外へと出た一夏はそこが自分の知っている場所とは全く違うことに驚く。廃工場とかでは無く周りは海と山で囲まれている場所だったのだ。
「こ、此処って?」
「此処は惑星ラグナ。そしてあそこに見えているデカいロボットはマクロス・エリシオンだ」
そう言われ一夏は遠くにそびえたっていたモノを見て驚く。その姿は人型の大型ロボットだったのだ。
「す、すごい」
「あれを見て驚くって言う事はお前さんはやっぱりどこか別の世界から来たのかもな」
そう言われ一夏もそう思わざるを得なかった。自分のいた世界にあのような物はなかったからだ。そしてアラドと共に一夏はバレッタシティと呼ばれる場所に連れていかれ、その街の一角に船のような物があり、看板には『裸喰娘々』と書かれていた。
「あの、このお店は?」
「此処は俺の部下が営んでる飲食店だ。ほれ恥ずかしがらずに入りな」
そう言われ一夏はアラドと共に店内に入るとアラドは見知った人物たちがいることに気づき、手をあげながら近づく。
「よぉ、お前らも昼飯か?」
「どうも隊長。まぁそんなところです」
そう言いながら黒髪、切れ目の男性はそう言いながら昼食をとっていた。
「お、隊長も食べて行きますか?」
奥の方から天然パーマの様で頭の上で髪を括った男性がそう聞いてくる。
「おう。一夏もぼぉーとしてないで俺の横に座れって」
一夏はアラドに誘われながら席へと着き、メニュー表を見る。そんな中天然パーマの男性がアラドに一夏のことを聞く。
「隊長、その子供は?」
「うん? こいつか、こいつは今度俺が面倒を見ることになった一夏だ」
そう言われ一夏は名前を呼ばれた気がしたため顔をあげる。
「えっと、一夏です」
「おう、俺はチャックだ。よろしくな!」
そう言って手を差し出され、一夏はチャックの手のひらに水かきのような物がついていることに気づく。
「うん? もしかしてラグナ人とは初めて会った感じか?」
チャックにそう聞かれ一夏は首を縦に振る。
「ははははは、そうか。この惑星のラグナ人は手のひらに水掻きがついているからな。この惑星じゃ珍しくないんだぜ」
そう言われ、一夏はやっぱり宇宙人っていたんだと考えを改めさせられた。
「俺はメッサーだ。隊長と同じデルタ小隊に所属している」
そう言ってまた昼飯を食べ始めるメッサー。アラドはメッサーの態度に苦笑いになる。
「悪いな、一夏。メッサーは冷静沈着な奴で、普段からあぁなんだ。」
「そ、そうなんですか」
そうこうしていると、チャックがご飯を持ってアラド達の元へと運んできた。
「ほい、ラグナ天津飯と餃子お待ち!」
「ほれ、一夏。チャックのおごりだから好きなだけ食べろ」
「ちょっ、隊長?!」
アラドは冗談だ。と笑いながら言い、一夏はお言葉に甘えご飯を食べ始めた。ご飯を食べていると店に4人組の女性が入ってきた。
「やっほ~、ご飯食べにやってきたよ~!」
「お腹空いた」
「もうマキナったら、他のお客さんもいるんだから騒がないの」
「ふふふ、いいじゃない。何時も元気があるって言う証拠みたいなものだし」
ピンクヘアーの巨乳の女性に続いて緑髪の大人しそうな子、その次に朱色の女性、最後に薄紫色とプラチナブロンドが混ざった髪を巻き上げている女性が入ってきた。一夏は常連かなと思いながら餃子を頬張る。
「お、ワルキューレ達も昼飯か?」
アラドがそう言うと朱色の女性が頷く。
「はい。 ところでアラドさん、そこにいる彼は?」
「おぉこいつか。こいつは今日から俺が面倒を見ることになった」
「一夏って言います。」
一夏はそう挨拶すると髪を巻き上げている女性が一夏に近付く。
「…貴方、何処から来たの?」
「…え?」
女性からの突然の質問に一夏は驚く。
「その服装、この惑星じゃ見たことないしそれに、貴方からは他の人とは何か違うような気配がするのよ」
そう言われ一夏はアラドに顔を向けると、アラドは乾いた笑みを浮かべる。
「まさか気が付かれるとはな。 美雲の言う通り一夏はこの惑星の人間じゃない」
「じゃあ何処の惑星なの?」
緑髪の子がそう聞くとアラドは観念するように説明し始めた。
「こいつは地球にいたんだ。しかも異世界のな」
アラドがそう説明した瞬間、アラド達が居る所だけ静寂が漂った。そんな静寂が漂っているところに赤紫色の髪をした長身の女性が入店してきた。
「お邪魔します、お昼を頂きにきました。…なんで皆さん固まっているんですか?」
そう聞きながら近づいた瞬間
「「「「えぇぇぇーーーーー?」」」」
「ビ、ビックリした!」
一部を除いた人以外全員驚きのあまり絶叫をあげ、赤紫色の髪の女性は突然の絶叫に驚く。
