牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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お待たせしてしまって申し訳ありません!ようやく投稿できました

そしてなんとお気に入りが待望の1000人に到達していました!!本当に、本当にありがとうございます!!!


番外編3

 

豊ねぇ達宮守女子のみなさんと別れてオレは午後の目的地、永水女子が泊まっている施設に向かっている。その途中でお土産としてお茶請けによさそうなお菓子とはるるの好きな黒糖も買った

 

永水女子のみんなが泊まっている宿は鹿児島出身の人が経営しているらしく鹿児島の家にすごく似ているらしい。東京に来てからはるるからメールで聞いていた。しかも畳の部屋で霧島心境と似ていてすごく過ごしやすいとも聞いている。外見もホテルではなく松実館みたいに民宿のような作りのため見つけやすいと巴さんから聞いている。それに宿の外ではみんなの応援に来ている明星と湧が待っててくれているらしい

 

「「兄様!!!」」

 

お、噂をすれば何とやらだ。オレの方に巫女姿の二人が走ってやってくる。ん?走って、やって…

 

「グハッ!」

 

案の定二人はオレに特攻を仕掛けてきた。よってオレは轟沈、地面に崩れ落ちた

 

「すぅ〜…兄様ぁ〜♪」

 

「あぁ〜、兄様の匂い〜♪久しぶり〜♪」

 

二人はオレの体に顔を埋めて匂いを嗅いでいる。暑い中歩いてきて汗かいてるからやめてほしいんだが…

 

「ひ、久しぶりだな…二人とも…」

 

「はい♪明星はずっと待っていました!」

 

「私も私も!あ、兄様!後で宿題教えて!」

 

「とりあえず降りてほしいんだが。それに案内もお願いしたいし…」

 

二人は渋々だが降りてくれた。そしてさっきオレの元に勢いよく走ってきた姿とは別人のように規則正しい歩みの二人の後について中に入っていく

 

玄関で靴を脱ぎ廊下に沿って奥へ案内され突き当たりに差し掛かってところで二人は歩みを止めた

 

「こちらです」

 

「姫様達がお待ちですよ、兄様」

 

部屋の扉は障子の襖になっており明星と湧はその襖の両端に立つ

 

「姫様方、翔兄様をお連れしました」

 

『はーい。入って構わないわよ』

 

「失礼します」

 

明星の声かけに中から返事がして二人が同時に襖を開ける。その中にはソファーで眠っている小蒔姉さんとイスに腰掛けている他の六女仙のみんながいた

 

「お久しぶりです」

 

「えぇ、久しぶりね。翔くん」

 

「お久しぶりですよ〜」

 

「…久しぶり」

 

「お久しぶり。また背伸びたんじゃない?」

 

中へ一歩入ったところで一度軽く頭を下げて挨拶をすると霞姉さん、初美姉さん、はるる、巴さんの順にオレの言葉に返してくれた。巴さんは立ち上がって背伸びをしながらオレの頭に手を伸ばしてくるが届かないようだ

 

「ん…しょう、くん…?」

 

「ん?オレだよ、小蒔姉さん」

 

すると小蒔姉さんがゆっくりとソファーから体を起こしたのでその前に移動する。小蒔姉さんはまだ半寝状態なのか体を起こしただけで目は空いていない。オレはそんな姉さんの頭を撫でながらオレは来たことを伝える。すると姉さんオレの背中に手を回す

 

「翔く〜ん♪本当に翔くんです〜♪」

 

「ね、姉さん…」

 

オレに抱きつきながら顔をスリスリしてくる小蒔姉さん

 

「あらあら、小蒔ちゃんたら」

 

「姫様だけズルいのですよ〜」

 

「…ズルい」

 

「むぅ〜」

 

「兄様ぁ〜」

 

「あらら」

 

霞姉さんは寝起きの妹を見るかのように片方の頰に手を添えてニッコリ笑う。その隣で初美姉さんとはるるがプクッと頰を膨らましているのを見て巴さんは困った表情になる。明星と湧も四人の後ろでプンスカ状態になった

 

「あ、そうだ。巴さん、これお土産です。あとはるるのも入ってるから」

 

小蒔姉さんに抱きつかれながらも買ってきたものを巴さんに渡す

 

「ありがとう。ならお茶を淹れようかしらね」

 

「お願いね、巴ちゃん」

 

