プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー

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燃えよ腕、ゴリティカルエンド

 ……切られた戦いの火蓋の中でまず動いたのは、私達の中でも一番防御に特化していたマシュであった。

 彼女は一番に狙われた私とランサーの間に割って入るとその盾で、ガバガバ判定で槍にカテゴライズされている鎌を正面から受け止めて真横へと反らしてみせる。

 すかさず私自身がフォローに入り、キミタケブレードによる抜刀の衝撃波を一閃放った。――が、直撃は避けられ、相手との間には遠いようで近い距離が開いた。

 ランサーは初手を躱されたにも関わらず余裕の表情を浮かべ、マシュを値踏みするように眺めてから言う。

 

「ほう、珍しいサーヴァントですね……みずみずしく血の啜り甲斐がありそうです」

 

 ほざけ、この似非ランサーめ。貴様にくれてやる血など一滴すらないわ。トマトジュースでも飲んどけ、近くの自動販売機にでも適当に売ってんだろう。

 

「いや、なかったぞ。ザクロとアセロラジュースなら売ってたが」

 

「そういう情報はいらないよ、シルバ」

 

 赤ければいいって問題じゃねえぞ(ブーメラン)。

 それにこちらが飲みたいと思っても、どうせ金は今持ち合わせてはいないしな。えっ、蹴ったら色々溢れて出てきた? 何やってんだおめえ、逮捕すっぞ。

 軽口を叩いていると、ランサーが地面を蹴り目標をマシュに定めて刃を大きく振るう。

 それに対し、頑丈過ぎる大きな盾は彼女を見事に隠し通し、盾を超えて命中しようとしていたリーチの長い攻撃をこれまた不発に終わらせた。

 ……サーヴァント戦はマシュにとって初めてのようだが、シールダーという特性が上手い具合に素人なところをカバーしているように思える。それか元々彼女のポテンシャルが高いかであるが。

 宝具が使えないというハンデを背負っているも、結局は気持ちの持ちようで何とでもなるに違いない。……マシュよ、守りたいという心を形にするのじゃよ。

 

 ――しかしあれだな、自分を殺した男の武器……ハルぺーを持って戦うなんて正気なんだろうかこのランサー。いや、正気でないからこうして我が物顔で使いこなしているんだろうが……ちょっとは躊躇えっての。

 心境を聞いてもどうせ大した答えは返って来まいとして、私は跳躍により盾を足場代わりとして更に高く飛び立つと、刀身の先の一点にエネルギーを集中させ――胴体を狙ってフェンシングの要領で鋭い突きをぶち当てに行く。

 

「ハァァァーーッ!」

 

「――ッ!?」

 

 ギリギリのところでこれも回避されるが、威力が高め過ぎたのか地面は衝撃とともに陥没し、浮き上がった破片が良い目眩ましとなってランサーに襲い掛かる。多少なりとも自分にもぶつかりはしたが特にどうということはない。痛いのには慣れている上にもっと酷いのを知っている。肉が裂かれる痛みとかな。慣れって怖い。

 

「任せなっ!」

 

 呼応するようにキャスターが動き、宙に書き並べたルーン文字を駆使して火の塊を連続発射し確実なダメージを与え、かつ一定の間隔を私達とランサーの間に与えた。

 ある意味、ヒット&アウェイに近い戦法でじわりじわりとランサーのペースは削られ、崩されていく。

 

「くっ……」

 

 相手の表情に、「苛立ち」という名の焦りが僅かに滲み出ているのがわかる。

 ――恐らく、こう思っているのだろう。たかが人間のマスターや中途半端なサーヴァント、本来攻めるような戦いは行わないはずのキャスターにこの私が負けるはずがない、と。

 思うのは勝手だが、群れれば蟻だって自分より大きな敵を食い殺すし、追い詰められればネズミも猫を噛むことがある。その事を是非とも理解していただきたいね。

 まあ、今回は実際のところアーチャーという伏兵も抱えているから過剰戦力でタコ殴りにしている感がバリバリであるが、ここで倒さなきゃセイバー戦が最高難易度の戦いになりかねないので勘弁していただきたいと思う。

 

 と、ここで接近戦ではどの攻撃も当てようがないと判断したのか、元々居た鎖の足場にランサーは戻った。

 もしや空中戦がご所望かと思いきや、彼女は長髪を自分で掻き上げてみせ―――次の瞬間、髪を鎖状に変化させて無数の先の尖った杭を地上にいる私達へ目掛けて撃ち込み始めた。

 

「おわっ!?」

 

「――ひぃっ!?」

 

 まるで有線式の誘導兵器に襲われている気分である。襲われたことないけどね! 無線ならあるけども!

