「で、戦闘機に乗る際はこのテクニックが重要とされるんだ」
「なるほど、このテクニックが習得できないとミサイルの回避は難しくなるのか」
教室でイチカは、戦闘機乗りに必要なテクニックについてマドカに教えていた。すると教室の前の扉から一人の生徒が入ってくる。イチカはその生徒が束の妹、篠ノ之箒と気づき、我関せずと言った感じでマドカの勉強に付き合っていると、箒は2人の元へとやって来た。
「……ちょっといいか?」
「……」
「なに? 今勉強で忙しんだけど」
イチカは返事をせず、目線を一度箒に向けまた目線を教本へと戻す。マドカは返事こそするが勉強を邪魔されたことに対し、かなりイラついた表情をさらけ出す。
「……お前、千冬さんの弟の一夏じゃないのか?」
「はぁ? お前何言ってんだ?」
マドカは突然現れた箒に呆れた表情を浮かべ、そう言うとイチカも同じように否定する。
「悪いが、俺は織斑先生の弟じゃないぞ。と言うか、織斑先生の弟は既に死亡したと聞いているが」
そう言うと、箒は机に思いっきり手を叩きつける。
「嘘をつくな! お前は千冬さんの弟で私の幼馴染の一夏だろ!」
そう叫んできたため、周りの生徒は何事だと顔を向ける中、イチカやマドカはうんざりと言った顔を浮かべる。
「悪いが、本当に知らないんだ。もういいだろ? 妹の勉強を見てやっている途中なんだ」
そう言いイチカはマドカに続きをさせようとする。箒はそれが気に食わなかったのか、拳を造りイチカに殴り掛かろうとしたが、その前にマドカの拳が箒の鳩尾に入り箒は膝から崩れ落ちた。
「……勉強の邪魔をするな糞野郎」
そう呟き箒の髪を掴み上げ廊下に放り捨てる。廊下に放り捨てた際、マドカはもう一度箒の鳩尾に向け蹴りを一発お見舞いしてから教室へと戻ってきた。
教室は突然の事に驚いていると、エリシアが教室へと入ってきた。
「廊下で篠ノ之さんが、お腹を抑えて蹲ってたけど何かあったの?」
教室にいた生徒達全員何も見てないと首を横に振り、イチカとマドカは勉強を続けていた。
「そう、何もなかったのね。それじゃあ3時間目の授業を始めます。メルダース君、体はこっちに向けてね」
「は~い」
こうして何時も通りの授業が始まった。その中生徒達はさっき見た光景は胸の内に仕舞っておこうと決めたそうだ。
それから数日後、クラス代表戦が始まりイチカとマドカは、クラスメイト達と観戦室で眺めており、今は2組対4組の試合が始まろうとしていた。
「それにしても簪さん、凄いな」
「うん。1組のクラス代表、しかもBT兵器が搭載されているISに勝てたからね。けどあれだけの実力が付けられたのは兄さんのお陰でもあると思うぞ」
簪は自身のISを完成した後、クラス代表戦が始まる前日までイチカとマドカに訓練を付けて貰っていたのだ。最初でこそ簪はイチカやマドカにものの数分でやられていたが
、訓練を付けて貰ってから数分が数十分へと伸び簪の実力は着実に積んだのだ。
1組と4組の戦いでは簪は落ち着いた気持ちと程よい緊張感をもって試合に臨んだ結果、簪は今年の首席と呼ばれた1組のクラス代表に勝てたのだ。
「さて、次の対戦相手は2組か」
「そのようですね。そう言えば兄さん、小さなツインテールの生徒に付き纏われていると前に言ってましたが、あれから大丈夫でしたか?」
「ん? あぁ、まぁ大丈夫だったぞ」(それにしても何処かで見たことがある奴だったが、何処で見たかな?)
