支配少女の日常は色彩に充ちる   作:八又ノ大蛇

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 視点が難しいです。


三空~暇に想うは少女一人~

 

 それぞれの受験生が合格を目指し必死で、ロボを撃退する。誰もが一番を取ろうと体を動かす中、一人は街中を散歩するように気軽に歩いていた。

 

「へー……、皆色んな個性がいるねぇ~。わぁ、爆破とか凄っ。あの人は足が速いなぁ。あっ、浮いてる、浮いてる」

 

 そう機奇である。ロボが現れれば攻撃を最低限の動きでかわし。ちょんとロボに触れる。それだけでロボの動きは停止し、次に動き出すときには他のロボに殴りかかるようになる。

 これが機奇の個性【支配】だ。

 

 支配したものは思い通りに操ることが出来る。そして機奇が支配を解除しなければ解けることはなく命令に従い動き続けるだろう。これは機奇を気絶、もしくは殺害しようが解けることはなく本人の意思で解除させなければいけない。

 無論、何百何万もを永久的に支配し続けることは不可能だが、この街に存在するロボを実践試験が終わるまで支配することは機奇には容易い。

 

「確かここら辺にいたと……」

 

 受験生達がいるビルの横からビルと同じぐらいの動く影が出現する。緑塗りの無機物なロボ。各試験会場に二体いる0ポイントのお邪魔虫ロボの一体である。

 

「なんだよ、あれ……!!」

「大きすぎだろ!!」

「ヤベェ!こっちに来るぞ!!」

 

 機奇を除いた一同は皆上を見上げ、暫し呆然と口々に悲鳴に近い声をあげる。先程まで対峙していたロボよりも遥かに大きい。あの巨体なら歩くだけで威圧的だ。それが自分達にの目の前に現れたとなれば、受験生達の行動は一つ。

 

 背を向け走り出す。いや、この場合は逃げ出すが正しいだろうか。仮に倒したとしてもポイントは入らない、プレゼンテーションに倒すとしてもこれを時間内に倒せるとは限らない。

 ならば早々にこの場を離れることが最善だと皆そう思う。

 

 一人を除いて。

 

「おぉ!これはこれは、大きいな!」

 

 面白いオモチャを見つけた子供のように目を輝かせる機奇。逃げる受験生の波を逆に走り出す。その動きは先までの気だるそうな様子からは想像出来ないぐらいに俊敏だ。足に力をいれ跳び、ビルの壁を駆けロボに接近する。

 

「……!」

 

 その時巨大ロボの腕が機奇に向け振り下ろされビルが大破する。機奇はそれをジャンプし軽々と回避し、飛び散るビルの破片を足場にロボの頭部に乗り移る。

 

「ハッハハハ、掴まえた~」

 

 手をバンと叩きつければ、ロボの動きは先程機奇が支配したロボ同様に動きを停止させる。そして、機奇が「よし!」と言えばロボは再びその巨体を始動させる。

 

「さぁ!いくのだ!」

 

 機奇の命令に従いロボは進み、巨大ロボからすれば圧倒的に小型なロボに容赦なく腕を振り下ろす。それだけで小型ロボは鉄屑へと早変わりする。

 指揮官になったつもりで機奇は黙々とロボを操り、1ポイント2ポイント3ポイントを次々に撃破していく。

 

《あと、十秒~!!》

 

 そのアナウンスを聞き、機奇はロボから飛び降り。ビルの影に隠れ。最後の命令をする。

 

「三、ニ、一!」

 

 終了のアナウンスと共に街のいたる所でロボが突然爆裂する。巨大ロボも例に漏れず爆音をたて、機奇の命令に従い盛大に"自爆"する。

 

 これにより、雄英高校模試は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受験生達が入試を終え帰る中、ある会議室は荒れていた。

 

「おい、おい!なんだありゃ!マジかよ!」

「緑のボサボサ頭のヤツも凄かったが……あのロボを手懐けた上、自爆?させるとわ!」

「今年の受験生はレベルが高い……」

 

 スクリーンに映し出される映像はたくさんのロボが自爆する場面のものだ。受験生の個性だと言うことは分かるがそれでもなお初見なら驚くだろう。

 それに続くように会議室に驚愕すべきことが告げられる。

 