「オレも手伝いましょうか?」

 

「ありがとう。でもその状態で手伝えるのかしら?」

 

「あっ…」

 

オレは現在の自分の状態を再確認する。手伝いたいものの小蒔姉さんにホールドされているため抜け出せない。かといって無理に解こうとすると小蒔姉さんの機嫌がエベレストから飛び降りるくらい急降下するのは容易にわかる。ここはお願いしよう…

 

「ふふっ、翔はそのまま姫様についていてあげて」

 

「…すいません」

 

でも巴さんのお茶か。久しぶりに飲むから楽しみだ。てか小蒔姉さん、座らしてくれないかな…

 

「さぁ小蒔ちゃん。巴ちゃんがお茶淹れてくれてるから起きたならこっちへいらっしゃい」

 

「は〜い」

 

霞姉さんの声でようやく小蒔姉さんのホールドから解放されたオレも席に座る。するといつものことでオレの膝の上に初美姉さんが乗ってきた

 

「姉さん…」

 

「姫様だけじゃなくて、私にも構ってほしいのですよ〜」

 

「わかってるよ。これでいいか?」

 

これもまたいつも通り膝の上に乗せた初美姉さんの頭を撫でる

 

「ふふふ♪それでいいのですよ〜♪」

 

言ったら怒られるだろうけど初美姉さんってホントに年に不相応な行動とるよな。ホントに霞姉さんや巴さんと同い年か?するとオレの隣にはるるがイスが合わさるぐらい近づいてきた

 

「はるる?」

 

「これ、ありがと…」

 

「あぁ。口にあったかな?」

 

「うん。美味しい」

 

「それはよかった」

 

そう言ってはるるはまた黒糖を一つ袋から取り出して頬張る。はるるの好物が黒糖だってことは知っていたがそれ以外知らなかったためとりあえず黒糖といえば沖縄産かなと思って沖縄産の黒糖を買ってきたのだが口に合ったようでよかった

 

「それではるる?」

 

「?」

 

「こんなにくっつかなくてもよくないか?」

 

「成分補給中しないとだから?」

 

「成分?糖分なら今摂ってるじゃんか」

 

「それとはまた別なもの。私にとってこれは糖分よりも大事」

 

糖分第一のはるるにとっての糖分よりも上位のもの!?それは一体何だ!?

 

「ふふっ、はっちゃんもはるちゃんも嬉しそうね」

 

「霞さんは行かなくていいんですか?」

 

「私はいいのよ。今はね♪」

 

霞姉さんとお茶をお盆に乗せて戻ってきた巴さんが何やら話しているが何か用事でもあるのだろうか。そして巴さんが淹れてくれたお茶は美味しくいただきました

 

「さて、翔くんとの戯れ時間は一旦終わりにしてやることやっちゃいましょう」

 

一旦ということはやること終わったらまた続くってことでしょうか…お義姉さま《おねえさま》…

 

「じゃあ翔は座っておいて。最初は誰から入りますか?」

 

オレは巴さんに言われて麻雀卓に座る。それに続いて初美姉さん、巴さん、はるるが入った

 

「翔と打つのも久しぶりなのですよ〜」

 

「よろしくね」

 

「…よろしく」

 

「お願いします」

 

「東風戦でお願いね」

 

昨日今日と東風戦、優希が喜びそうな状態で打ってるな

 

さて、この三人か。初美姉さんはわかりやすいけどはるると巴さんは堅実ではあるが型にはまらないその局その局で対応を変えられる。やっかいなのはでっかい一発を出せる初美姉さんよりもこっちの二人かもな

 

北家:オレ 東家:はるる 南家:巴さん 西家:初美姉さん

 

席順よくないな〜オレがラス親のときに初美姉さんが北家とか。役満の直撃と親かぶりは絶対に避けなければ!

 

ー東一局ー

 

「ツモ。3000・6000」

 

うん。幸先よくハネ満和了れたな。でも今までに何回も一緒に打ってるメンバーだからもう驚かれないか。初美姉さんはいつも通り笑顔だし巴さんとはるるに至っては真顔から変わったとこもう見たことないや

 

ー東二局ー

 

よっしゃ!この局も聴牌!