 皆様々に回避行動を取りスレスレで避けているが、一番に余裕そうなのはシルバと意外にも所長だった。あんまり優先的に狙われていないのもあるが、避け方がギャグ漫画のノリに見えなくもなかった。

 一方で私は、マシュの後ろに隠れながら側面からのヘビのようなうねりをみせる不規則な動きの攻撃に対して切り払いを行い、また並行して詠唱とともに左手で静かに印を切り、目的の呪文を発動する準備を整える。

 

「せ、先輩っ……?」

 

「◯▲@※◆%、$*+X>¥##&――」

 

 明らかに理解しがたい意味不明な言語を口走ってるのは気にするな。それよりも防御に集中して中断されないよう努めて欲しい。

 アイコンタクトで顔色が微妙に優れない事以外は問題ないことを伝えると、調子を取り戻したのか鎖による攻撃の嵐が苛烈さを増して行く。

 

「――きゃあッ!」

 

 これ以上加速されてしまうと流石に誰かの負傷は免れまい……って、言ったそばから所長がズコーっと滑って転んで顔から地面にスライディングしておられますぞ。それにカラータイツが無理のし過ぎで破けているみたいなんですが、このままだとビジュアル的になんかアレだ。卑猥になってしまう。

 だとすれば、対策は一つだ……アレな感じになる前に狩れ。それに尽きるだろう。

 

 

 

 

(――今だっ!!)

 

 

 

 

 刀をわざと地面に突き立てるという動作を私が行ったのをきっかけに、戦況が一気にひっくり返る。

 合図を受けて、戦闘エリア外から敵の乱入を警戒して様子を見守っていたアーチャーが狙撃を行い、張り巡らされた足場の基礎部分を的確に崩したのである。

 突然の不意打ちにランサーは驚愕を露わにし、急いで新たな足場を作るか校舎の屋上へ逃げ延びようと抗った。

 

(……やらせるかッ!)

 

 私はランサーを対象とした呪文を発動。

 後退りした彼女の背後より何とも形容しがたい霧かそうでない『何か』が出現し、一本の巨大な腕を形作った。視界に収めた者はアレは何だと口を揃えて述べた。

 

「なっ、これはッ――!?」

 

 かき消そうと鎌が我武者羅に振るわれる。――がしかし、実体のないそれは攻撃を全く意に介さず迫り、あっという間にランサーを鷲掴みにしてしまった。

 そうして、加減という言葉を置き去りにし、無慈悲な圧力が加えられ下へ下へ……と彼女は墜落していく。

 

「キャスター!」

 

「あいよっ!」

 

 仕上げとばかりに待機していたキャスターが長杖を地に向け、回避をするなかでどさくさに紛れて設置していたルーンを起動した。

 ……そこにランサーは抗うことも出来ずに突っ込むことになり、強制的に仕掛けられた地雷へと触れてしまう。火柱が腕ごと燃やし尽くし、金色のエーテルのような粒子が舞うが最後には……何も残りはしなかった。

 戦場の音は沈静化し、火がパチパチと鳴るだけの静けさが訪れる。

 

「……ふう」

 

「いっちょあーがりぃ」

 

 気の抜けたキャスターの号令により戦闘が終了したことが伝えられ、私達は揃って肩に入れていた力を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 ……ランサーという概念が崩れるランサー戦後、一旦落ち着いた私達はまともな休憩を挟むべく、延焼を続ける校舎に対して手分けをして消火活動を開始した。

 また、校舎内に屯している敵影が居ないかどうかの巡回も含めて行い、A班に私・所長・エミヤ、B班にマシュ・キャスニキ・シルバという編成で一つ一つの教室を見て回った。まあ、これといって何も妙なモノは見なかったのだけれど用心に越したことはないからね。

 

 途中、私が人には理解し難い言語で呪文を高速で唱えていたことに対してしつこく問われたが、召喚というか発生させたモノについては明確な説明を拒絶し、「ああ、あれね。マ◯ターハンドだよ、ス◯ブラの」と適当な誤魔化しで取り繕った。本当は『クトゥルフの鷲掴み』っていう重力操作系呪文をアレンジしたなんだけどもね。

 エミヤも深く内容に触れていては身が持たなくなると察してくれたか、意外にも話を合わせてくれて未曾有のスマ◯ラ談義が始まってしまった。そういえば世代的には同世代でしたね貴方。まさか英霊とゲーム談義が出来るなんて思わなかったぜ! ホント何でだよ!

