なので、術クッキーをかき集めて現在スキル9/9/9状態です(QP足りない
ボックスガチャイベントお願いだから来てくれー(白目
では、内容としてあまり進んでいませんがどうぞ。
必要な分の食料を手に入れ、やけくそ気味に野宿を強行することになった私達のところへ飛び込んできたジャンヌ・ダルク確保の一報はある意味で度肝を抜かれた知らせであった。
……というのも、行き着く先でほぼ後手に回るのを覚悟していただけに、騒動の中心にいる人物の出現はもう何度か戦闘を挟んだ後になるかと予想していたのだ。一度や二度は入れ違うことぐらいも勿論予め計算のうちに入れていたりしていた。
しかし、それを裏切る形でエミヤがジャンヌを拘束してしまったので大きく軌道修正を余儀無くされる。まあ、事態が好転して動いているなら別に構わないのであるが、そうは問屋が卸さないのがいつもの流れだ。
そんなわけで、悪い方のジャンヌちゃんが神話生物に嫌気をさして逃げ出してきたのか、はたまたは良い方のジャンヌちゃんが正義感たっぷりで出てこようとしたのか考えながら、反応のある茂みに入り込み暗闇の中に輝いているであろう光を探る。
程なくしてパチパチと火花が散る音が聞こえたのを感じ取るとその音がする方向へ歩き、背後に皆を待機させた上でわざとらしく草木を揺らした。
「……誰だ?」
「――ある時は海賊、ある時はアイドルをプロデュースする、精神力を弾丸に変えて撃ち出す孤独なアウトローさ」
「コブラじゃねーか!」
「……何だマスターか」
はい、ここまでテンプレです。
二人の元気な様子を見るに、拘束されたのは実はエミヤ達側だったというオチはなかったようだと私は安心した。もし仮に最悪そうであったとすれば、今頃は森林が伐採&燃焼祭りだったに違いない。主にノッブの敦盛ビートやら何やらで。
「燃え尽きるほど本能寺ィ!」
「いや、自分から燃えていかんでいいから」
「むぅ、立て続けに分身でもして沖田の名でも叫んで蹴りをキメてやろうと思ったのにのぉ……」
何処のバーニングなダディやねん。つーか、演出的に沖田さん死んでるじゃねーか!
……それはさておき、見慣れない大きな旗を携えた女性がその辺の岩の上に座り込んでいるのが見えるが、彼女がもしかしなくても噂のジャンヌか?
視線をこちらが向けたのを機に彼女は瞑想でもしていたのを解いて立ち上がると、火に照らされた装いと顔が私達の瞳に焼き付いた。……直後、私限定でデジャヴが襲い、気がつけば反射的にある人物の名前が口から飛び出す。
「……レティシア?」
「え?」
「先輩、その名前は確か――」
何という事か、ジャンヌの顔はつい昨日話題に出たばかりの知り合いであるレティシアの顔と瓜二つであったのだ。
同一人物かと見間違うぐらいのそっくり具合いに驚くも、時代が離れているのでまずそれは有り得ないと理解した。
……だったらあれか、レティシアの方がジャンヌに似ているということで実は血縁者だったり生まれ変わりだったりするのだろうか。
気になって仕方がないが困惑しているご様子なので放置するわけにもいかずとりあえず取り繕う。
「いや、知り合いにかなり似ていたもんで……」
「そう、なんですか……私にも何処と無く、聞き覚えのある名前のような気がしますが……上手く言い表せないようです」
「……あれれ、ボクにも記憶があるようなないような気がしてきたぞ~?」
むむむ、全くの無関係ってことではなさそうだがそれを追求するのに時間をかけている暇は今はないな。アストルフォもおまけとばかりに関係有るような雰囲気だしややこしい感じがプンプンする。
……んで、エミヤが特に警戒もせずにせっせと食事の準備に取り掛かっている余裕を見せているということは、このジャンヌは闇堕ちした方のジャンヌではないとみてノープロブレム?
