牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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前回個人戦と言ったんですが、プールに行っていたこと忘れていたので個人戦は次回です



第32話

 

女子団体戦の県予選も終わり、無事に清澄高校は全国行きを決めたのだった。それは誠に嬉しいことだ。しかし今の状況はなんだ…

 

「…」

 

「…」

 

「あの〜…美穂子さん…?」

 

「なにかな…?翔くん…」

 

「ひっ!!」

 

県予選決勝を終えたオレはそのまままっすぐ帰ってきた。帰り道では咲と和が「翔くん、なんで…」「翔さん、どうして…」と何やら怖い独り言をオレの両サイドで言っていたが、それ以外は何もなく帰ってきたはずだった

 

しかし突然美穂子さんから呼び出しを受けた。なんだろと思って美穂子さんの家に行ってみるとそこにはいつも通り笑顔の美穂子さんがいた。しかしその笑顔の背後には何やらドス黒いオーラのようなものが見えていた。そして美穂子さんの部屋に連れていかれるや否や「そこに正座…」と言われてオレは何も言えず正座すること一時間…今に至る…

 

「あの、何か怒ってらっしゃいます…?」

 

「そんなことないわよ…?どうしてそう思うの…?何か私を怒らせるようなことに見覚えがあるの…?」

 

「ひぃぃ!!」

 

正座はしたものの美穂子さんはなにも言ってこない。怒っているのは確かだろう…しかしその原因がわからない

 

「美穂子さん。美穂子さんを不機嫌にさせたなら謝ります。なので何で怒っているか教えてくれませんか…?」

 

「ふふふ、翔くんはお利口さんですね…でも自分でわからなきゃダメだよ」

 

どうしろってんだ…そろそろオレの足も限界…斯くなる上は!

 

「美穂子さん…ごめん!」

 

「えっ…きゃっ!!」

 

オレは勢いよく立ち上がって美穂子さんを抱きしめた。なぜこんなことをするのかというと、昔にも何かの拍子で美穂子さんがすごく怒ってしまったときに美穂子さんのお母さんからこうすれば素直に教えてくれると言われたからだ

 

「美穂子さん…」

 

「ひゃっ!み、耳元で喋らないで…」

 

「教えてくれよ。何でそんな怒ってるんだ…?オレ何か悪いことしたかな…」

 

「…。しょ、翔くんが私の知らないところで私の倒したかった相手と知り合いだったから」

 

倒したかった相手?あぁ、龍門淵の皆さんのことかな?

 

「それで、私よりそっちの方を応援してるのかなって思ったら不安で…」

 

美穂子さんはそこで涙を流し始めた

 

「…バカだなぁ」

 

「え…?」

 

「オレが美穂子さんのこと応援しないわけがないだろ。実際決勝の先鋒戦でも一番強いのはうちでもなく龍門淵でもなく美穂子さんだと思ってたよ」

 

「翔くん…」

 

「確かに龍門淵の皆さんとも知り合いではあるけど、それよりも付き合いの長い美穂子さんを応援しないっていう選択肢はオレの中にはないよ」

 

抱き締めるのをやめて美穂子さんを見ると手で口元を隠して泣いている

 

「だから個人戦頑張ってよ!日にち的にオレも試合があるから応援行けるかわかんないけど…」

 

「翔くん…うん!頑張るわね!」

 

「おう!」

 

最後にはさっきまでの笑顔とは違う、いつもの美穂子さんの笑顔を見せてくれた

 

「じゃあオレは帰るな。美穂子さんも早く寝なよ?」

 

「あ、翔くん」

 

「ん?」

 

チュッ

 

ドアへ歩き出そうとしたオレは美穂子さんに呼ばれもう一度振り向こうとしたが、その瞬間頰に柔らかい感触が伝わった

 

「!!!!?」

 

「ふふっ♪翔くんも個人戦頑張ってね♪」

 

「え、あ、あぁ…」

 

オレは思考が働かず、その後の記憶が全くなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。普段通り美穂子さんはオレのことを起こしに来てくれた。その美穂子さんのいつも通り具合にオレは昨日のことは夢だったのかと思って家を出た

