歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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ラストまで来たのでこのまま終わらせる勢いで書いて行きます。

誤字等に気を付けて書いておりますが、間違っていたら申し訳ありません


47話

NATOそしてエンシェントセキュリティー社の航空部隊の連合軍結成が決まった日から数日が経った。

あれから参加表明を決めた国から次々と選りすぐりのパイロット達がアメリカのフロリダ州へとやって来た。

マスドライバー施設は大きな施設ではあるが、数多くの戦闘機が並びその光景は普段は大きなレールしかなかった施設とは思えない程驚愕な景色だった。

 

「よぉ、お前等も参加していたのか」

 

「当たり前だ、俺達の国で好き勝手されたんだ。やられたらやり返さないと気が済まねぇんだよ」

 

「はっ、そいつは言えてるぜ。一体誰に喧嘩を売ったのか思い知らせないとな」

 

集ったパイロット達は皆やる気に満ち溢れていた。

其処に別々の国だからという差別的な物は無く、皆同じ志を抱いていた。

すると一人のパイロットが何かに気付き空に向かって目を凝らす。

 

「どうしたんだ?」

 

「あれ、なんか飛んできていないか?」

 

「えっ? 本当だ、なんだよあれ?」

 

彼等の目線の先には6つの黒い点が飛んでいた。それは近付くにつれハッキリと見えてきた。

 

「おい、あれってISじゃないのか?」

 

「なんだってISが此処に? 何処の連中だ?」

 

そう言っているとIS群は着陸し一番前に居た機体が解除され眼帯をした女性2人が降りた。

 

「ドイツ軍IS特殊部隊、シュヴァルツェ・ハーゼ隊隊長を務めているクラリッサ・ハルフォーフ大尉だ。連合軍指揮官はどちらだろうか?」

 

「イタリア代表のアリーシャ・ジェセスターフなノサ。イタリア政府からの依頼で今回の作戦に参加しに来たノサ」

 

「おいおい、ISはアラスカ条約で戦争行為は禁止「NATO事務総長からの直々の命令だ」IS委員会の連中が黙ってないだろ流石に」

 

「それも問題無いサネ。何か色々交渉して黙らせたって言ってたからノサ」

 

そう言われ何とも言え無くなるパイロット達。すると次々に他の国のIS達もやって来た。その数は20人まで増えた。

 

現場にISが来たという報告は現場指揮を任されているスコールの元にも届き、通信回線を開き彼女達の参加に感謝した。

そしてIS部隊の臨時編成も行われると、場内放送が響き渡った。

 

『通達する! これより篠ノ之博士が戦闘機に新たに付けられた装置の説明を行う。各自速やかに第4ハンガー集合せよ! なお、この説明以外に通達次項がある為ISパイロット達も参加するように!』

 

そう放送が流されぞろぞろとパイロット達はハンガー内へと入ると戦闘機が一機止められているのとその前に椅子が並べられており、それぞれ席へと付いて行く。

席に着き終えそれぞれ話し声が無くなると、彼等の前に束がやって来た。

 

「はぁ~い、それじゃあ今から君達がこれから乗ってもらう戦闘機の新たな装置を説明しまぁす! 後ろ聞こえてるぅ? 聞こえたら、手を振ってくれるぅ?」

 

そう言うと一番後ろの席のパイロット達は手を挙げ振った。

 

「おけおけ! それじゃあ説明しまぁす! 今回君達が乗って来てもらった戦闘機に取り付けた装置。それは今回の騒動の原因となっている機体、あれと同じような物です」

 

束の一言に皆がやがやと騒ぎ始め、困惑の表情を浮かべる。

騒がしくなっている中、束は大型の空間ディスプレイを映し出した

 

「はいはい、静にぃ! 実はオグマ社の機体にはISコアと同じもしくはそれ以上のパワーを有した擬似コアが存在している事が分かった。それで、束さんはこの擬似コアと同等の力を出せるものを作り、君達の戦闘機に組み込んだのだ」

 

ディスプレイに映し出された、フェニックスから取り出されたコアを見せながら説明する束に皆困惑から驚きの表情へと変わっていく。

 

「博士、それはつまり普通の戦闘機でもあいつ等を墜とせる。そう言う事ですか?」

 

「今回組み込んで出来たのは戦闘機の装甲面に特殊な電磁バリアみたいなのを張り気圧だとか気密性を上げ、宇宙でも戦えるようにした事と、化石燃料ではなく擬似コアからのエネルギーを使って飛べるようにした事、あとはミサイル、特殊兵装を多く持てる位しか出来ない。墜とせるかどうかは君達の腕次第だ」

