プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー

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いい加減焦らすのもアレなんで、今明かされる衝撃の事実ゥをします。


魔力を上げて、物理で殴ればいい

 特異点Fにおける最後の戦いが待ち受けているであろう大空洞へ向かうため、学園跡地に別れを告げた私達は無言に近い状態のまま行く手を遮る敵を蹴散らしつつ前進を続けていた。

 緊張しているという点も大きいが、一番の原因はやはり―――先のブリーフィングにおける私の最終的な選択が大きく影響してしまっているのだろう。

 ……だが、後悔は今更していない。何れにせよ向かった先に真実は存在し、受け入れるほかないのだから。私はそれに立ち向かう、たったそれだけである。

 

「まあ、そんなに緊張すんじゃねえよ嬢ちゃん。アンタが抱え込まなくても、いざとなりゃオレとそこのアーチャーが何とかしてやる」

 

「……ああ、そうだな。我々を引っ張ろうとしている度胸は買うが、そのせいで倒れられてしまっては元も子もない」

 

 あー、はいはい。サーヴァントのお兄さん方、全然無理してませんよー……立香さん適度に無理してるから大丈夫ですって。

 ……気になってんのは、仮に件の奴さんが居たとしてどんな形でノコノコ出てくるかだよ。わざとらしい演技で出てきたらどう反応してやろうかなって。

 

「やはり、ここは『初手フィリピン爆竹』が適切じゃねーかな」

 

「……は?」

 

 シルバが真顔で提案をすると、アーチャーが何言ってんだコイツという視線を投げた。

 ――説明しよう、『初手フィリピン爆竹』とは……ろくに話も聞かずに『何か怪しい』と思ったら、即時に通常の爆竹とは比べ物にならない破壊力で知られるフィリピン産の爆竹をノータイムで相手に投げつける行為である。相手は死ぬ、爆発四散ッ!!! ……でも偶に事故る。私は事故ったことはないけれども。

 

「確かにそれが一番早いと思う始末方法だがな、シルバよ……」

 

「……え、ちょっと待って。貴女達、そんな真似を仕出かしたことあるの?」

 

 ありますけど何か。

 厳密には私達じゃなくて、その時偶々行動を共にしていた人がフィリピン爆竹を大量所持していたんだがな。なお、そのテロリストめいた人物ですが本業は小説家だそうです(自称)。

 

「――そんな小説家がいるものかッ!!」

 

「私に言われてもな……」

 

 ちなみにフィリピン爆竹だが、流石に私はカルデアに持ち込んでないからね。

 持ち込む以前に検問に引っかかるだろうし、カルデア爆破されてる状況だと真っ先に疑われる材料になりかねないし。

 ……でも、他に持ち込んだ荷物はどうしてパスできたんだろうか。魔術礼装の類とかと思われたとかかな?

 

「禍々しくて検査しようにも出来なかったんじゃねえの?」

 

「なるほどそりゃそうだな、言えてるわ」

 

「どれだけ危険物を持ち込んでいるんだ君は……」

 

 すまないが自分でもどれだけ詰め込んで持ってきたか正確には覚えてないんだ、テヘペロ。

 強いて言うのなら、元コマ◯ドーの大佐が娘を取り戻すためにデェェェェェェェェェェェェン!!と用意した装備セット10個ぐらいかな。……うーん、もっとあったかも。

 そんなこんなで場を和ませ……てはないな、変に掻き回したところで大空洞付近まで到着しちゃいました。またその先には――

 

「……うん、いるな」

 

「いますね」

 

「知ってた」

 

 筋肉モリモリのマッチョマンの岩を削ったかのような剣を持った大英雄が……いましたよ。全身が黒くなっている上に目だけが赤く光っている……いたぞぉー、いたぞぉー!!!