「何者が雄英高校のサーバーにロボを通しアクセスしてきた事が確認されています」

「「「!!?」」」

「あと、無名のメールが送られております」

「「「はぁ!!?」」」

 

 パソコンの画面に開かれたメール内容は「ご安心を盗んだのはロボの配置場所だけですので、機密的なやつには触れてません。ただちょっと、セキュリティ甘いんじゃありませんか?」と書かれていた。

 メールの端にウィンクをするドクロのスタンプがついている。この事からこれを送ってきた人物の余裕が感じ取れる。

 

 大方の予想としてはロボを操作する雄英のサーバーを介してアクセスされたのだろう。直接指示を出すため薄手ではあるが、防護システムがないわけではない。だがそれを越え"無名の誰か"はハッキングしてきたのだろ。

 皆口には出さないが、誰がこれを行ったのかは容易に想像がつく。

 

 会議室に痛い沈黙が生じる。

 この事から会議室の話題は受験生の話から一変して学校のセキュリティ方面の強化のものに変わることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空が暮れオレンジ色の光が水平線に沈んでいく午後六時。子供達は遊んでいた友達と別れ家族の待つ家に帰る。飲食店は増える客に店内を駆け巡る。夜の賑わいに替わる街通りにあわせ、暗い路地裏も賑わいを増す。

 

「フフフン~♪」

 

 機奇はその暗い路地を鼻唄を口ずさみながら歩く。とたもご機嫌そうだ。

 

「いやぁ~良い子がたくさんいたなぁ。流石ヒーローの名門校」

 

 指を折りながら数える。笑った笑顔が可愛らしい空飛ぶ少女、真面目そうな眼鏡少年他にも教師陣も中々にいいのが揃っている。「だがやっぱり一番は……」と笑う。

 思い出すはモジャモジャ頭の地味系の少年。少女を守るために飛び出しお邪魔虫ロボをワンパンで撃破していた。正義感に満ちており尚且つやる気が人一倍ある、けど個性を使いこなせていない不思議な少年。

 

 あぁ、愉快だ愉快だと機奇は言う。"アレ"はきっと強いヒーローになる。仲間のピンチには必ず駆けつける、困っている人に手を差しのべるお節介者。ステインがいつも言っている偽物ではない本物の英雄の卵というヤツだろ。

 

 機奇がそう思っていると後ろから声をかけられる。

 

「君ここにはいない方がいい。最近は【チラバラシ】と呼ばれるヴィランが出現するから危ない」

「ヒーローさん?」

「あ、あぁ、今はパトロール中でね」

 

 人の良さそうなヒーローの青年は一度言葉につまる。振り向いた機奇の姿にだ。白く一つの傷もない肌に絹のようなさらっとした長い髪、ガラス細工を思わされる儚い少女。こんな暗い路地にいることがとても場違いに見てる。

 

 ヒーローは機奇の手を引き人通りの多い道に出ようとする。しかし、彼の手が機奇の手に触れることは無かった。

 

「あっ……?」

「ご心配無用ですよ」

 

 青年の頭が地面に落ち、残った胴体も時間差で崩れ落ちる。冷たく笑う少女、それが青年の最後に見たものだった。

 

「それ、私ですから。バイバイヒーローさん」

 

 機奇は鞄から棒付きの飴を取りだし口にくれる。甘い、美味しい。それだけで今殺した青年のことは頭の中から無くなる。どうでもいい、男を殺してもどうでいいの感情しか湧かない。

 やはり……

 

「殺すなら、いきがいいものに限る」

 

 機奇が再び歩き出そうとする目の前に黒い靄ができ、中からこれまた黒い靄で構成された人物が現れる。

 

「どうも、私は【黒霧】此度は貴女に用がありまして、一緒に来てくれますか?」

 

 

 

 




 イエー!苦労人黒霧さん登場!
 そして唐突に主人公《プロフィール》です。

主人公:【四罪忌・機奇】(しざき・きき)
個性:支配
年齢:十五歳
身長:161㎝ 体重:45㎏
誕生日:四月四日
髪:月白色 瞳:藍色
職業:学生、開発者、情報屋等
趣味:読書、散歩、研究、殺人
好き:飴、クッキー、お菓子全般、人殺し
嫌い:匂いのきつい食べ物、幸せな人、幸福な人
性格:快楽主義者、残虐非情、お気楽

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