マキナとレイナからメッサーの機体、VF-31Fを受け取ったイチカはコックピットに乗り込み自身の以前まで使っていたカイロスのデータ入力をしていた。
「よし、機動データとかは入力は終わったな。後は「おぉ~い、いっくん!」束さん?」
コックピットから声がした方に顔を向けると、タッタッタッと走りながら機体の近くに来る束。
「どうしたんですか?」
「うん、ちょっとIS貸してくれない?」
「ISですか、なんでまた?」
「まぁ、メンテナンスみたいなものだよ」
はぐらかすような言い方にイチカは首を傾げるも、構わないかと思い待機形態のドッグタグを外し束に渡す。
「うん確かに。それじゃあメンテナンスが終わったら返しに来るよ」
そう言って束はまた走って格納庫から出て行った。
「なんだったんだろ?」
そう思いながら、作業に戻るイチカ。
その頃ブリッジではスコールやアラド達が先の戦闘報告、そして作戦会議を開いていた。
「それでスコール司令、さっきの戦闘で保護したパイロット達の容体はどうなんだ?」
「皆医務室で拘束しているわ。勿論事情は説明してるから、反対とかされなかったわ」
「という事は…」
「えぇ、体内に薬物の反応が出たわ。完全に薬物の反応が無くなるまでは戦闘には参加させられないわ」
そう言いため息を吐くスコール。
「そうか。それで、アイツらが乗っていた機体から何かわかったのか?」
「その辺はそっちに任せてあるんだけど…」
そう言いスコールはマキナ達の方に顔を向ける。
「うん、整備班の人達と一緒にドラケンの機体全部のシステムとかハッキングしたりしたよ」
「これがハッキングして入手した情報」
そう言いレイナはディスプレイに入手した情報を映し出す。其処には機体の基本情報やパイロットの情報などが映し出された。
「これは役に立ちそうにないわね」
「だな。レイナ、他に役に立ちそうな情報は無かったのか?」
「あった。でも、罠の可能性がある」
そう言い、レイナがディスプレイに出したのは月付近を指し示す座標だった。
「ドラケンが何処から発進したのかを調べたら、此処を指した。けど実際に此処に要塞があるかどうかは分からない」
「偽装の可能性は?」
「十分あると思う。一応他の機体も調べたけどほとんどがこの月の位置を示していた」
「罠か、はたまた本当か」
うぅ~ん。と全員難しい顔を浮かべていると、突然モニターが現れた。
『だったらこの束さんに、お任せあれぇ‼』
「た、束。貴女、ブリッジに来るよう言われているのに、何で来ないのよ」
ジト目で睨むスコールに束は苦笑いを浮かべながら舌を出す
『めんご、めんご。実はいっくんのISの整備してて、今手が離せないんだぁ。で、さっき話してた事だけど、長距離強行偵察ができるISを送り込めばいいんだよ』
「偵察を? けど、パイロットはどうするの?」
「スコール司令、その任我々にお任せくださいませんか?」
そう名乗り出たのは、ドイツのシュヴァルツェ・ハーゼ隊のクラリッサだった。
「私と部下2名とで偵察に向かいます」
「……そうね、現状それしかないわね「待って下さい」どうしたの?」
「実は鹵獲した敵機の内、一機だけ別の座標を有しているのがあったんです。それで、その機体を調べたら隊長機だったんです」
「別の座標? それは何処?」
「金星の方角」
そう言ってレイナは画面を出すと、金星の付近にマークを付ける。
「……怪しいわね」
「あぁ、隊長機は他にあったのか?」
「ない。一機だけだった」
「そうなると、信用度が余り無いわね」
「だが見過ごす事も出来んだろう」
「……そうね。束、長距離偵察用の装備ってまだあるの?」
『あるよぉ!』
「それじゃあ、アリーシャさん。貴女と他2名を選抜してもらえる?」
「了解サネ」
笑顔で了承するアリーシャにスコールは頷き、アラド達を見渡す。
「一応我々は速度を落としつつ金星の方角に進路を向けておきましょう。月の可能性も否定できないし直ぐに方向転換できる様にね」
スコールの指示にそれぞれ頷いた。
次回予告
長距離強行偵察装備をISに積み込んだアリーシャとクラリッサは部下達と共に飛び立った。
はたしてどちらに敵の要塞があるのか。そして2人とその部下達は無事戻れるのか?
次回
強行偵察~情報はどんな兵器よりも最強な兵器サネ~