歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

56 / 67
49話

地球から飛び立ち飛行を続ける5機の輸送シャトルとエリシオン。

何処を見ても真っ暗な空間が広がっており、まるでちりばめられた宝石の様にきらきら光る星々しかなかった。

 

「見渡す限り何光年も先で光っている星々とデブリしかないな」

 

「だな。それより、訓練シミュレーターはもうやったのか?」

 

「あぁ、あれか。やったけど、地上と違ってどっちが上か分からなくなっちまうよ」

 

「確かに。おれもどっちが上だったか途中で迷っちまったよ」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるパイロット達。

彼等に言い渡されているのは1時間以上は宇宙に設定された訓練シミュレーターで訓練する事。地上での戦闘には経験は豊富でも宇宙での戦いとなれば彼らは初。その為少しでも戦闘に慣れる様にするべく束が用意したのだ。

 

「まだ慣れねぇけど、やらないと俺らがやられちまうからな」

 

「そうだな。そう言えば『全戦闘要員通達! 敵機接近を検知! 全員戦闘態勢!!』っ!? 早速実戦かよ!」

 

「だな! 急いで行くぞ!」

 

そう叫びパイロット達は急ぎ格納庫へと向かう。格納庫に到着したパイロット達は急ぎ宇宙用のパイロットスーツを着込み無重力状態の中、悪戦苦闘しつつコックピットに乗り込む。

 

『こちらエリシオン索敵レーダー担当のベス・マスカットです。敵の数は20機ほどです』

 

「了解した。各機聞いたな? 敵を掃討するぞ!」

 

『『『了解!』』』

 

機体に乗り込んだパイロット達は誘導員の指示の元機体を動かされ、簡易の甲板に載せられた。

 

『ヴァローナ隊、テイクオフ!』

 

『次、ノーラット隊出すぞ!』

 

そう叫びながら次々と飛行隊を射出した。無論エリシオンからもデルタ部隊のみならずアルファ部隊、ブラヴォー部隊も出された。

 

『こちらデルタリーダー。各機、ワルキューレ達を守りつつ敵を殲滅するぞ』

 

『『『『了解!/ウーラーサー!』』』』

 

アラドの指示に返事をしながらエリシオンから飛び立った。

編隊を組んだ世界中の戦闘機にイチカとマドカは若干圧倒された表情を浮かべつつも編隊に入る。

 

『各機、敵はα—3—9—4付近です。MAPとレーダーに注意しつつ戦闘を』

 

ベスの報告にパイロット達は警戒しつつ飛ぶ。そして

 

『敵機を視認!』

 

『各機散開! 敵を撃滅するぞ!』

 

無線から指示が飛ぶとパイロット達は散開しドラケンに向け攻撃を開始した。

 

『居るのは例のドラケンとか言う緑色の機体だけか』

 

『そうみたいだが、油断するな。エネルギー兵器を搭載しているらしいからな』

 

『敵にばかり集中するなよ! 岩とかデブリもあるんだ。ぶつかればただではすまんぞ!』

 

注意すべきことが無線から飛び交い、パイロット達は緊張しながらも操縦桿を握りしめる。

 

『此方ウォーウルフ2、敵の背後をとった!』

 

『ウォーウルフ2、無茶はするなよ!』

 

『ヴァローナ1、背後に敵機!』

 

『クソ、振り切れねぇ!』

 

『待ってろ、今行くぞ!』

 

連合軍の機体、そしてドラケンから放たれるミサイルがあちこちで飛び交っている中、エリシオンの甲板にワルキューレ達が現れた。

 

「それじゃあ皆、いくわよ!」

 

「了解!/うん」

 

「はいな!」

 

「えぇ」

 

カナメの号令に皆返事を返すと、歌い出した。

 

『いけないボーダーライン』

 

その歌が流れ始めると、ドラケン達に若干動きに変化が起こった。

 

『こちらウォーウルフ1、歌が流れ始めてから敵の動きが若干変化している』

 

『こちらノーラット1、此方もだ。攻撃を止め始めた戦闘機が居る』

 

そうしていると、攻撃を止め始めたドラケン達がちらほら見え始める。連合側は攻撃してくるのは重症者、もしくはオグマ社の人間かと考えていると

 

『こ、此方リオン2! 動きの速いドラケンが居る! 既に3,4が喰われた! ま、不味い……ぐわぁああぁ!』

 

『リオン2!? っ! 此方メイジ1、リオン隊をやったと思われる敵機を視認! は、速すぎる!? ブツッ…』

 

次々と何かに襲われている事に気付いた連合軍は直ぐにパニックとなった。

 

『おい、一体何が起きているんだ!』

 

『リオン隊とメイジ隊との交信が突然切れたぞ!』

 

『各機気を付けろ!』

 

そう無線が飛び交っている中、デルタ部隊も警戒を厳としていた。

 

「一体何が起きているんだ?」

 

『デルタリーダーから各機。気を付けろ、恐らくエース機が居るんだろ』

 

『エースって、それほどの腕の持ち主が居るって聞いてねぇぞ』

 

『向こうの戦力はどれ程あるのか分からないから仕方がない。だが、明らかに速すぎる』

 

ハヤテやミラージュ達も警戒心が跳ね上がっていると、チャックの機体に備えられているレドームに反応が出た。

 

『その速い機体がこっちに来てる! マドカ、お前の真上だ!』

 

チャックからの叫びにマドカ達は真上を見つつ回避行動に移ると、すれ違う様にものすごいスピードで過ぎ去る機体が見えた。

一瞬ではあったが、ハヤテやミラージュたち。そしてイチカはその機体に見覚えがあった。いや、あり過ぎた。

 

「おい、まさか今のって」

 

『あぁ、アイツの機体だ』

 

『なんで、アイツが』

 

イチカは鋭い視線をすれ違った機体に向ける。

 

「…白騎士!」

 

 




次回予告
突如イチカ達の前に現れた白騎士。対処しようとするも追い付けず、マドカは被弾。更にイチカの機体もダメージを受ける。敵は何とか撃退するも、イチカはマドカを守り切れなかったことに悔やむ。するとその傍に美雲、そしてマキナとレイナがやって来る。
次回
もがれた翼

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。