「問題があるようなら君を招集したりはしない。それと、話を聞く限りでは彼女も手を拱いてるようだ」
「というと?」
「――実は私は……英霊、サーヴァントとして召喚されてはいますが、成り立て……つまりは死んで間もない駆け出しの状態にあるのです。必要な知識も最低限のみでルーラーのクラスとして在るのは自覚しているのですが―――」
「本来ルーラーとして、サーヴァントとして与えられるべき能力及び聖杯戦争に関する知識が大きく欠如しているそうだ。おまけにステータスも十全ではないという」
裁定者たるルーラーのみに与えられる権利である対サーヴァント用の令呪もない状態で、ただ自分の死後にほっぽり出されるようにして召喚されたと述べる彼女は、そんな状態にあるにも関わらずめげずに調査を続け真実の一端へと辿り着く。
それこそがもう一人のジャンヌが存在するという矛盾であり、そのジャンヌが「竜の魔女」として各地を荒らし回っているという耐え難い現実だった。
そんなことを仕出かしてしまう闇を自らが抱えているのかと恐怖する彼女は、自分自身を信じられないと言って不安である胸の内を正直に明かした。
……対し、私はウンウンと考え込んでいる素振りを見せた上で自分なりのさっぱりとしたフォローを彼女に返す。
「いや、基本闇堕ちって外部的圧力によるモノだから、自分からやるとなると限度があるよ」
「あー、大体はそうだよな。弱いところを突かれていいように操られるみたいな」
「だから自分に対して怯えられる余裕がある時点で大丈夫だと思うよ? ……ま、だとしたら暴れてる方のジャンヌは結局なんだってことになるけれどね」
自分でも自覚していなかった知られざる暗黒面が意思を持って暴れてるなんて妄想を抱くより、現実的な推論を重ねたほうが何倍も賢明だ。まずは冷静になって自分を信じるところから始めようじゃないか、ジャンヌ。
「……その通りだな。何にせよ、一旦食事をしながら落ち着くとしよう。互いの紹介も含めて生真面目で細かい話はそれからだ」
「おう、そうしようぜ」
兄貴とアストルフォに調理中の見張りを任せ、私達は事前の宣言通りにドラゴンの肉の下ごしらえへと入る。何となくクセと臭味がありそうだから入念に処理して誤魔化さないとな……肉質は見かけより柔らかそうで味わい深そうである。
「えっ……これは何ですか」
「ん、これ? ――ミキプルーンの苗」
「懐かしいCMのネタは止せっ! ……先程彼女たちが退治したドラゴン、正確にはワイバーンと言った方が正しいか――の肉だ」
「――食べて大丈夫なんですか!?」
ごもっともな反応ありがとう。食べる興味が先行して肝心なことを見失いかけてたわ。……にしてシェフよ、今更だがこの厄介な敵の肉は食っても大丈夫そうなん? カルデアに大量に送りつけちゃったが。
「血肉に呪いが付与されているようなことはないので問題ないだろう。……流石に、ファフニールクラスのドラゴンの肉であれば迷わず捨てていたところだがな」
「中まで呪いたっぷりそうだもんなぁ……
「だろうな……ん?」
どうした、鱗は全部剥がしたぞ。煮るなり焼くなりしてくれていいんだぞ。出来れば日持ちしそうな一品も作ってくれるとありがたい。
「――ん、ああ、任された。他にご注文は?」
「儂、煮付けが食べたい!」
「……ドラゴンの煮付けとかいうパワーワード」
「それな」
間違いなくSNSに投稿したら話題になりそうな言葉である。でも、人理焼却されてるから世界中には発信できねえな。カルデアッターでも作って遊ぶか……ポロリもあるかもよ。
「……SNSで思い出した。デレステとか人理焼却してるんじゃ道理で起動できねーわ……黒幕絶対許さねぇ!」
「大体のアプリはそうだろうっていうか、まあそれは純粋にキレていいかもな。良かったな、また一つ殴る理由が増えたぞ」
