牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

36 / 48

お気に入りの数が800を超えました!!!これまで読んでいただいて本当にありがとうございます!!!

県予選も終わって合宿に入ります。今回はそこまですごい修羅場はありません。この後もう全国編に入るか合宿のオリジナルを書くかはまだ悩んでいます

これからも読んでいただけたら幸いです!



第35話

 

夏祭りも終わって本格的に夏休みに入った。そしてこれからはみんなも楽しみにしていたあの合宿が始まる

 

“清澄高校麻雀部 四校合同合宿”

 

今回は大勢のため県予選前とは別の宿になった。そこの玄関口にはこう書かれた札が立てられていた。今日から長野県予選の決勝を戦った四校が一挙に集まり合宿が行われる

 

我々清澄高校のメンバーを乗せたバスが合宿場に着くとそこには既に他の三校は揃っていた。言い出しっぺが最後に到着とか大変申し訳なく思う。部長の指示でそれぞれの学校の人達は決められた部屋に荷物を置いて大部屋に集合した。なんか全員が集まったときに咲と和、モモと一さん、美穂子さんがお互いを睨み合ってたと感じたのはオレだけかな…気のせいであってほしい…

 

「わーい!」

 

その大部屋には既に麻雀卓が五台セッティングされていた。それを見た衣姉さんは楽しみなのかはしゃぎ出す

 

「すごい」

 

「用意周到じゃのぅ」

 

「雀卓がいっぱいだじぇ!」

 

「さて、着いて早々だけど…」

 

部長が何やら真剣な剣幕で話し出す。それにつられて各校の人達の顔も強張る

 

「まずは……やっぱり温泉よね!」

 

「だから誰に言っとるんじゃ…」

 

はぁ…わかってましたとも。まぁうちの部長はこういう人なんで、みなさんすいません

 

「…てか部長、なんで京太郎は留守番なのにオレは参加なんですか……?」

 

「ん?そういう条件だからよ」

 

「はい?」

 

「私から説明して差し上げますわ」

 

「透華さん?」

 

オレの疑問の説明になぜか透華さんが名乗りをあげた

 

「まぁ翔さんもおわかりになっているんではなくて?我々の場合は衣ですわ」

 

「姉さんが?」

 

「そうです。『清澄とやるのはいいけどショーが来ないなら衣も行かない』と聞かなかったのです」

 

「そうですか」

 

「しょーはころもがいて嬉しくないか…?」

 

「ん?そんなわけないだろ」

 

「そうか!」

 

透華さんの説明を聞いたオレの対応を見た衣姉さんがそんなこと言ってきたので頭を撫でて否定した

 

「うちはキャプテンがそうだって!」

 

「か、華奈!?」

 

「えっ?」

 

「華奈ちゃん…それは言わない約束じゃあ…」

 

「あっ…」

 

今度は風越のえっと…い、池田さん?だっけ…まぁ団体戦で大将やってた人がそう言ってきた。風越のキャプテンて美穂子さんだよな?どういうことだ?美穂子さんに事情を聞こうと美穂子さんの方を向くと頰を赤くしていて目をそらされてしまった…なんか怒らせてしまっただろうか…

 

「私も翔くんに来て欲しかったっす!」

 

「モモ?」

 

今度はモモだ。それにしてもみんなまだ何も始まってないのに気合入れすぎじゃない?てか一さんと咲と和はオレのこと睨まないで…オレなんか悪いことした?

