いい感じのサブタイトル思いつきません。「~に~は~」にあう中二的なやつ難しいです。あと、ヒロアカアニメ、ステインさんかっこ良かったです!
「よし、機奇これ個性を使って投げてみろ」
「はい、分かりました」
機奇はボールを手で握り、個性を使う。
「支配……」
するとボールは形を変え全長一メートル程の元のボールよりも明らかに質量の増えた槍状になる。そして機奇はグラウンドを見て、白線の引かれた円内で足を前に出しボールを垂直に投げる。
ボールはそこに空気が存在しないように真っ直ぐに一定の速度を保ち空を直進し続ける。
「……おい、機奇あれどこまで行くんだ?」
「私が個性を解くまで、ですね」
「……無限と記録しとくぞ」
「は~い」
生徒達は驚いたように機奇を見つめる。
機奇がやったことは、まずボールの支配をし形状を飛びやすい物にする。傍から見れば質量が倍になったように見えるが質量自体は変わらずボールの生地を極限まで薄くした。その上で強度を鉄程の固さに強化する。
次にボールの周りの重力を支配し、空気抵抗を無いものとする。それによりボールだけがまるで宇宙空間を飛行するようになり、機奇が支配を解かない限り飛び続ける。
これにはこれと言ったデメリットはなく、支配を継続するため常時個性を使っていることになる。それによる体力の消耗も無いわけでないが、たった一本程度なら機奇が疲労を感じることはない。
「ヒーローになる為の三年間……お前そんな腹づもりで過ごす気でいるのか?」
緩んだ空気に相澤の言葉で緊張が走る。
最下位は除籍処分すると言う相澤の一言で生徒達は気を引き締める。その中機奇は一人空を見上げながら、「空が青いなぁ~」と言っておりなんとも気楽だ。
一種目・短距離走。
「飯田と四罪忌」
「はい!」
「はーい」
クラウチングスタートの姿勢でいつ合図がかかっても走り出せるようにゴールを見据える飯田。ゆらゆら片足を振り両手を後ろで組み、気だるげな機奇。
対照的な二人だ。
「よーい、ドン」
地面を蹴り飯田は弾け出すように走る。そのスピードは早くクラスで一番ではないかと思われた。
「四罪忌、0秒10」
「飯田、3秒04」
機奇がいなければ。飯田は速さで自分が負けたことに驚くが、当の本人は何てこと無いように空を見上げている。
機奇がやったことは先程のボール投げより単純である。白線の引かれた一直線上の空間を個性でゴール地点まで支配し、スタートの合図と共にゴールまで飛ぶ。いや、この場合は転移と言った方が適切だろう。
支配した空間は色がつくわけでも無いので事情を知らない人から見ればいきなり目の前に現れたようになる。
これは支配する空間が巨大で有ればあるほど体力を消耗する。
なら、ゴール地点だけを支配すればいいように思えるが、空間と空間の間をあけて支配することは出来ない。ワープなどの座標が分かれば行ける個性と違い、有効範囲は機奇の視界に写っていることや、1度はその場所を自身で訪れている事が条件となる。
「機奇くん、君早いな!」
「ん?そうかなぁ?」
「あぁ、凄いな!僕も精進しなければ!」
「うん、頑張って」
機奇は手をひらひらさせ、愛想笑いをしながら受け答える。その緊張感のない態度とは相反し彼女の能力テストの成績は比例しなかった。
二種目・握力測定。計測機械を支配し、最高値を叩きだし。三種目・立ち幅跳び。土を飛び上がる瞬間上に上げ、六十メートル。四種目・反復横飛びは素の身体能力で六十回。
そして現在ボール投げである。
緑谷がボールを投げたが相澤が個性を消し、生徒達は困惑した面持ちで事の成り行きを見まもっている。その緊迫した空気に一つ気の抜ける様な声が上がる。
