牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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気づいたら既にお気に入りの数が600を超えていました!!とても嬉しいです!ありがとうございます!!!




今回、原作と変わっているところがありますのでご了承ください


第29話

 

副将前半戦の最後、和了ったのはモモだがそれに振り込んだのは透華さんだった。しかもモモは和了る二巡目にリーチをかけていたのだが透華さんはそれに振り込む形になってしまった。普段の透華さんならありえないことである。オレがこんなに驚いてるんだから龍門淵の控え室ではどうなっているのやら

 

『この半荘は振り込みがオーラスの一回しかありません。さすがに堅いメンツが揃ってますね』

 

『堅いメンツならあの振り込みはない』

 

『と言いますと?』

 

『倍満を和了ってあまくなった、とも思えないが…』

 

『五分の休憩ののち、後半戦を開始します』

 

今の副将戦でなにが起こってるんだ。モモが何かしたのか?

 

 

 

 

『副将後半戦スタートです』

 

ー東一局ー

 

「リーチ」

 

八巡目にモモが{九筒}を切ってリーチを宣言

 

「リーチですわ!」

 

「いいんすか?それ、ドラっすよ?ロン」

 

透華さんも前半の勢いのまま手牌がどんどんよくなりドラの{九萬}を捨てて追っかけリーチ。しかしそれはモモの当たり牌だった

 

「立直、一発、ドラ1。5200(ゴンニ)っす」

 

また透華さんがリーチに振り込んだ。透華さんにしてはありえないミスだ

 

「龍門淵の人がまた!」

 

「あんなリーチに即振込とか、ありえないじょ」

 

「もしかすると、あっち側ではここで見てるのと違うことが起きてるのかも…」

 

ありえないこと…なんだ、モモがなんかやってるのか…

 

ー東二局ー

 

『副将後半戦はいきなり龍門淵 透華がリーチに振り込むことから始まりました。龍門淵 透華はこれで前半戦に続き二度目となります』

 

『振り込んだ本人も理解できない振り込みだろうな』

 

『はぁ…』

 

ホントに何が起こってるんだ…透華さんが二度もリーチに振り込むなんて。しかも無自覚っぽいし

 

「リーチ」

 

まだなにかあるかと思いきや八巡目に今度は和がリーチを宣言した

 

『原村 和リーチ。前半戦は最後のまくられたものの非常に安定した早い打牌でした。後半戦もこのまま突っ走るというのか』

 

和のリーチに対して風越の人も透華さんもベタおり気配。しかし和はホントに調子いいな

 

「ロン。8000」

 

そして和はこれまであまり振り込むことはなかったモモから和了る

 

「敵さん、危険牌切っておきながらすごい驚きぶりだじぇ!」

 

「彼女の中ではありえないことなのかもしれないわね」

 

「ありえないこと?」

 

「そうね。それをしたのが和だってことになるわね」

 

「どうなの?翔くん」

 

「ん?オレもモモがどんな打ち手か知らないからな。なんとも言えん」

 

確かにモモがどんな手を使ったかはようわからん。だが今の和ならどんな手を使っても無駄だ

 

「私の牌が見える…?見えないんじゃ…」

 

「?見えるとか見えないとか、そんなオカルトありえません。私にははっきり見えます」

 

画面の向こうではモモと和がそんな会話をしていた。見える?見えない?どういうことだ?

 

「どっちがオカルトなんだか」

 

部長は紅茶を飲みながらオレと咲をチラ見してきた

 

「…なんすか?」

 

「?」

 

「いいえ、別に」

 

そしてテレビに目を戻すとモモが目を手で覆って卓に肘をついていた。和になにかを破られたのがそんなに悔しかったのだろうか。しかし手を離したモモの目は決して諦めた目ではなかった

 

『原村 和、後半戦も好調を維持している。さぁ、各校はどう出る?』

 

次の東三局が始まる前にモモがカメラを一瞬見た気がした。そして再び卓に目を戻し牌を取るモモの目にはさっきよりも強い想いを抱いているような気がした

 

 

 

 

 

 

 

「ツモ。2000・3900(ザンク)です」

 

『副将戦終了!後半戦、鶴賀の東横と清澄の原村、この二人を一騎打ちの様相を呈していましたが中盤近くには龍門淵と風越も応戦、圧倒的な点差がつくまでにはなりませんでした。副将戦をトップで走り抜けたのは清澄の原村 和です。終始安定したデジタルな打ち筋は今大会随一のものでした』

 

副将戦のラストは風越の人が和了って終了した。実況の人が言った通りトップはこの決勝で才能が開花した和。しかしこの副将戦での個人スコアトップはモモとなっていた。去年トップの二校と去年中学生チャンピオンの和がいる中でのこの結果は素直にすごいと思う。あとでおめでとうと一言言っておこう。そんで透華さんの魂が抜けかけてるように見えるのは気のせいだろうか…

 

『昨年トップの二校が無名の二校に抑えられるという番狂わせ!そして勝負は大将戦に突入します!』

 

ピンポンパーン

『十分の休憩の後大将戦を開始します』

 

いよいよ大将戦。咲の実力を衣姉さんに見せつけるときだ!