 アーチャーはバリア反射持ちの某狐男が得意だと言っていたが、私は裸ネクタイゴリラが実は得意だ。えっ、女の子なんだからもっと可愛らしいキャラを使えって? だが、ゴリラの真理に至ってしまってな……その代償でこうなんだ。君もゴリラ語を理解すればいずれそうなるだろう、ウホウホ。

 所長はやったことがないらしく話題について来れないようだったが、ロマニに確認したところプレイできる環境はカルデアにあるとのことだった。じゃあ、皆で帰ったらやるかぁ! 楽しいぞぉ!

 

 時間をかけて巡回を完了した一同は合流場所に指定した生徒会室に入り、汚れていない椅子を見繕って各々に腰を掛ける。いやー、動きっぱなしで皆疲れたねー。でもまだ先があるんですよ、頑張っていきましょー(憂鬱)。

 30分ほどのんびりと生身勢はシルバが蹴って壊した自動販売機から回収したジュースをあおりつつ、息を整えるべくぼーっと寛ぐ姿勢を貫いたが緊張感はこれといって拭えずに終わった。

 

「さて……大空洞まであと一息まで来たわけだけど。約束通り、これまでの状況整理でも行っていこうか」

 

「そうですね」

 

「……ええ」

 

 気楽に行きたいが気楽になれない雰囲気の中、カルデアとの通信を開いた私は席を立って室内にあったホワイトボードを皆に見える位置まで移動させると、備え付けのペンを手にとりブリーフィングの音頭を取った。

 

「話の議題はズバリ、特異点Fの発生の原因とカルデア爆破テロの実行犯を特定することだね」

 

『――えっ、わかるのかい!?』

 

 ああ、わかるとも。その為にもこれまでの状況と行動を全て明らかにしていく必要がある。事件を推理する上での鉄板だろう?

 

「始めに、特異点Fは聖杯戦争の真っ只中だった。開始した当初は住民は普通に生活をしていたし、マスターも普通にその中に紛れ込んでいた。サーヴァントも正常だった―――間違いないこれで?」

 

「おう、そうだぜ。オレにもマスターはいたし、アーチャーの野郎にも赤い嬢ちゃんがマスターとして居た」

 

「……凛」

 

 腐れ縁というのは本当のようでキャスターが話した内容に、エミヤも反応を見せた。聞けば生前の同級生で師匠にあたるそうで、もしかしたら英霊になる前の自分もマスターとして参戦していたかもしれないとのことだった。

 

「――続けるよ。最初に消えたのは住民、同じかはわからないけど次に消えたのはマスター……でいい?」

 

「ああ、残されたオレや他のサーヴァントはこぞって混乱したさ。オレのところに同じ状況か尋ねに来るやつだって居た―――だが、原因を調べている間にどいつも暴れ出したセイバーの餌食になりやがって、次に見た時はこの期に及んで聖杯に執着をみせる巫山戯た奴になっていた。アーチャーはアーチャーでセイバーの軍門に下っていやがった」

 

「何か思うところがあったのだろうか……それとも」

 

 倒してしまった今となってた真意を聞くことは出来ない。自らの意志でセイバーに協力したのか、セイバーに協力することを強要されたのかは闇の中だ。唯一、セイバーに聞くという手もあるが答えてくれる道理はないだろう。

 

「キャスターはその後、アサシンとライダーを撃破。続けてアーチャーを目標にしていたところで、レイシフト直後に狙われていた私やシルバと合流。アーチャーの撃破を確認後に所長とマシュとも合流した」

 

 あとはアーチャー再召喚に続いて、先程終えたばかりのランサー討伐という流れだ。

 此処で気になるのは2点……冬木の人間が消えたこととセイバーが暴走したことについてである。

 

「住民が突如として消えたのはセイバーの暴走より以前――なら、此処で行われていた聖杯戦争とは別の要因によって『消された(・・・・)』?」

 

