第2話
「なるほど、ここが冥界か。もう少し禍々しいと思っていたぞ」
無事、ハイスクールD×Dの世界に到着したアルケーは悪魔たちが住まう冥界に来ていた。
まずは、物語の重要人物となるリアス・グレモリーの兄、現魔王のサーゼクス・グレモリーに会おうと思ったからだ。
さっそく魔王城に来ているのだが、あまり騒ぎは起こしたくはない。
なるべくなら穏便に過ごしたいのだ。
そこで、そこら辺の悪魔になればバレないだろうと考えて、姿を悪魔に変えた。
門番に魔王に用があると伝えると、案外簡単に入ることができた。
いまの冥界は平和なのだろうと実感できた瞬間だった。
だが、一応は魔王なのだからセキュリティはしっかりして欲しいと、心配した瞬間でもあった。
城の中はとても大きく、どこもかしこも高そうなものばかりだった。
城のメイドさんに、他の部屋よりもより一層雰囲気がある部屋まで案内された。
すぐにここが魔王の部屋だということがわかった。
そのまま部屋に入ると、赤い髪をした若い男性と、白銀の髪をした美しいメイドさんがいた。
部屋の中にはその二人しかおらず、男性の方を魔王とすぐにわかった。
アルケーが部屋に入ると、魔王が少し驚いた。
「あれ?見ない顔だね、どちら様だい?」
「初めまして、現魔王のサーゼクス・ルシファー」
「どの口がそのような言葉を!」
二人はアルケーのことを完全に悪魔と認識しているようだった。
自分の変身の能力の高さに驚いていると、白銀のメイドさんが右手に魔力を灯らせて、いつでも攻撃できるようにしてきた。
その行動にアルケーは手を挙げて苦笑いをした。
「おいおい、さすがにそれはないんじゃないんか?」
「黙りなさい!あなたは悪魔ではありませんね!」
「あれ?やっぱりバレてた?」
アルケーの変身を見破るとなると、なかなかの力を持った者だと分かる。
そのことに驚いたアルケーは素直に変身を解いた。
悪魔の翼がなくなり、いつも通りのアルケーの姿に戻った。
見た感じでは人間とそう変わらないのだが、その体から底知れないオーラを放っていた。
そのオーラに若干慌てた二人だが、すぐに正気を取り戻した。
「それで?この私になんのようかな?」
「そう警戒しないでくれ。俺はただ単にお前と仲良くなりたいと思っただけだよ」
「私と仲良くなりたい?」
サーゼクスは困惑するしかなかった。
わざわざ、上級悪魔では見破れないような幻惑魔法をし、この魔王城まで来たというのに、ただ仲良くなりたいだけだと言うのだ。
これには流石の二人も白旗をあげるしかなかった。
「わかった、降参だ。本当は何が目的だ?僕の命か?」
「え?なに言ってんの?本当に仲良くなりたいだけなんだけど?」
「「え?」」
その途端、三人の間は息苦しい雰囲気に包まれた。
そして少したった後、アルケーが言いづらそうに声をだした。
「もしかして、ダメかな?」
「いや、名前も知らない者と仲良くなるのは……」
「そ、それもそうだな」
こうしてアルケーは自己紹介をすることになった。
アルケーが一通りの紹介を終えると、メイドさんの方が歯を鳴らしながらアルケーに謝ってきた。
「も、ももも申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!」
メイドさんは、先ほどの行動を思い出して謝ったようだ。
神に逆らうことはもちろん、それが絶対神となったらただでは済まないのだが。
アルケーはあまりそういうことは気にしない。
なので、アルケーは笑って先ほどの行動を許した。
それに安堵したメイドさんと魔王はそれぞれ自己紹介をした。
「知って通り、私の名前はサーゼクス・グレモリー。絶対神と呼ばれる御方と仲良くなれるなんて夢みたいです」
「私の名前はグレイフィア・ルキフグス。サーゼクス様の女王であり、妻であります。
先ほどの無礼な行為は本当に申し訳ありませんでした」
「いいよ、俺も悪いことしたし。え?お前ら結婚してんの?主と下僕の関係なのに?」
悪魔の世界では上級悪魔だけが、自分だけの眷属を持つことが出来る。
そして、その関係はあるまで主と下僕の関係だ。
主は下僕を従え、下僕は主に従い。
その関係に愛は関係ない。
だが、現にこうして魔王がしているのだから、いまの悪魔社会は結構ユルいのかもしれない。
「はい、恥ずかしながら」
「なにを恥ずかしがることがあるんだ。お前はそのメイドさんを愛してるんだろ?
