不定期の投稿にはなりますが、放棄はしないつもりですので、見ていただければ幸いに思います。
それでは、どうぞご覧ください。
駆け付けたアイズたちの加勢により、キャンプを襲撃していた芋虫たちは次々に撃退されていった。一枚岩の壁に群がる芋虫たちは斬撃、刺突、打撃、魔法など、様々な方法でその数を減らされてゆき、ついに最後の一匹が倒された。
「終わったー!」
芋虫の掃討を終えティオナが歓喜の声を上げ、ロキ・ファミリアの間に張り詰めていた緊張の糸が解ける。怪我を負った者たちの治療で多くの団員が右往左往する中、ファーナムは一人離れた場所で静かに佇んでいた。
(最初に襲い掛かって来た獣の群れ、そしてこの芋虫共……)
一面に広がる瓦礫と芋虫の残骸を眺めながら、ファーナムはこれまで屠って来たモンスターとの戦闘を思い返していた。より正確に言えば、モンスターたちを倒した時に感じた、
(あいつらを倒した時に流れ込んできた、あの妙な感覚。ソウルに似ていたが、どこか違うように感じた……あれは何だ?)
兜の奥で眉をひそめながら、ファーナムはそんな事を考えていた。ソウルに似ていたが、それでも何かが違っていた。まるで自身の体の中に得体の知れない何かが入り込んでくるような感覚に、ファーナムは今さらながら悪寒を覚えた。
そんなファーナムの背に、静かに語りかける者がいた。
「何を見ているんだい?」
「む……」
振り返ると、そこにはロキ・ファミリアの団長こと、フィンの姿があった。背後にリヴェリアとガレスを引き連れたフィンは、親しみを感じさせる口調でファーナムに語りかける。
「キャンプの危機を救ってくれた事、ロキ・ファミリアの団長として礼を言わせてくれ。君の機転の利いた判断が無ければ、きっとさらに大きな被害が出ていただろう」
「引き換えにお前たちの資材の半分を瓦礫の下敷きにしてしまったがな」
「構わないよ。確かに少し惜しくはあるけど、団員たちの命には代えられないからね」
ファーナムの言葉を笑って受け流したフィンはさらに一歩前に出る。長身のファーナムの腰ほどの身長しかない
「改めて、君に感謝を。そしてどうか許してくれ。僕の部下の軽率な行動が、君の癇に障ってしまったようだ」
「先程も言ったが、そう気にするな。ろくに確認もせず殴りかかったのは俺の方だ。すまないと思っているのなら、これでこの話は手打ちとしよう」
「そう言ってもらえると助かるよ。でもそれとは別に、君には団員たちを助けてもらった恩がある。是非とも僕たちの
親しみを感じさせる微笑みを湛えながら語りかけるフィン。しかしファーナムには、その笑顔の裏に何か隠されているのではないかと勘繰った。
フィンの後ろに控えているリヴェリアとガレスからの視線には、最初に会った時のような刺々しさは無くなっている。先程の行動が功を奏したのか、どうやら敵という認識は改めてくれたようだ。
しかし今度はその視線に、何か得体の知れないモノを見るような色が混ざっていた。
武器や防具などを自身のソウルに還元し、必要な時に取り出す。この方法は不死人ならば誰でも当たり前のように出来る芸当である。しかし竜狩りの大弓を取り出した時の二人のあの驚きよう。
もしやと思ったファーナムの背後に、ティオナの大きな声が投げかけられた。
「ねぇねぇ!さっき天井に向かって槍を投げたのって、もしかして君?」
振り返れば、そこには戦闘を終えたティオナが槍を持ったままの状態で立っていた。近くにはティオネにベート、アイズもおり、その視線は全てファーナムへと注がれていた。
問いを投げ掛けたティオナはと言うと、ファーナムに対する好奇心から落ち着かないと言う様子で、槍をくるくると後ろ手で回転させている。
「うるっせえんだよ、馬鹿アマゾネス。キンキン響く声で喚くなってんだよ」
「ベートに同意するようで癪だけど、確かにね。ティオナ、あんたはもっと落ち着きを持ちなさい」
「えー、なにさ二人して。だって気になるじゃーん」
うんざりしたような顔のベートとティオネに、ティオナは頬を膨らませる。その近くに無言で立っているアイズを含めた四人を視界に収めたファーナムは、ここでようやくアイズを除く三人の事を思い出した。