イチカは何処かで見たことある生徒に頭を捻りながら考えていると、アリーナに簪と鈴が現れた。
「ん? 兄さん、あそこにいる生徒って」
「あ。俺をストーキングしてた奴だ」
そう言うと周りにいた4組の生徒達は驚いた表情を向ける。
「嘘? 彼女、中国の代表候補生なのよ?」
「え? 中国だと」
そう言うとイチカは2組のクラス代表をよく見て、思い出したと呟き手を叩く。
「思い出した! アイツ、凰じゃないか」
「え? 兄さんの知り合いなのか?」
「あぁ、俺の幼馴染だ」
そう言いながら試合を見ていると試合開始の合図が鳴った。
その頃アリーナでは。
「さぁて、ちゃっちゃと倒してやるから覚悟しなさい!」
「負ける訳にはいかない。皆の想いを背負ってるんだから!それに、イチカ君やマドカちゃんに折角訓練を付けて貰ったから!」
そう言い、簪は薙刀の柄をギュッと握る。
(やっぱりあそこにいたのは一夏だったんだ。それにしてもアイツの傍にいた女ってマドカって言うの。どういう関係かしら?)
鈴はイチカの傍にいたマドカがどう言った人物か考えていると、試合開始のアラームが鳴った。
鈴はアラームが鳴ると我に返った頃には、目の前に薙刀を振り下ろそうとしている簪がおり、鈴は急いでその場から飛び退く。
「危ないわね!」
「よそ見していた貴女が悪い」
簪も同じく鈴から距離を置き、薙刀を再度握りしめる。鈴も双天牙月を構え直す。
「……言ってくれるじゃない。いいわ、本気で行ってあげる!」
そう叫び、鈴はブースターでジグザグで移動しながら近づき、双天牙月を構える。簪はジグザグで動く鈴本人をロックするのは難しいと思い、鈴が移動する方向を予測しミサイルロックする。
「地点ロック完了、……ミサイルファイヤ!」
そう叫ぶと、数十発のミサイルが発射されロックされた地点へとミサイルが向かう。鈴は移動していたポイントにミサイルが飛来してくるのが見え、急いで機体を反転させてミサイルを交わす。
「チッ! どんだけミサイルを撃つのよ!」
そう言いながら鈴は、龍咆を展開し圧縮した空気弾を放つ。放たれた空気弾は接近するミサイルを巻き込みミサイルを別の場所へと落とさせる。
「やるじゃない」
「あんたもね」
そう言い、鈴は展開した龍咆の照準を簪へと向けつつ笑みを浮かべ、簪も同じように薙刀を構え直し、笑みを浮かべていると突然避難アラームが鳴り響いた。突然の事に簪達は驚いていると、アリーナの上に張っていたシールドが破壊され一機のISらしき機体が降りてきた。その機体は濃い緑をしていた。
「ちょっと、いきなり乱入だなんて何処の誰よ」
「……」
緑の機体は何も言わず、ただ沈黙しており左腕に付けたビーム砲を突然鈴達の方に構え攻撃を開始する。
「いきなり攻撃!?」
鈴と簪は急いでその場から離れる。
その頃観戦室にいたイチカは驚いた表情を浮かべていた。
「何でこの世界にドラケンⅢが……」
イチカはこのままでは不味いと思い周りを見ると、観戦室にいた生徒達は急いでアリーナの出入り口へと向かい、外へと脱出を開始していた。すると突然通信が入り、イチカはそれに出ると画面にはスコールが映っていた。
「スコールさん何か用ですか?」
『今さっきIS学園の学園長から、其処に出現している所属不明のISの撃退を依頼してきたわ。2人は直ぐにアリーナにいるISの撃滅をお願い。それと指示は随時こちらから出すから、現場指揮を任されている織斑千冬の指示には従わなくてもいいわ』
「了解です」
そう言いイチカは通信を切り、マドカに顔を向ける。マドカはその顔を見て事情を察する。
「依頼が来たんだな?」
「あぁ、行くぞ」
そう言うとマドカは頷き、イチカと共に駆け出す。
イチカとマドカは避難する生徒達の反対方向へと行き、ピットへと入り出撃準備をする。すると通信が入りそれに出ると千冬だった。
『そこで何をしているメルダース兄妹!』