 

今は学校の授業も終わり部室へ咲と向かっているところだ

 

「あ、原村さん!」

 

「宮永さん!翔さん!」

 

「私達、やったんだよね!?全国出場!これでまだ原村さんと戦えるね!部長やみんなとも!」

 

「えぇ!」

 

「それもいいが、次は個人戦があるんだ。気は抜くなよ?」

 

「は〜い」

 

咲も和も個人戦でも全国を狙える実力の持ち主だ。まぁオレも個人戦で全国行かないとな

 

「あ、そうだ」

 

「なに?翔くん?」

 

「?」

 

「二人とも、優勝おめでとう。副将戦も大将戦もいい戦いぶりだっだぞ」

 

「っ!翔くん…」

 

「翔さん…」

 

二人はそれを聞いて頰を赤らめる。やっぱり一日置いて言ったら恥ずかしかったか?

 

「そ、そういえば今日部長から水着を持って集合って言われてたけど…」

 

「あ、私も…」

 

「オレもだな」

 

「何でだろうね?」

 

「何ででしょうか?」

 

「何でだろうな?」

 

まぁ水着をって言われたらプールぐらいしか思いつかないんだが…

 

「…っというわけで!これからスポーツランドで特訓よ!いいわね?」

 

『えっ?』

 

部室に来たら突然部長が言い出した。ホワイトボードにも“水着で特訓!”と書かれている

 

「それに何の意味があるんでしょうか…」

 

「意味ね〜…なんとなく、じゃダメ?あ、和の水着が見たいから!」

 

「へっ!」

 

「…なぜ、オレを見る」

 

和は顔を真っ赤にしてオレを見てきた

 

「翔くん!」

 

「オレのせいじゃないだろ!」

 

「へっ!だ、ダメに決まってます!」

 

「和の、水着…」

 

京太郎は和の水着姿を想像したのかだらしのない顔になっている

 

「そうかそうか、そんなに私の水着が見たいか。ならば存分に見せてやろう!期待しろ!」

 

「しねぇよ…」

 

「なにを!」

 

「とにかく、みんな県予選団体戦を勝ち抜いたんだし、そのご褒美よ。それから今週末から始まる個人戦への英気を養うってのも兼ねてるわ。さっ!出発よ!」

 

「おー!」

 

ご褒美?なら特訓と書いた意味は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ースポーツランドー

 

オレと京太郎はただ脱いで履くだけなのですぐに着替えを済ませた

 

「お待たせ〜」

 

「はーい。おっ!」

 

少し待ったところで部長達女性組が出てきた。部長は赤のビキニに下には同じ色のパレオを巻いている。染谷先輩は白と緑のボーダーのビキニ。どんだけ緑好きなんすか…優希は学校指定の水着、所謂スク水ってやつにいつもつけている白い猫ののポーチみたいなものをつけている。和は黄色でフリルつきの水着だ。上にはリボンがついていて下はスカートになっている。咲は形はスク水ににているがサイドが水色っぽくて色が分かれている

 

「こ、これは…須賀 京太郎、美味しすぎるぞ!おい!」

 

「バカなこと言ってあんまガン見すんなよ」

 

「とうっ!」

 

「うおっ!な、なんだ!?」

 

「貴様は今からこのボートの動力になれ」

 

「無茶言うな!」

 

優希は準備運動もせずにいつの間にか膨らましてあったボートのような浮き輪を持って飛び込んだ

 

「しょ、翔くん…」

 

「しょ、翔さん…」

 

「ん?どうした?ふたりとも」

 

「え、えっと…」

 

「その、ですね…」

 

二人はもじもじしてはっきりと何を言いたいかを言わない。しかし…

 

「二人とも、その水着似合ってるな」

 

「「っ!!!!」」

 

出てきたときから思っていたが二人ともよく似合っている。でも和はプールにエトペンを持ってきてもいいのだろうか…

 

「そ、それじゃあ私達も行きましょうか」

 

