大型輸送機の簡易甲板にドイツのシュヴァルツェハーゼ隊と、イタリアのアリーシャとエンシェントセキュリティー社の隊員2名がISを身に纏って居た。
「それじゃあ私達は月に向かうサネ」
「分かりました。では我々は金星の方角に」
そしてシュヴァルツェハーゼ隊のクラリッサは部下達と共に金星に、アリーシャは選抜したメンバーと共に月へと向かって飛び出した。
輸送機から飛び出したアリーシャ達は暫く細かいデブリなどが飛んでいる中、それらを避けつつ月へと向かって飛んでいた。
「ウルズ2、ウルズ3.聞こえるサネ?」
『こちらウルズ2、感度良好』
『ウルズ3、此方も聞こえている』
「それじゃあ、任務内容をもう一度確認するノサ。私達は月方向に敵の要塞があると思われるからその偵察サネ。万が一敵の要塞があれば、急ぎ情報を本隊に報告するサネ」
『敵の要塞は本当に月にあるんだろうか』
「さぁね。けど、戦争って言うのは有益な情報を先に入手した方が有利になるサネ。情報はどんな兵器よりも最強な兵器サネ」
『確かにそうだな。と、そろそろデブリを抜けるぞ』
ウルズ3がそう告げると、デブリが無くなろうとした先には月が見え始め、アリーシャたちは束が偵察用にと載せたステルス機能を発動、姿を消して接近した。
「こちらウルズリーダー、敵の姿及び要塞の影無しサネ」
『こちらウルズ2、此方も同じだ。敵の姿が無い』
『こっちもだ。やはり月はハズレだったようだな』
ウルズ2、3の言葉にアリーシャは偽情報かと思いその場から離脱しようと考えていると
『こちらウルズ2、先ほどの報告を訂正する。敵を発見した』
「っ! 敵の規模は?」
『見える範囲で6個編隊、数は30機かそれ以上だ。向こうはまだこちらに気付いていない』
『先制攻撃で叩くか?』
「いや、うちらは今装備が限られているノサ。下手に攻撃を仕掛けたところで、やられるのがオチサネ」
『確かにそうですね、では予定通り撤退します』
「そうさね、各機撤退するサネ」
そう言いアリーシャは大きな音が立たぬ様、気を付けてその場から離れた。
その頃クラリッサ達の方も金星に向け飛んでいた。ステルス機能を展開した状態で飛行し、もうすぐ到着出来る所まで来ていた。
「各自、もう間もなく予定ポイントだ。以後武器の使用は禁止する。敵に発見され攻撃を受けての反撃以外の攻撃は私の許可を待つように」
『『ヤヴォール!』』
クラリッサの指示に部下達は了承しそれぞれ散開し、情報収集の為のシステムを展開する。
クラリッサは宙域に漂うデブリに身を隠しつつ情報収集用のシステムで情報を収集するが特にこれといった情報は手に入らなかった。
「やはり、ガセか。となると月の方角にあるのか?」
クラリッサはそう零しながら情報を収集していると
『こちらシュヴァルツ3、敵の要塞と思われる物を発見! 位置情報を送ります』
「よくやった、シュヴァルツ3。すぐに撤退『て、敵に捕捉されました! 隊長逃げてブツッ……』シュヴァルツ3? シュヴァルツ3‼」
『こ、こちらシュヴァルツ2! シュヴァルツ3の撃墜を確認…』
部下の報告にクラリッサは奥歯を噛み締める。
「即刻撤退する!」
『ヤヴォール!』
指示を飛ばしたクラリッサは急ぎ撤退すべく離脱用のブースターを展開し急加速で戦域を離脱する。
「シュヴァルツ2何処だっ?」
『こちらシュヴァルツ2、隊長の後ろに付いています。っ!? 敵機接近!』
接近の知らせにクラリッサは背後に顔を向けると、ドラケン数機がスラスター全開で追いかけていた。その距離は着々と近付いていた。
「不味い、このままでは追い付かれる!」
クラリッサは急ぎ本隊に情報を送ろうにも此処からでは距離がある為無線が届かないのだ。すると突然シュヴァルツ2の機体が方向転換しドラケンの方に向かった。
「シュヴァルツ2、何を『隊長はその情報を本隊に届けてください! 私はこいつらを足止めします!』無茶だ、お前が本隊に『隊長はこの先必要なお方です! だから生きてください!』 ッ!」
部下からの叫びにクラリッサはギリッと歯を噛み締める。
『どうか、地球に居る皆を。そしてラウラ隊長の事をお願いします』
そう言い通信は切れ、シュヴァルツ2はドラケン達の前に立ちはだかり攻撃を開始した。
「……済まない」
クラリッサは涙が出るのを我慢し、ブースターを更に吹かし戦域を離脱するべく飛ばした。
次回予告
クラリッサが持ち帰った情報によって敵の要塞位置が特定され、イチカ達連合軍は全て終わらせるべく全戦力を投入して攻撃すべく準備していた。
そして攻撃開始時刻、イチカの元に束がやってきて預けていたISを渡された。
そしてついに最終決戦の火ぶたが切って落とされた。
次回
決戦前~まさかお前が居るなんてな、白騎士!~