「出久くん、頑張れ~」
「!……機奇さん」
手を振りながら一人緑谷の応援をする機奇。最下位は除籍処分になると言うのに人の応援をする彼女に生徒達は驚いた顔を向ける。相澤は睨むように目を向けるが機奇は気にした様子も見せずただただ笑顔を崩さない。
機奇の能力結果的に最下位になることはまず無いから出来る行為だ。最下位になりそうな人間は応援など敵に塩を売る事はしない。
あまり行動の読めない機奇だが、これが善意でないことは確かだ。
折角殺しがいのある生徒を見つけたのに早々に退場されては面白くない。この試練を乗り越えてもっと強くなって欲しい。今のままでは駄目だと機奇は思う。
支配の個性を持つ故にか他人の個性には敏感だ。だから彼女は緑谷の個性に違和感を覚えた。相澤に消されたが、瞬間的に緑谷の腕に集中した個性はそのまま打てば彼の身に何らかの反動がきただろう。
完璧に操れていない個性を持つ少年。個性の発覚は四歳までとされいる現在、それなりの時を共にする個性を把握出来ていないのは可笑しい。機奇は更に個性を使い緑谷の周りの空間を支配し調べようと考えるが相澤の目があり、今回は断念する。
「ッーーー!!」
緑谷の放ったボールは空を切り「705.3m 」と言う記録を叩き出す。クラス内でも中々の記録である。
だが、その代償か緑谷の指は赤黒くなっているが、彼は目に涙を滲ませながら「まだ……動けます」と笑って見せた。
「……良いねぇ」
手で口元を隠し機奇は笑う。その笑いは先の作り笑いとは違い正真正銘の心からの笑みだろう。見込み通りだ。嬉しく愉快だと彼女は緑谷に溢れんばかりの怒気を身に宿した爆豪・勝己を目の端で捉えながら笑いを呑み込む。
「どーいうことだ、こら、ワケを言え!デク、てめぇ!!」
「うわああ!!」
そんな爆豪は相澤が止め、滞りなく能力テストは終了した。
そして結果発表と生徒達が気を引き締めるなか相澤から言葉の爆弾が投下された。
「除籍処分は嘘。お前達の実力を計るためだ。合理虚偽だ」
「「「合理虚偽ーー!!?」」」
一部の生徒を除いた生徒の声がハモり大声を上げる。それを見ながら機奇はクスクス笑う。彼女は嘘でも本当でも正直どっちでも良かったがクラスメート一人も欠けず能力テストを無事終えた事を嬉しく思う。
皆若き良き人材だ。これを一から探すとなると骨が折れる。
機奇は靴を翻し生徒達の喧騒から遠ざかるように着替えをした部屋に足を進めようとする。そこへ声がかかる。
「あなた凄い個性ね」
「ん?あぁ……そうかもね?」
「何で疑問系?私は蛙吹・梅雨。梅雨ちゃんと呼んで」
「私は四罪忌・機奇。好きに呼んでくれたら良いよ」
艶やかな濡れたような髪をした少女、蛙吹・梅雨。機奇はさっと人の良さそうな笑顔を浮かべ挨拶をする。機奇がクラス内で目指すポジションは気軽に話せる友達と言ったところだ。親しすぎず、だが遠すぎず一定の安定した距離のある友人。
今までの学校生活でこのポジションが一番都合がいいと機奇は学んだ。近すぎれば何か事件が起きた時に怪しまれる。遠すぎれば疑われる事はないが、それでは面白くないと機奇は思う。
彼女はギリギリを攻めるのがスリリングで楽しい。何より表面上、友人関係にある者が涙を流しその事件を起こした犯人である自分に泣きつく姿はとても滑稽で機奇は愉快なのだ。
だから、機奇は笑みを顔に張り付ける。
「宜しくね、梅雨ちゃん」
「うん、四罪忌ちゃん」
テストで補習にかかるとスマホ没収とか熱中症+なんとかウィルスで入院とか色々忙しかったです。