アラド達が空母にて機体を受け取っている頃、イチカとマドカはIS学園の地下に装設されている指揮所に訪れていた。
「イチカ、マドカ今参りました」
そう言いながら中に入ると、何人かの教師達が忙しなく動いていた。
「来たわね二人共、こっちよ」
そうエリシアに言われ向かうと楯無や簪。更に鈴やセシリア達もいた。他にも各国の代表候補生達が居た。
「さて集まってもらったのは他でもないわ。現在首都で起きている戦闘よ」
エリシアはそう言い空間ディスプレイを投影し、首都の様子を見せた。建物の幾つかから黒煙が上がっており激しい爆発が幾つか起きていたりしていた。
「見ての通りもはや戦場と言っても、過言でもないわ。更にもっと言えば厄介な事も起きているわ」
そう言い別の空間ディスプレイを出す。
「もう知っていると思うけど、航空自衛隊所属のIS部隊がほぼ壊滅。現在首都上空にIS部隊はほぼ居ないと言って相違ないわ」
そう言われ代表候補生達の顔が青くなり始めた。
最強と言われてきたISが簡単に撃墜され、既にほぼ壊滅と言われたのだ。
「で、でも敵機を何機か墜としてますよね? それだったら私達でも「残念だけど、敵は一機も墜とされていないわ」そ、そんな」
愕然となる一人の代表候補生。他の代表候補生達も勝ち目がないと思い俯く。
「……それで先生、私達を此処に呼んだ理由をお聞かせください」
何とか正気を保っていた楯無はエリシアに聞く。
「貴女達に集まって貰ったのはこの学園を守ってもらう事よ」
「学園を…ですか?」
「えぇ。今現在敵は首都上空でのみ戦闘を行っている。首都にISを送れば簡単に撃墜されてしまう事は明白になっている以上、首都にISは送れない。その為あなた達には敵が万が一来た場合に備え、此処の防衛に就いてもらうわ」
「あ、ISを簡単に墜とすような敵とどうやって戦えば良いんですか!」
エリシアに学園を守るよう言われ、簡単にISを墜とす敵にどう戦えばいいのか分からない代表候補生達はそう叫ぶ。
「……無論降りてもらっても構わないわ」
そう言うとぞろぞろと代表候補生たちは指揮所から出て行き、残ったのは1年の鈴、セシリア、ラウラ、シャルロット、簪、マドカ、イチカ。そして2年の楯無と一人。最後に3年の一人が残った。
「はぁ~、残ってくれたことに感謝するわ。それじゃあ何処に誰を配置するのか決めるわ」
そう言い学園のMAPを広げる。
「では首都に近い方に鈴さん、ダリルさん、フォルテさん、楯無さんで。中衛にはシャルロットさん、ラウラさん。そして後衛には簪さん、セシリアさんでお願い」
エリシアがそう言うと、セシリアが手を挙げる。
「あの、メルダースさん達はどちらに?」
「二人は首都に向かうわ」
「「「っ!?」」」
イチカとマドカ、そしてフォルテとダリルと呼ばれた生徒以外は驚き顔をイチカ達に向ける。
「機体の到着予定は?」
「あと数分と言ったところよ」
「そうですか。では自分とマドカは機体を受け取り次第首都に向かいます」
「頼んだわ」
そう言いイチカとマドカは外へと向かう。
「ついでだ、アタイも一緒に行くぜ」
「ウチも一緒に行くっす」
そう言いダリルとフォルテは共に外へと向かう。
「イチカ!」
そう声を掛けられイチカは顔を向けると、鈴がサムズアップしながら見ていた。
「死ぬんじゃないわよ」
「おう、分かってる」
鈴の声援を受け外へと続く廊下を駆けだすイチカ達。
指揮所から出て暫くしてダリルが思い出したかのようにイチカ達に声を掛けた。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。アタイはダリル・ケイシー。アメリカの代表候補生だ」