「増えたところでプレイ出来なくてとても辛いんだが」
「だったら造詣深い英霊に協力してもらって一から作ればいいだろッ!」
「――その手があったか!」
ゆくゆくはコミケで同人ゲームとして売りに出すとかすればいいんじゃないかな。そうすれば貴重なカルデアの収入源にもなるだろうしね。
ドラゴン肉の味付けをするエミヤの横で、箸休めのちょっとしたおかずなどを食材パックや道中で見つけた木の実等の有り合わせで作ると、私は呆気にとられる表情ながらも興味津々に見ているジャンヌに味見にとその一部を差し入れる。
「簡単な和え物だけど食べる?」
「……いいのですか? それにサーヴァントは――」
「食事を必要としないだっけか? 元々人間なんだから別にいいじゃろんなもん」
どこぞの騎士王はどこぞの弓兵のところで魔力供給と称してたらふく食していたらしいし、食う食わないなんて些細な事だ。文句あるなら無理矢理口の中ぶち込むぞ。
「い、いえ、いただきますっ!」
「どうぞ、召し上がれ」
わざわざあーんしてあげて食べさせてやると、初めての和風テイストの味に不慣れな顔を浮かべつつも彼女は美味しいと満足気に答えてくれた。――ん、おかわりがほしいって? もしやお主も腹ペコキャラか! 逃げろエンゲル係数ゥ!
暫くして、メインディッシュの肉の方も上手に焼けましたーと主張するように火が通りそれぞれの器に配られる。調理中に匂いに釣られてよーわからんエネミーが出現したりもしたが、敵の手先というわけでもなかったので見張り要員だけで瞬殺余裕でしたとさ。
……さあて、和やかで話しやすいムードになったところで空気も読まずにシリアスタイムだ。――何から話す? やっぱ闇ジャンヌの考察から行っちゃうか?
「その事だが、既に出ている情報から向こうのジャンヌの正体について心当たりがある」
「あれま、早いな」
「……君だってよく考えれば行き着く答えさ。何せ一度話していることだからな」
一度話している……てことは、前に覚えた引っ掛かりはエミヤと会話した時のものだったか。
彼と闇堕ちに繋がるような話したことはええと……ああ、そういうことか!!
「思い出したようだな。あの時、この場にいなかったものに説明するとだ―――マスターは私が知る『騎士王』が変質した存在と戦ったことがあるんだ」
「おめえが知る『騎士王』と異なるって……ああ、成程ね。聖杯が絡んでいるとなれば大いに有り得る話か」
「どういうことなの?」
ピンとこない面々に噛み砕いて解説するとつまりは、聖杯の力によって英霊はその在り方を歪められたりされることもあるということだ。
例に出した騎士王も冬木で会った性格とは百八十度違うというし、好みも美食グルメ好きとジャンクフード好きに見事に分かたれていたらしい。
「冬木の聖杯は呪われていたこともあり、在り方を反転させるのも容易かった。その時は黒化、オルタ化と呼称していたな……今回の特異点にある聖杯が同じように呪われているかはわからんが、聖杯にはそのような力もあると理解していた方がいい」
「……整理するとですが、竜の魔女とは即ち――黒化したジャンヌさんである可能性が高いというわけですか」
「でなければ、もっと頭の良い方法で仕返しなり何なりしていたと思うよ。先の戦闘も含めて考えるに計画性はまるでないように感じてる」
「もっとも、生まれ故郷や面識ある人間に恨みを抱いていたのであれば辻褄は合ってしまうがな」
「そんな事私は――!!」
すかさず本人は否定しに掛かるが言われずとも考えていないことぐらいわかっている。だがしかし、その考えすらも逆さにしてしまえるのが聖杯の怖いところだ。万能なアイテムにはいつもつき物な話だな。
「この予想が当たっていたとして問題は、本人が願ってそうなったか第三者が願ったかだな。……深く考えるまでもなく後者であると思われるけど」