「ん?何か言いたかったんじゃないのか?」

 

「っ!そ、それはもういいです…」

 

「そ、そうか…そういえば咲、お前泳げるようになったのか?」

 

「…」

 

「その様子じゃあまだみたいだな」

 

「そうなんですか?大丈夫!浅いところもありますよ!これ使います?」

 

「ありがとう!」

 

「それ、いつものエトペンじゃないのか?」

 

「?えぇ、これはプール用のエトペンです」

 

和に言われてよく見てみるとそのエトペンはビニール質でできていた。これなら濡れても平気なわけか

 

「じゃあ行くか!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

そしてオレと和、咲の三人は比較的浅いプールへと移動した

 

「ほら、咲」

 

「う、うん。ありがとう、翔くん」

 

オレは咲がこけないようにてを差し伸べる。咲はその手をとってゆっくりと入った。その傍らでは頰をプクッと膨らました和が既に水に入っていた

 

「どうした?和」

 

「なんでもありません!」

 

「?」

 

気になって声をかけてみたがプイッとそっぽを向かれてしまった

 

「翔くん、原村さんの手も握ってあげて?」

 

「み、宮永さん!」

 

「は?なんで?」

 

「いいから!滑ったら危ないでしょ!」

 

「ん〜、それもそうか。ほら、和」

 

確かに滑って怪我でもしたら個人戦にも影響がですかもしれないしな。オレは和にも手を差し伸べる

 

「…いい、んですか?」

 

「もちのろん。ほら」

 

「で、では…」

 

和は恐る恐るオレの手を取った。急に引いたりしねぇから大丈夫だって

 

そして咲が水に慣れてきたのを見計らってみんなでエトペンの飛ばし合いを始めた

 

「それ!」

 

「うりゃ!」

 

「ぐはっ!」

 

『ははははは!』

 

優希のスマッシュが京太郎の腹に直撃。京太郎はダウンした

 

「のどちゃん!いっくじぇー!」

 

「えっ!優希!」

 

「おりゃ!」

 

「きゃっ!」

 

ボヨン

優希は今度はさっきよりも弱いにしても少し強めにエトペンを和に打ってきた。エトペンは和の胸にあたりその衝撃で和は倒れそうになるのをオレは素早く背中を支えて防いだ

 

「大丈夫か?和」

 

「は、はい。ありがとうございます、翔さん」

 

「いいってことよ。でも…」

 

「のどちゃんの胸は反則だじょ!」

 

「あいつには少しお仕置きだな」

 

オレは和にこんな仕打ちをした優希を一度見て、和の胸の反動で宙に浮かび上がったエトペンを見上げる。オレは和を離し落ちてきたエトペンに向かって飛び上がる

 

「うおりゃ!」

 

「なぬ!ぐはっ!!」

 

オレは優希に向かったエトペンをアタック。エトペンは優希の頭にあたって優希も京太郎の隣にノックダウンした

 

「すごいですね」

 

「そうか?たまたまだ」

 

「あの、さっきは助けてくれてありがとうございます…」

 

「気にするな。可愛い子を助けるのは当たり前だ」

 

「そ、そんな…可愛いなんて」

 

「ホントのことだろ?」

 

「翔さん…」

 

可愛いと言われて照れてるのか和は頰を赤らめる。そしてどうしたのんかオレにくっついてきた

 

「の、和…?」

 

「翔さんは、イヤですか?」

 

「そんなん答えられるか」

 

「ふふふ♪翔さん優しいですね」

 

「どこが」

 

和はなぜか背伸びをしてオレの顔に自分の顔を寄せてきた

 

「そこまで!」

 

「咲」

 

「はっ!私ったら、なんてことを!」

 

オレの顔にゴミでもついていたんだろうか。和はそれを取ってくれようとしたのだろうが直前で咲が間に割って入った

 

「翔くんも危機感なさすぎ!」

 

「何のだよ…」

 

なぜか割って入ってきた咲はプンスカと怒っているようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきそっちにVIPルームがあってさ」

 

「そういえばあったな」

 