 しかもだ、事もあろうに大空洞の入口の前を陣取っており、その横を素通りなんてそれなんて無理ゲー過ぎてどうしようもないレベルである。

 ――ええと、『ヘラクレス 避け方』で検索っと……ネットに繋がらねえじゃねえか!! ホント使えねえなこのクソスマホ、使えねえなこのクソスマホ!! 何で二回も言ったんだ私……。

 

「真面目にどうするよアレ」

 

「……嬢ちゃんの槍でもアレの撃破は無理そうか?」

 

 無理でしょ、だってあのヘラクレスですぜ。十二の試練に耐えたとか言われてるんだから相当にメンタルが鋼……否、メンタル筋肉でしょうよ。試してもいいけど絶対不発に終わって居場所特定されるから駄目。

 

「予定通り、私が足止めするというのは?」

 

 理想的かもしれないけど、よくよく考え直してみたら大空洞の中がどんな状況なのか一切わかっていないんだよなぁ。

 もしかすると、亡者や魔物の類がウヨウヨしているかもしれないから戦力が一人でも欠けるのはリスクが大きいと思われる。割とデカイのよね一人抜けた穴を埋めるのと疲労背負うの。

 

「わ、私が囮になってバーサーカーの注意を引くというのも……駄目ですよね」

 

 駄目に決まっているじゃないか。理由はアーチャーのと同じだけれど、特にマシュは霊体化を使った緊急回避が出来ないし無謀なことは止めて欲しい。お願いだからね。

 

「……だったら全員で殴る、とか?」

 

「セイバー戦で疲労困憊で詰みます。本当にありがとうございました」

 

 そもそも、仮にランサー戦のようにタコ殴りにして勝てたとしてノーダメージというのは恐らくないに違いない。此処まで来て誰かが重傷負ってリタイアなど本当に勘弁して欲しいことだ。……つまり、どれもこれも作戦として全然駄目だということである。クソッタレが!!

 警戒し過ぎなせいで選択の幅を狭めているのやもしれんが、常に最悪の事態を想定せずして何が戦いだというのだ(逆ギレ)。

 ええい、それにしたって本当に次から次へと嫌な方向へ事態を運びやがって……いい加減そろそろ気のせいだったわーと安堵ぐらいさせてくれてもいいじゃないか。……うーん、ガチで困ったなぁ。

 

「迂回するというのはどうなの? あるいは別ルートを無理矢理作って入るというのは?」

 

「気付かれるに決まってる。……穴を掘って地下からという手もあるけれど、崩落の危険性と隣り合わせになって生き埋め待ったなしだ」

 

 俗に言う急がば回れ戦法も駄目で、誰かが囮になるという方法も駄目で、挙句の果てに倒すのも駄目とかもう万策尽きかけてると言ってもいい。

 かといって、何かしなければどんなに待とうと特異点Fの異常は解決しない上に、私達は永久にカルデアに帰ることが出来ない。これが前門のタイガー後門のウルフというやつか、ふざけろ。

 

「単に退かせばいい訳ではないというのが難点だな……元々守っていたという森の奥へ帰ってくれればよいのだがな、そうも行くまいというのが現状だ」

 

「ケツ蹴っ飛ばしてでもあそこから退かせればいいんだがな、アイツでけえのなんのって」

 

「重量感あるよな」

 

 森へと帰す、ケツを蹴っ飛ばす、重量感……って、貴様らもう少し真剣に対策を考えろや。私の脳がそろそろパンクしそうになってるんやぞ。FXで有り金全部溶かしたかのような顔になってもいいのなら続けても構わんが。

 ……ん、どうしたの所長。急に妙案思い付いたように考え込んで。もしかして私に良い考えがあるってヤツですか? 