振り下ろした剣を弾き飛ばし、自らの肩に傷を負わせた
ファーナムがそんな事を考えているとは露知らず、ティオナはてててっ、とファーナムの目の前までやって来ると、まるで兜の中を探るかのように見上げてきた。
「それでそれで、どうなの?やっぱり君がやったの?」
身長差から自然と見下ろすような姿勢になるファーナム。ティオナのその好奇心に満ちたキラキラとした眼差しに若干気圧されながらも、彼は肯定の意を示す。
「ああ。槍、と言うと少し違うがな」
「え?あれって槍じゃないの?」
頭に疑問符を浮かべるティオナ。その後ろにいるアイズたち三人も同じ事を思ったようで、それぞれ怪訝そうな顔を浮かべている。
「槍じゃないって言うなら、あれは何だったのよ?」
四人の疑問を代弁するかのように、今度はティオネが話しかけてきた。これに対してファーナムは顎でしゃくってリヴェリアとガレスの方を指す。
「そこの二人の口から聞くと言い。その方が信じ易いだろう」
フィンたちの視線が自然と二人に集まる。リヴェリアはその視線を受け、努めて真剣な声で口を開いた。
「確かに彼……ファーナムの言った事は事実だ。あれは槍では無く……矢だ」
信じがたい事だがな、と付け足すリヴェリア。その口から語られた事実にフィンは怪訝そうな顔をし、アイズたち四人は呆気にとられる。
「はぁ?」
「え゛……“や”って、あの矢?」
「……冗談でしょ?」
「……」
リヴェリアの予想外の発言に固まる若き一級冒険者たち。無表情が常のアイズでさえもその事実に目を見開いたまま驚いている。四人の思考が混乱する中、フィンは背後にいるガレスに確認を取る。
「リヴェリアが言った事は本当の事なのかい、ガレス」
「ああ、儂もこの目でしかと見たわい」
「ンー……どうやら本当に、あれは矢だったみたいだね。でもあれだけ大きな矢を射るには弓自体も相当に大きいはずだ。あの矢も含めて、君はそんなものを何処に仕舞っていたんだい?」
フィンの目は真っすぐにファーナムを見据えている。アイズたちもやはり気になるようで、口こそ開かないもののその視線が疑問を投げかけてくる。
「……何も話していなかったのか」
「済まない、フィン達に話す時間が無かった。それにお前の口から直接聞いた方が良いと思ってな」
ファーナムの確認にリヴェリアはそう返答した。
破壊の大矢を槍と間違えていた事から何となく分かっていたが、やはりフィン達には何も説明はされていなかったらしい。ファーナムは軽く溜め息を吐き、その手に自身の中にあるソウルを収束させる。
淡い光の粒は瞬く間に収束し、ファーナムの手に竜狩りの大弓を形作った。
「うわっ、なにそれ!?」
ティオナの素直な驚きの声が木霊する。竜狩りの大弓のその巨大さもそうだが、突如として虚空から現れたかのようなその光景に、フィンですらが目を見開いている。
「まぁ、この通りだ」
「いやいや、全然分かんないよ!?」
「……それは君のスキルなのかい?」
竜狩りの大弓を食い入るようにして見ているティオナ。そんな様子にまるで見慣れない物を見つけた小動物の様な印象を抱いたファーナムに、またしてもフィンが質問をしてくる。
スキル。またしても聞き慣れない単語だ。ファーナムは先程のリヴェリアたちとの会話と同じく話を合わせる事にする。
「ああ、武器や防具といった物を自由に取り出せる。……お前たちの中にこれと同じ事が出来る者はいないのか?」
「少なくとも、僕は聞いたことが無いな。そんな事が出来る者がいれば、たちまち噂になるだろうけどね」
その言葉にファーナムは僅かな驚きを覚えたが、しかし同時に、どこか妙に納得する事が出来た。
『闘技場』で目が覚めてからと言うもの、分からない事だらけだった。ダンジョンだのスキルだのと全く知らない単語が飛び交い、こうしてソウルから武器を取り出して見せただけでこの驚き様。
(もしかするとここは俺の知らない全く未知の場所で、不死人という存在が知られていない程の秘境の地なのか……?)