「そもそもな話ですが先輩、私達は『未来に人類の痕跡がなかった』から冬木に原因がないか調べに来たはずです……なのに、『2004年の時点でまるで人類が滅んでいる』ようなこの危機的状況はおかしくないでしょうか」

 

 確かにそうだ。この時代で人類が滅んでいるのなら今生きている私達は何だというのだろうか。

 実は冬木だけに限った話……なんてことではきっとないだろう。もしそうだったとすれば外部の人間の姿を一度でも目撃しているはずであった。

 

「……頭が痛くなる話だ。『2004年に人類が滅んでいない』からこそ、君達の時代まで少なくとも人類は生きている事が証明されているというのに、これでは矛盾だらけだ」

 

 哲学的な問題へと発展しそうになっているが、考えなければ考えずに行動してしまった時に後悔してしまう。つまり、何が言えればいいと言うんだこの問題は?

 

『――まさか、特異点Fが未来の消失の直接的な原因ではない、とか?』

 

「もっと前の時代の問題……ということ? でもそんなの観測されて―――」

 

「遡るべき歴史の範囲が狭かったんじゃね……それこそ中世とか古代とかそんな昔に原因があるかもしれないな?」

 

 シルバの言葉に全員が絶句する。幾らなんでもそこから滅びの原因が発生するなんてあるわけが――と、見せかけて実はガチで遠い過去に原因があるというパターンか。

 その通りなら、帰還を果たしても待っているのは遥かな旅路かもしれない。本当の地獄はこれからだというやつだ。

 

『この件については至急解析を進めてみましょう……それでいいですね所長?』

 

「ええ、お願いするわ」

 

 当たって欲しくない懸念が生まれてしまったが、こういう時に予感は当たってしまうものだ。今のうちに覚悟をしていたほうが多少は楽になる。気が実に重たいがなんとやらだ。

 

「――話を元に戻そう、今度はセイバーの方だ。何故暴走を始めたかについては、はっきり言って大空洞に行って確かめなければわからない」

 

 こればっかりは情報が少ない為か言えることはないに等しい。突然暴走したというのなら外部からの働きがあったと思うのが順当な考えだと思われるが。

 何か冬木市内の拾ってはいけないものをセイバーが確保してしまったという線もあるが、確率的な問題が生じてないと思われる。というか、冬木に大体そんなものがホイホイ転がっているわけがないよね……。

 アーチャー、どうしたの。冬木なら転がっていてもおかしくはない? ポットが聖杯だったり聖杯戦争がクイズ番組形式だったりした謎記憶がある? ……ちょっと病院行ってお薬もらってこようね。

 

「第三者の介入はあり得るだろうな……気をつけるべきは、そいつが現実に居たとすればこの冬木の異常の影響を受けずに動いているかもしれんということだ。サーヴァントに干渉できる技術を持っていることが想定されるぞ」

 

「藤丸並かそれ以上の戦闘力は持っていると見ていいかしらね」

 

 私基準で敵の戦闘力測らないでいただきたい。今度言ったら慰謝料請求しますから。

 

「そんで、嬢ちゃん達の拠点を爆破した奴のことだが……そっちは見当はついてんのか?」

 

 キャスターが杖を肩の上に乗せて口笛を吹いてくる。

 んーまあね、冬木の方と違って確実に『いる』し見当自体は既に付いているよ。

 ただし、裏付ける証拠がない(・・)のだ。動機も不十分(・・・)

 それどころか行動に説明がつかないせいで、本当に犯人なのかと疑ってしまうところもある。何かしっくりこないというか引っかかるところが山ほどあるのだ。

 

「……誰なのよ」

 

「誰なんですか、先輩っ!」

 

「それは―――」

 

 喉から出掛かった名前を言うべきか否かの葛藤が生まれる。

 言えば最後、皆はその人物を二度と信じることが出来なくなるだろう。たとえ間違えであっても関係は二度と戻らない。

 言わなければどうか……勘違いならそれでいいがもしも予想通りだったのなら、残るのは知っていたのにどうして言わなかったという後悔と周りからの叱責だ。

 

 

 どちらを取るか迷うも決めるのは私自身―――一頻り熟考した末に私は返答を口にした。

 




ある意味序章のシナリオもう崩壊してる(今更

次回、いざ決戦の地へ。ヘラクレス、スタンバイ!(やめて

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