 

「というわけで三校ともからあなたの参加が今回の合宿に参加してくれる条件だったのよ」

 

「ははは…もうわかりました…」

 

「そ。では改めて温泉よー!」

 

はぁ…今頃京太郎は頑張ってパソコンに向かってんのかな…とりあえずオレも温泉行ってこようかな

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、合同合宿に参加してくださってありがとうございます」

 

温泉を終えて全員がさっきの大広間に集まり部長が前に出て挨拶している

 

「これからどうするんだ?」

 

「そうね、まずは…」

 

「ちょっといいだろうか。ひとつ提案があるのだが」

 

「はい?」

 

純さんの質問に答えようとした部長を止めた鶴賀の大将さん、加治木さんだったかな…が立ち上がる

 

「合宿メニューに入る前に参考にしてもらいたいデータがある。聞いてもらってもいいだろうか」

 

「いいわよ。お願いします」

 

「では少々時間をいただいて…これは私が個人的に集めた今年の…」

 

「ちょっと待った!」

 

今度は加治木さんが何やら説明に入るところを優希が止めた

 

「お、おトイレ行ってくるじぇー!」

 

「優希ちゃん!」

 

「優希…」

 

「フルーツ牛乳飲みすぎじゃ」

 

そんなに飲んだのか?オレは風呂上がりは絶対牛乳だ。これだけは譲らん!

 

「あの〜…文堂さんが湯あたりしたみたいで」

 

「しっかりだし!」

 

「大変!」

 

風越の方ではその文堂さん、風越で中堅をしていた人、がのぼせたように顔を赤くして鼻血も出ている

 

「およ?姉さん?」

 

「あらら…」

 

「寝てる」

 

「はしゃぎすぎと翔の膝のせいだな」

 

こっちでは衣姉さんがオレのあぐらの中で小舟を漕いでいた。てか純さん、オレのせいにするのやめてもらえません?

 

「あー、むっきー新部長」

 

「こっちも湯あたりです!」

 

鶴賀の方でも先鋒をしていた人が倒れてしまった

 

「仕方ないわね。長旅の疲れもあるみたいだし、これからは自由時間にしましょう。合宿のカリキュラムは明日の朝からです。じゃあ解散」

 

『はーい』

 

「ほら姉さん。部屋に戻るよ」

 

「む〜、しょ〜」

 

「仕方ないな」

 

オレは完全に寝に入ってしまった姉さんを抱きかかえる

 

「このまま寝かしてきますね」

 

「いつもいつも申し訳ありませんわね」

 

「ごめんね、翔」

 

「いいですよ」

 

オレはそのまま衣姉さんを抱えて龍門淵の部屋に寝かしつけた。その際になかなか手を離してくれなかったから起こさないように神経を尖らせたからすっごい疲れた

 

「あ、菊池くん。ちょうどよかった。あなたも来てちょうだい」

 

「部長」

 

龍門淵の部屋を出て一旦自分の部屋に戻ろうとすると四校の部長達が揃っていた

 

「見るからにこれから打ち合わせっぽいっすけど…」

 

「その通りよ?」

 

「なんでオレも?」

 

「なんとなくよ?」

 

「はぁ…はいはい、行きますよ」

 

部長はいろいろとなんとなくで決めすぎだよ。それでいいのか?

 

そしてそれからオレを加えた部長同士は明日からのカリキュラムについて相談しあった。そしてその帰りのある一室で何人かが卓球しているところに巡り合った

 

「あら卓球」

 

「部長。あと、なんで翔くんまで?」

 

「連行された」

 

「わはは、よーし私も」

 

「卓球?随分と庶民的な遊びですわね」

 

「でも楽しそうですよ」

 

「そうね。それじゃ」

 

鶴賀の部長さんに続いて他の三人も中へ入っていった。いつも思うけど透華さんの庶民的じゃない遊びってなんだろう

 

「わ、わたくしはやりませんわよ…」

 

「ピンポン!」

 

「あれ、姉さん。起きたのか?」

 

「しょー。ころも達もやるぞ」

 

「はいはい」

 

いつの間にか起きてこっちに来ていた衣姉さんに連れられてオレと透華さんも中に入っていく。ちなみに一さんも一緒に来ていた

 

それから数十分後…

 

「はーっ!」

 

「にゅやっ!」

 

「さぁ!次は誰ですの!?」

 

今の池田さんで十人目を倒したのは透華さん。さっきからやってるがすぐに卓球をマスターして十人切りをやってのけた

 

「じゃあみんなの仇を取るとしますか」

 

