歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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34話

エンシェントセキュリティー社。イチカやマドカ達が所属している、PMC(プライベートミリタリーカンパニー)だ。

その日、エンシェントセキュリティー社の指令所にある情報が舞い込んだ。

 

「なんですって? オグマ社が新型の戦闘機を開発したですって?」

 

『はい、確かな情報です』

 

指令所に居たスコールはフランスのデュノア社に潜入していた工作員からの報告に眉をひそめていた。

 

「それで、その新型の戦闘機に関する情報とかは入手したの?」

 

『残念ながら、入手できたのは機体名と機体の基礎情報の一部のみです。申し訳ありません』

 

「いえ、十分やってくれたわ。急ぎデータを此方に送って。此方で出来る限り解析を行うわ」

 

『了解しました。……それとデータを送り次第、此処から離脱してもよろしいでしょうか?』

 

「っ! 感づかれた恐れがあるの?」

 

『まだ確定している訳じゃないのですが、内部にスパイが居るっていう噂が立ち始めていて、誰もが疑心暗鬼に陥り始めているんです。これ以上侵入を続けた場合発覚の恐れがあるので…』

 

そう言われスコールはしばし考えた後顔を上げた。

 

「了解したわ、早急に荷物を纏めて離脱の準備を。此方は貴女の離脱がスムーズにいくよう手配しておく」

 

『感謝します。では、これで』

 

そう言い通信は切られ、スコールは送られてきたデータを確認した。

 

「確かに形状はF/A-18Eに似ているけど、どこか違うわね」

 

そう言いながら工作員が言っていた一部だけのデータに目を移す。

 

「データの破損状態が酷いわね。よっぽど急いでいたのか、それとも盗難対策用の処理がされていた為か?」

 

データは所々が文字化け等になっており読め取れるのは化けていない単語と、化けているが大体予想がつく単語のみだった。

するとスコールは読み取れるデータの中にある単語を見つけた。文字化けはしていなかったが、その単語には眉間にしわを寄せる様な物だった。

 

「……彼らに聞けば何かわかるかしら?」

 

そう呟き立ち上がり指令所からある場所へと足を向けた。

スコールが足を向けたのは地下格納庫だった。奥へと進んでいくスコールに気付いた整備員たちは敬礼をする。スコールは敬礼を返しながら進んでいくと、格納庫の一角にある部屋の中で何やら話し合いをしているアラド達を見つけ扉をノックする。

 

「ちょっといいかしら?」

 

「あぁ、別に構わないぜ」

 

中へと入るスコール。部屋の中にはデルタ小隊の面々が居り、机の上に置かれた幾枚の資料に目が行く。

 

「この資料は?」

 

「この世界に現れた機体を詳しくしてもらった物だ。やはり俺達の知っている機体とほぼ同じだったよ」

 

「なんでこの世界に現れたのか、もう一度考えようって事で博士に頼んだんだ」

 

ハヤテの説明を聞き、そう。と返すスコール。

 

「それで何か用があって来られたのでは?」

 

「そうだったわ。実は見て欲しいモノがあるの」

 

そう言いスコールは部屋に備えられているコンソールに行き、指令所で見ていたデータを大画面のモニターに映す。

 

「これはウチの工作員が入手した情報よ。けど何かしらの盗難対策をしていたのか、データに文字化け等になるよう細工されていたみたいなの。その為読み取れるのは機体名と一部の機能情報のみ。機体名はVF-0フェニックス」

 

「確かに見た事が無い機体だな」

 

「だな。俺達のジークフリートとは形状が違うな」

 

それぞれディスプレイに出された機体を見て自分達の機体と違うところをあげていく。

デルタ小隊が乗っているジークフリートは前進翼型、つまり翼が前に向いているタイプの機体である。前進翼は機動性と運動性に長けている為、ドッグファイトなどではかなりの利点となっている。

 

「イチカのカイロスとも形状が違う。それになんだか、訓練機のVF-1EXに似ていないか?」

 

ミラージュの何気ない一言が一同を、確かにと何処か納得する様子を見せた。

 

「確かに、訓練機に若干似ているな」

 

「……なにか、繋がりがあるのか?」

 

そう零しながら一同首を傾げる。すると

 

「やっほ~、皆何してるのぉ?」

 

「難しい顔している」

 

「どうかしたんですか?」

 

カナメ、マキナ、レイナが部屋へと入って来た。マキナの顔には若干汚れが付いており機体整備をした後だと読み取れてた。

 

「ん? あぁ、この機体の事でな」

 

アラドはそう言いディスプレイに映っている戦闘機を指す。3人がそのディスプレイを見た瞬間、マキナはムッ!と顔を難しくする。

 

「どうしたの、マキナ?」

 

「この機体、何処かで見たことがある気がする。何処だっけぇ」

 

「訓練機じゃないですか? 私達はそう思ったんですが」

 

ミラージュにそう言われレイナとカナメはアラド達同様に納得した表情を浮かべるが、マキナだけがまだ納得いった顔を浮かべていなかった。

 

「うぅうん。もっと前に見たことがある。何処だっけぇ」

 

そう言いながら思い出そうとするマキナ。そしてハッとした顔になり頭を上げる。

 

「思い出した! お爺ちゃんから貰ったノートだぁ!」

 

「ノート? 確か、貴女が大切にしているって言ってたあのノート?」

 

「うん、ちょっと待ってて!」

 

そう言ってマキナは部屋を飛び出して行った。暫くしてマキナが戻ってくるとその手にはボロボロになってつぎはぎだらけのノートが握られていた。

 

「えっと、確か昔お爺ちゃんに見せてもらった時に……。あった!」

 

そう言いマキナはノートのあるページを見せた。

 

「……こいつは!」

 

「同じ機体名と詳細」

 

「マキナ、これって」

 

「うん、多分私のひいひいお爺ちゃんか、もっと前の人が整備士として整備していたと思う。だからこれが載ってたんだと思う」

 

ノートにはフェニックスに関する色々なことが書かれていた。

 

「こいつも可変戦闘機なのか」

 

「うん、けど今ある機体とは違ってこの機体は小型熱核反応タービンエンジンじゃなくてジェットエンジン、つまり燃料が必要だったの」

 

「なるほど、今じゃあ考えられない奴だな。にしてもやはり大昔のとはいえ、俺達の世界で造られていた機体がこの世界で現れるという事は…」

 

「俺達の世界の人物がこの世界に来ている。それも過去の機体について知っている奴が」

 

ハヤテの推察に全員険しい顔を浮かべる。

 

「……オグマ社は確実に黒に近付いてきたみたいね。いざと言うときは、あなた達にも出てもらうことになるんだけど、いいかしら?」

 

「無論構わないぜ。いや、むしろこっちから頼む予定だったからな」

 

「私達の世界の技術がどうしてこの世界に現れたのか、それを突き止めないといけないですし」

 

スコールの頼みに、アラド達は躊躇うことなく了承しその日の会議は終わった。




次回予告
IS学園で開かれる文化祭の為に、出し物を決め準備をする4組。
楽しい雰囲気が漂う学園。だが黒い思惑がゆっくりと近付いていた。

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