「ねーねー、ホントにこれであのでっかい矢を射ったの?」
ファーナムの思考を遮るように、ティオナは場違いな声でそう聞いてきた。見れば先程よりもさらに顔を近づけており、指先でちょんちょん、と竜狩りの大弓をつついている。
「お前は……少しは警戒しないのか?」
「え?」
若干呆れたようなファーナムの声に、ティオナはその顔を上げて反応する。
「いや、あの時お前を殴ったのは俺だぞ?なぜそんなに無警戒でいられる」
「あー、その事」
ファーナムの質問の意味を理解したティオナはにかっ、と笑って腕を頭の後ろで組み、事も無げにこう言ってみせた。
「でもキャンプを守ってくれてたんでしょ?じゃあ何の問題もないじゃん!それにあたし、結構丈夫だし!」
「……」
思わず閉口するファーナム。ティオナのその清々しいまでの主張に、アレコレ考えるのがバカバカしくなってしまう。
「アンタ……もう少し疑うって事を覚えなさいよ」
姉のティオネもそんな妹の能天気さに呆れ、手で頭を押さえている。苦労が多そうだなと思ってると、ここで不意にも一人の青年と目が合った。
「あぁ?」
目が合った青年……ベートはその顔に嘲笑を浮かべながら、まるで喧嘩を吹っかけてくるチンピラのように、ファーナムに突っ掛かってくる。
「何だよ、俺に蹴られたのが気に食わねぇってか?」
ポケットに手を突っ込んだまま挑発してくるベート。他者を嘲る視線を受けながらも、ファーナムは落ち着き払った様子で応じる。
「いいや、あれは俺の不注意が招いた出来事だ。自身を戒める事はあれど、逆恨みしようなどとは思っていない」
「……ちっ、雑魚が」
ファーナムの全く動じない様子に、ベートは舌打ちしながら踵を返してその場から離れてゆく。
「すまない、気を悪くしないでくれ。あいつは誰にでもああいう態度を取るんだ」
「構わん。そこまで気にしていない」
離れてゆくベートの後ろ姿を眺めているファーナムの背に、リヴェリアから謝罪の声が掛けられる。竜狩りの大弓を自身のソウルに還元しながらファーナムが短く返答すると、テントの残骸と瓦礫が散乱するキャンプにフィンの声が響き渡った。
「総員、地上へ帰還する準備を!サポーター、及び下位団員は無事な物資を持て!他の者は周囲の警戒に当たれ!」
速やかに帰還の準備を進めるフィン達を見ながら、ファーナムは今後の事を考える。
自身の考えが正しければ、恐らく地上とは文明と秩序がある場所だ。マデューラを始めとする、不死の溢れた荒廃した場所ではないだろう。人の営みが存在する以上、問題が起きた場合、力任せに物事を解決する訳にもいかない。
それ以前に、そもそも無事に地上まで帰還できる保証も無い。右も左も分からない以上、今はとにかく情報が欲しい。
短い思考を終えたファーナムは指示を飛ばしているフィンの元まで歩み寄り、その小さな背に声を掛ける。
「少しいいか?」
「うん? なんだい?」
振り返ったフィンは大柄なファーナムに気圧される事無く、まっすぐに視線を向けてくる。ファーナムは口を開き、自身の要求を述べる。
「地上への帰還に俺も同行したい。この要求を呑んでくれれば、その後でお前たちの
まるで来た道が分からないとでも言っているかのようなファーナムの申し出にフィンは少し引っかかるような気がしたが、
フィンは口元に笑みをたたえ、この申し出を快諾した。
「もちろん良いとも。
