歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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1話

「民間軍事会社『エンシェントセキュリティー』社で戦闘機のパイロットをしてる、イチカ・メルダースだ。世界初の男性操縦者と言う事で、色々迷惑を掛けるかもしれないがよろしく頼む」

 

イチカがそう自己紹介をし席に着くと、拍手が起きた。イチカが今いるのはIS学園の1年4組のクラスだ。

 

「同じくエンシェントセキュリティー社でパイロットをしているマドカ・メルダースだ。名前の通り、イチカ・メルダースとは兄妹だ。兄共々よろしく頼む」

 

そう言いマドカの自己紹介を終えた。マドカの自己紹介を終えた後クラスの担任であるエリシア・長谷部がSHRを始めた。

 

「はい、ありがとうございます。では先ほどの自己紹介の通り、今年から世界初の男性操縦者が我がクラスに入っております。皆さん、女尊男卑なんてくだらない風潮で彼に喧嘩を売らないように。ではまずクラス代表を選ばないといけないので誰かやる人はいませんか?」

 

エリシアがそう言うと周りは一斉にイチカに目線を向けるが、イチカは立ち上がり拒否する。

 

「済まないが、俺とマドカは何時仕事の依頼があるか分からないから、学園側からそう言った役割にはならなくてもいいと許可を貰っているんだ」

 

そう言われ多くの生徒が残念と落ち込み、クラスの中にいる代表候補生が代表という事でいいかとエリシアはクラスに聞くと、全員賛成と手をあげた。そしてクラスの中で唯一の日本代表候補生の更識簪が選ばれた。本人は不服そうだったが全員から頼まれ、仕方なく簪は引き受けた。

そしてSHRは終わり、エリシアは今日から授業が始まるため、遅れないようにと言い教室から出て行く。イチカは参考書(束作)を机から取り出し勉強を始めようとした。ある程度理解はできるが、バルキリーと違いISは強化スーツを身に纏うと言った物の為、イチカには少し難しいなと思っているとき、マドカはイチカの横に移動し、横から勉強を覗く。

 

「……ふむ。難しいな」

 

「兄さんはずっとパイロットをしていたからそりゃあ難しいよね」

 

そう言いマドカはジー。とイチカの勉強を見ていた。イチカはマドカの行動が頼って欲しいと思ってジー、と覗いているんだろうなと思いある提案を出した。

 

「マドカ、悪いが勉強を教えてくれないか?」

 

「…! し、仕方がないな兄さん。私が分かるところまで勉強を見てあげる」

 

頬を赤く染めながら明後日の方に視線を向けながらそう言った。イチカはありがとうな。と言いマドカの頭を撫でてやると嬉しそうな顔を浮かべた。そして授業開始前までマドカに勉強を見てもらい、1限目の授業でイチカは問題なくついてこれたとのこと。

 

そして2限目の開始前の休み時間、イチカはマドカに教えてもらった所をもう一度復習しているとクラスの生徒達がイチカに話しかけてきた。

 

「えっと、今いいメルダース君?」

 

「ん? 別にいいが」

 

そう言うと生徒達は疑問に思っていた事を質問してきた。

 

「えっと、メルダース君達って民間軍事会社の社員なんだよね?」

 

「あぁ、そうだ。と言っても入ったのは2年くらい前なんだけどな」

 

「そうなんだぁ。あ、という事はISはどうするの?」

 

一人の生徒がそう聞くと周りにいた生徒達も確かにと思い始めた。イチカは世界初の男性操縦者の為、データ収集を行う必要がある為だ。

 

「ISはわざわざ会社が用意してくれたんだ。因みにマドカもISを持ってるぞ」

 

イチカがそう言うと生徒達はマドカにも視線を向けた。

 

「え! つまり兄妹共々会社から専用機を送られているって言う事? 凄~い!」

 

全員イチカ達の企業がペーパーカンパニーだと知らずに、自分も入りたいと言い出しているとイチカが釘をさす。

 

「いや、やめておいた方がいいと思うぞ。PMCは金を貰って仕事をする。それは人を殺す事だって含まれてるからな。だから酷い光景を見ることだってあるから、人生を棒に振りたくなかったらやめておいた方がいいぞ」

 