「あら、今度は翔さんですの?よろしいですわ。あなたも他の方々と同じようにして差し上げますわ」

 

「お手柔らかに」

 

「翔くん、頑張れ!」

 

「頑張ってください!」

 

咲と和からエールももらったし、ボス退治と行きますか

 

それからまた数分後…

 

「はぁ…はぁ…お、おやりになるわね…」

 

「はぁ…はぁ…透華さんこそ…」

 

点数は34vs34でデュースをひたすら続けている

 

「しかし、そろそろ決着といこうじゃありませんの」

 

「そうですね」

 

「「いざ!」」

 

ここまで来たらプライドとプライドのぶつかり合い。そして透華さんがサーブのために球を高く上げる

 

「あの〜。そろそろ夕飯の時間ですけど…」

 

「「へっ?」」

 

そこへ夕飯を知らせに鶴賀の先鋒さんが呼びに来た。はっとして周りを見るとそこにはもう誰もいなかった

 

「…ふふふ、この勝負はお預けのようですわ」

 

「そうですね。またの機会に」

 

オレと透華さんの中に何やらおかしな友情が芽生えていた。そして夕食を終えたオレ達は各自自分の部屋に戻ってそれぞれの時間を過ごした

 

次の日の朝、朝に弱いはずのオレは珍しく早く起きれたので朝の温泉に入ろうと部屋を出た

 

「あ、翔くん」

 

「おはようございます」

 

「お、咲と和も朝風呂か?」

 

「はい」

 

「翔くんも?」

 

「あぁ」

 

「珍しいね。朝が弱い翔くんが早く起きるなんて」

 

「それ、咲には言われたくないからな?」

 

「あははは…」

 

温泉への道で偶然咲と和に出会った。優希がいないのを見るとあいつはまだ寝ているのであろう

 

「ふぅ〜。朝の風呂も気持ちがいいな」

 

『あ、加治木さん』

 

ん?そういえば女子の風呂は隣だったな

 

『私もいるっすよ』

 

『あ、モモちゃん。やっぱりまだ翔くんがいないと見つけられないよ』

 

モモもいたのか。それにしても温泉でもあいつは陰が薄いのか?

 

『そういえば東横さんと翔さんはどういうご関係なんですか?』

 

『私と翔くん、咲ちゃんと京太郎くんは小学校の同級生っす』

 

『そうだったのか。それは私も知らなかったな』

 

『翔くんは先輩みたいに私のことを見つけてくれた人っす』

 

そんな風に思ってくれていたとはな

 

『ふふっ、モモにとって菊池 翔は大切な人ってわけか』

 

『はい!翔くんは私のだい…』

 

『あ、モモちゃん。多分今、翔くんも温泉入ってるから。隣にいると思うよ?』

 

『へっ!?本当っすか!?』

 

「おう、ばっちりいるぞ〜」

 

オレは向こうに聞こえるくらいの声の大きさでいることを伝えた。っすると向こうからは何も聞こえなくなった

 

それから向こうには部長に透華さんと一さん、美穂子さんと池田さんが入って来たようだ

 

『やっぱり九州勢で一番厄介なのは永水女子じゃないかな』

 

『私もそう思います』

 

『なるほど、やっぱり参考になるわね。聞いておいてよかったわ』

 

そのうち全国の強豪はどこかについての話になった。小蒔姉さん達は元気かな

 

『聞いておいてよかった、ですか…しかし全国には聞かなければよかったと思える存在がいましてよ?』

 

『聞かなければよかった?』

 

『えぇ、その代表が全国優勝白糸台の大将だった、宮永 照ですわ』

 

照さん。そういえば一昨年から全国優勝二冠だったっけ。今年勝ったら三冠という快挙を成し遂げることになる。まぁ今年勝つのはうち、だけどな

 

『僕達は決勝に行けなくて外から見てるだけだったけど、あれは異常だよ』

 

『あれこそ本物の魔物、ですわ』

 

照さんが魔物?ははっ!麻雀を打ってるときはそうかもしれないけど普段の照さんは魔物からは程遠い生き物だな

 

『咲、あなたって宮永 照の妹だったわよね?』

 

『は、はい』

 

『彼女は実力はあなたと比べてどのくらいなの?』

 

『う〜ん…もう二年も一緒に打ってないのでわからないですけど、昔は同じくらいの強さでした』

 

『そう…』

 

『でも…』

 

『でも?』

 

『翔くんの方が強かったです』

 

『っ!』

 

おおい!そこでオレを出す必要はないだろ!