なら、それでいいじゃないか。多分、お前らが愛しあうことを周りは許しはしなかっただろう。
だが、お前らはそんな壁を乗り越えたすえに結婚したんだろ?
そのことを俺は素直に祝福するよ、おめでとう。
だから、お前らは恥ずかしがることなく、堂々としてればいいんだ。
たとえ、魔王と下僕の関係だろうと愛は誰にでも等しく平等だ。
それは魔王であろうと変わらん。国民の前で、国民が羨ましくなるほどイチャイチャするがいいさ。
そして、その愛の心を死ぬまで忘れるな。いいな?これは命令だ。この俺が命令したんだ、異論は認めんぞ」
この言葉に二人は唖然とするしかなかった。
いままで二人は、社会や周りの悪魔たちから反対ばかりをされてきた。
二人の結婚を素直に喜んだ者は両手の指くらいなものだ。
だが、アルケーはこの二人の愛を祝福してくれると言う。
このことに二人は涙を流しながらアルケーの命令に頷いた。
その後、サーゼクスが自分の息子をアルケーに紹介すると、彼は笑ってサーゼクスの息子を抱いた。
このことにサーゼクスの息子は大変喜んでいた。
その光景にサーゼクスとグレイフィアは、とても嬉しそうに微笑んでいた。
「そういえばサーゼクス、お前には妹がいたよな?」
「はい、いますよ。とても可愛い妹でして」
「そいつはいまどうしている?」
「はい、いまは人間界で学校に行っております」
その言葉を聞いたアルケーは腹を抱えて爆笑した。
なにがそんなにおかしいのかと、不思議そうに見ている二人を前にやっと笑いが止まったアルケーが説明した。
「いやいや、すまんな。まさか、悪魔が人間と共存しているなんてな。昔なら考えられないことだな」
昔の悪魔社会は、いまほどオブラートには包まれていなかった。
階級が上の者の言うことは絶対、反対など許されることではなかった。
そのうえ、とてもプライドが高かった。
ましてや、自分達より力が劣っている人間など、嫌悪感しかなかった。
だが、こうして悪魔と人間が共存できる社会になっているには、サーゼクスが魔王になったおかげだろう。
「だったら俺もその学校に行こっかな、おもしろそうだし」
「そういうことなら妹のことをお願いします。それに、妹の眷属のこともよろしくお願いします」
「任せとけ。きっちりお前の妹と眷属は守ってやるよ」
その後、じゃあな、と言ってアルケーは姿を消した。
サーゼクスとグレイフィアは、しばらくアルケーが消えた虚空を見ていた。
その後、サーゼクスがそっと呟いた。
「グレイフィア。今夜、私の部屋に来てくれないか?」
「は、はい///わかりました///」
今夜の二人の夜は長くなりそうだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
こうして、魔王への挨拶が済んだアルケーは人間界へと来ていた。
ここ駒王町は魔王の妹、リアス・グレモリーが責任を担当しているという。
アルケーから考えてみれば、なぜ小娘に任せるのか、理解が不能だった。
確かにリアス・グレモリーは魔王の妹だ。
だが、それがどうしたという話だ。
ただ自分のプライドが高く、自分の思い通りにいかないと気が済まないタイプだろうと予測していた。
どうせ、ここが日本神話の管轄でもあるのに調子こいて、『私の町でなにをしているのかしら?』
とか言っているに違いないと、アルケーは思っていた。
そんなことを思いながら、ぶらぶら散歩をしていると、いつの間にか学校に到着していた。
サーゼクスの妹が通っているという駒王学園に。
暇潰しに会いに行こうと思い、学校の中に入って行った。
もちろん、他の人にはバレないように幻惑を施している。
そのまま、サーゼクスに聞いた通りオカルト研究部にたどり着いた。
駒王学園には二つの悪魔陣営がある。
まずは1つ目、リアス・グレモリーが率いるグレモリー眷属。