 

「ポン」

 

なぬっ!巴さんが切った牌をはるるが鳴いた。昔からだけどはるる何でそんな聴牌したのわかるんだ?察知能力高すぎだろ

 

「ロン。2000」

 

巴さんが切ったものではるるが和了った。これは連携されたかな。はるるの場合鳴かなければもっと点数上げられるし、巴さんなんか明らかに危険牌切ってたもんな。これはやられました

 

ー東三局ー

 

「ポンですよ〜」

 

この局は最初に初美姉さんが動いた。鳴いたのは索子。そういえばなんとなくだけど永水のみんなが鳴くの索子が多い気がするな

 

おっ!槓材。いけるかな…

 

「カン」

 

こい…こい…こい…

 

「ツモ。嶺上開花。2000・4000」

 

いけた。でも今回はたまたまだろうな。こう思うと咲ってすげぇな

 

ー東四局ー

 

さて…問題の初美姉さんの北家

 

{一萬六萬四筒五筒九筒一索一索六索七索七索白發中} {三筒}

オレの手牌はこうなった。どうしたもんかな…っと考えているとはるると目があった。了解しやした。初美姉さんには悪いけど…

 

「チー」

 

五巡目、はるるが巴さんから鳴いた。でもその余剰牌で切ったのが{東}

 

「ポンですよ〜」

 

あとは{北}か

 

そして八巡目

 

「カン」

 

なんと初美姉さんが{北}を暗槓。これで準備は整ってしまった

 

そしてまたはるると目が合う。はるるはさっき巴さんの{四萬}を鳴いて{五萬六萬横四萬}となっている。河は{一索九筒白三筒七索中一萬八索}

 

この河とはるるの打ち方から見るに高い手ではなさそうだ。高くて満貫。{四萬}鳴いてるのに{一萬}切ってるってことは一通じゃないし清一色もない。初めの方で{三筒}を手牌の一番右から出したってことは筒子はもうないと見るのが妥当かな。そうなると三色もなくなる。なら平和もしくは一、九切ってるから断么九かな

 

今のオレの手牌は

{三筒四筒五筒八筒八筒一索一索六索七索八索發發中}

となった。はるるの当たり牌は{一索}と字牌ではないからその他だな

 

オレは{九索}をツモる。ここか…?そして{五筒}を切った

 

「ロン。断么九のみ」

 

対局終了。少し戸惑った部分もあったけど落ち着いて打てたな

 

「ふぇぇぇぇん!」

 

「ね、姉さん!?」

 

対局が終わった途端初美姉さんが高校生とは思えないほどの大泣きをしだした

 

「また、また和了れなかったのですよ〜!!」

 

「また?」

 

「はっちゃんは今度こそ翔くんから小四喜(しょーすーしー)和了るって意気込んでたのよ」

 

「そうだったんですか」

 

でもわざと手を抜いて姉さんに和了ってもらっても初美姉さんのことだから怒るんだろうな

 

「オレが言うのもなんだけど、次は和了れるよ」

 

「うぅぅ…」

 

まだ泣き止まないで袖で目元を隠している初美姉さんの頭を優しく撫でる

 

「それじゃあ休憩ね」

 

「霞姉さんと小蒔姉さんは入らないのか?」

 

「私は後で入れてもらうわ。でも小蒔ちゃんを今打たせるわけにはいかないのよ…」

 

「?なんで?」

 

あ、これは不躾な質問だったかな…でもみんなは入れるのに小蒔姉さんだけ入れなのは気になるし…

 

「ここで神様が降りちゃったら試合に影響が出る」

 

「神様?」

 

答えてくれたのは霞姉さんではなくはるるだった

 

「そう。だから今、ましてや翔くんみたいな強敵と打たせるわけにはいかないのよ。全国で勝つためにね」

 

「そうですか」

 

「な・の・で!」

 

「…はい?」

 

何やら霞姉さんが深刻な顔で話してくるからそんな雰囲気で聞いていたのに突然小蒔姉さんが声をあげる

 

「きょ、今日は翔くんに…その、私のわがままを聞いてもらいます!」

 

「…」

 

顔を赤らめて何を言い出すかと思いきや全く何を言っているかわからない。オレが小蒔姉さんのわがままを聞く?それいつもじゃね?

