歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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13話

イチカとマドカは制服から私服へと着替え、寮の部屋から出て鍵を掛ける。

 

「あら、あんた達も今から買い物?」

 

「ん? おぉ鈴か。それに簪さんも。そうだが、お前らもか?」

 

そう声を掛けられ鈴と簪は頷く。

 

「そうだ、どうせなら一緒に行かない?」

 

「俺は別に良いぞ。マドカは?」

 

「私も別に構わない」

 

「よし、決まりね。それじゃあ行きましょうか」

 

そう言い鈴はイチカ達を先導するように歩き出した。イチカは相変わらずだなぁと零す。

 

「兄さん、鈴は何時もあんな感じなのか?」

 

「あぁ。俺と後2人程一緒につるんでいた時も鈴が率先して俺達を引っ張っていく感じだ。まぁアイツの持ち前の明るさがそうさせてるんだろうがな」

 

「へぇ~。……私にはそんなこと出来ないなぁ」

 

簪は鈴の性格に少し羨ましさを感じる。それを見ていたイチカはフォローすように声を掛けた。

 

「そうかぁ? 簪さんもみんなを一生懸命引っ張ている感じはするんだがなぁ」

 

「そう? 私的には皆の足を引っ張っている様な感じがするんだけど」

 

「考えすぎですよ。後少し自分を過小評価しすぎです。クラスのみんなだって簪は一生懸命頑張っているって口には出してませんが、ちゃんと評価はしているんですよ」

 

マドカにそう言われ、簪はやっぱりクラスのみんなはちゃんと私の事見ててくれているんだと嬉しい思い半分、恥ずかしい思い半分で顔を赤く染めた。

 

そして4人はモノレールへと乗り込みレゾナンスへと向かった。車内で鈴はある事を思い出しイチカに話しかけた。

 

「そう言えばイチカ。例の1組の男性操縦者、あれって結局は変装した女性だったそうで、しかもアンタの機体データを盗む為に来たって噂で聞いたんだけど本当?」

 

「あぁ、本当だ。彼女が入学してきた時からうちの会社が調査した結果判明したんだ。その後は作り笑いで何度かコンタクトしてきたんだが何日かした後に突然絡んでこなくなって部屋に閉じこもっているって聞いたぜ」

 

「ふぅ~ん。彼女も災難ねぇ~。実の父親に傀儡みたいなことさせられて。そのうえにスパイ行為までさせられそうになって」

 

鈴は呆れた様な表情を作りながらスマホで最近の学内ニュースを見始めた。

そしてモノレールは終電のレゾナンスへと到着し、買い物を開始する。最初に着いたのは水着を専門に販売しているお店。中には色とりどりの水着は置かれているがほとんどが女性ものだった。

 

「それじゃあ俺は男物がある所で見てくるから、後で合流な」

 

「えぇ、分かったわ」

 

そう言い3人と別れたイチカは男物の水着があるコーナーに行き、適当に合いそうな物を見つけ手に取り、鈴達が居る場所へと向かう。

 

「よぉ決まったか?」

 

「えぇまぁね」

 

「兄さん、この黒と白どっちがイイ?」

 

マドカは白と黒のビキニ水着を持ってイチカに尋ねる。

 

「白で良いんじゃないのか? お前の黒髪が良い具合に強調されるし」

 

「じゃあ白にする」

 

そう言いカゴに水着を入れる。

 

「それじゃあ後必要な物はあるか?」

 

「日焼け止めもカゴに入れたし、ビーチボールも入れたし、特にないわね」

 

鈴はそう言うと、イチカはそれじゃあ会計に行くかと言いレジへと向かう。

 

 

そして数日後、臨海学校当日。

 

「海ねぇ~」(そう言えばラグナに居た時にデルタのみんなとワルキューレの皆と海水浴に行ったんだっけ)

 

イチカはバスから見える海をぼぉーと眺めながら、ラグナでの楽しかった事を思い出しているとふと水着の美雲を思い出し、一人頬を真っ赤に染め誰にも見られないようにカーテンで顔を隠し寝たふりをした。

バスは旅館へと到着し、イチカ達4組はバスから降り部屋へとぞろぞろと移動する。イチカは手元にあった部屋割の紙を見ながら向かおうとしたが、部屋割に自分の名前がない事に気付き、エリシアに確認する。

 

「エリシア先生、俺の部屋は何処なんですか?」

 

「イチカ君のお部屋は私と同じ部屋よ」

 

「つまり教員部屋ってことですか」

 

イチカはそう言い、警護やら何やらの為なんだろうと納得しエリシアと共に部屋へと向かった。

 

部屋で荷物を置き、水着に着替え浜辺へと出る。イチカの水着はボクサータイプの海パンで、上にはパーカーを着ていた。

 

「あっち~」

 

そう言いながらパラソルがある所まで行き日蔭で海を眺め始めた。

すると背後から自身を呼ぶ声が聞こえ、イチカは後ろを振り向く。

 

「兄さん、どうでしょうか?」

 

そう言いマドカは白の水着を見せる。

 

「ん? おぉ似合ってるぞ」

 

そう言い頭に手をポンと置き撫でる。マドカは頬を染めながら大人しく頭を撫でられた。

 

「ちょっと、イチカ! そんなところで座ってないでこっちでビーチバレーでもやらない?」

 

鈴はビーチボールを持ちながらイチカを誘うと、イチカはいいぞ。と了承しコートへと入りチーム分けをしてビーチバレーを始めた。

 

それから時間は経ち、夕方。生徒達は旅館の大広間で夕飯をとり始めた。夕飯には刺身などが出ており、魚を生で食べたことが無い海外生徒達は悪戦苦闘しながら、夕飯をとっていた。

夕飯を終えたイチカとマドカ。そして鈴と簪、更に簪の幼馴染の布仏本音と共に旅館だったら必ずあるゲームセンターに来ていた。

 

「お! 此処にもこれが置かれているのか」

 

そう言いイチカは目の前にあるアーケードゲームに驚く。

 

「これ、よくアンタが遊んでいたヤツじゃない」

 

「そうだな。そうだマドカ、今のうちにこいつで戦闘機の動作になれとけ」

 

イチカはそう言いマドカをコックピット状になっている席に座らせる。

 

「よし、やってやる!」

 

そう言いマドカは操縦桿を握り、ゲームを始めた。

開始から数分後。

 

「うぅぅ、着陸が上手くいかなぁい!」

 

マドカは悔しそうに、ゲームオーバーが出た画面に向かって叫んでいた。

 

「管制室からの風の方向と、風速をしっかり理解できないと、機体は流されちまうからな」

 

イチカはマドカがミスした原因と改善点を教えていた。

 

「はぁ~い、ゲームセンターに居る皆さん! そろそろ就寝時間の為部屋に戻る様に!」

 

エリシアは入り口付近でそう言うと、ゲームセンターにいたイチカ達は部屋へと戻っていった。




次回予告
臨海学校2日目に、イチカ達は海岸に居ていると大型の輸送ヘリがやって来た。そして下りてきたのは束と、イチカがずっと会いたいと願っていた仲間達だった。

次回
臨海学校~後編~

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