そう言って右手を差し出してくるフィン。意図を理解したファーナムは同じく右手を差し出し、固い握手を交わす。
その際、フィンの目が若干細められたが、ファーナムはあえて言及しなかった。
(何やら思惑があるようだが、邪なものでは無いだろう……。この者からは、
大盾に槍を持った男の事を思い出しながらも握手を終えたファーナム。帰還が始まるまで、束の間の休息でも取ろうかと思い、近場に転がっている瓦礫に腰を掛けようとする。
その直後であった。
バキリ、ベキッ、と木々をへし折る破砕音と共に、何かがファーナム達のいるキャンプまで近づいて来る。
明らかな異常を感じたアイズを始めとする団員達が一斉に武器を構える。ファーナムもその例に漏れず、その手に狩人の黒弓を取り出し、素早く構える。
しばしの時を置き、それは現れた。
「……あれも下の階層から来たって言うの?」
「迷路を壊しながら進めば……何とか?」
「馬鹿言わないでよ……」
ティオネとティオナの呆けたような会話が、静まり返ったキャンプにやけに大きく反響する。誰もが動けずにいる中、ファーナムは兜の奥で静かに目を見開く。
全員の視線を釘付けにしたものの正体、それはモンスターであった。
体長はおよそ6M。先程戦った芋虫の大型個体よりもさらに一回り大きい。しかしそれよりも目を引くのは、その芋虫の体の上半分であった。
女性を彷彿とさせる線の細さと、肥大した腹部。妊婦と呼ぶにはあまりに醜悪な容姿のその体は黄緑色に染まり、顔面にまで及んでいる。
目も鼻も口も無いのっぺらぼうな顔の後ろ、後頭部からは何本か管の様な器官が垂れている。エイの様な扁平な腕が二対四枚、それを振り回して木々をなぎ倒しながらこちらへやって来る。
そんなモンスターが、二体。
横に並んで同じ速度で行進する二体の女体型のモンスターを目撃した団員の顔が緊張に固まる。
ここで二体の女体型のモンスターの内の一体が、おもむろにその腕を大きく広げた。
ふわりと舞う光。その正体は鱗粉の様な何か。七色に光る極彩色の粒子はファーナム達の元まで漂ってくる。
瞬間、ゾワリとファーナムの背筋がわなないた。
瞬間的に狩人の黒弓から、何らかの石碑を転用した即席の盾『ゲルムの大盾』を両手で構えたファーナム。アイズ達、第一級冒険者達がその場から飛びのく中、ファーナムは腰を落としてしっかりと地面を踏みしめ、ゲルムの大盾を構える。
そして次の瞬間、漂ってきた無数の粒子が一斉に爆発した。
「きゃぁぁあああああああああああっ!?」
「ぐぅ……っ!!」
響き渡る爆音。レフィーヤの甲高い悲鳴がキャンプに鳴り響き、凄まじい熱がファーナムと団員達の頬を叩く。
何とか爆発を凌いだファーナムはゲルムの大盾をずらし、目の前に広がる惨状に瞠目した。
テントの残骸も瓦礫も、一切合切が爆風に巻き込まれていた。どうやらファーナムの立っていた場所以外は、全て爆発の餌食になってしまったらしい。
「総員、撤退だ」
砂埃が舞う中、フィンは静かにそう告げる。
「各自、最小限の物資を持ってこの場から離脱する。リヴェリア達にも伝えろ」
フィンの言葉に、ベートとティオナから反論の声が上がっている。どうやらフィンの判断に不満があるようだが、ファーナムはそんな事よりも、目の前の女体型のモンスターを見据えて静かに思案していた。
(大した爆発ではあったが、耐え切れないほどでは無い。ゲルムの大盾もほとんど傷付いていないようだし、遠距離から攻撃し続ければ倒す事は可能か)
