翌日、イチカとマドカが教室に入り、イチカは昨日と同じように予習を始め、マドカはイチカの隣で勉強を教える。そんな光景を見ていた生徒達は兄妹仲が良いなぁと見ていた。そしてチャイムが鳴り、それぞれ席へと戻るとエリシアが教室へと入ってきた。
「はい皆さん、おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」
全員初日の頃とは違い、肩の力が抜けエリシアの挨拶に元気よく返すと、エリシアは笑顔になる。
「いい返事ですね。ではSHRを始め「失礼する」……織斑先生、今SHR中なんですが」
突然織斑が入ってきたことにエリシアは嫌悪感たっぷりの顔を織斑に向ける。
「イチカ・メルダースを1組に入れるためここに来た」
「はい? 何をいきなり言い出すんですか貴女は?」
織斑の突然の言葉にエリシアは呆れた顔を出す。勿論イチカとマドカも同様に。
「貴女では彼の世話は難しいと思ったから、提案したんです」
「別に結構です。私は自分が持ったクラスの生徒には親身に接して育てるというモットーがあるんです。それを突然横から奪うようなことはしないでいただきたいですね」
エリシアはそう言い、織斑を睨む。織斑もエリシアを睨んでいると、織斑が入ってきた扉から初老の女性が入ってきた。
「織斑先生、一体何をしているんですか?」
「……が、学園長」
学園長と呼ばれた女性に織斑は体は向けるが視線を合わせようとしなかった。
「山田先生から突然4組のメルダース君を迎えに行くと言って出て行った、と報告を受け見に来たら一体何をしているんですか?」
そう言われ、織斑は肩をビクッと跳ね上げ視線を更に明後日の方向へ向ける。
「……このまま此処で問いただしてもエリシア先生にも生徒達にも迷惑が掛かるので続きは学園長室で行います。織斑先生、付いてくるように」
そう言われ織斑は悔しそうな顔を浮かべながら出て行く。学園長もクラスにお騒がせしましたね、と言って頭を下げて出て行った。
「ふぅ~、五月蠅い人も出て行った様だからSHRの続きをしますよ」
そう言い、エリシアはSHRを続けた。クラスにいた生徒達はある意味織斑千冬より凄い先生だと思ってしまった。
放課後となり、イチカはマドカと共にアリーナへと向かうと丁度使用していた生徒達が出てきた。
「お、終わったみたいだな。マドカ行こうか?」
「うん」
そしてイチカとマドカはアリーナへと入り、イチカは自身のISを展開する。
「それが兄さんのISの……」
「俺が乗っていたバルキリーをコンセプトに束さんが造りあげた機体、VF-31A2 ファルコって言う名前らしい」
イチカは自身が乗っていたバルキリーのバトロイド形態をコンセプトに創り上げられたISに、バルキリーに乗っていた時と同じ感覚が舞い込む。
「初めて乗ったはずなんだが、なんだかよく乗っていたっていう感覚があるな」
「え? う~ん、本来はそんな感覚は無いはずなんだけど、何でだろう?」
イチカとマドカは頭を必死に捻るが答えは出ず、まぁいいかと結論付けIS操作の続きを始める。
「えっと、武装はと」
そう言いイチカはファルコの武装を確認するためディスプレイを投影する。其処には両腕にビームバルカン、そしてマイクロミサイル、背中にビームガンポッド、そして近接用のアサルトナイフと表示されていた。
「ほぼ俺のバルキリーと同じじゃん」
「やっぱり博士って、凄いね。」
イチカとマドカは束の技術力に驚きを通り越して、呆れた顔を浮かべた。
「えっと、それで単一仕様はどうなってるの?」
マドカは話題を変えようとファルコの単一仕様を聞くと、イチカはディスプレイをスクロールし下の方を見る。ディスプレイの下の項目にあったが、そこには
『単一仕様:女神達の歌
内容:特定の条件が満たされることで発動することが出来る。発動した場合、その条件によって効果はそれぞれ違う』
「何これ?」
「分からん、本来条件とか無いんだろ?」
イチカの問いにマドカはうん、と頷く。
「取り合えず、武装だけ先に確認するか」
