マスドライバーから無事打ち上げられた輸送機は宇宙へと飛び出しており、エンシェントセキュリティー社の別動隊が待っている宙域に向かっていた。
「おい、この辺なのか。エンシェントセキュリティー社の別動隊がいるっていう場所は?」
「確かだ。GPSはこの辺を指しているが。デブリ以外何もないぞ」
そう言いながら輸送機のパイロット達は周辺を見渡すが、特にシャトルらしきものは見えなかった。すると突如無線が入った。
『此方スコール・ミューゼル。トロイ各機、聞こえる?』
「此方トロイ1、感度良好。指定地点に到着しているが、何処に居る?」
『少し待ってちょうだい』
そう言われ通信が切られる。すると突如目の前に大型の船が現れた。
「うおっ!? どっから現れたんだよ!」
「いきなり目の前に現れやがった。まさか、光学迷彩か?」
「てか、まさかこの船エンシェントセキュリティー社所有とか言うんじゃないだろうな?」
「あの篠ノ之博士が居るPMCだぞ。可能性はあるな」
そう言いながら輸送機は船の横に並ぶよう停まる。
『御免なさいね。敵に我々の存在に気付かれるわけにはいかなかったから、船を隠していたのよ』
「そう言う事ですか」
『それじゃあ、パイロット達を各輸送機に備えられているミーティングルームに集合させて。作戦を伝えるから』
「了解です」
スコールからの指示を聞いたパイロットは、搭乗している戦闘機とISのパイロット達にミーティングルームに集合するよう指示した。
それから数分後
『此方トロイ1。全員集合しました』
『トロイ2も集合しました』
『3も完了です』
『4、あと一人…今来ました。大丈夫です』
『5、此方も集合しました』
そう言い各機のミーティングルームに備えられているカメラに全員が映っているのを確認したスコールは頷く。
彼女が今いるのは、マクロス・エリシオンに備えられている作戦指揮所だ。ケビンに頼まれ彼女が指揮をとる事となり、現場をいち早く確認するべくエリシオンに搭乗したのだ。
無論彼女だけではなく、IS部隊のオータムやナターシャ達もいた。
「では、私が本作戦を指揮することになったエンシェントセキュリティー社のスコール・ミューゼルよ。先に貴方方に言わなければならない事が幾つかあるけど、これだけは先に言っておくわ。今あなた達が見ている大型の船、此方は一切の他言を禁ずる。例え上の指示があったとしてもよ」
『それは、エンシェントセキュリティー社の戦力を隠すためにですか?』
「いいえ、話は色々絡まっているのよ。だから「スコール司令、別に話しても問題は無い」……いいの?」
「あぁ。だが、約束してほしい。俺達の事、そしてこの船の事を一切口外しない事を」
アラドは真剣な表情でそう伝えた。各輸送機のパイロット達はお互いの顔を見合ったりしていると
『アメリカは了承する。別に上に報告したところで信じてもらえるかどうか怪しいしな』
『……ロシアも了承する。正直言ってDr.篠ノ之でもその船を造れるとは、到底思えないし、今の我々でもこれは無理だろう』
アメリカ、そしてロシアが了承すると他の国のパイロット達も了承していき、アラドはありがとうと頭を下げる。
そしてアラドは自分達の事を話し始めた。異世界からきた事、そして敵は自分達の世界に居た何者かで、裏で糸を引いてるかもしれない事を。
それを聞いたパイロット達は神妙な顔を浮かべていた。
『それじゃあ、アラド少佐。今回の戦争、引き金を引いたと思われる人物は誰だとお考えなんだ?』
「一番有力なのは、“ロイド・ブレーム”と言う男だ。この男は自身が仕えていた王を暗殺し、国を掌握。永遠の命を得ようとして自身の計画を実行するも、それに反対する者達、そして俺達デルタ部隊がそれを阻止した。その時に奴が居た場所は爆発で炎に包まれた。だから死んでいるはずなんだ。だが」