 

「しょ、翔くん?」

 

「あ、すいません。それで?わがままって具体的に何ですか?」

 

「え、えっと…まずはこれです!」

 

小蒔姉さんは恥ずかしいのか目をギュッと瞑ってバッと両腕を広げる

 

「へっ?」

 

「だから!ギューってしてください!」

 

「それはさっきもしたのでは?」

 

「さっきはまだ寝起きだったので、よく覚えてなくて…だから…も、もう一回…」

 

オレは一度初美姉さん以外の周りのみんなの顔を見ると全員頷いたので初美姉さんの頭から手を離し腕を広げながらモジモジしている小蒔姉さんの元へ近づきなるべく密着しないように小蒔姉さんを腕で囲む

 

「これで、いいですか…?」

 

「は、はにゃ〜…」

 

いざみんなの前でやるとなると恥ずかしい…それにみんなの目線が…でも小蒔姉さんはそんなんお構いなしに顔をスリスリしてくるし。どうしたもんか…それにそれに密着しないようにしたのに姉さんの方から密着してくるから姉さんの発達したものが!!

 

「でも翔の身長が大きくなったせいかもう一人ぐらいならいけそうに見えるわね」

 

「と、巴さん!?」

 

「うん」

 

「「兄様!」」

 

小蒔姉さんのおかげで理性がヤバいってのに巴さんは何言ってんの!?はるると義妹二人は目をキラキラさせない!

 

「じゃあ翔。霞さんを入れてあげて?」

 

「えっ!ちょっ!巴ちゃん!?」

 

「はい?さっきから羨ましそうに見てたからてっきり一緒に入りたいのかと思いまして」

 

「そ、そんなこと…なくはない、けど…」

 

段々とどもり口調になって俯いていく霞姉さん

 

「そういうことなら、ほら。来なよ、霞姉さん」

 

ホントはすんごく恥ずかしいけども!恥ずかしいけども!霞姉さんは何にも遠慮がちになる。小蒔姉さんだけでも心臓バックバクになりそうだけど霞姉さんまで来たらどうなるか…でもオレも男だ!

 

今にも頭から蒸気が出そうなくらい顔を赤くしている霞姉さんはそれより何も言わずにトコトコとこっちにやって来ては小蒔姉さんの隣に入ってオレに体を預けてきた

 

「ふふっ♪翔くんも緊張してるのかしら♪」

 

「し、仕方ないだろ。こんな近くに美人さんが二人もいたら誰だってこうなるわ」

 

くっそ〜…やっぱり心臓の音聞かれてたか。でも心拍を操るなんて芸当オレにはできないし

 

「へへへ♪翔くんに美人って言われちゃった〜♪」

 

「嬉しそうね♪小蒔ちゃん♪」

 

「霞ちゃんだって♪とっても嬉しい!って顔してるよ♪」

 

「…そうね。幸せだわ♪」

 

ダレカタスケテー!!!

 

「もう!」

 

初美姉さん!助けてくれるのか!?

 

「姫様と霞ちゃんだけズルいのですよ〜!私とも変わってください!」

 

「そうです!お姉様がただけズルいです!」

 

「私も兄様にギュッてされたいです!」

 

オッフ…

 

まぁ初美姉さんが助けなんて出してくれるわけもないか…トホホ…って初美姉さんと義妹二人の発言にはるるもめっちゃ頷いてるし…

 

「あらあら。なら交代しようかしらね」

 

「交代って…霞姉さん?オレに休憩は…」

 

「あると思って?」

 

「ボクガンバリマス…」

 

「ふふふ。素直な弟に育ってくれて私は嬉しいわ」

 

素直って言ってもこんな風に育つつもりなかったよ!まったく…あ、ちゃんとみんな入れてあげました。巴さんだけだ。気を使って遠慮してくれたのは…

 

それから霞姉さんも加わって打っては小蒔姉さん、打っては小蒔姉さん、一回飛んで小蒔姉さんを繰り返した。ちゃんと霞姉さん達の要望も出来る限り受けましたよ

 

あ、あと全部終わった後に明星と湧の宿題を見てあげた。明星はそうでもなかったけど湧は少し…うん、少し勉強が苦手で教え甲斐があった

 

そして夜ご飯を一緒して宿舎へ帰った。みんな別れを惜しんでくれていたのか寂しそうな表情をしていた。義妹達はオレに抱きつきながら「行っちゃヤダー!」と義兄想いのいい子に育ってくれた。でもまた会いにいく約束をしてわかってもらった

 

こうして昨日に続き長い二日目が終わった

 


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