そして2つ目、ソーナ・シトリーが率いるシトリー眷属。
どちらも若くして上級悪魔で、自分自身の眷属を持っている。
どちらの眷属も特徴があり、グレモリーはパワー、シトリーはテクニカル。
という風に特徴が分かれている。
グレモリーはオカルト研究部を、シトリーは生徒会を根城にしている。
どちらも互いに干渉はしなく、普通に学校生活を送っているようだった。
そう思うと、またアルケーは笑い始めた。
彼には、悪魔と人間が共存するなんてことはあり得ないらしく、笑いのツボに入るらしい。
しばらく笑ったあと、オカルト研究部の扉を開けると。
中にはリアス・グレモリーとその眷属、そしてグレイフィア。
さらには、ホスト風の男がいた。
突然の来客に驚いたリアスだが、すぐに冷静さを取り戻した。
「どちらさまかしら?いま大事な話をしている最中なんだけど?」
「お嬢様。あまりそのような口をされないほうがよろしいかと」
「あら?どうしてかしら?」
リアスが問うと、グレイフィアが丁寧にアルケーのことを説明した。
最初は半信半疑だったリアスだが、話が進めていくうちに顔が青くなっており、最後のほうには真っ青になっていた。
そして、グレイフィアと同じようにアルケーに謝るが、彼はグレイフィアの時と同じように笑って許した。
そのことに安堵していると、空気が読めないリアスの眷属が割って入ってきた。
「すみません部長。結局誰なんですか、その人?」
「イッセー、この御方のお名前はアルケー様。全神話の神々のトップの神様よ」
「どうも、絶対神のアルケーです。こう見えて神様やってるんで、よろしく」
彼のずいぶんフレンドリーな感じの喋り方に、やはりと言うか、部室内にいた者たちは驚くしかなかった。
彼のイメージはあまり良い意味で広まってはいないらしい。
役職柄がそうさせるのか、彼のイメージはずいぶん堅い性格になっていると、誰もが思っていた。
だが、現実を見ると、そんなことは全然なく。むしろ、ユルイ感じの方の性格だ。
この事に驚いていたリアスだが、まだ大事な話の途中だったことを思いだし、アルケーに断りを入れて話を進めた。
話の内容は、リアスがそこのホスト風の男。
フェニックス家の三男、ライザー・フェニックスと結婚するというのだ。
だが、肝心のリアスはその結婚には反対らしく、嫌がっていた。
そこで出てきたのがレーティングゲームで決着をつけるということだった。
レーティングゲームとは、主が自らの下僕を使い、敵の主を倒す。
簡単に言えば、ちっちゃい戦争だ。
レーティングゲームは、主が王として下僕に役職を与えることが出来る。
その題材となっているのが、ボードゲームのチェスだ。
駒にはそれぞれ特徴があり、
兵士は一時的に他の駒の特性を使うことができ。
騎士の駒はスピードが速く、剣で戦う者が多く。
戦車の駒は力強さと防御力の高さ。
僧侶の駒は魔法が得意とする者が多く。
女王の駒は全ての駒の特性を持っている。
通称、
駒の数は王の駒を除いて15個。
最大、15人まで自分の眷属にすることが出来る。
話を戻すと、ライザーの眷属は最大人数の15人。
それにレーティングゲームの経験者で、それなりに強いと言われている。
そしてリアスの眷属は5人。
明らかに人数の差がありすぎる。
明らかに不利と考えたアルケーが、1つグレイフィアに頼みごとをした。
それは、アルケーがグレモリー眷属を修行させ、強くさせるということだった。
もちろん、神の力など使わない、純粋な努力での修行だ。
それくらいのことなら良いと、ライザーのほうも納得していた。
こうして、アルケーが直々に教える強化合宿が始まったのだ。
ヒロインが未定でございます。
感想にて、皆様にアンケートを取らせて頂きたいと思います。
ご協力のほう、よろしくお願い致します。