 

「さ、和が戻ってくるわよ?」

 

「次は咲ちゃんの番だじぇ!」

 

「頑張りんさい!」

 

「咲!」

 

部長、優希、染谷先輩、京太郎の順で声をかけられた咲はゆっくり立ち上がる

 

「頼んだわよ」

 

「はい!行ってきます!」

 

そう言って咲は部屋を出て行く。オレを連れて…

 

「あの〜、咲さん?」

 

「ん?どうしたの?翔くん」

 

「なぜオレの腕を掴んでいるのでしょうか?」

 

「?途中まで一緒に行くからだよ?」

 

なんでこいつは首を傾げて「なに言ってんの?」みたいな顔をするのか…

 

「はぁ、わかったよ。お見送りいたしますよ、お嬢様」

 

「うん!」

 

これから自分の番だというのにこの上機嫌。お嬢様と言われるのがそんなに嬉しいのかね

 

そして対局室へ向かう途中の曲がり角で和と会った

 

「原村さん!」

 

「宮永さん!翔さん!」

 

「お疲れ」

 

そして和と咲はハイタッチ気味に手を繋ぐ

 

「頑張ってください!」

 

「うん!」

 

「ちょっと送ってくるわ」

 

「はい」

 

そしてオレと咲は対局室を目指す

 

『さぁ、大将戦です。現在トップは今回初参加の清澄高校。原村 和からバトンを受けるのは同じく一年生、宮永 咲』

 

『同じく大会目は無名だった二位の鶴賀学園からは三年、加治木 ゆみ(かじき ゆみ)』

 

『そして現在最下位に苦しむ名門、昨年に引き続き風越女子の大将戦を務めるのは二年生、池田 華奈(いけだ かな)』

 

『そしてその池田選手の因縁の相手とも呼べる選手がいます』

 

「っ!翔くん…」

 

「気づいたか?咲」

 

その人の気配を咲は感じ取ったのだろう。強者としての気配を

 

「…これ、翔くんやお姉ちゃんと同じくらいすごいよ……」

 

「怖いか?」

 

「…うん、少し。でも、翔くんが見ててくれれば大丈夫!」

 

「それなら安心しろ。瞬きも惜しんで見ててやる」

 

オレはそう言って咲の頭を撫でる

 

『龍門淵高校二年、神がかりな手牌を見せる昨年のMVP、昨年の全国大会最多獲得点数記録保持者、天江 衣!』

 

衣姉さん油断なんかしてると足元掬われるからな

 

『各校の命運は最後の一人に委ねられました。ついに今大将戦の幕が開こうとしています』

 

オレはそんなアナウンスを聞きながら咲を対局室に連れていく。そしてその対局室には既に風越の人が卓についていた

 

「よろしく〜」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「じゃあ咲、オレはここでな」

 

「あ、うん…」

 

その声を聞いてオレはあからさまに残念がる咲の耳元に顔を持っていく

 

「咲、お前なら大丈夫だ。この何年間、誰と麻雀打ってたんだ?」

 

そう言い終えてオレは顔を離す。咲の表情は頰を少し赤くしているが気合の入った顔をしている

 

「じゃな」

 

「うん!」

 

オレは最後にそう言って対局室を後にした

 

「あ、ショー!」

 

「お、衣姉さん。それに一さんも」

 

「やぁ、翔。さっきぶりだね…」

 

「え、は、はい…」

 

対局室を出たところには衣姉さんと姉さんの付き添いなのかを一さんがいた。でも一の纏う雰囲気はちょっと怖い…

 

「ショー!」

 

「おっと、姉さんも頑張ってな」

 

「もちろんだ!」

 

その笑顔を前に無性に撫でたくなったので姉さんの頭を軽く撫でてやると姉さんは撫でる前よりも数倍の笑顔を見せて対局室に入っていった

 

「さえ、オレ達はそれぞれの控え室に戻りますか、一さん」

 

「翔…」

 

「はい…ひっ!」

 

声のする方を向くとそこには笑顔なんだが目だけは全然笑っていない一がオレのすぐ側まで来ていた

 

「風越の先鋒の人とはどんな関係なんだい…?」

 

「え、いや…」

 

「どんな関係だい…?」

 

「た、ただのご近所さんです!」

 

「ふふふ、嘘はよくないよ…」

 

「嘘じゃないですよ!」

 

「ふふふふ、嘘つく悪い翔にはオシオキが必要かな…」

 

ダメだ。全然信じてくれない。どうしたら!と一さんの背後に智紀さんがいることに気づいた。オレは必死に『助けてください!』と口パクで伝えてみたらなぜか抱きしめるジェスチャーをしてきた。これはオレが一にやれというのか…?すると智紀さんは親指をあげた。good luckってか…ええい!こうなれば一か八か智紀さんを信じる!