「では、接触したとしても聖杯は本人は所持していないかもしれないということですか」
「暴れるように仕向けたものが後方で大事そうに抱えているのが定石じゃろうな。んでもって、居るとするならば奴らの根城……」
「決戦にふさわしい舞台か」
その場所がどこかは特定できないが国内にあるのは確かだろうし、ドンレミやヴォークルールを襲うように使い魔に仕向けたのならそう遠くない範囲で構えているはずだ。
もしかしたらここから近いラ・シャリテに潜んでいたりすることもあったりする? ……それはねーよ、居たとしても手先になってるサーヴァントが門番代わりに構えている程度がいいところだ。ボスっていうのはもっと最深部に構えてないとな。
お誂え向きなのはオルレアンだが、シンプル過ぎてダミーなのではと警戒してしまう。
「そうじゃな、敵の大将は本陣でどどーんと構えとらんとな!」
「これでジャンヌが前に出てきたら、所詮は駒の一人として扱われているとする一考の余地がある。――何にせよ一度、OHANASHIしてみっか」
「何処か、違うニュアンスで聞こえるのですが……」
「気のせい気のせい」
相手が殺る気満々なのに普通の言語にて交渉を進める馬鹿はいないだろ。よって、肉体言語にて語るまでだ。王位後継者の魔法少女もよく言ってるし。
「もう一点気に留めておくべきなのは、黒化したとされるジャンヌ……言い辛いので『ジャンヌ・オルタ』と呼ぶが、彼女がサーヴァントとしての霊基を持っていて一体どのクラスに当てはまっているかだ」
「セオリー通りに考えればルーラーである可能性が一番高いですね。けど、それだと……」
「本来持つべきルーラーとしての能力をフルに使っていることだろう。はぐれのサーヴァントの分の令呪まで所持していたら迂闊に仲間にすることも出来やしないだろう」
「けど、仮に持ってたとしたら二人いるっていう竜殺しを強制的に呼び出してズガンッと殺っちゃわない?」
言われてみればそうだな……だが能力はあってもその発想に行き着いていないだけとも考えられる。いや、参謀的立場のように頭が回る存在が居ればまず思いつかない筈がないか。
「此処の状況は明らかになっていっても、敵さんの情報はまだまだだな」
「危険だけど直接相対しないことには始まらない。迂回してばかりの情報収集で簡単に敵の懐に潜り込めたら苦労はしないよ」
「余程手慣れたアサシンにしか出来ん所業じゃな」
この場にいる全員でスニーキングミッションとか無理な話なので、カチ当たったらその時はその時だ。
最善の判断が出来るかはあまり自信がないが、その時やれることを精一杯やるしかその先の道を開く手段はない。
話し込んでいる合間にも箸やスプーンを思い思いに動かし続けた私達は満腹感を得ると、次はラ・シャリテに向かう方針で意見を固めて今晩は身を休めることに落ち着いた。
「道に沿って行かずとも本陣に直接殴り込んで宝具ブッパ出来れば良いんじゃがのぉ……」
「本陣がわからない状態なのはこの際置いとくけど、フォードに全員乗り込んで特攻キメれば案外イケるかも」
但し、一発勝負なのでしくじれば最後なのが難点だ。それでも成し遂げたいのであればエクスカリバーでも数本持ってくるほかあるまい。もしくはこちらでトチ狂ってでもして邪神を召喚し特異点の発生の根源諸共拠点を押し潰すかだが後始末が大変だ。特異点消失させてもトラウマ残してどうすんじゃい。
「……正攻法が何事も一番ってわけだ」
「そうじゃな」
偉人とのピロートークを終え、寝心地が良いとは言えない寝袋で私は丸くなる。
***
翌日、朝餉前に野良の魔物に襲われた一同は朝の運動とさほど変わらぬと言いたげに敵という敵を吹き飛ばし、何事もなかったようにドラゴン肉のハンバーガーへと齧りついた。