しかし、とファーナムはある事を危惧する。
(相手は2体、それもまだまだ全容が掴めていない。他にどんな攻撃手段があるかまだ分からない以上、一人で戦うのは避けるべきだが……)
戦うべきか、退くべきか。悩んでいるファーナムの耳に、あるフィンの決断の声が届いた。
「アイズ、僕と一緒にあのモンスター達を討て」
その声に振り返るファーナム。どうやらあちらではアイズとフィンが、このモンスター達を相手取る事にしたらしい。
(これは好都合だ)
願っても無い増援に思わず兜の中で口角が吊り上がるのを感じた。ゲルムの大盾を背負いながら、ファーナムは指示を飛ばしているフィンに近付いてゆく。
「僕とアイズが時間を稼ぐ。リヴェリア達は十分に距離を稼いだら信号を……」
「待て」
そこにファーナムが声を掛ける。フィンの説明に口出しされた団員達は怪訝な目を向けるが、ファーナムは気にせずにフィンに話しかける。
「あのモンスターは俺と剣姫……アイズとで相手をする。フィン、お前は他の団員達と共に離脱しろ」
「なっ!?」
ファーナムの提案に目を見開くフィン。他の団員達も、まさか余所者のファーナムが殿を務めるとは思わなかったらしく、一様にその顔を驚愕の色に染めている。
「ちょっと、それならあたしが残るよっ!」
「余所モンにケツを守られるなんざ、冗談じゃねぇぞ!?」
ティオナとベートがフィンに詰め寄る。確かに出会って間もない者に殿を任せるなど、普通ならば考えられない事だ。しかしフィンはキャンプでの出来事を加味し、ファーナムに尋ねる。
「……何故、そこまでしてくれるんだい?守ってもらった僕らが言うのも何だけど、君は部外者だろう?」
「なに、お前が思っている程深い考えではない」
ファーナムは一呼吸おき、進行を続けている二体のモンスターの方を見ながら、こう言い放った。
「ただ確認したい事があった。今の状況は、それを行うのに丁度良いというだけだ」
「……そうかい」
背を向けたファーナムに、フィンは一言だけそう言って踵を返す。そして他の団員たちに聞こえるような大きな声で宣言する。
「総員、離脱を開始する!殿はアイズと、この彼、ファーナムが務める!!」
ロキ・ファミリアの団長であるフィンのこの声に、異を唱えられる者などいなかった。ある者は後ろ髪を引かれながら、ある者は不承不承ながらも、速やかにその場からの離脱を始める。
「すまない、だが決して無茶はしないでくれ」
「何度も言わせるな、俺は確認したい事があるだけだ。それに俺はここで死ぬつもりなど毛頭無い」
「……すまない」
そう言って、フィンも離脱の列に加わる。残ったのはゲルムの大盾を背負ったファーナムと、デスペレートを携えたアイズのみ。
瓦礫だらけのキャンプに並んで佇む二人の視線の先には、未だに進行し続ける二体の女体型のモンスター。なぎ倒した木々を踏み潰しながら、その肥大した腹部を醜く蠢かせている。
「……あ、あの」
「む?」
眼前に迫るモンスターを眺めていたファーナムに、アイズの遠慮がちな声が掛けられる。首だけを動かしてアイズの方を見ると、彼女はファーナムを見上げながら口を開いた。
「よ、よろしくお願いします……」
そう言って、軽く会釈するアイズ。張り詰めていた空気が僅かに緩むのを感じたファーナムは兜の奥で軽く笑った。
「あぁ、よろしく頼む」
ファーナムは背負ったゲルムの大盾を構え直しながら、そう短く返答した。