 

「……本当に俺達の腕に掛かっているのか」

 

「そう言う事だよ。それと、電磁バリアは防御面にも優れているからある程度ならダメージを受けても暫くは飛び続けられるよ。けど、分かっていると思うけど絶対じゃないから」

 

そう言われパイロット達は緊張感が走る。

 

「戦闘機に関する説明は以上。質問は?」

 

「では、一つ。その電磁バリアはどの位張っていられるのですか?」

 

「機関砲位なら暫く大丈夫だけど、ミサイルとなったら2,3発が限界かな。それと向こうはレーザー兵器を持っているかもしれない。そうなったら一瞬でお陀仏だよ」

 

「れ、レーザー兵器!?」

 

「戦闘機に載せられるレーザー兵器よ。擬似コアがあるから出来る事か」

 

とんでもない兵器を向こうは持っている事に皆眉間にしわが寄る。

 

「他は? 無いようなら、次の説明に行くよ」

 

そう言い束は何処からか何かを着せたマネキンを出し皆に見える様空間ディスプレイにも投影した。パイロット達はパイロットスーツだと思ったが、通常のスーツとは違い布ではなくぴっちりとしたタイプのモノで胸の部分には小型のBOXが付けられ、ヘルメットは通常目の部分に遮光ガラスがスライドできるようになっており、マスクは取り外しが出来るようになっているはずだが、マネキンに被せられているのは顔の部分がオレンジの遮光ガラスだと思われるものが付いており、顎下からチューブが胸の部分のBOXに繋がっていた。

 

「此方は皆に着てもらう宇宙用のパイロットスーツです! 通常のモノとは違い若干重みはあるけど宇宙空間ならそれくらいは問題は無し! 酸素は戦闘機のコックピットに居る限りは常に循環して供給できるけど、万が一イジェクトして宇宙に放り出された場合約5時間は酸素は何とかなる。それ以上伸びた場合は死ぬ」

 

「…5時間ですか?」

 

「此処まで小型するのだけでも結構苦労したんだよ。これ以上大型になったら操縦などに支障きたす。まぁ宇宙に放り出されても一応胸のBOXにGPSを組み込んでいるから直ぐに救助を行うよ。救助はIS部隊に任せるから、頼んだよ」

 

そう言われIS部隊の面々は力強く頷く。

 

「因みにこのスーツはIS部隊にも万が一の備えと言う事で渡すから。それじゃあ質問とかある?」

 

束がそう質問するも、誰も手を挙げなかった。

 

「無しだね。それじゃあ説明は以上で終わり。各自シャトルに乗り込む様に!」

 

そう指示を出され、パイロット達は席を立ちシャトルの元に向かう。

 

「いよいよ宇宙か」

 

「あぁ、初めてだがやらねぇとな」

 

アメリカのパイロット2人がそう話し合っていると一人の青年が2人の元に駆け寄ってくる。

 

「中尉殿、少尉殿!」

 

「ん? おぉ、ジョー。どうして此処に?」

 

「はい、実は中尉殿達のお見送りに来ました!」

 

そう言い笑顔を浮かべながら敬礼するジョー事、ジョージ・ハンセン。最近彼らの部隊に入ったばかりの新人パイロットだった。

 

「はっ、見送りに来る位なら腕を少しでも上げろっての」

 

そう言い少尉の男性はジョーのおでこを人差し指と中指の2本で小突く。

 

「イテっ。す、すいません」

 

「おいおい、折角見送りに来てくれたんだ。それに他の連中も見送りに来ている奴らが来ているじゃないか」

 

「そうですね。ジョー、俺達が帰ってくるまでに少しでも腕を上げておけよ」

 

「はい!」

 

元気よく敬礼するジョーに二人は朗らかな笑みを浮かべる。

そして2人はシャトルの元に向かい乗り込んだ。

 

それぞれ席に着きパイロット達は発射まで待っていると艦内放送が流れ始めた。

 

『私はNATO事務総長のケビン・ネイマーです。この放送をお聞きの全ての人達にお伝えしたい。我々は過去何度ともなく争いを行い、傷つけ合って来ました。だがそれでも我々は苦しんでいる人々が居れば手を差し伸べ、そして支え合い平和を築いてきました。だが今その平和を壊そうとしている者の手によって多くの国で血が流れました。何処の国で血が流れようとも、その痛手は全世界の痛手なのです。しかし今我々の友人達がその者を止めるべく行動を始めています。国などの違いなど関係なく、彼らはただ未来ある明日の為にです』