「た、隊長。つまり一夏は異世界から来た人間って言う事なんですか?」
「ほ、本当に異世界ってあったんだ~」
「今までで一番驚いた」
「これって私たち、銀河で初めて異世界人と会ったて言う事よね」
全員それぞれ思ったことを口にしている中、赤紫髪の女性は訳が分からず、近くにいたメッサーに事情を聴く。
「これは一体どいう事なんですか? 異世界人って一体?」
「ミラージュか。隊長の横にいる奴が、俺たちの知っている地球とは別の地球から来たって隊長が言ってこの有様だ」
メッサーの説明を聞いたミラージュは頭に疑問符を浮かべつつ、騒動になっている方に目を向ける。問題となっている一夏は質問攻めに遭っており、どうしたらいいのか分からないと言った感じで慌てふためていた。すると美雲が手を叩く。
「ほらほら、彼がどうしたらいいか分からないって言う表情浮かべてるから落ち着きなさい」
そう言われ騒いでいた人達全員落ち着き、改めて確認する。
「それじゃあ一夏君は、本当に異世界の地球からやって来たの?」
朱色の女性がそう聞くと一夏は同意するように頷く。
「はい。この街に来る途中で見えた、マクロス・エリシオンでしたっけ、あんなロボット今まで見たことがありません」
そう一夏が言うとミラージュも質問してくる。
「ですがそれではまだ確信できません。何かもっと証拠となるようなものはないのですか?」
アラドは一夏の方を見ると一夏はどうしようか考えていた。そしてポケットに手を入れた瞬間、犯人から奪い返したスマホがあることを思い出し、それを机の上に置く。机に置かれた物に全員目を向け、これは?といった表情で一夏を見る。
「これは俺が居た世界で広く使われているスマホって言う携帯です」
一夏がそう言うとピンク髪の女性が興奮した様子でスマホを手に取り驚く。
「こ、これが異世界の携帯なの?! 凄~い!」
「確かに私たちが持ってるものと違う」
全員一夏が本当に異世界から来た人だと改めて思い知らされた後、どうして此処に来たのか聞く。そして一夏はアラドと同じように説明する。
「以上が俺がこの世界に来た経緯です」
「う~ん。その穴が気になるわね」
「確かに。フォールド反応とかは無かったのですよね隊長。」
「あぁ。謎のエネルギー反応を感知して警備部の連中が格納庫へと行った時に一夏がいたんだ。その時には穴なんてものは無かった」
全員一夏が通ってきた穴について考えている中、美雲はある質問を一夏に投げる。
「それで一夏はどうしてドイツって言う国にいたの?」
そう質問すると一夏は嫌なことを思い出したのか苦い顔になる。美雲は一夏の顔を見て嫌なことが遭ったんだと理解し、謝る。
「御免なさい。聞いちゃいけないことだったかしら?」
「いや、話しておくべきことだと思いますし、話します。」
そう言うと穴のことで議論していた組も美雲と一緒に一夏の話を聞く。
「俺がドイツにいたのは姉に無理矢理連れて来られたからなんです」
「無理矢理? どいう事なの?」
美雲がそう聞くと一夏は自分の家庭内事情、そしてそれのせいで受けてきた苛めなどを説明し始めた。
「俺には家族が姉しかいないんです。姉は色んな人から崇拝されるような人物で、それの所為で俺は変な期待を向けられて、出来ないと出来損ないって言われて苛められてたんです。姉からも俺に得意じゃない剣道を無理矢理やらされたりして、出来ないって言っても帰ってくる言葉が『私の弟なら出来るだろが!』っていつも怒鳴られてたんです。自分では大切にしているって言っているがあれはただの家族って言う鎖だけしか見ていないって最近になって思い始めたんですけどね。で、ドイツにいたのはある大会があって、姉がそれに参加するらしくそれで無理矢理ドイツに連れて来させられたんです」
一夏の話を聞いたワルキューレとデルタ小隊の面々は何とも言い難い表情を浮かべていた。そんな中ピンク髪のマキナが涙を零しながら同情した。
「うぅぅ、いっちーは一杯酷いことに耐えてきたんだね。」
「え、えぇまぁ」
一夏はまさか自分の話を聞いて涙する人がいるなんて思わずどう対処したらいいのか困惑していると、アラドが決心したかのような顔で一夏に詰め寄る。
「よし、一夏。お前今日から俺の息子にする」
「「「はい?」」」
アラドの突然の宣言に全員変な返事を出してしまった
次回予告
アラドの一夏を息子にすると宣言し、その訳を話すがマキナがそれに反対した。そして言い争いとなり、チャックとミラージュ達が止めに入って行く中、一夏はメッサーにワルキューレ達とは何者か聞く。
次回家族~なら私も混ざろうかしら~