 

「……ねえ藤丸、アンタの使ってたおかしな力であのバーサーカーを、遠い何処かに吹っ飛ばす事(・・・・・・)って出来ないかしら?」

 

「え?」

 

「入口から離せばいいし、戦わないようにすればいいんでしょ。――だったら、遠ざけるなりして時間を稼いで、その間にセイバーを倒すしかないんじゃない?」

 

「………」

 

 ……ああ、その手があったか。

 逃げるか戦うかで思考が固まってしまっていたせいか、向こうにある意味『逃げてもらう』という発想には全く至らずにいた。盲点だったと言わざるをえない。

 けれども、いざそれを実行するのに何を用いればいいのかが肝心なところだ。欠かせないのは吹き飛ばし効果を持つような呪文なのだが、当てる相手の体力や筋力、体の大きさを考慮に入れて発動しなければろくな飛距離を叩き出せないだろう。

 また、確実に距離を稼ぐためには推進剤……要はロケットエンジンのような役割を果たすアシストの存在が不可欠であるとされた。これについては、アーチャーの投影した宝具の爆発が役割を担うことにすぐに決まった。

 

「それで、やれるのかマスター」

 

「――1つだけお誂え向きな呪文がある。でも、今回みたいに飛距離が大きく求められる場合には、恐ろしい量の魔力が代償として失われる」

 

「具体的にはどれくらいなのだ?」

 

 冗談抜きで答えろというのなら、使ったら最後……私はこの場で戦闘不能になってカルデアに帰還しても暫くは目を覚まさないかもしれないだろうね。瀕死なだけで生きてはいるだろうけど。

 

「ちょっと!?」

 

「……結局、このプランも駄目だということか」

 

 こらこら、あんたら話は最後まで聞けっての。

 今の話はあくまで、『藤丸立香という個人』が保有する魔力の限界を超えてブッパした場合のことである。そんな無謀で、あとは他人任せになるような手段をこの大事な局面に私が取るわけがないじゃないか。

 だから今回は裏技を使い、足りないものは余所から確保するということで対処してみせる。

 

「大丈夫なんだな?」

 

「良い女は早死しないから安心せい」

 

 追加でキャスターにフォローを頼み込みつつ、私はバーサーカー撃退作戦こと『魔力を上げて物理で殴る作戦』の発動を宣言し、忍び足でアーチャーと一緒にヘラクレスに気づかれぬよう大空洞の入口上に向かった。今回はマシュ、所長、シルバの参戦はなく、離れた場所の物陰に待機してもらった。

 程なくして、サーヴァント2名とマスター1名が所定の位置につき、与えられた役割を担うべく行動を開始する―――

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、そんなわけでピタゴラスイッチを始めたいと思います。

 

「……まずはオレからだッ! 来やがれデカブツ!」

 

 開戦の狼煙を一番に上げたのは我が兄弟子ことキャスターだ。

 彼は一瞬にしてヘラクレスの注意を引きつけることに成功すると、その大きな体からは出せるとは思えない速さで距離を素早く詰められて、岩の大剣を激しい風圧とともに振りかざされた。

 

「■■■■■■■――!!」

 

「あ、これ死ぬな」

 

 ……が、ここまでは想定通りであり、キャスターはニヒルな笑みを浮かべて長杖を垂直に突き刺した。直後、ヘラクレスを中心に術式が起動しまたしても火の手が上がると思いきや、木で器用に編まれた巨人の腕が真下から生え、その黒ずんだ巨体を花火を打ち上げるかのように突き上げ飛ばした。おおっと、ヘラクレス君打ち上げられたーっ!!