 

ケビンの放送が世界中に放送されていた。彼が出来るのは此処まで。ならばせめて飛び立つ彼らに少しでも勇気をと思いこの放送が行われたのだ。

 

マスドライバーを操作する制御室では大勢の作業員が慌ただしく動いていた。

 

「パイロット及び戦闘機格納完了!」

 

「了解。エネルギー充填開始!」

 

そう言い作業員の一人がメーターを確認する。

 

「エネルギー、25%!」

 

「よし、何の問題も無くこのまま《ビー、ビー、ビー!!》っ! どうした!」

 

突然の警報に施設管理者の一人が声を荒げレーダー担当の作業員に問う。

 

「北東の方角からアンノウン急速接近! 数は10機!」

 

「くそ、航空隊発進! それと対空車両もだ! 何としてでもマスドライバーとシャトルを守り切るんだ!」

 

そう指示が飛ぶと、施設防衛の為に来ていたパイロット達は急ぎ戦闘機に乗り込み空に上がった。その内の一機にジョーもいた。

 

「絶対に守り切って見せる」

 

そう呟き編隊に入った。

 

『敵機を視認! 各機散開して攻撃開始!』

 

そう指示が飛ぶと、それぞれ散開し接近してくるフェニックス、そしてSu-27似の機体、SV-51に対し攻撃を開始した。彼等が乗っている機体も束が作成した擬似コアが組み込まれており、防御面と携行できるミサイルが多くなったことで何とか敵を対処出来ていた。だが、やはりフェニックスなど可変戦闘機の方に若干押される。

 

『対空施設等準備完了! 攻撃開始!』

 

その無線と共に施設内に急遽設置された対空機銃(AAGUN)地対空ミサイル(SAM)がフェニックス撃墜に手助けしているおかげで押し返し始めた。

 

『いいぞ、状況を押し返し始めて『新たな敵機が接近!』またか!』

 

『後どのくらいで終わるんだ!』

 

『今現在で85%。あと5分です!』

 

『了解! 各機、それまで持ち堪えるぞ!』

 

そう叫び各機はフェニックス等を撃墜すべく奮闘していると、ある一機が水面ギリギリを飛行していくSV-51を発見した。その翼には大型のミサイルが搭載されていた。

 

『こちらオメガ2! 不味い、敵の大型ミサイルを確認! 奴を止めろ!』

 

そう叫び、大型ミサイルを搭載している敵機を止めようと何機か向かうも、フェニックスがそれを阻止する。

そうこうしているうちに大型ミサイルが放たれ、真っ直ぐマスドライバーのレールに向かっていく。

 

『ミサイルが発射された!?』

 

『何としてでも止めろ!』

 

『無理だ、間に合わない!』

 

もはや此処まで。誰もがそう思っていた矢先

 

『うぉおおおおぉお!!!』

 

そう叫びながらミサイルの前に向かう機体があった。

 

『お、おいあの機体何をする気だ!?』

 

『ま、まさか。ジョー、止めろぉ!』

 

そう止める叫び声が響く中、F-16に乗ったジョーはスラスターを全快にしミサイルとの前に出た。

 

(中尉、少尉。後は、…頼みます)

 

そう思ったと同時にミサイルはジョーの機体にぶつかり爆発した。

 

『じ、ジョーーーー!!?』

 

『くぅう、アイツの死を無駄にするなぁ! 絶対に次は発射させるなぁ!』

 

空にいるパイロット達全員は彼の死を無駄にしないべく、攻撃を強めた。機銃で撃たれようが、ミサイルの攻撃を受け機動性が落ち様が戦い続けた。そして

 

『5…4…3…2…1…発進!』

 

その無線と共にシャトルは発進させられ、ぐんぐんとスピードは上がり打ち上げられた。

その間にも敵機を近づけまいと連合軍の戦闘機はフェニックスとドッグファイトを繰り広げていた。

そして全機が空に上げられるとフェニックス達は任務失敗と分かり何処かに飛んで行く。施設防衛に就いていた戦闘機はそれを追撃することなく、ただ打ち上がったシャトル群を見送った。

すると操作室から無線が入る。

 

『全員ご苦労だった。後は彼等次第だ。彼等に神のご加護があらん事を』

 

 




次回予告
宇宙へと上がった5機と合流するように、マクロスエリシオンが現れた。
そしてエリシオンの事を説明しつつ、作戦を説明。そして連合軍は目的の要塞へと向かった。

次回
航空宇宙連合軍~それじゃあ作戦を伝えるわ~

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