歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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46話

オグマ社の宣戦布告から3日目のある日。ブリュッセルにあるNATO本部の議事堂にて事務総長であるケビン・ネイマーが一番前の席に立ちながら、目の前に座っているNATO所属国から集まってもらった政府高官を見渡す。

 

「お集まりいただき感謝します。今回お集まりいただいたのは他でもありません、オグマ社の事です。かの会社は全世界に対し真の平和をもたらすと宣言をし、自分達の元に集うよう言いました。ですが、彼等が行おうとしているのは力による支配です。私はその様な暴挙は断じて認められません。ですのでNATO事務総長としてオグマ社の暴挙を止めるべく、私は皆さんのお力をどうかお貸し頂きたい」

 

ケビンは全体を見渡し言うが、各国の高官は難色の顔を示していた。

 

「ケビン事務総長、オグマ社の件は我々も何とかしたいと思っている。だが奴らが行った奇襲で軍の一部は損害が出ている。現状自分達の国の事で精一杯なんだ。それなのに、オグマ社を止めるなんて無理だ」

 

「我々もだ。今現在都市部での戦闘で多くの国民が被害を受けた。そんな中軍も大きく被害を受けた。むしろ我々の元に救援を回してもらいたいほどだ」

 

「むしろ今回の一件が起きる予想を何故アメリカは見抜けなかったんだ?」

 

「我々もまさかこのような計画を立てていたなんて、分かるわけが無いだろ! それにオグマ社社長、ジェフ・ドースはかなり頭がキレる男だ。我々の目を掻い潜ることくらい容易だったんだろう」

 

「事務総長、我々NATOだけで行うのですか?」

 

「いえ、私の知り合いが民間軍事会社を営んでおり、其処にも依頼を出しました。名はエンシェントセキュリティー社です」

 

「民間のですか……」

 

「民間の軍事会社では余りにも戦力的に著しいですな」

 

各国は自分達の国の事で手が一杯だと声を荒げる。その光景を見つめるケビンはやはり無理か。と、若干諦めかけていた。

 

(各国の力を借りなければ反抗はほぼ無理になる。特にアメリカにあるマスドライバーが無ければ……)

 

そう思いスコールになんと報告すればと暗い気持ちを抱いていると

 

「我がドイツは参加を表明する」

 

そう立ち上がり宣言したのはドイツの大統領だった。

 

「ドミニク大統領」

 

「エンシェントセキュリティー社には借りがあります。それに彼らが行おうとしている事には私も容認できません」

 

ドミニクはそう宣言すると、他の国からも我が国も出す。と声が上がる。

次々と参加表明が上がり、ケビンは同じ志を持った者達が居たことにホッとしていた。

そしてケビンはアメリカの大統領の方に顔を向ける

 

「……サイモン大統領、お願いがあります」

 

「何でしょう?」

 

「参加の無理強いはしません。その代わりにフロリダ州にあるマスドライバー施設をお借りしたい」

 

「マスドライバーを? ……理由をお聞かせいただいても?」

 

「此方で独自に調査したところ、彼らはもしかしたら宇宙に建造されている要塞から来ているのではと考えているのです」

 

ケビンの報告に各国はどよめきが走る。

 

「宇宙からだと? そんな報告何処からも「いえ、可能性はあります」 サイモン大統領?」

 

「……オグマ社の奇襲を受け、被害を受けた基地の応援に向かっていた航空部隊の一つが撮影した映像に空に上がって行く機影が見えた。だから少なからずそんな予想はしていた」

 

サイモン大統領の説明には各国は信じられないと言った表情を浮かべた。

 

「……マスドライバーの件は了承しましょう。施設にある物は何を使って貰っても構いません。ですが、それで宇宙に上がったところで兵器なんてあるんですか?」

 

「現在篠ノ之博士が彼らに対抗するための装置を開発しています。その為参加を表明された国にお願いするのは、選りすぐりの戦闘機のパイロットと戦闘機です」

 

篠ノ之博士が対抗する装置を発明している。その言葉にどよめきは強くなった。

対抗できる装置があるなら戦える。そう思ったのか参加表明をする国がさらに増えた。

皆が一丸となって戦おうとしている姿勢にケビンは力強く声を上げた。

 

「これより我々はNATO及びエンシェントセキュリティー社との統合軍を編成し、オグマ社の暴挙を阻止する!」

 

その宣誓に各国は力強く拍手を行った。




次回予告
統合軍編成が決定して数日後、フロリダのマスドライバー施設に参加表明した各国の航空パイロットが集っていた。
そして束主導の元行われていた擬似コアが組み込まれた戦闘機の説明が行われ、大型宇宙用輸送機に乗り込む。
だが其処にオグマ社のVF-0フェニックス、そしてSu-27似の機体『SV-51』が現れた。
次回
打ち上げ~何としてでも守り切れ‼~

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