしかしたら神風さんよりも強いかもしれない。

 この子が相手じゃ、朝姉ぇの『広辞苑』も役に立たない、だって神風さんでさえしない事を平気でやってくるんだもん……。

 

 ドン!

 

 「ぐうぅ!」

 

 朝潮ちゃんが私に向けて無慈悲に砲撃してくる。

 酷いよ……私にはもう、戦意なんて欠片もないのに……。

 

 「本当に腐ってますね。貴女はそれでも駆逐艦ですか?」

 

 諦めが早いのは駆逐艦らしくないって言いたいの?

 だって仕方ないじゃない、勝つ方法が思い浮かばないんだもん、アンタみたいなバケモノに勝つ方法なんて『広辞苑』に載ってないんだもん!

 

 「先代の諦め癖がうつっちゃったんですね。だからそんなにあっさりと諦められる。」

 

 今なんて言った? 

 朝姉ぇが何を諦めたって言うの?

 自爆したから?

 でもその事は知らないはずでしょ?

 なのに、なんでそんな酷い事言うの?

 朝姉ぇと同じ顔で朝姉ぇの事を悪く言わないでよ!

 

 「先代を悪く言われて腹が立ちましたか?でもやめませんよ。私は先代の事が大嫌いですから。」

 

 「な、なんで……。」

 

 「なんで?決まっています、あの人は司令官を誰よりも深く傷つけた。それが許せないからです!」

 

 戦死したから?

 でもそれは仕方のない事だったんだよ?

 あの時出撃できたのは朝姉ぇだけ、朝姉ぇが迎撃に向かわなかったら鎮守府は壊滅してたし司令官だって死んでたかもしれない。

 それなのに朝姉ぇを責めるの?

 命と引き換えに司令官を守った朝姉ぇをアンタは責めるの!?

 

 「不思議そうな顔してますね。先代は命がけで司令官を守ったのになんでそんな事を言うんだ、といった感じですか?」

 

 「そうだよ!あの時はああするしかなかった!朝姉ぇは立派に戦って死んだんだ!」

 

 他に手があったとでも言うの?

 それともアンタならどうにか出来たとでも言うつもり?

 その場に居もしなかったクセに勝手な事をほざくな!

 

 「もし、私がその場に居たら迎撃になんて出ません。」

 

 「は?はぁ!?何言ってるの!?鎮守府を見捨てるって言うの!?」

 

 何考えてるのこの子、迎撃せずにどうするの?逃げるの?

 そんなんでよく私に、それでも駆逐艦かって言えたわね!

 

 「ええそうです、迷わず見捨てます。私なら、きっと司令官を殴り倒してでも連れて逃げました。鎮守府が壊滅しようと関係ありません、他の艦娘がどれだけ死のうと知った事じゃない、司令官に嫌われたって構わない。私が死ぬより(・・・・・・)、そっちの方が傷つかずに済んだでしょうから。」

 

 狂ってる……この子は司令官のためなら全てを敵に回すつもりだ、司令官本人でさえも……。

 

 「私は、その時もっとも司令官が傷つかずに済む方法を選びます。艦娘の戦死で司令官が傷つくなら引きずってでも連れ帰ります、敵を沈める事で司令官が癒されるなら私が敵を根絶やしにします。私が生きてる事で司令官が喜んでくださるなら、例え体が吹き飛ばされたって生きて帰ります。」

 

 満潮の言ってた通りだった。

 とても正気とは思えない……この子は異常だ。

 

 「そんなの……不可能だよ……。」

 

 「不可能でもやるんです!私は絶対に諦めません!この朝潮、司令官との大切な約束は必ず守り通す覚悟です!」

 

 私を見据える瞳に迷いは感じられない。

 着任したての頃は自身なさげにオロオロしてたのに……。

 

 「そう……わかった……。」

 

 この子は朝姉ぇとは違う……。

 この子は朝姉ぇの代わりにはならない。

 

 満潮が前じゃなくて後ろを守るって言った意味がやっとわかったよ。

 この子は前しか見てないんだ。

 自分に自信がないクセに、それでも司令官との約束を守ろうと必死になっている。

 

 危ういなぁ……必死に前ばかり見てるせいで後ろの事なんか気にもしていないじゃない。

 朝姉ぇの影ばかり求めてた私とは真逆だね……。

 

 朝姉ぇは自分に出来る事を必死にやっていた。

 でも朝潮ちゃんは、自分に出来ない事さえやろうとしてるんだね。

 例え不可能だろうと……諦めずに。

 

 「続きを始めようか朝潮ちゃん。まだ()の本気を見せてないしね。」

 

 朝潮ちゃんがこんなじゃ出撃できなくしたって意味がない。

 きっと命令なんて無視して出撃しちゃうもの……。

 

 「……わかりました。受けて立ちます!

 

 そうだ、再開する前に言っておかないと、この子は自分の強さを自覚すべきだ。

 司令官が怒るかもしれないから才能の事には触れずに。

 

 「朝潮ちゃん、大潮はこの鎮守府で2番目に強い駆逐艦だよ。」

 

 「え?」

 

 1番目はもちろん神風さん、その次に強い私を倒せたら今度から朝潮ちゃんが2番目だ。

 

 「今から私は全力で朝潮ちゃんを倒す。手加減なんてしない。この意味、わかるでしょ?」

 

 「……わかりました。第八駆逐隊旗艦の名誉と、横須賀NO.2の栄誉。両方頂きます。」

 

 うん、それでいい。

 朝潮ちゃんはそのまま目的に向かって邁進し続けて。

 朝潮ちゃんに足りない所は第八駆逐隊(私たち)が支えてあげるから。

 

 だけど、本気を見せるとは言ったけどどうしよう。

 さっきまでも十分本気だったんだけどなぁ……。

 

 (大潮、そんな戦いしてたら早死にしちゃうわよ?もっと頭を使いなさい頭を!)

 

 朝姉ぁが居た頃はそうやってよくお説教されたなぁ……。

 私は頭を使うのが苦手だったから……。

 

 (なんで考えなしに突っ込んだ方が強いのかしら……。不思議だわ……。)

 

 昔は荒潮に戦い方が似てたもんね。

 何も考えずに、体が動くままに……。

 まるで、見えない誰かに操られてるかのように戦ってた。

 

 (でも、それが大潮の強みなのかも知れないわね。きっと、体が戦い方を知ってるのよ。)

 

 朝姉ぇの代わりになる事ばかり考えてたせいで、自分の戦い方をすっかり忘れてたな……。

  

 うん……考えるのはもうやめよう。

 ごめんね朝姉ぇ、やっぱり私には頭を使った戦い方は向いてないみたい。

 だから今だけは、朝潮ちゃんに本気を見せないといけないこの時だけは許してね。

 小難しい事を考えるのは私らしくない、何も考えずに私の全てを朝潮ちゃんにぶつけるんだ。

 

 そう思った途端、気持ちが高ぶって来るのを感じた。

 久しぶりだなぁこの感じ…… 気持ちがアゲアゲだ……。

 

 そうそう!この感じ!アゲアゲでいきましょう!

 

 「朝潮型駆逐艦 二番艦大潮!アゲアゲで行きますよ!」

 


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