『どう言う訳か、この世界にあんた達の世界の技術が現れた。そう言う訳か』
その通りだ。と返しアラド達デルタ部隊の面々、そして連合軍のパイロット達は難しい顔を浮かべる。
「…今此処で裏で誰が糸を引いているか考えるのは後にしましょう。それより束、貴女が発見した事を皆に話して」
「ん? あぁ、あれね。ほいほ~い」
返事を返しながら束はディスプレイを各機体に見える様送る。其処には何やら難しい図やら人体図などが映し出されていた。
『は、博士。これは一体?』
「説明するから、ちょい待ちなって。えぇ~、それじゃあ説明しまぁす。実は此方に居るデルタ部隊のメンバーの一人が、敵の通信を傍受して見つけてくれたものなんだぁ」
そう言い束は再生ボタンを押すと、人とは違う機械で作られた声の歌が流された。
「この歌、新型に乗っていたパイロット達に聞かされるように流されていて、何故流されていたのか調べたら面白いことが分かったよ」
そう言い束は曲の歌の部分を消して流す。
《敵を撃て。自分が乗っている機体以外は全部敵だ。真の平和の為に倒せ》
そう言葉が流れた。
「歌の中に暗示を隠していたんだ。普通に聞いても恐らく誰もこの言葉に従わない。けどあの時のパイロット達だけは違った。それは何故か。彼等の体内からある物質が見つかった。それが催眠薬の成分だった。で、何処で摂取したのか調べていたら、催眠から解放されたパイロットの一人が朧気だけど憶えていた。乗る前にオグマ社が用意したアップルパイとリンゴ風味のミネラルウォーターを口にしたと」
『まさか、その二つに催眠薬が?』
「いや、調べてみたけど検出されなかった。で、試しに二つを合わせて調べたら検出された」
『ふたつが合わさって催眠薬になるだと? 一体どうやって?』
「ある会社が麻薬を科学的に分離してゼラチン性のカプセルに混ぜ込み、ふたつ合わさって初めて麻薬となる物を開発したことがあったんだぁ。結局その会社の社員の内部告発で潰れたけどね。恐らくその技術を使ったんじゃないかな?」
『チッ。薬を使って奴隷にみたいにしたってことか』
『ふざけやがって』
パイロット達全員が怒りの顔を浮かべる中、束は説明を続ける。
「説明続けるよぉ。で、薬で催眠状態に陥ったパイロット達にこの歌を聞かせ攻撃を仕掛けた。けど、日本では何機かは正気を取り戻した。その方法が、歌だった」
『歌だと?』
「そう。有得ないと思っていたけど、有得たの。彼女たちの放つ歌は丁度、催眠の歌に干渉して無効化するみたい。無論絶対じゃない。症状が軽ければ治るけど、重いと時間がかかる。だから、この戦争中は歌を生で全体に流す」
『おいおい、まさか歌手を戦場に立たせるのか?』
『危険すぎるだろ。せめて録音して流せばいいじゃないか』
パイロット達がそう反論するも、束は首を横に振った。
「残念だけど、録音だと効果が半減するんだ。だから生じゃないといけない。問題無いよ、彼女達を守る守護者たちは居るから」
そう言い束はニッと笑みを浮かべデルタの方に向ける。
「……兎に角向こうの戦力を削れるかもしれない方法が有る以上、それを活用していかなければいけない。我々だけでも戦力的に乏しく、勝算は低い。けどやらなければいけない」
スコールの言葉に全員覚悟を決めた表情を浮かべる。
「では、これより敵要塞がある方向に向け進路をとる。全員覚悟を決めて行くわよ!」
「「『『マム・イエス・マム‼』』」」
そう言い敬礼するパイロット達。
そしてマクロス・エリシオンと輸送機は要塞に向け出発した。
次回予告
要塞がある方向に向け進路を取っていると、突如敵機が襲来。航空機を発進させ迎撃に打って出る。初の宇宙での戦いに慣れないパイロットが居る中、奮戦しあと少しで撃滅できると思った所、突如不明機が現れた。
次回