その表情たるは無に満ちていて、加わっていた自身も僅かに引いたぐらいだ。確認してみれば全員が全員各自でそう思っていたようで、新参者のジャンヌさんはとても怖がっておりました。
「モノを食べる時は、誰にも邪魔されず救われてなきゃあダメだからね、仕方ないね」
「うん、仕方ない!」
これこれ、アストルフォよ。ほっぺにソース付いとるで。拭いてやるからじっとしとき。……うん、取れたで。
「――何イチャイチャしてるんですか!」
「あれれ~、ヤキモチィ?」
「違いますよ!」
こらこら、煽るんじゃない。ジャンヌもなに永遠の因縁みたく睨み合ってんのさ。……記憶に無いけど魂がそう告げてる? またしても平行世界で何かあった関係か……こりゃ、二人の間にいた人間の気苦労が窺い知れないぜ。
でも、アストルフォって男だから女性であるジャンヌと誰を取り合っていたんでしょうかね。男でも女でも片方が同性愛になってしまうぞ。私はどんな形であれ否定はしないが。
「えっ、男なんですかこの人!?」
「……そこからかよっ!?」
「そこはルーラーとしてのスキルで読めないの……ってああ、どのみち上手く使えないし読めたところであんな状態だから無理があるかぁ」
あんな状態というのは、ステータスが奇妙なことに乙女チックで落書きだらけなのである。本人の意志によるものなのか性別も書き殴ったように潰されており、初見さんは外見でしか判断しようがない始末だ。
なのにどうして私は男だと見破ったかって……それはアレだよ、デュランダル関連の逸話云々と女の勘って奴だ。それと、こんな可愛い子が女の子のはずがないだろうっていう例のアレもあったりする。
「よくわかりませんが、何をどうしたら彼と因縁の関係になるようなことになるのでしょう……」
「聖杯戦争もしくは聖杯大戦」
「それ以外に思いつくもんがねーよなぁ?」
多分、ジャンヌがルーラーとして呼ばれた上に争い合ってる陣営の一人にアストルフォが居た世界があったんでしょうね。
そうなると、予備システム関連で冬木の聖杯に何かあったことが読み取れるが、そこに追加でレティシアが関係していたのではと私は昨日邂逅した時の反応から推察する。
……うむ、全然展開が読めんぞ。誰か一から何まで語れる記憶を所持した英霊を連れてきてくれ。もしくは冒頭だけでもいいからさ。――あ、すぐに出られるとこちらとしても余裕が無いので間を置いて頼むわ(注文多い)。
「別の聖杯戦争……帝都聖杯戦争のことなら語れるんじゃが儂」
「そういうのは参加者もう一人現れてから語ろうね」
「……えー、沖田早く来んかー!」
「沖田さん以外という発想はないのですね」
「うむ、ない!」
「即答ッ!?」
そんなノリで食事を済ませた私達は、ジャンヌに配慮した人目につかないルートで進行を模索し入り組む道を切り開くと、近場の町を上から眺めることの出来る位置を陣取った。
……そして、進行方向を確認している最中に気づいてしまう。目指しているラ・シャリテでドンレミとヴォークルールと同様の悲劇が繰り返されていることを。被害状況の詳細まではわからなかったがそんなのは黒煙が空に向かっている時点でお察しであった。
すぐさまカルデアに回線を繋ぎ、生命反応及びエネミーの反応がないかの確認を要請するが、帰ってきたのは絶望的な現実だった。
『駄目だ、残っている生命反応も無ければ外に逃げようとする反応もない! 在るのは――』
『ドラゴン……いえ、ワイバーンと落とし子って奴らの混成部隊よ!!』
「……よりにもよってか!」
想定していたよりも早くその編成が出てしまったという焦りを覚えながら、私は急行して排除すべきかの判断に一瞬迷った。
既に救うべき相手のいないところへ駆けつけたところで感じるのは虚無感だけ……わかっているさ、そんなこと。けれど、だからといって見過ごしたら、素直に持ち場に帰ってくれるはずもなく、次の標的に向けて侵攻を開始するだろう。
