学園から十数Km程離れた米海軍基地の港にエンシェントセキュリティー社の空母『ケストレル』が接岸していた。甲板にはSH-60Sナイトホークが離陸できる態勢で待機していた。
そのヘリへと近づく9人。アラド達デルタ小隊とワルキューレのメンバー達だ。
「よぉし、それじゃあイチカとマドカが通っているIS学園に行く。向こうでは一人で行動するなよ?」
「了解です!」
「おう」
「分かりました」
「私達も同じだからね? 勝手に一人で行動しないで、と言いたいけどウチの中じゃあ誰もいないわね」
カナメがそう言うと、うんうん。と頷くマキナとレイナ。そしてそうね。と呟きながら笑みを浮かべる美雲。はい!と元気よく返事するフレイア。
「それじゃあ、そろそろ行くぞ」
そう言いアラド達はヘリへと乗り込み飛び立った。
数十分ほどヘリの座席で揺られたり、外の光景を眺めたりとしていたアラド達。
「おぉい、デルタの諸君とお嬢様方! IS学園が見えてきたぞ!」
パイロットからの報告にそれぞれ窓から眺める。陸から離れた場所に建てられ様々な大小の建物が建っているIS学園。
IS学園を見たハヤテやチャックは「おぉーー!」と学園の大きさに驚きの声を漏らす。
「此処がIS学園か、めちゃくちゃデカいな」
「だな。大型遊園地かなんかと思っちまったぜ」
カナメやフレイアは其処まで大きな驚きの声を上げなかったが、それでも学園の大きさには驚きが隠せなかった。
「大きな学園ですね、カナメさん」
「えぇ、そうね」
4人は楽しそうな表情を浮かべているが、アラド、マキナ、レイナ、美雲は何とも言えない表情を浮かべていた。
「「「「……」」」」
「ん? どうしたんですか、アラド隊長。それに美雲さん達も」
窓の光景を見ていたミラージュは様子がおかしい4人にそう声を掛けると、アラドがあぁ。と口を開く。
「いや、どうも臨海学校の時のことがあってかあまり良い気分になれなくてな」
アラドがそう言うとマキナとレイナも頷く。美雲は頷きはしなかったが、雰囲気からして同じ思いだとミラージュ達は感じ取った。
「……確かに、それを考えれば良い気にはなりませんね」
「…だな」
そんな暗い雰囲気が漂っている中、ヘリは学園に備えられているヘリポートへと着陸した。アラド達はぞろぞろと降りていくと出迎えたのはイチカとマドカ。そして学園長とエリシアであった。
「待ってたぜ、父さん」
「いらっしゃい」
そう言い笑みを浮かべながら出迎える二人にアラド達は先程暗かった雰囲気は無くなり、笑みを浮かべる。
「おう、来てやったんだ。面白い催しとか有るんだよな?」
「父さん達が気に入るものが有るかなんて分からないよ。その前に挨拶したら?」
「おっと、そうだったな。初めまして、イチカとマドカの父親で、エンシェントセキュリティー社特務飛行小隊『デルタ』の隊長をしているアラド・メルダースと言います。息子達がお世話になっております」
「此処の学園長を務めております、轡木十蔵と言います。此方こそ、そちらのご子息達に多大なご迷惑を掛けている事、本当に申し訳ございません」
学園長はそう言い深々と頭を下げた。アラドは慌てて頭を上げる様に言い挨拶と謝罪を打ち切った。
「では、本日皆様は特例と言う事で学園祭に参加出来るように手配しておりますので、存分に楽しんでください」
「此方が学園内のマップとチケットになります。チケットはクラスの出している劇を見る際に必要な物なので無くさないようお願いします」
エリシアから手渡されたマップとチケットをそれぞれ大事にポケットに入れたりする。
「ではイチカ君、マドカさん皆様のご案内をお願いします」
「「分かりました」」
そう言いアラド達と共にヘリポートから学園に向け歩き出した。
「……一言言われるかと思いましたが、無くて良かったです」
「…学園長、心中お察しします」
残っていた轡木とエリシアはそう言いながら重い息を吐く。轡木はアラド達から何か言われる覚悟が若干あった。預かっている生徒が撃墜され行方不明となった。そんな報告誰が聞いても学園の対応に疑問と怒りが浮かぶであろう。結果無事であっても対応問題で何か言われる。
だからこそ、本来エリシアだけで十分だったのにも関わらずヘリポートへとやってきてアラド達を出迎えたのだ。
その後、轡木は学園長室へと戻って行きエリシアは見回りへと行った。
~北海道・航空自衛隊基地~
基地のとある部屋に集められた20人のパイロット達。彼らは何故集められたのか、おおよそ見当がついているのか談笑していた。
「本当に楽しみだな、新しい戦闘機」
「あぁ。今までのとは違うんだろ? しかも噂じゃあISとも戦えるかもしれないって言うらしいじゃないか」
「それだったら、あいつ等の鼻っ柱へし折ってやれるな。出撃もしたことも無いくせに威張っていてイラついていたからよ」
そう談笑していると、部屋に上官らしき人物が入室しそれぞれ椅子に座り背を正す。先ほどまで談笑していた雰囲気を感じさせない程に。
「楽にしてくれ。さて、諸君は各基地の中で一番と言っていい程の腕のいいパイロットだ。そして今回この基地に集まって貰ったのは、最新の戦闘機を君達に乗ってもらいそのデータ採取を行って貰う事だ。データ採取は実際に武装を載せ行う」
「質問よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「実弾を載せてのデータ採取を行うのは何故なんでしょうか?」
「貴様は実弾が載っていない戦闘機に乗ってこの国を守る気か?」
「い、いえ」
「実弾を載せデータ採取を行うのは実際に今後のシステム設定の為に必要な事だ。その為に実弾を載せその運動を調べるのに必要だからだ。他に質問は?」
上官がそう聞くが誰も手を挙げなかった。
「よろしい。では3時間後、データ採取を行う。それと提供会社から簡単に食事を用意しているとのことだから各自とっておけ」
そう言い上官が出て行く。部屋に残っていたパイロット達は椅子から立ち上がりその食事が用意されている部屋へと入って行く。
「お、旨そうだな」
「だな。早いとこ食べようぜ」
そう言いそれぞれ食事に手を付けた。
彼等の前に用意されていた料理は
アップルパイとリンゴ風味のミネラルウォーターだった。
次回予告
学園祭に訪れたアラド達を案内するイチカとマドカ。各クラスの出し物に満足している中、突如警報が鳴り響く。
次回
崩れる平和