歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

17 / 67
10話

アリーナでの一件から数日が経ったある日、学園では学年別タッグマッチトーナメント戦が行われようとしていた。

イチカとマドカもこのトーナメントには出るつもりで前日から機体のチェックは特に入念に行っていた。

トーナメント戦を行う前にイチカとマドカは整備室で再度の機体チェックを行っていた

 

「よし、今日はこの曲の能力を調べるか」

 

そう言いながらイチカは『Hear The Universe』と言う曲をファルコの中へと入れる。

 

「そう言えば兄さん、今日のタッグマッチに簪と鈴がタッグを組んで出るって聞いたんだけど本当?」

 

「あぁ、何でも相性が良いから組んだそうだ。まぁあの二人が一緒に訓練している光景はよく見かけたからな」

 

イチカは思い出しながらそう呟く。簪と鈴はイチカが訓練に付き合えない時は、2人だけで訓練しタッグマッチ戦が行われる前には早くからタッグの訓練を行っていたのだ。

 

「強敵になりそうだな」

 

「確かにな。だがそう簡単に落とされるつもりはないからな。マドカ準備は?」

 

「何時でもいいよ」

 

イチカの問いにマドカはニヤリと口角を上げ、ISを待機状態にさせる。

そして2人は整備室から出て、対戦相手の確認に向かう。

 

「お、鈴達も対戦相手の確認か?」

 

イチカとマドカはアリーナの選手控室に付くと、モニター前に鈴と簪が居ることに気づき声を掛ける。

 

「まぁね。それより1組にいたイギリスの代表候補生。何でもイギリスに今帰っているらしいわよ」

 

「何だよアイツ、何かしたのか?」

 

「多分この前マドカが持っていたISを取り返そうとした事と、あんたに暴言を吐いたことが原因だと、私は思うわね」

 

鈴の推測はほぼ正解なのである。イチカとマドカは知らないが、実は束はIS学園の全システムを既に手中に収めており、監視カメラのデータだろうが何だろうが全て手に入れることが出来るのだ。そしてIS学園に謎のISが襲撃した時、束は学園長室に報告に行ったイチカ達が心配でコッソリ監視カメラから覗き見ていたのだ。その時にセシリアがマドカ、そしてイチカに対し暴言を吐いた事にキレた束がイギリス政府に、スコール経由で忠告したのだ。

 

『お前等の所のイギリス代表候補生がウチの部下を侮辱し、更にはこちらが公式の手順に則て買い取ったISを取り返そうとしてきたがどう言う事だ?』と。

 

束がイギリス政府に文句を言うと直ぐ様に政府は動いてセシリアを自国へと呼び戻し、代表候補生としての心構えが成っていないという事で、イギリス女王自らお説教を行ったのだ。因みにタッグマッチトーナメント戦にはセシリアはイギリスでお説教の真っ只中の為不参加となっている。

 

「……まぁ、どう言う理由で戻されたかは知ったこっちゃない。今は最初にやり合う奴とどう戦うかが問題だ」

 

イチカは、挑戦的な目線を鈴へと向ける。

 

「えぇそうね。もしあたし達との対戦だった場合は勝たせる気は無いわよ」

 

「それはこちらも同じだ」

 

鈴とイチカは互いに挑戦的な目線で見合っていると、モニターに対戦表が映し出された。

 

「さて、兄さんと私はAブロックだな。鈴達はBブロックみたいだ」

 

マドカがそう伝えると、鈴はなんだそうなの。と若干ため息を吐くも、イチカにまた挑戦的な目線を向ける。

 

「イチカ、私達と戦う前に負けるんじゃないわよ?」

 

「そっちもな」

 

そう言いイチカ達と鈴達はそれぞれの試合が行われるアリーナへと移動した。

 

Aブロックの試合が行われるアリーナへと到着したイチカ達は対戦表で相手は、例の銀髪生徒と箒だと知った。

 

「なんだ、ポンコツコンビとか」

 

「? 兄さん、なぜあの二人をポンコツと称するんだ?」

 

イチカの何気ない呟きに、マドカは気になりそう聞くとイチカは説明を始めた。

 

「軍人として心が育っていないし、秩序と言う物を全く知らない軍人。で、もう片方が力こそが全てとしか考えていない似非武士。だからポンコツコンビって言ったんだ」

 

「なるほど。確かにポンコツだな」

 

