てっきり、ヒロアカ体育祭が終わったらアニメも終了するものだと、思っていてらまだあるみたいで嬉しい作者です。やったぁ!ステインさんでるよね!
星明かりが空に疎らに散らばり、月が上空へと昇った夜の刻。街が明かりを灯し人々が行き交う中、暗い路地に赤い飛沫があがった。
「……ハァ……私利私欲にまみれたヒーローは"粛清対象"だ……」
ヒーロー殺し【ステイン】。血が付いた武器を払い鞘に納める。壁には喉を捌かれヒーローのコスチュームだっただろう服を着た青年が血を流し倒れている。そしてステインはもう用はないと言うようにその場を去ろうとする。
すると、そこに聞き慣れたよく通る少女の声が響く。
「やぁ、ステインさん。悪いニュースと良いニュースどっちから聞きたい?」
「何のマネだ?……消えろ」
「相変わらず、つれないねぇ~」
足を進め、屋根から屋根へと飛び移るステインを後を同じ速さで走りながら機奇は愉快そうに笑う。いつも以上に機嫌が良さそうな機奇にステインは嫌なものを見たと顔をしかめる。大抵彼女の機嫌が良いときはろくでもない事が多数派を占めるからだ。
今日殺したヤツはいきが良かった、泣き顔が最高だった、恋人を捨てて男が逃げた、ヒーローが命乞いをした、等々何とも血生臭い。この年の少女がするような話題でない。
その話題事態はどうでもいいと思うステインだが、機嫌が良いときの彼女は饒舌なのだ。嫌気が差すぐらい粘っこく返事のないステインに話しかけてくる。痺れを切らし刃を向けたのは一度や二度ではない。しかし彼女は隙だらけに見えて全く油断がなく、笑いながらも周囲の警戒を怠らないぐらい用心深い。
身軽な振る舞いからも彼女はとても速く、回避に専念されるとステインは攻撃を当てることが出来ない。その上攻撃を避けながも会話と言ってもいいのか微妙だが止めることはせず、ひたすら話す。
体力と精神力を両方を削られる。
「……ハァ……で、何だ?」
「じゃあ、まず良いニュースから!」
だから、満足し去ってもらう方が消耗することなく最善の方法であり、仕方なくステインは折れて話を聞き流す事にする。彼女の取り扱い説明書が欲しく思うステインだった。
「な、な、なんと!私に友達が出来たのです!」
「……そうか……っハァ!?」
嘘だと言う顔で見るステインにしてやったりと笑う機奇。
友達と言ったのか?この狂人が?友達?……あり得ないとステインは思う。だが彼女はクラスメイトのことを話すとき一度も友達と言う単語を使った事がない。今の今まで機奇が"友達"と呼ぶ相手をステインは聞いたことがない。なら、相手はともかくコイツはその誰かを友達だと思っていることになる。
そして機奇は妙に律儀なところがあり名前を呼ぶにしても許可を得ようとする。ステインの時もそう呼んでいいかと、許可を出すまで何度もしつこく聞いてきたのだ。即ち彼女が友達と言うのなら相手もそれを認めた事となる。
「……ハァ……誰か知らないが、そいつは相当の馬鹿だな」
「ん?片方は結構落ち着いた人だよ。もう片方は子供ぽいけど」
平気で人を殺すぐらい狂った機奇だが頭はよく、物事を客観的に見る事が出来る。彼女が落ち着いた人と言うのなら言葉通りで子供ぽいならその通りなのだろ。
勘だが落ち着いた人と呼ばれた者は苦労してそうだとステインは感じだ。
「そして、デッデデン悪いニュースです」
「…………」
「私高校に通うことになったのです」
「そうか」
悪いニュースと言うわりには普通だと誰もが思うだろう。だが機奇は少し残念そうにしている。
「だってステインさん会う時間減っちゃうよ?あと折角友人出来たのに明日から学校なのだよ」
「それは俺からすると嬉しいニュースだな」