 

『当然だよね。翔に勝てるのなんていないでしょ』

 

『そうですね。翔くんは誰にも負けません』

 

『翔くんは最強っす!』

 

『翔さんは、どこまですごい人なんでしょうか…』

 

『翔くんは強いよ。でもいつかは超えたい』

 

一さんも美穂子さんさんもモモも何を言っているのだろうか。オレよりも強い人なんてたくさんいる。まぁ負けるつもりは毛頭ないけど。私はオレのこと過大評価しすぎだ。オレもまだまだ修行が足りないよ。咲、オレも負けねぇぞ!

 

『ふ〜ん。って言われてるけど本人はどう思ってるの?』

 

すると急に部長がオレに呼びかけてきた

 

『あ!翔くんいるの忘れてた!』

 

『そうだったっす!』

 

『えっ!翔くんいるんですか!?』

 

『みんななに慌ててるのさ。別に聞かれてもいいじゃないか』

 

『その割には変な汗が出てますわよ?一』

 

『しょ、翔さん…聞いてましたか…?』

 

これは…ど、どう答えるべきなんだ…?

 

「えっと、みなさんにそう思われてるのはすごく嬉しいです。その気持ちに反しないように頑張ります」

 

オレはそれだけ伝えて外へ出た。さて、牛乳牛乳!

 

 

 

 

 

 

女子Side

 

「ところで、見るところによると何人かの人は菊池くんに好意を向けているようだけど」

 

「「「「「っ!!!」」」」」

 

「一、隠しても無駄ですわ」

 

「モモもだ」

 

「キャプテン?」

 

「咲と和もよ」

 

指摘される五人は顔を真っ赤にする。のぼせたわけではない

 

「あの子はタラシなのかしらね」

 

「翔くんの悪口は止めてください!いくら部長でも怒りますよ!」

 

「そうです!」

 

「僕も翔の悪口は止めてほしいかな」

 

「そうですね」

 

「そうっす」

 

「そ、そうね…ごめんなさい」

 

今のは竹井の失態であった。翔の悪口にすぐ反抗する五人

 

「よっぽど想われてるのね」

 

「「「「「……」」」」」

 

五人は他の四人を見回す

 

「「「「「(他の人には絶対に負けない!!!)」」」」」

 

ここから女子による麻雀とは別に静かな戦いは開始された

 

 

 

 

 

 

そして部長に支持されたカリキュラムの時間が迫っていた。オレは咲と和とともに最初の大広間にやってきた

 

「やぁ」

 

「カツ丼さん」

 

「どうしてここに?」

 

「ビッグゲストがいるって聞いてなかった?」

 

「そういえば…」

 

「Leef Top以来だな。あれからどれほど強くなったか見せてもらいに来たよ」

 

「はい!」

 

「今日は倒します!」

 

咲と和の目はすぐにやる気になった

 

「君とは初手合わせだな。どんなものか見させてもらうよ」

 

「いいですよ」

 

プロだからって舐めてると痛い目みるぞ!

 

「いつまでこの私を待たせる気ですの!?早く始めますわよ!」

 

「早く遊ぼ〜。しょー、はらむら のどか」

 

「さぁ、席についてください」

 

「今日は私が勝つ!」

 

「特打ちじゃ!」

 

「打ちまくるじぇー!」

 

みんなやる気は十分のようだ。オレも気合を入れないとな

 

「さぁ!合宿の始まりよ!」

 

「「「はい!!」」」

 

こうしてようやく“四校合同合宿”が開始された

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。