それは女性組が着替えている間にオレと京太郎が館内に見つけたものだ

 

「へぇ〜。そんなのもあるんだ」

 

「きっとのどちゃんと私用の個室があるんだじぇ!」

 

「何のためにですか…?」

 

「おー!あれあれ!えっ…」

 

京太郎が指差したところからはオレもビックリする方々が出てきた

 

「あの〜、本当に私も泳ぐんですか…?」

 

「ここまできたんだから少しは付き合えよな」

 

「でも私…」

 

「む、無理に泳ぐ必要はないと思いますわ」

 

「とーかは泳げないんだよね」

 

「何をお言いになりますの!庶民と同じ水に入りたくないと言っていますでしょう!!」

 

「あ、透華。前…って!」

 

「あ!しょー!」

 

「姉さん!」

 

そこから出てきたのは龍門淵の皆さんだった。衣姉さんはオレを見つけた瞬間こっちに駆け出してきた

 

「あら、翔さん。ということはあなた達は…」

 

「清澄高校」

 

「龍門淵高校!」

 

京太郎は指を指すな。失礼だ

 

「お前達もVIPルームに遊びに来たのか?」

 

「あ、遊びに!?ここは私の家の所有物ですわ!」

 

「“スポーツランド龍門”か。あぁ、なるほど」

 

「へへ〜ん。すごいだろ」

 

「お前がすごいわけじゃないじょ、ノッポ」

 

「なに〜」

 

「そうでしたか。お邪魔してます、透華さん」

 

「いえ、翔さんは構いませんわ。いずれ招待するつもりでしたの」

 

「それじゃあ私達は行こっか」

 

「そうですね」

 

「お待ちなさい!原村 和!」

 

「はい?」

 

「お〜」

 

「大きい…」

 

なぜか振り向く和に視線が釘づけになる龍門淵の皆さん

 

「な、何ですか!その無駄な脂肪は!」

 

「へっ?」

 

何で透華さんはこんなに和に突っかかるのだろうか

 

「しょー!ころもと遊ぼう!」

 

「この頃遊べてなかったしな、いいよ」

 

「なら僕ともいいよね」

 

「一さん?」

 

いつの間にか一も近づいて来ていた

 

「はらむら ののか!」

 

「あぁ、あのときの!」

 

「ころもだ!ん?これはあのときのぬいぐるみか?」

 

「いえ、これはぬいぐるみではなくビーチボールなんです」

 

「うわ〜♪」

 

衣姉さんはビーチボール版エトペンを受け取ってはしゃいでいる

 

「昨日は楽しかった。決勝戦は楽しかった。こうしてお前に出会えた。あのとき言い忘れていたことがある…」

 

オレはそこで衣姉さんと目が合う。オレは姉さんが言いたいことを理解し頷いた

 

「はらむら ののか、ころもと友達に…友達になってくれないか!」

 

「えぇ!喜んで!」

 

姉さん、よかったな

 

「清澄の大将!」

 

「え?」

 

「昨夜の麻雀は楽しかった!またころもと遊んでくれるか?」

 

「もちろん!」

 

「個人戦に出れば打てますよ?」

 

「ころもは個人戦には出ぬ」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ、そうらしいですわ。何度言っても聞きませんの」

 

「ころもは昨日の団体戦で満足した。だからしばらく麻雀はいらない。いつかまた打ってくれるか?しょーも」

 

「うん!」

 

「もちろんだ。いつでもいいよ」

 

「そうか!じゃあ遊ぼう!」

 

「はいよ。ほれ」

 

オレは衣姉さん専用のタクシーになるべく腰を落とした

 

「わーい!」

 

姉さんは背中をよじ登り肩に乗って頭に手を置いた

 

「じゃあ僕はこっちだね」

 

「へ?は、一さん!?」

 

一さんはオレの腕に抱きついてきた

 

「「あぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

急に咲と和が後ろで絶叫した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PLLLLL…

 

「あれ、出ないな〜。ねぇ〜テル〜、ショウ出ないよ〜?」

 

「…じゃあまた今度だね」

 


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