歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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42話

~IS学園・避難施設~

避難施設に居たワルキューレ達はアラド達に頼まれ歌の準備をしていた。

 

「皆、準備はいい?」

 

「「「「ばっちオッケ~!/うん/ハイなぁ!/何時でも構わないわ」」」」

 

それぞれ何時でも良いと言うと、歌を歌い始めた。彼女達が歌い始めたのは『Absolute5』であった。

 

彼女達の歌は無線のみならず避難施設全体に聞こえる様されていた。その訳は歌はどんなに暗い気分でも明るくさせることが出来る不思議な効果があるからだ。

突然の襲撃に暗い気持ちになっている人々の為にワルキューレ達は施設の人々達にも聞こえる様にしたのだ。

 

彼女達の歌を聞いたIS学園の生徒達は、突然歌い出した彼女達に不思議に思っていたが次第に暗い気分が晴れて行き明るい気分になってくる。それは来賓として来ていた者達もだ。

 

『~~♪、~~♪』

 

無線から流れる彼女達の歌に戦場は一時的に混乱が生じた。

 

『おい、誰だ。自衛隊の無線に歌を流しているのは!』

 

『けど不思議と心が落ち着くし、やる気が満ちてきたぞ』

 

『だな。やるぞお前等!』

 

航空隊は突然の歌に動揺が一瞬起きるもすぐに立て直し、敵機撃墜の為に動く。

 

『上手くいくといいんだが』

 

『こればっかりは祈るしかねぇよ』

 

『上手くいくはずだ』

 

「……頼む」

 

アラド達はワルキューレ達の歌が上手くいくことを願っていると、何機か動きが変わった。

 

『こ…こちら…ウルフェン2…な、何が起きている?』

 

『だ、誰か状況報告を頼む。此処は一体何処なんだ?』

 

そんな無線をする機体が現れ始めた。

 

『こちらAWACSホークアイ。新型機に乗っている者は直ぐに下総航空基地に着陸するんだ!』

 

そう言うと何機かから了解と返信があり機首が航空基地に向かって行く。

 

『な、なんで急に応答するようになったんだ?』

 

『分からねぇ。もしかして何か洗脳されていたのか?』

 

『口を動かしてないで、手を動かせ! 着陸していく奴らを警護しろ。撃墜されたら、今回の事件の原因が分からなくなる!』

 

ホークアイからの指示に何機かが離脱していくフェニックスとSu-27似の機体の警護につく。

離脱せず未だ戦闘を続けているのはドラケンと数機のフェニックスとSu-27似の機体だった。

 

『よし、各機残りの敵も片付ける『こちらホークアイ、少し待て』どうした、ホークアイ?』

 

『戦闘を続けていた敵機の様子が可笑しい』

 

そう言われそれぞれ敵の様子を見ると、確かに攻撃をしてくる様子が無かった。すると突然残った機体は上空へと向かって飛び出した。

 

『上空に向かって飛び始めたぞ!』

 

『まさか逃げる気か?』

 

『だが上に上がったところで行けるのは限界があるぞ。何処に逃げようってんだ』

 

航空隊はそう言い撤退を始めたドラケン達に疑問符を浮かべる中、アラド達デルタ小隊は不味いと思っていた。

 

『奴らこのまま宇宙に逃げる気か!』

 

『逃がすわけにはいかねぇ!』

 

『隊長、追撃の許可を!』

 

『当たり前だ。すぐに追跡するぞ!』

 

デルタ小隊はすぐさま離脱を開始したドラケン達を追いかけ始めた。

 

『おい、デルタ部隊! どうしたんだ?』

 

『敵を追跡『敵機、何機か反転して攻撃してきた!』 くそ、足止めする気か!』

 

共に上がっていたフェニックスと新型機が反転しデルタ小隊に攻撃を開始し、ドラケン達は妨害されることなく上昇していく。

 

『くそぉ、お前等邪魔するな!』

 

『早く墜とさないと、奴らが!』

 

『此方ホークアイ、突然レーダーから何機か消えた。どう言う事だ、まだレーダー探知範囲に入っているはずなのに。消えたぞ』

 

ホークアイからの報告にイチカ達はクソッ!と悔しそうに顔を歪める。

 

『逃げられたか。仕方ない、残った敵を撃墜するぞ』

 

『了解』

 

反転して攻撃を開始してきた敵機をデルタ、そして航空隊の活躍によって撃墜。漸く戦闘は終了した。だが街は見るも無残に破壊され、道路には瓦礫などが散乱し混乱を極めていた。

 

『終わったな』

 

『そうだな。だが、何機か逃げられちまった。クソッ!』

 

『仕方がない、今は兎に角戻ろう。美雲さん達が心配だ』

 

『そうだな。此方デルタ1、RTB』

 

『此方ホークアイ。デルタ部隊、貴隊が来なければ首都は陥落していたかもしれん。代表として礼を言う。ありがとう』

 

『いや、大したことはしていない。それじゃあな』

 

アラドはそう言いデルタ部隊は首都を離れて行く。そしてIS学園に寄りガウォーク形態で降りた。

その傍に学園の防衛の為に居た鈴や簪達が集まる。

 

「お帰り、無事に帰ってこれたみたいね」

 

「あぁ、けど多くの航空隊のパイロット達が亡くなった」

 

機体から降り悔やむ表情を浮かべるイチカ。その表情に鈴達も暗い表情を浮かべる。すると、空気を変えようと楯無が話し出す。

 

「そ、そう言えば学園内の放送から歌が聞こえたの」

 

「そう言えばあの歌の声、美雲達に似ている気がしたけど」

 

「あぁ、たぶん彼女達だ。避難施設に居る人達が不安になっているだろうからと歌を歌ったんだろう。彼女達、アイドルだからな」

 

へぇ~。と声を漏らしているとぞろぞろと美雲達がデルタの元にやって来た。

 

「お帰りなさい、イチカ」

 

「おう、ただいま。歌、届いたよ」

 

「そう。良かった」

 

頬を赤く染めながら見つめ合う二人。

 

「二人共、いちゃつくの禁止ぃ~!」

 

「人目憚らずやり取りはずるい」

 

そう言いイチカの腕に抱き着くマキナとレイナ。

 

「いや、なんで二人して抱き着くんだ?」

 

「お疲れだと思うから、癒してあげてるんだよぉ」

 

「癒し効果アリ」

 

二人の行動に苦笑いを浮かべるイチカ。すると美雲はふと何かを考える素振りを見せ、そして何かを思いついたのか正面からイチカに抱き着き、その胸に顔を埋める。

 

「ちょっ、美雲!?」

 

「本当にお疲れ様、イチカ」

 

そう言い抱き着く美雲にイチカは何も言わずただそのまま3人に抱き着かれていた。

 

「何やってんのよ、あの4人は」

 

「まぁ何時もの光景だよ」

 

「だな」

 

鈴やアラド達は呆れ顔やニヤニヤ顔を浮かべながら眺め、その他の者達は顔を真っ赤にしながら眺めていた。




次回予告
首都での戦闘報告を聞くスコール。今後の事を考えていると突如テレビ画面にオグマ社社長のジェフ・ドースが現れ世界に対し宣戦を布告した。

次回
宣戦布告

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