偽りの白騎士を墜としたイチカはデルタが戦闘している宙域へと到着し、戦闘を続行していた。
「こちらデルタ2、合流した」
『デルタリーダー了解。よし、お前等このまま『~~~~♪』グッ!? な、なんだ!?』
突然耳障りな歌が、頭の中に直接に叩きつける様に聞こえイチカ達のみならず連合軍全体が不快感に陥っていた。
『こ、こちらウォーウルフ2! なんだ、この歌は!? 頭がぁ』
『せ、戦闘に集中できねぇ…』
『か、各機急いで退避を』
どの機体も戦闘が出来るような状態では無かった。すると一人のパイロットが敵の様子に変化がある事に気付く。
『こ、こちらヴァローナ3。て、敵の機体の様子が可笑しい。機体が、白く変化した?』
「白く、なった?」
イチカはドラケンの色が白くなったと聞くと、まさかと思うも頭に響く歌の不快感の所為でまともに機体を動かせなかった。
マクロスエリシオンに居たワルキューレ達にもその歌は届いており、皆不快感に襲われていた。
「うぅ~、何なのこの歌…」
「き、気持ちわるぃ」
「み、皆ぁし、しっかりぃ」
「うぅううう~」
皆気分が悪く跪いている中、美雲も不快感に襲われる中必死に立ちマイクを握りしめていた。
(此処で歌うのを止めたら、皆が、イチカがやられてしまう。だから!)
そう思い美雲は大きく息を吸い込み、歌を歌った。
~僕らの戦場~
美雲は渾身の力を入れ口から歌を出す。戦場に立つ全ての兵士の為に、そして愛するイチカの為に。
美雲が必死に歌う姿にマキナやレイナ、そしてカナメやフレイアも足に力を入れる。
「こんな所で、諦めるもんですか!」
「ゴリゴリ頑張るかんねぇ!」
「負けない!」
「みんなの為、そして世界の為にも!」
そう言い美雲に続くように歌を歌い出した。その勢いは連合軍のパイロット達の頭に鳴り響く歌を撥ね退ける程に。
『歌が、さっきの不快な歌が聞こえなくなった』
『彼女達のお陰なのか?』
『……まさに戦場に立つ
連合軍がそれぞれ立ち直り始める中、エリシオンのレーダーに新たな反応が現れた。
『こちらエリシオン。F-3-4-2に新たな敵影確認! 恐らく月の待ち伏せ部隊だと思われます。至急迎撃を!』
『ッ!? クソ、仕方ない。こちらウォーウルフ1。デルタリーダー聞こえるか?』
『こちらデルタリーダー。なんだ?』
『敵は我々連合軍が抑える。デルタ部隊は要塞内部に突入し、ケリをつけて来てくれ!』
『流石に無茶じゃないのか?』
『無茶でも君達エース部隊に任せるほかないんだ。行ってくれ!』
ウォーウルフ1からの言葉にアラドは苦渋に満ちた顔を浮かべた後
『了解。デルタ各機、要塞内部に突入するぞ!』
そう叫ぶとイチカ達は要塞へと向かって飛行していく。
『健闘を祈る。……よし、各機。敵を殲滅するぞ!』
ウォーウルフ1に続くように戦闘機は敵に向かっていく。
連合軍に後押しされたデルタ部隊は、対空兵装が破壊された区画から各機散開して侵入し破壊活動を行い始めた。イチカもあちこち格納庫などを破壊しつつ前進していると、広めの広間の様な場所へと出た。
「……後は此処を潰して一旦脱出を「やはり来たか、イチカ・メルダース」ッ!?」
突然上から声が聞こえイチカは素早くその場から退避し、ファイターからバトロイド形態に変形させた。
その視線の先には白と金の塗装が施され剣を携えたドラケンが其処に居た。
「指揮官機か。だが、さっきの声何処かで、それにアイツは俺を知っている?」
すると機体の通信ディスプレイに仮面をかぶった人物が現れた。
『ふっ。どうやら困惑しているようだな』
「てめぇは一体誰だ! 何で俺の事を知っている!」
『知っているさ。貴様や、貴様の仲間達にどれほどの煮え湯を飲まされた程か!』
ドラケンに乗っているであろう仮面のパイロットがそう叫ぶと、イチカは漸く思い出したかのような顔つきになった。
「お前、まさか!?」
『そうだとも、私だ!』
高々に声を上げる男にイチカは睨むような目線を向ける。
「ロイド・ブレ―ムぅ‼」
イチカはそう叫び、ロイドが乗るドラケンに攻撃を開始した。
次回予告
イチカにとって自身の大切な女性を攫った男、ロイドにイチカは攻撃を繰り出す。
攻撃をする中、ロイドはある事を語り出した。それはあの事件の事だった。
次回
ロイドVSイチカ 前編~あの時、貴様が死んでさえいれば!~