 

「マスター!」

 

「――わかってるよっ!」

 

 空中ではどのような英霊だろうと飛ぶという経験がなければ無防備になる。ましてやその大きく育った図体だ、立て直すなど無理に等しいことだろう。

 故にそこを突くことで作戦を確かなものへとさせてもらう。卑怯と言われようがこちとら命懸けなもんでね。

 

「ぐっ、うあああああアァァぁぁぁッッッ――!!!」

 

 頭のスイッチを切り替え、一目散に絶賛空中浮遊中のヘラクレスの下へと飛び込むと私は、布越しでも血管がミミズのように首筋まで浮き出ているのがわかる左腕をただ前にと送り込んだ。何の変哲もない正拳突きというやつである。

 ……必殺の拳はヘラクレスを穿つこともなく弾かれることもなく、寸前のところでピタリと静止した。

 

「■■■■■――!?」

 

 私も痛くなければバーサーカーも痛くない様子だ。……あれ、もしかしてミスりましたかこれ。

 不発か――と誰しもが思おうとした時、彼の体は激しい何かの衝撃をまともに喰らい……揺れた。違う、揺さぶられたと言った方が正しい。

 

 

 

「なーんてな、これがヨグ先生の拳だッッッ!!!」

 

 

 

 支払われた膨大な量の対価を糧に不可視の巨腕が、バーサーカーの体を私が飛び出してきた方向とは逆に押し出し、冬木大橋があるとされる方角へ1km弱ほどふっ飛ばした。

 しかし、それだけでは足りない。その程度飛ばしただけではすぐに戻ってきてしまうのはわかりきっている……であるからして、真打ちは此処で本領を発揮するのだった。

 

「アーチャー、頼んだッ!」

 

「期待には答えよう」

 

 投影魔術により複製された名立たる魔剣などの数々が宙に浮かんだ状態から射出され、容赦なく空を舞うバーサーカーにダメージを与えているのかも関係なく突き刺さっていく。

 あちらも負けじと剣を弾こうとしているようだったが、思うように力が振るえないのか動きに衰えが見て取れた。あるいは気絶に近い状態にあるのかもしれないと私は感じた。

 

「……全投影、連続層写」

 

 そうしている間にも、推進剤として起爆させられてはまた突き刺さり、突き刺さってはまた起爆が指で数えられる程度に行われ、巨体の面影は大空洞近くの上空から離れ徐々に見えなくなっていった。

 

「……これで終いだ。――I am the bone of my sord(我が骨子は捻れ狂う)

 

 剣の刀身をドリル状に捻り改造を施した宝剣を弓に番え、アーチャーは祈るように弦を引く。

 奇しくもそれは、私が呪いの槍を使用して葬ったアーチャーがクロスカウンター気味に放った最後の一撃……の前に撃ったやつにそっくりだった。てかまんまじゃん。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

 ――聴こえるのもやっとの遠い距離で雷鳴のような轟音が鳴り、大空洞前に静寂の時が訪れた。

 

 

 

「落下地点は冬木大橋よりも前か……」

 

「あれまぁ」

 

 経過を観察していたアーチャーの報告を聞いて、私は残念そうなリアクションを取る。

 目標では大橋の下に流れる川にダイブさせようと考えていたのだが、実際に墜落した現場は近くも遠からずな住宅街であるそうだ。

 ……即ち、ヘラクレスが未だに大空洞を守るという使命に燃えているのだとしたら、のんびりと内部を進むなどしてはいられない距離に相手はまだいるということになる。

 どのみちタイムアタックが避けられないのは見え透いていたが、やっぱり思うようには行かないのはやるせない。

 

「戦闘終了……で、いいんですよね」

 

「強制的という意味合いでならね。グズグズしているとまた再開しそうだけど」

 

 二度と戦いたくねえよあんな相手、というのが今の気持ちの全てだ。体がクタクタで辛い以外の言葉が見つからないし、頭も沸騰するように熱くてどうにかなりそうだ。思考も落ち着かない……ああ、これはいつもの事だった。

 

「大丈夫なんか?」

 

「大丈夫だろうとなかろうと先に進むしかないだろうに……」

 

 休憩なんぞしていたら、挟み撃ちというあってほしくない展開が待っている。

 とりあえず、足だけは動かしてさっさと前に進もうと鞭を入れ、再び揃った一同を大空洞に押し込んでいく。その後に私も続く形で、いよいよ冬木におけるボスが潜むダンジョン攻略が開始されようとしていた。