「何って、学園からの依頼であれの討伐の為此処に居るんです。あ、それと我々の指揮権は貴女にはありませんので。では失礼します」
そう言いイチカは通信を一方的に切り、マドカと共にアリーナへと出る。アリーナへと出ると鈴と簪の状態は酷く、既に装甲がボロボロだった。
「交代だ」
「っ! イチカ君、マドカちゃん!」
「まさかあんた達2人でやる気? 無茶よ! 此処は私達も」
「既にSEなどが乏しい2人が居ても邪魔なだけ。だから早くピットに引っ込んで」
マドカがそう言うと、鈴は顔を真っ赤にさせて怒鳴る
「邪魔ですって! 大体私は「分かった。2人とも気を付けてね」ちょっと、離しなさいよ!」
簪は暴れる鈴を引きずってピットへと避難し、アリーナにはイチカとマドカしかいなかった。
「さて、マドカのISは何時でも戦えるよな?」
「勿論。足手まといになるつもりはない」
そう言いマドカは自身のIS『サイレント・ゼフィルス』に装備されているBT兵器を展開する。
「さて。おい、お前。一つ聞く、その機体は何処で手に入れた?」
「……」
イチカの問いに緑の機体は何も言わず、ただ黙って攻撃をしてくる。
「無視か。なら機体から引きずり降ろして聞くまでだ!」
そう言いイチカはミサイルを発射させ牽制する。緑の機体は左腕に付けているビーム砲を背中に付け、元から付いていたであろうビームバルカンでミサイルを撃ち落とす。
「やっぱりドラケンⅢに似ているな。マドカ、奴の背中に付いているビーム砲を破壊してくれ。あれを撃たれるとシールドを貫通して生徒達が危ない」
「了解」
マドカは展開したBT兵器を、あちらこちらに配備し、攻撃を開始する。BT兵器から放たれたビームはドラケンⅢとは違う方向へと発射されるが、突然ビームの方向が変わりドラケンⅢへと向かう。ドラケンⅢは突然自分の方向へとビームが曲がり迫ってくることに対応できず攻撃を受ける。ビームの一つが背中にあったビーム砲に命中し爆発し、背中から強い衝撃と熱を受けたドラケンⅢは倒れ込む。
「……どういう事だ?」
イチカは今見えている光景に疑問しか湧かなかった。
「兄さん、あれって」
「あぁ、機械だな」
ドラケンⅢの背中から見えたのは、本来人が居るところが機械で一杯で、其処に人なんていなかった。
「ロボットなら躊躇いなくできるな」
そう言い、イチカはワンオフを起動する。流れ始めた曲は『AXIA~ダイスキでダイキライ~』だ。
発動した後、イチカは一気にドラケンⅢの懐に入り込みアサルトナイフで切り込む。本来だったら浅くまでしか刺さらなかったナイフは、ワンオフ発動中は深々と刺さりドラケンⅢから黒煙が上がり始める。イチカはその後、何度もナイフで斬り込み完全に動かなくなったのを確認しその場から退避すると歌は終了し、同時にドラケンⅢは爆散した。
「エネミー、シャットダウン」
「お疲れ、兄さん」
マドカの労いの言葉に素直にありがとうと言い、イチカもマドカを褒める。
「マドカの援護がなければ、こんなに早く片付かなかったし、マドカもお疲れ様」
そう言い頭を撫でると、マドカは照れた表情をあまり見せないように顔を下に向ける。
すると通信が入り、イチカが出ると画面には学園長が現れた。
『お2人ともお疲れ様です。お疲れの所大変申し訳ないのですが、学園長室に来ていただいても宜しいでしょうか?』
「報告ですか? それでしたら構いませんが」
『ありがとうございます。では学園長室でお待ちしております』
そう言い、学園長は通信を切り、イチカはマドカと共に学園長室へと足を向けた。
発動した効果
起動中は攻撃力が数段上がる
次回予告
報告をしに学園長室へと向かったイチカとマドカ。中に入ると千冬や担任のエリシアなどの教師と他に1年の専用機持ちがいた。イチカとマドカは報告をして、部屋から出て行こうとすると千冬がイチカのISを没収しようとしたが学園長に阻止される。そして寮へと戻る途中に鈴が話があると言ってイチカを屋上に呼ぶ。
次回報告~この機体は私の専用機だから~