そう言いイチカは準備しておいた的に両腕のバルカン、そしてビームガンボットを的に向け発射する。バルカンとガンボットは快調に発射され的を射抜く。
「次、マイクロミサイル」
そう言ってミサイルを複数の的にロックし、発射する。ミサイルも特に問題なく的に命中していった。
「次、アサルトナイフ」
イチカはアサルトナイフを取り出し近接用の案山子に向けナイフを振る。案山子はズバッと音を立てて切り捨てられた。
「さて、武装は問題ない。だがやっぱりワンオフが問題だよな」
そう言いイチカはワンオフを起動するが、ディスプレイが表示される。
『ERROR:条件が満たされていません』
「条件って何なんだよ」
そう言ってイチカはISを解除する。マドカはイチカの元に寄り、ミネラルウォーターを差し出す。
「はい、これ」
「サンキュー、マドカ」
そう言いイチカは水を飲む。閉館までまだ時間があるし、しばし休憩。とマドカに伝えイチカはスマホを取り出し、イヤホンを耳に装着し音楽を流す。その光景を見ていたマドカはイチカがどんな曲を聴いているのか気になりイチカの肩を叩く。イチカはイヤホンを片方外し用件を聞く。
「どうしたマドカ?」
「いや、兄さんはよく音楽を聴いているから、どんな曲を聴いているのか気になって」
そう言われ、イチカは外した方を戻し反対の方のイヤホンをマドカに差し出す。マドカはイヤホンを受け取り耳に装着する。
「いい曲だね」
「あぁ。俺の彼女が所属している音楽ユニットが出している曲だ」
イチカが今聞いているのはワルキューレが出している曲の一つ『いけないボーダーライン』だ。
「何だかこの曲を聴いていると、不思議と体の奥から力が湧いてくるみたいだ」
マドカの何気ない一言にイチカは、ある一つの可能性を閃く。イチカはファルコの待機形態であるドッグタグにコネクターを挿しスマホと繋げる。そしてさっきまで聴いていた曲を入れる。すると曲はERRORと表示されずに入り、他の曲を入れようとしたが、『ERROR』と表示されイチカは1曲までしか入らないのかと思い、コネクターを外す。
「ど、どうしたの兄さん?」
「いや、ちょっと試したいことが出来た。マドカ、的の準備をしてくれ」
イチカにそう言われマドカは疑問を持ちながらも的の準備をしに行く。そして準備が終わり、イチカはISを展開する。
「……頼む」
そう呟きイチカは単一仕様を発動すると、機体から歌が流れ始め、そして淡い緑色の光が漏れ出した。マドカは突然イチカの機体から光が出てきたのと、歌が聞こえてきたことに驚く。
「行くぞ!」
そう言ってイチカは両腕のバルカンを出し、的を射抜いていく。そのスピードはさっきまでとは違い格段に速くなっていた。そして次にミサイルを発射するときもさっきまでとは違いロックオンするスピードが早く、発射するスピードも速くなっていた。
そして的をすべて倒し終えた頃には歌が止み、光も出ていなかった。
「す、凄い」
マドカはさっきまでとは違う動きをしたことに驚きが止まらなかった。そしてISを解除したイチカに駆け寄る。
「まさかあれが兄さんのISのワンオフの力なのか?」
「あぁ。しかもこの歌を入れてあの技が出たという事は、他の歌を入れるとこれとは違う力が出るのかもしれないな」
「!?」
イチカの言葉にマドカは驚く。マドカは、一つしかない能力だが、歌を入れ替えることでいろんな技を出すことが出来ると思ったからだ。
「凄いよ、兄さん! そんなワンオフ、私今まで聞いた事が無いよ!」
マドカは興奮気味でイチカに寄る。イチカは突然興奮した様子で近付くマドカに苦笑いになる。
今回発動した能力
発動後、数分の間攻撃速度が数倍上がる。
曲ごとに発動する能力はゲームの方から選んでいきます。
嫌、それは無理があるだろとかの批判は止めてくださいね。自分としてはこれがいいと思ったからこうしたので
次回予告
イチカがIS学園に入学して暫くした後、2組に転校生が入ってきた。その人物はイチカのよく知っている人物だった。そして昼休み、同じクラスにいる更識簪から相談を受け、一緒に食堂に行く。そこで信じられない事を聞かされる。
次回転校生登場~いや、知らないぞそんな話~