一度通った道が跡形もなく消えているのは御免だと、私は我先にと道を滑るように下る。
「先輩ッ!」
「策はあんのか、嬢ちゃん!!」
「まともに走ったところで結果は変わらないッ! 人が居ないってなら逆に好都合……アレを使うまでだッ!!」
比較的平地なところに降り立ったところで私はバッグより手のひらサイズのある物を取り出して、躊躇することなく付いていたボタンを押し込む。
飛ぶように距離を取った後、光と共に電撃のような閃光が撒き散らされるとそれらが失せた後に一台の車が出現していた。……そう、フォードである。
「何ですかこれは!?」
「未来のフルスロットルマシンさ! ひとっ走り付き合えよ!」
「――説明になってませんよっ!?」
いいから乗り込めと誘導し、私は運転席に座りノッブを助手席に座らせ、後は後ろの荷台に乗り込んでもらう。
……一応、後部座席に空きスペースあるけど、そこに収まっちゃったら攻撃も防御も出来なくなるから我慢してね。思えば飛び道具要員少なすぎワロタ。
「で、どうするの?」
「爆走しながら減らせる敵は撃ち落として、襲ってきたらマシュの盾で強行突破する。残りはサーチ・アンド・デストロイだ!」
「――よっしゃ、ノッたぜその頭の悪い作戦!」
「世紀末的BGMでも鳴らしてアゲていくぞォ!」
「……しっかり掴まってなァ! ヒャッハー!!」
「何なんですかもう!?」
聖女の悲鳴を無視して急発進したフォードは、けたたましいエンジン音をかき鳴らして草原を進み、音に気づいて接近してきた敵の群れに恐れもせずに突っ込んでいった。
***
同時刻……別行動をしているエミヤ達とはまた異なる二人組がラ・シャリテの異常に気づいて行動をしようと茂みの中で佇んでいた。
一人は高貴で輝かしい雰囲気を体から発する女性で、もう一人は芸術を体現しているかのような男性であった。……二人は、スローペースでありつつも広い草原に姿を現すと、目的地を見てふと声を漏らした。
「酷いものだね……死の旋律がそこら中に満ちているようだ」
「命の輝きも失われてしまっているみたい……まるで痩せてしまった大地のようだわ」
「そうだね……でも、不協和音だらけの公演にクレームを付ける勇気ある客もまだ居るようだね」
男が手に持った長細い棒で指し示した先には、ちょうどラ・シャリテに向けて吶喊を仕掛けている集団がおり、彼等が生きた時代よりも進化した乗り物で距離を驚くべき速さで詰めていた。
「まあ、凄く早いのに乗り心地が良さそうね!」
「うん。そして心なしか高ぶるような魂のメロディも感じられる……ようやく君のように輝く星々が集まる時が来たようだ」
「――それじゃあ、華麗に綺麗に大胆に登場する準備をしましょう! ただ遅れてやってくるのでは楽しくないもの!」
少女の夢が形となった彼女は一挙一動が美しく思えるステップで足取りを進めていく。その様子を見て男は彼女らしいと微笑み、正しい判断だと自分だけにしか聞こえない声で話した。
「クレームを受けてハイそうですかと引き下がる運営もいない……その時が君の特別なステージの幕開けだよ」
「……あら、何か言ったかしら?」
「ううん、何でもないよ。僕は君がやりたいようにするのを応援するだけさ……」
最初の決戦の地になろうとしているラ・シャリテの地にて……今、運命によって導かれた様々な因果が重なり合う。
食用の神話生物で作ったラーメン食べたい(楽しむことを諦めなさそうな顔で
はい、そんなわけでプリキュアとその妖精っぽい人たちが動き始めてますね(実際は音楽とかで戦ったりするのでシンフォギアっぽいのですけど
そして次回はついに、ジャンヌ・オルタ出現!?
主人公、まさかの行動に――
次回もお楽しみに