マドカはイチカの称し方に拍手する。

 

「さて、さっさと終わらせて鈴達とどう戦うか作戦を練るぞ」

 

「分かった」

 

イチカとマドカはピットへと移動し出撃に備える。

 

『皆さん長らくお待たせいたしました! これよりタッグマッチトーナメント戦を行います! まずAブロックの第1試合の選手入場してください!』

 

アナウンスの声がピット内に響いたのを確認したイチカとマドカはアリーナへと飛び出す。その向かい側では同じように、ラウラと箒が出てきた。

 

「さて、さっさと終わらせるぞマドカ」

 

「了解だ兄さん」

 

イチカとマドカはさっさと終わらせる気でいる中、ラウラと箒の方はと言うと互いに牽制し合っていた。

 

「私の邪魔をするなよ、篠ノ之」

 

「それはこちらのセリフだ!」

 

互いの準備を終えたのを確認した司会が試合開始のアラームを響かせた。

 

『それでは、試合開始!』

 

その合図とともにラウラは前へと突撃し、箒も同じように打鉄に装備されている刀で攻撃してくる。

だが互いに同じように突撃すれば邪魔になるのは言わなくても分かる。

 

「おい! 邪魔をするなと言ったはずだ!」

 

「それはお前の方だろうが!」

 

一方イチカとマドカは呆顔で二人のやり取りを眺めていた。

 

「あの二人戦う気あるのか?」

 

「こっちを見ていないから無いんじゃないのか?」

 

そう言い、イチカとマドカは武装を展開する。

 

「ミサイル一斉発射後、ビット兵器で潰すぞ」

 

「了解」

 

イチカの作戦を聞いたマドカはビット兵器を展開し、一斉射が出来る様準備する。そしてイチカは二人に向けミサイルでロックし発射する。その後に続くようにビット兵器からのレーザー攻撃が2人へと迫った。

最初に攻撃に気づいたラウラは急いでその場を飛び退き難を逃れるが、箒は間に合わずミサイルとレーザー攻撃を真面に喰らい撃墜された。

 

「チッ、避けられたか」

 

イチカは舌打ちをしながらも、バルカンでラウラに攻撃する。

 

「喰らうものか!」

 

そう叫び、ラウラはAICでバルカンの攻撃を防ぐ。だが事前にラウラのIS情報を入手しているイチカは焦ることなくバルカンで攻撃を続ける。

 

「無駄だ! このAICがある限り貴様は勝てん!」

 

もう勝ったも同然と言った感じで言うラウラ。その背後からくる者に気付かずに。

 

「隙だらけ」

 

その言葉を聞いたラウラはハッとなり後ろからの攻撃を真面に喰らう。ラウラの背後にいたのはナイフを構えたマドカだった。

 

「お前、それでも部隊長なのか? 弱すぎるぞ」

 

マドカに呆れたような様子でそう言われ、ラウラは頭に血が昇り大雑把な攻撃を繰り出す。

 

「黙れ!」

 

そう言いワイヤーブレードで攻撃するが、マドカはそれを難なく躱しビット兵器で攻撃する。

 

「ほら、どうしたのよ? あんたの実力はそんな物?」

 

「黙れと言っている!」

 

完全にマドカのペースに乗せられたラウラは大雑把な攻撃を繰り出し続ける。そしてマドカを壁際まで追い詰めたラウラは落とせると思った。だが

 

「私だけ見てていいの?」

 

「!?」

 

ラウラは完全に相手のペースに乗せられたと自覚し、その場から離れようとしたが背後から迫ったイチカのアサルトナイフに斬られ地面へと落とされた。

イチカはマドカの傍に寄って、拳をぶつけ合った。

 

『決まりました! Aブロック第1回戦はメルダース兄妹……何、あれ?』

 

そのアナウンスにイチカとマドカは可笑しな音が鳴っている方へと目を向ける。

其処には倒れていたラウラがISを展開しており、その機体からドロドロとしたスライムが出てきて何かに変わろうとしていた。

そして変化が終わったのか一機のISの姿へと変貌する。それは暮桜だった。




次回予告
突如として現れた偽の暮桜にイチカとマドカは、特別学園警備権を行使し暮桜を撃退する。
その夜、イチカは夜の星空にある願いをする。その願いが叶うとは知らずに
次回
偽りの世界最強

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。