そう言われ、生徒達は確かにと思い始めた。PMCは警護、戦闘など軍事的サービスで経営している会社であるからだ。派遣される場所は色々あり、虐殺された子供の死体がある場所もあれば、人間の臓腑がまき散らされた戦場に送られることもある。更に作戦中に死亡した場合は、事故死として世間や親族に詳細を告げられずに墓地へと送られることもあるのだ。その為多くのPMCは軍人、特に特殊部隊などに所属していた精神が鍛えられた人物でなければきつい仕事なのである。

 

「そ、そうね。ごめんなさい、ちょっと考えが浅かったわ」

 

「……うん」

 

全員落ち込んでいたが、直ぐに明るくなり他の質問をイチカに投げたりした。

そして時刻は放課後となり、イチカとマドカは寮へと行こうとすると教室にスーツを着た女性が入ってきた。イチカはその姿を見て

 

(うわぁ、いるとは聞いていたが本当にいたのかよ)

 

と内心嫌悪感を出していた。

 

「マドカ、帰るぞ」

 

「うん」

 

イチカとマドカは寮へと帰ろうと教室の後ろの扉から出て行こうとすると、スーツの女性が止めた。

 

「待て、一夏!」

 

そう言ってイチカ達の元に寄ってきた。イチカは面倒くさいと思いつつその場で止まった。

 

「何か? 早く寮の部屋に帰って明日の予習をしたいんですが」

 

イチカがそう言うと女性は、言い方に違和感を覚えたような表情を浮かべるがすぐに振るい去りイチカの肩に手を置こうとする。

 

「今まで何処にいたんだ! ずっと心配していたんだぞ!」

 

そして肩に手を置こうとした瞬間、イチカはその手を払った。

 

「!?」

 

「誰と勘違いしているか知りませんが、止めてもらえませんか?」

 

そう言い、イチカはマドカを連れ帰ろうとする。

 

「ま、待て一夏!」

 

そう言い女性はイチカの腕を掴もうとするが、マドカがその手を払った。

 

「止めろ。さっきから兄さんの家族みたいに近付いて、兄さんの家族は私と父以外いないんだからそれ以上兄さんに近付くな」

 

そう言いマドカはイチカと女性の間に入る。

 

「邪魔をするな!」

 

そう言って女性はマドカを出席簿で叩こうとすると、振り下ろそうとした腕が掴まれた。

 

「私の生徒に何をしているんですか、織斑先生」

 

腕を掴んだのはエリシアだった。

 

「……邪魔しないでください。これは私と一夏の問題です」

 

「邪魔? 私は自分の生徒を守るため行動しているんです。それと彼は貴女の弟さんじゃないんですよ」

 

エリシアは織斑の腕を力強く握りしめ、離さまいとしていた。

 

「2人とも、もう帰っていいわよ。彼女は私が抑えておくから」

 

そう言われイチカとマドカは、エリシアに頭を下げてから寮へと向かった。

 

 

寮の部屋へと入った2人は大きく息を吐いた。

 

「全く、いるとは聞いていたがまさかストレートで来るとは思わなかったな」

 

「本当だね。それにしてもあそこまで暴力的だとは思わなかった」

 

「あれが、アイツの本性さ。自分の思い通りいかないとすぐに暴力を振るう。昔と全然変わっちゃいない」

 

イチカはカバンに入れていたミネラルウォーターを口にし、肩の力を抜きペンダントの写真を見る。

 

「そう言えば、そのペンダントって何時も身に付けているけどそんなに大切なモノなの?」

 

マドカはイチカが何時も身に付けているペンダントに気になりそう聞くと、イチカはペンダントに入っている写真をマドカに見せた。

 

「あぁ。これは前、お前に言った俺の彼女と一緒に撮った写真が入っているんだ」

 

「へぇ~、綺麗な女性だね」

 

マドカは素直にそう思い褒める。そして夕飯を食べ、風呂に入り、布団に入って初日を終了した。




次回予告
朝SHRをしようとした4組に織斑が入ってきて、イチカを1組に入れると言い出した。そんな我儘が通るはずもなく織斑は出て行かされた。そして放課後、自身のISを確認したい為、マドカと共にアリーナへと向かう。そこでイチカは自身のISが他とは違う単一機能だと知る。
次回VF-31A2 ファルコ始動!~こんなワンオフ聞いたことが無いよ!~

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