 

 

 

 

 ――されようとしていたんだがなぁ、そう世の中思い通りに事が運ぶはずもなかった。

 

 

 

 

「が、あああゝアアアアあaアあaあAあああ――ッ!!!」 

 

『!?』

 

 突如として侵入したての大空洞に、ケダモノのような……いや、ケダモノそのもの叫びが響く。

 一体何だと一斉に皆が聞こえた方へ振り向くが、その視線は困惑と驚きが入り交じったようなものだった。

 無理もないか……何せ、今の雄叫びは最後尾で殿めいたことをしていた私自身のものであり、明らかな状態の異常を示すSOSであったのだから。

 流れるように膝を地面について崩れると、こうなるに至った元凶である腕を抑えながら深く奥歯を噛み締める。

 

「――せ、先輩っ!?」

 

「おい、どうした!?」

 

 心配症なマシュとエミヤが引き返して駆け寄ってくるが、二人が体に触れるよりも先に私は怒鳴り声を上げて静止を行った。

 

「Kuるナぁッ!!」

 

 駄目だ、完全に呂律が回っていない。発音がイカれちまってる。

 これではいずれ会話が成立しなくなるし、自分が何を仕出かすかもわかったもんじゃない。自覚があるだけマシか。

 理解されない恐怖心が私を包む中、違和感が存在感を出して体内を蠢く。……それに釣られて、意味を成さない言葉群が勝手に口から飛び出し始めた。かなりヤバイ。

 

「死ィ! ヴォあla Gehen……ひβs-た≒Σ〒―Ghaゲnn、幻、深淵ノsin……Paradox!!!」

 

「何を、言って――」

 

 ……まるで怨嗟だ。向けたくもない相手によくもまあぶつけられることだと呆れ返る。自分で自分をとっとと殴ってやりたい気分だ。

 されど、腕は固定されてしまったように動かず、一度へたり込んだ足は立ち上がることを拒絶していた。誰か早く私を殴れ。伝われこの思い……でないと取り返しの付かないことになるから。

 

「ぐぅギィィ……敗者,gd終わラナI……KaタsuROMダァ!!!」

 

「おいおい、こりゃあ不味いぞ?」

 

「一体どうすれば――」

 

 狂気がすぐそこまで迫ってきている。片目の視界が血に塗れたように染まり血を流し、この世ではない何処かの荒れ果てた世界をぼやけ気味に映し出す。やめろ、そこは私が目指すべき場所ではない。

 このママデハ、私がワタシでイラレナクなル―――

 

「……精神分析の時間だゴラァ!」

 

「アザトゥス!?」

 

 己からまともな精神が剥離されかけようとした時、私の顔にドアを突き破ろうとするが如く鋭い蹴りが炸裂する。

 防御や受け身を取る暇もなく転がされ、全身がボロ雑巾のように酷い有り様になる。ダメージでかすぎィ!!

 

「痛ってえじゃねえかこのヤロウ!!」

 

「あ、戻った」

 

 ホンマや、ってか今の蹴りはシルバだったか。加速をつけてまで蹴らなくてもええんやで。

 ――ああん、そうでもしなけりゃ暴走始めてただろうが、このバカチンがだって? ……はい、仰る通りです。私が悪うございましたとさ。これでいいかい?

