歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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56話

『ウォーウルフ4、機体がもう駄目だ。イジェクトする!』

 

『了解。出来るだけデブリに身を隠しておけ。エリシオン、IS部隊にパイロット救出を頼む!』

 

『エリシオン了解。出来るだけ早く救助に向かわせます』

 

『要塞の対空兵装一部破壊成功! ミサイル、フレア共に残弾が乏しい。一旦補給に戻る』

 

『トロイ3了解!』

 

戦力が乏しい連合側とオグマ社との戦いは激しさを増していた。ドラケンに対し何機かで対応して墜としたり、仲間と一瞬離れた戦闘機がドラケンに墜とされたりした。

そんな中デブリの中を2機の機体が目にも止まらない速さで戦っていた。

 

「逃がすかぁ!」

 

白騎士の機体を追いかけるイチカは敵の行く手を遮る様にミサイルを放つ。ミサイルは白騎士の前にあるデブリに命中すると多くの破片が飛び散った。

白騎士はそれを避ける様に上昇するとイチカはその後を追った。

 

「これじゃあ埒が明かない!」

 

暫し白騎士を追いかけていたイチカは全く仕留められない事に苛立ちを募らせるも、絶対に操縦に支障をきたしてはいけないと自制を保ちつつ操縦桿を握りしめる。

既にどれ程の時間ドッグファイトをしていたのかは分からない中、イチカと白騎士はミサイルやバルカンを撃ち合っていた。

 

するとイチカは白騎士を追いかけている最中ある物を見つけた。

 

「あれは、連合軍の機体の残骸か?」

 

そう呟きながらその機体をよく見ると、機体翼には大型ミサイルが付いていた。

 

「AGM-84 SLAM。対要塞用に持ち込んでいたのか」

 

戦闘機の残骸に残されていたのはAGM-84 SLAMと呼ばれる大型空対地ミサイルの一つだった。主に大型施設や船舶に対して使用されるミサイルである。

 

「……使えるな」

 

イチカはその機体を見つめながら呟くと、白騎士に対し攻撃を更に強めた。

 

「そら、そっちだ!」

 

白騎士をミサイルが積まれた残骸の方に誘導するように攻撃していく。すると白騎士は残骸の方へと誘導されていく。そしてその近くを飛ぼうとしているのを確認したイチカはバルカンの照準を残骸へと向けた。

 

「上手く行ってくれよ!」

 

イチカはそう呟き引き金を引く。バルカンから放たれた弾は真っ直ぐ機体に命中し爆発した。近くを飛行していた白騎士はもろに爆発に巻き込まれた。

 

「よし、どうだ?」

 

爆発を見守っていると、炎から機体からバチバチと火花と黒煙を出しながら出てくる白騎士が現れた。

 

「やっぱり、()()か」

 

そう呟きイチカは白騎士のコックピットを見つめていた。

白騎士のコックピットには人は乗っていなかった。ただ丸い球体の様な物が載せられていた。

 

【あれは…?】

 

「さぁな、ただ言えるのは恐らく無人機だな。白騎士の動きを真似するように飛ばしていたんだろう」

 

【まったく、ふざけたものを。おい、イチカ。さっさとあれを墜とせ。あんなものが飛んでいるなど、全く持って不愉快極まりない】

 

「うるせぇ。お前に言われなくても墜とすわ!」

 

キースからの言葉に不愉快そうに顔を歪めながらイチカは止めと言わんばかりにミサイルをロックする。

 

「あばよ偽物。てめぇでは白騎士を完璧に真似る事なんて出来ないんだよ」

 

そう言いミサイルを放った。ミサイルは真っ直ぐ白騎士の機体に命中し爆発四散した。

 

「こちらデルタ2、ボギーダウン。繰り返す、ボギーダウン」

 

『こちらエリシオン、デルタ2お疲れ様です!』

 

『さすがだイチカ!』

 

『よくやったぞイチカ。一旦補給に戻るか?』

 

「いや、ミサイル、バルカン等は十分ある。このまま行くよ」

 

『了解、無理するなよ。デルタリーダーout!』

 

そう返事が返り、イチカは機体を反転させ要塞の方へと向け飛ぶ。

 

その頃要塞の司令部では各部から報告が次々と上がって慌てていた。特にさらに混乱の状況に墜とした情報が入る。それが白騎士の撃墜だった。

 

「さ、先ほど白騎士が撃墜されたと……ほ、報告が」

 

「う、嘘だろ。あれには莫大な資金と技術を積み込んだんだぞ! それにあれには無人ISで蓄積させた大量の戦闘データを入れた上に、ブロイド様が想定された仮想戦闘データも入っていたんだぞ!」

 

「そ、そんな事言われたって墜とされたんだぞ! ……も、もう駄目なのか? 世界を変えるのなんて無理だったのか?」

 

一人が絶望に満ちた表情で零すと、広がる様に同じように絶望的表情になって行く。すると

 

「落ち着け!」

 

「ッ! ……ブロイド様」

 

「たかが無人機一機墜とされたくらいで狼狽えるな! 全軍に伝えよ! 『星の歌』を使う! 星の歌の加護で奴らを殲滅せよ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

ブロイドと呼ばれた仮面の男の叱責に司令部のスタッフ達は気を持ち直し、各部署にブロイドが言った星の歌の準備をするよう連絡した。

 

その光景を見たブロイドは指揮官室から出て行こうとする。

 

「ブロイド様、何方へ?」

 

「懐かしい者が此処に来るかもしれん。出迎える準備だ」

 

そう言い出て行くと、ジェフはただ頭を下げ、いってらしゃいませ。と見送った。




偽白騎士とのドッグファイトがしょぼい感じになってしまい本当に御免なさい!
もう少し緊迫感のあるドッグファイトにしたかったけど、力量不足で無理でした!


次回予告
偽りの白騎士を倒したイチカ。デルタ部隊と合流すると同時に突然歌が鳴り響いた。敵が更に苛烈な攻撃をしてくる上に、連合側の誰もが不愉快な気分になっている中、ワルキューレの歌がそれを妨害する。
そして要塞攻略の為にイチカ達デルタ部隊が突入した。
次回
要塞攻略~久しぶりだな、イチカ・メルダース!~

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