歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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20話

臨海学校が終わり、学園へと戻って来たイチカとマドカは部屋で荷物を纏めていた。

 

「ん? おいマドカ。この本はお前のか?」

 

「え? あぁ確かに私のだ。何処に置いたのか忘れていたんだが、兄さんのベッド下に入っていたのか」

 

そう言いながら本をスーツケースに入れる。

 

「さて荷物もまとめたし帰るか」

 

「あぁ、そうだな」

 

そう言い2人は荷物の入ったスーツケースを持ち部屋から出る。そしてその足で職員室にいるエリシアの元へとやって来た。

 

「エリシア先生」

 

「あら2人とも今から本部に?」

 

「はい、俺達は先に帰りますが先生は?」

 

「そうねぇ。この報告書が終わるまでは帰れそうにも無いわねぇ」

 

そう言い机の上に束になっている書類に目を向ける。

 

「それって臨海学校の奴ですか?」

 

「それもあるけど……。他にも主任関連の書類が前任者が全く片付けていなかったから、それの片付けもよ」

 

そう言い呆れる様にため息を吐くエリシア。イチカとマドカはお疲れ様です。と一言言い、持ってきたコーヒーの缶を置いて職員室を後にした。

2人は校門付近まで行くと兎の形をした小型バスが停まっていた。

すると運転席から顔を出し手を振る運転手が居た。運転手の頭からは機械のうさ耳が出ており2人は直ぐに誰なのか察した。

 

「おぉ~い! 2人ともこっちだよぉ!」

 

「……何してるんですか、束さん」

 

そう言い呆れながら小型バスに近付く2人。

 

「何って2人を迎えに来たんだよ。オーちゃんはラーちゃんと買い物してから帰るって言ってたからね」

 

そう言われ2人はなるほど。と納得しバスのトランクに荷物を入れた。そしてバスに乗り込もうとしたところで

 

「待て一夏!」

 

そう呼ばれイチカは顔を呼ばれた方に向ける。其処には肩で息をする千冬が居た。

 

「……何か用ですか織斑先生」

 

「お、お前が帰る場所はそっちじゃないだろ!」

 

そう言い近付こうとした瞬間

 

「それ以上近付こうとするな」

 

束の冷ややかな声が木魂した。

 

「もしそれ以上近付いたら、お前の頭が消し飛ぶよ」

 

そう言い束はバスから降りて来て、千冬に鏡を見せる。すると千冬のこめかみ付近に緑の点が映っていた。

 

「お前の事だから来ると思ってたよ。だからスナイパーを呼んで、お前を何時でも狙撃できるよう待機させておいたのさ」

 

そう言い束は一夏達にバスに乗るよう伝える。

 

「さて、追いかけようなんて考えるなよ。もしお前が少しでも近付いてくるのが分かったら叩き潰すからな」

 

そう言い束もバスに乗り込み、バスを走らせた。千冬は拳を作りそのバスが遠ざかって行くのを見送るしかできなかった。

 

「まったくアイツは懲りるって言う言葉を知らないのかねぇ」

 

そう言いながらバスを運転する束。

 

「無理でしょ。アイツの頭に懲りると言う言葉なんて存在してませんよ」

 

イチカはそう言いながら普通のバスよりフワフワな座席でゆったりしていた。

 

「博士、この座席何でこんなにフワフワなんだ?」

 

「それ? 飛行機のファーストクラスの座席に使われている素材をこのバス用に調達して使ってるからね。因みにこのバスに乗車できるのは束さんと親しい人間だけだよ」

 

そう言っていると、バスは空港に到着する。

 

「さて、バスは此処まで。後は飛行機で帰るよぉ」

 

そう言い、バスを『エンシェントセキュリティー社用バス停車場』と看板が立っている場所に止め降りる束達。そしてエンシェントセキュリティー社行きの飛行機に乗り込みエンシェントセキュリティー社に向かった。

 

飛行機はエンシェントセキュリティー社に到着し、イチカ達はタラップを使い降りて行くと美雲達が居た。

 

「お帰りなさい、イチカ、マドカ」

 

「おっかえり~!」

 

「お帰り」

 

「ただいま。3人が此処に居るってことは父さん達も此処に?」

 

「うん、今スコールさんとお話してたよ」

 

「今後の方針とか話してた」

 

そうか。とイチカは呟き荷物を持って指令所へと向かった。自室へと到着したイチカは荷物を置き勉強関連の物を机の上に置くと扉をノックする音が鳴り響く。

 

「ん? どうぞ」

 

そう言うと扉が開かれ入って来たのは美雲で、その手には大きめの荷物が握られていた。

 

「美雲、その荷物は?」

 

「今日から私もこの部屋で住むことになったのよ」

 

「はぁ!?」

 

突然の美雲の告白にイチカは驚き、持っていた勉強道具を落した。

 

「えっと、マジで言っているのか?」

 

「えぇ、本気よ。因みに司令官であるスコールさんには許可は貰ってるから」

 

そう言い荷物をベッドに置く美雲。

 

「……だ、だがベッドが一つしか「美雲様、折り畳みベッドの方をお持ちしました」えぇ~……」

 

扉が開かれ、クロエが折り畳まれたベッドを持ってきた。

 

「問題は無いわね?」

 

「……父さんがダメって「それなら大丈夫よ。アラド隊長には既に報告済み。恋人同士なら問題ないそうよ」と、父さん~……」

 

最後の綱である父アラドも許可を出された為、イチカは頭をガックシと落としもはや頷く以外なかった。

 

「……分かった。一緒に住むのは良いが……その風呂場からバスタオル姿で出てくるなよ」

 

「あら、ダメ?」

 

「ダメだ! その、俺の理性というか……兎に角バスタオル姿で脱衣所から出てくるのは禁止! それと寝るときはお互いのベッドで寝る事。いいな?」

 

イチカは顔を真っ赤にしながら、条件を言うと美雲は少し不満そうな顔をしながらも条件を飲んだ。そして荷解きを終え、部屋で寛いでいると扉をノックする音が響く。

 

「兄さん、ちょっといいか?」

 

「おう、いいぞ」

 

扉が開かれ、マドカが中へと入るとベッドに腰掛けながら本を読むイチカ、そしてイチカの膝に頭を乗せて寛ぐ美雲が居た。

 

「あ、今は不味かったか?」

 

「いや、大丈夫だ。それでどうした?」

 

「うん、父さんがイチカと一緒に地下のハンガーに来てくれだって」

 

「ハンガーに? 分かった。美雲御免、頭上げてくれるか?」

 

「分かったわ」

 

そう言い美雲は頭を上げイチカと共に立ち上がり、ハンガーへと向かった。

その頃マキナとレイナは、用意された部屋でカバンから色々取り出していた。

 

「マキナ、これって?」

 

「それ? それはイッチ―に見せる為の物だよ!」

 

そう言いふんふんふ~ん♪と鼻歌を歌いながらカバンから色々なものを取り出す。カバンから出てきたのは、サンオイル、しぼんだビーチボール、ビニールシートが出てきた。

 

「この夏はイッチ―に接近するチャンス! この機会を逃さずに行くよレイレイ!」

 

「イチカの心をチクチクしてあげる!」

 

そう言い2人は夏休みイチカ大接近大作戦を決行するのであった




次回予告
地下ハンガーに呼ばれたイチカ達。ハンガーにはアラドとハヤテ達が居た。そしてその前には一機の機体が有った。
次回
マドカの翼~こいつがマドカ、お前の機体だ~

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