「―――では、以上で始業式を終えます」
司会がそう告げるとぞろぞろと生徒達は体育館から退出していく。
ぞろぞろと退出していく中イチカとマドカ、そして簪は共に談笑しながら教室へと戻っていた。
「そしたらね「簪お嬢様」虚さん?」
傍にやって来た本音の姉、虚に簪は首を傾げながら体を向ける。
「何か用ですか?」
「はい。 この後生徒会室にお越しいただけませんでしょうか?」
そう言われ簪の体が一瞬強張った。
生徒会室。其処には自身の姉、楯無が居る。昔の時みたいに何か言われるのでは、と言う思いが頭をよぎった。
「簪さん、行ってきな」
「えっ?」
背後にいたイチカがそう告げた。
「もう、逃げるのは止めにしたんだろ?」
そう言われ簪は、しばし俯くがコクンと頷く。
「そう、だね。何時までも逃げてちゃダメだよね。…ちょっと行ってくる」
そう言って簪は虚と共に生徒会室へと向かった。
「上手くいくといいな」
「簪自身が乗り越えようとしているんだ、行けるよ。それに兄さんと私がその背を押したんだ。必ずうまくいくさ」
「そうだな」
イチカとマドカは簪と楯無、二人の仲が元に戻ることを願いつつ教室へと足を向けた。
虚の案内の元生徒会室へと到着した簪。
「それでは私はこれで」
「うん、ありがとう」
そう言い虚は2人の邪魔にならぬようにと生徒会室から離れて行く。扉の前に立っている簪はしばし深呼吸をした後、意を決して扉をノックした。
「どうぞ」
そう中から聞こえ簪は中へと入ると、ソファに座りながらぎこちない笑みを浮かべた楯無が居た。
「ごめんなさい、突然呼び出して」
「別に。それで、用は?」
扉を後ろ手で閉め、簪は用を聞く。
「その、長くなると思うから座って」
そう言われ簪は心の中で(逃げちゃダメ、逃げちゃダメ)と心の中で自身を奮い立たせながら楯無の向かいのソファに座る。
「それじゃあ、その、用件なんだけどね」
そう言いさっきまで浮かべていたぎこちない笑みは消え、口をつぐんだりとしばしの沈黙が流れた後
「……ごめんなさい」
突然頭を下げた楯無。頭を机にぶつけるのではと言うくらい下げる楯無に、簪は若干驚いた表情を浮かべていた。
「簪ちゃんを守る為とは言え、心にも無い事を言って御免なさい! ISが凍結されたって聞いた時、助けてあげられなくて御免なさい! 今まで、苦しい思いをいっぱいさせて、本当御免なさい」
そう言いひとしきり言った後、再び沈黙が流れた。
「…ずるいよ」
「……」
「私が先に謝ろうとしたのに、先に謝るなんて。本当にずるいよ、
「えっ? 今、おねえちゃんって…」
簪の口からでた言葉に楯無は思わず顔を上げると、口を尖らせた簪が目に映った。
「確かに、お姉ちゃんが私の為と思ってやったのは私も分かってた。けど、それが嫌になってた。お姉ちゃんも知ってるよね、私が負けず嫌いなのは」
「そ、そうね」
「自分の身は自分で守れるんだって言いたかった。お姉ちゃんには出来ない事を私は出来るんだって言いたかった」
次々と言われることに楯無はただ頭が上がらなかった。
「だから、お姉ちゃん。罰として私の我儘を聞いて」
「な、何かしら?」
「まず、
「仮面ライダーシリーズなら何とかなるかもしれないけど、さ、さすがにPGシリーズ全部は無理よぉ!?」
楯無の言い分は確かだ。PGシリーズ、その名の通り正にパーフェクトでグレートなデザイン性の為、値段がかなり張る。
※因みに現在出ているシリーズ全部の合計金額は50万近く掛かる。
「お、お店とかに出ている物は何とかするけど、在庫限りのものはどうにも出来ないわよ!」
「お姉ちゃん、何とかして」
「そ、それは流石に更識の権限でも無理よぉ」
もはや涙目な楯無にジト目な簪。すると簪はフッと笑みを浮かべクスクスと笑い出した。
「冗談だよ、お姉ちゃん」
「ふぇ?」
「お姉ちゃんでも無理だろうって分かってた。けど試しに言ってみただけ」
そう言われ楯無ははぁ~、と机に突っ伏した。
「……び、びっくりしたぁ」
楯無の姿を見ながら簪はクスクスと笑い続けた。
「お姉ちゃんをいじるのも、案外面白い」
「やられる私の身にもなってちょうだい」
楯無はそう言いながらもその口元は若干笑顔だった。
「お姉ちゃん、もう一人で背負い込もうとしないでね」
「……えぇ、何かあったら簪ちゃんや虚ちゃんにも相談するわ」
そう言い上半身を上げた。
「また一人で背負い込んだら、今度こそPGシリーズを」
「やりません! 約束しますからぁ!」
そんな叫びが生徒会室からこぼれるも、2人は笑顔だった。
次回予告
2学期の行事学園祭が近付いている中、エンシェントセキュリティー社にある情報が舞い込んだ。それはオグマ社が新型の戦闘機を開発したと言うモノだった。
それも既存の戦闘機とは違い、変形が可能と言うモノだった。
次回
オグマ社の新兵器~その名もVF-0A フェニックスです~