「ウチはフォルテ。サファイアっす。ダリルとは友人以上恋人未満みたいな関係っす!」
「……なんですか、それ?」
フォルテのダリルとの関係の説明にイチカは首を傾げる。隣のマドカは呆れた様にため息を吐く。
「まだ抜けることがあるんじゃないのか。えぇR?」
そう言うとダリルはニッと笑みを浮かべた。
「別に言う事でもないと思うが、まぁいいか。ダリルって言うのは普段使っている名で実際は、『レイン・ミューゼル』って言うもう一つの名があるんだ」
「ミューゼル? スコールさんの親戚ですか?」
「そんなところだ。因みにフォルテも知ってる。組織には所属してないがな」
「ウチはただダリルの正体が知りたいと思って付いて行っただけっすけどね」
はぁ。となんだかよく分からない二人の関係に首を傾げつつ外に向かって走る。
廊下を暫く走っていると、目の前に一人の教師が立っていた。
「ありゃ織斑先生じゃん」
「本当っすね。何で此処に?」
ダリルとフォルテは首を傾げている中、イチカとマドカは真顔を浮かべる。
遮る様に立つ千冬に4人は足を止めた。
「織斑先生、何か用ですか?」
「……」
千冬はただジッとイチカの方に顔を向けていた。はぁ、と一息イチカは零す。
「ダリル先輩、フォルテ先輩。先に行っててください。後で追いかけるんで」
そう言われ二人は先に外へと向かっていく。
「それで、今度は一体何の用です?」
イチカは千冬に全く興味が無いと言った表情で問いかける。
「……何故だ」
「は?」
「何故他人の為に命を張る? 今首都で戦っているのは他人だ。お前の知り合いでも、友人でも何でもないただの赤の他人なんだぞ」
「お前、一体何を言いたいんだよ」
千冬の問いに苛立ちの表情で聞くマドカ。
「あそこに居る者達は命を張ってまで守るような連中ではない。そう言っているんだ。行った所でお前に要らない責任などを背負う羽目になるんだぞ」
ハッキリとした口調でそう千冬は言う。
「…じゃあ聞くが」
「?」
「お前は戦闘機のパイロットやイージス艦の船員を殺した責任はとったのか、白騎士?」
「な、何故それを…」
イチカの口から出た言葉に千冬は驚きを隠せず顔に現れた。
「何も知らないとでも思っていたのか? 束さんに色々聞いたんだよ。あの事件の真相とかな」
そう言いながらイチカは千冬を睨む。
「純粋に宇宙に上がることが夢だった束さんの夢を平気で裏切り、そして巡航ミサイル迎撃に上がった戦闘機やイージス艦を次々に破壊。そして下に住宅があるにも関わらず戦闘機を墜とした。お前こそ、責任はとろうとしないのか?」
「……た、束の奴だって「あの人はお前の被害者だ。しかも被害者にも関わらず、IS被害者に寄付金や援助物資を送っていた。今でもエンシェントセキュリティー社を使いながら援助している」……」
「あの人はお前が背負わなければならない責任を背負った。責任から逃れたお前の代わりに」
「……」
黙り込む千冬にイチカははぁ。と呆れた息を吐く。
「……話は終わりだな。行くぞ、マドカ」
「あぁ、行こう」
そう言い千冬の横を通り抜け外へと向かって行った。一人残った千冬は拳を握りしめる。
「……わ、私はただ一夏を、家族を守ろうとしただけだ。他人など、そんなもの関係ない」
そう絞り出すように呟く千冬であった。
次回予告
ヴァルキリーを受領しイチカ達は首都へと向かう。自衛隊の戦闘機も奮戦するも敵のヴァルキリーに成す術なく撃ち落とされていく。敵のヴァルキリーを撃墜すべく攻撃を開始するデルタ小隊。すると無線がどう言う訳か混信する。
次回
首都防衛任務開始!