 

「……君達だけの内輪で納得や解決されると困るのだが」

 

「そうよ、アーチャーの言う通りよ……私達が納得いくように今の件について説明しなさいよっ!!」

 

 ひえっ、皆さん大層お冠で――当たり前か。

 今のことに関しては大変ご迷惑をおかけしました、本当に申し訳ありません。この大事な時に何やってんだよお前って話ですよね。社会的に死んで詫びます。

 

『一体何があったんだい、藤丸君……マシュから急に連絡を受けたが、さっきまでの君のバイタルはいずれの数値も――』

 

「異常な数値を叩き出してたって言うんでしょ、わかっているよ……精神の錯乱に加えて魔力暴走引き起こせばそうなるわな」

 

「どうしてそんな事に……」

 

 心当たりなど一つしかない、先程の戦闘で使った魔力が原因だろう。

 あの状況では頼らざるを得なかったが、もう少し自重して魔力を引き出すのを抑えたほうが良かったのかもしれない。

 要するに調達先が悪かったということだ。慣れないことはやるもんじゃない。

 

「……一体どこから調達したというのだ」

 

「うーん、知りたい?」

 

「君のことだ、我々の知るべきではないところから持って来ているのだろうが、ある程度知識として知っていなければ幸先が悪い」

 

「だ、そうだぞリツカ」

 

 へいへい、ごもっともな意見ですこと。

 でもまあ、何時迄も隠し通せるような事ではないだろうし、覚悟を決めて打ち明けるしかないんだろうね。

 気が気でないがアーチャーに近くに来るように頼むと、一言忠告してから情報として得るように伝える。

 

「私の身体を解析しても構わないけど条件がある」

 

「何だ?」

 

「胃カメラみたく中身の隅々まで見ようとするな。触診ぐらいのカルテに書かれるような断片的情報のみ読み取れ」

 

「……了解した」

 

 もっと砕けたように言えば、RPGのステータスよろしく効果を確認しろということだ。

 ニュアンスとして理解してもらえたようなので、結果が出るまで動かない状態を取る。……えらく時が流れるのが長く感じるが、時間があまり残されていないのはわかっているよね。お前に言えた義理じゃない? 知ってるっての。

 結果が出たようで、アーチャーの表情が険しさに混乱をかき混ぜたかのように歪んだ。

 

「おい、マスター何だこれは……」

 

「見たまんまのことだよ、それ以上それ以下でもない」

 

「いや、これを君は―――受け入れたまま今まで生きていたというのか!?」

 

 常人には理解できないことでしょうけど、これが私『藤丸立香』の人生なんだよ。

 気持ち悪いと思うならいくらだって拒絶したっていい。初めは傷つくだろうけど慣れてしまえばやがては気にならなくなっていく。

 なぁに、いつかはそうなることは自覚していたから単に今回は予定が早まっただけさ。

 

「何が見えたんですか……アーチャーさん」

 

「……それは、本人の口から聞いた方がいい」

 

 あっ、説明を丸投げしようと思ったのに投げ返されてしまった。……自己責任だろうがって顔をしているな。全くもってその通りです、はい。

 こうなったら、別に最後かもしれないわけじゃないが全て洗いざらい話してしまうとしよう。全てって言っても事実だけバーンとぶつけるだけであるが。

 じゃじゃ馬で扱いに困る左腕を見つめて、私は詳しい事情を知らない人間ばかりの皆に対して諦めた口調で言った。

 

 

「私の左腕は、HPL……神話生物の中でも特に扱いに困る厄介な存在にして、外なる神の一柱――――『這い寄る混沌』ことニャルラトホテプの腕なんだよ

 

 

 知られたくなかった事実が悪夢とともに今甦り始める。




アーチャーが見たステータス詳細

ニャルラトホテプの加護:
外なる神(アウターゴッド)の一柱であるニャルラトホテプによる加護にして呪い。
ある事情によりニャルラトホテプの左腕が藤丸立香の左腕として移植されている。これにより彼女は神話生物からはニャルラトホテプに連なる者、もしくはニャルラトホテプそのものとして認識される。

ニャルラトホテプとしての魔力を使用し過ぎると彼女の身体を侵食し、やがて完全な外なる神として生まれ変わってしまう危険性がある。

腕自体は変幻自在である程度武器にもすることが可能。



こんな感じです。ガバガバかもしれませんが大目に見てください(
ヨグ先生の拳に関する計算するの疲れました。

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