「おや、酷いな。でも時間が空いたときには会いに来てあげるから寂しがらなくていいよ~」
「とうとう、脳まで狂ったか?」
寂しがる?誰に言っている?……ステインはもう相手にするのが面倒だと感じる。そんな彼に機奇は鞄から飴を取りだし一つ手渡す。
初めて会ったときから機奇は何故か御菓子を一つ渡してから帰るのだ。それをステインが受け取ろうとしなかろうと彼女はそうする。そしていつしかそれが機奇とステインの決まりの様になっていた。
「じゃあ、またね。ステインさん」
「……ハァ……もう来るな」
「やーだ、バイバイ」
手を振り別れの挨拶を終えるとステインの目の前から機奇が姿を消す。
ステインは溜め息を吐き、手にある飴を口に入れる。
「……ハァ……」
昆布味であった。
夜から時は進み日が登り人々が目的地に歩き出す。機奇も現在向かっていた。普通の扉の倍はある扉の前にいる、中からは声が聞こえる。賑やかだなぁと思いながら機奇が扉に手をかけると後ろから声をかけられる。
「お、おはよう!」
「ん?……あぁ、おはよう」
深緑色のモジャモジャした髪に頬にそばかすのある少年。機奇は会えたことに嬉しくなる。キラキラとした目に元気いっぱいな健康そうだ。
「確か、【緑谷・出久】くんでしたっけ?」
「そうだよ……って何で僕の名前知ってるの!?」
「たまたま知っただけだよ、出久くん」
驚き目を見開く出久に機奇は笑って曖昧に濁す。さすがに、クラスに殺しがいのある子がいないかと雄英のサーバーを一時的に気づかれないように個性を使い乗っ取り調べた、とは言えない。
そして一応同級生の顔と名前は全て覚えた。手順が普段殺したいヤツを探るものと同様だが機奇は細かいことは気にしない主義だ。
「まぁ、ここで立ち話もなんだ。中に入らない?」
「あぁ、うん!そうだね!」
オロオロしながら頷く出久に笑いかけ機奇扉を開ける。
喧騒と賑やかな話し声に一際目立つツンツンした薄い金髪の目の吊り上がった少年と真面目そうな黒髪の眼鏡少年。
「足を机から下ろしたまえ!」
「あぁ?なんだ、眼鏡!お前どこ中だぁ?」
それを見つけ機奇は心がワンテンポ弾む。素晴らしい逸材がいっぱいの食べ放題だと、思う。この場合の逸材とは殺しがいのある者と言う意味なるが誰も機奇が目を輝かせた理由には気づかないだろう。
若々しい学生らの声が響く中、気だるげな声が聞こえる。何処からだろうと生徒達が教室を見回せばもぞりと動く巨大芋虫。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たち合理性に欠けるね」
ボサボサの黒髪に無造作に生やされた髭をした男は、担任の相澤・消太だ、と名乗る。そして唐突に体操服を寝袋から出し能力テストをするからグランドに集合しろと命令する。
機奇はその担任をじっと見つめてから、更衣室に向かう。そして誰にも聞き取れないぐらい小さく呟く。
「彼は確か……【イレイザーヘッド】だったかなぁ?……良いねぇ~、ヒュー!流石だよ、雄英。私がかねてより殺したいと思っていたヒーローに会えるとは嬉しい限りだ。生徒も粒揃いと来たものだ、これはこれはなんとも……フッフフ」
互いを移動しながら紹介する挨拶をする生徒達に混ざりながら、機奇は楽しくなりそうだと黒い笑みを奥に隠し歩く。
日に日に近づくテストに目眩がします。やーだ、やーだ、テストやーだ。地学基礎以外さっぱり勉強していません。宇宙良いよね、なんだか和みます。英語、数学、古典、歴史全て無くなって欲しいです。
美術科だけど、造形がムズい。いいアイディアが出なくてマトリョーシカみたくなってしまった。
愚痴を誰かに聞いて欲しく思う作者でした。すいませんでした。