 

「っ!!!ちょっ!翔!!!?」

 

「一さん!とりあえず落ち着いて。話だけでも聞いてください」

 

「わ!わかったから!!」

 

「そ、そうですか…よかった」

 

なんとか一さんは正気に戻ったので離れようとすると逆に一さんがオレの背中に手を回して離してくれない

 

「あの、一さん?」

 

「は、話は聞いてあげるよ…でも、このままが条件…」

 

「マジっすか…」

 

「嫌、かな…?」

 

「うぐっ!」

 

一さんまでその上目使い+涙目という能力を身につけたのか!?

 

「わ、わかりました…」

 

「うん♪素直な翔は、僕は好きだよ♪」

 

「それは光栄です…」

 

この後約十分はこの状態が続いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、ただいま戻りました!」

 

「おかえりなさい」

 

「こら翔!なにやってたんだじぇ!」

 

「ちょっと捕まっててな。試合は?」

 

「よかったわね。ギリギリで間に合ったわよ」

 

「そうですか」

 

よかった。まだ試合は始まってなかったようだ

 

『大将戦開始です。全国に行けるのは残り二回の東南戦を制する一校のみ。中堅戦からトップを維持し続ける清澄高校がこのままインターハイへ勝ち抜けるのか?はたまた昨年のファイナリスト二校が意地を見せつけるのか?』

 

『龍門淵高校の天江がなにもせずに終わるとは思えない』

 

『確かに天江選手はインターハイでも数々の結果を残してますから、今年もどんな戦いを見せてくれるか期待したいところです』

 

『…忘れていたよ』

 

『は?』

 

『他にも愉快な打ち手がいたことを』

 

解説の藤田プロが言ったことが誰なのかはすぐにわかった。さて、咲、この戦いを見ている人の度肝を抜いてやれ!

 

「リーチ」

 

鶴賀の大将戦さんがリーチをかける。しかし和了るのはあなたじゃない

 

「カン」

 

きた!

 

「ツモ。嶺上開花。1600・3200です」

 

『清澄高校宮永 咲、先制。このままリードを広げるか?』

 

衣姉さんはそうでもないが風越と鶴賀の人は驚いてるな

 

『偶然ですが宮永選手は昨日の一、二回戦でも嶺上開花を和了っています。これはすごい確率ですね』

 

『偶然ならよかったんだけどな』

 

そう、偶然ならな

 

ー東二局ー

 

九巡目、風越の人がなかなか高い手を張った。リーチはせずに(ダマ)にとるようだ

 

『風越女子池田、高めで三面張(サンメンチャン)の倍満を黙聴(ダマテン)。最下位からの浮上はなるか?』

 

そして咲の番。咲は

{七索八索五萬六萬七萬八萬八萬八萬三筒五筒七筒八筒九筒} {四筒}

聴牌(テンパイ)

 

『おーっと、清澄高校宮永も聴牌。しかしあまりの{五萬八萬}は風越の当たり牌。これは振り込むんじゃないでしょうか?』

 

んなわけあるか。咲が自ら(カン)材捨てるなんてありえねぇ

 

「リーチ」

 

咲がリーチを宣言して切ったのは{七索}

 

『なっ!{八索}単騎リーチ!清澄高校宮永、両面(リャンメン)にはとらず、しかも{八索}は既に河に二枚切れています!』

 

「地獄単騎とか部長みたいだじぇ!」

 

「あら?一緒にしないでよ?」

 

「そうだぞ優希。咲はちゃんと槓できる待ちを選んでる。部長の賭け満載の悪待ちとはわけが違う」

 

「…その通りなんだけど、その言い方は腹たつわね」

 

オレがテレビから目を離さずに優希に説明すると部長からそんなコメントが返ってきた。だってホントのことじゃないですか

 

「カン。嶺上開花」

 

二連続嶺上開花に風越と鶴賀は完全に驚愕の顔をしている。確かに嶺上開花自体が珍しいのに、それが二連続だもんな

 

『二連続嶺上開花!とんでもないことが起きてしまった!』

 

ここまではいい感じだな

 

ー東二局 一本場ー

 

この局では既に鶴賀の人が鳴いてしかけていた

 

「ポン」

 

そして咲も鶴賀の切った{二索}を鳴く

 

『あれ?鶴賀学園の加治木、字数のドラ暗刻(アンコ)を崩しましたね』

 

『役なし、だな』

 

咲が鳴いた直後に手牌を崩して役なし…もしや

 

画面では咲が四枚目の{二索}をツモっていた。そして槓をしようとして…その手を止めた。どうやら鶴賀の意図に気づいたか。成長したな。伊達に合宿でオレに何回も槍槓(チャンカン)やられてないか

 

不聴(ノーテン)

 

「不聴」

 

「聴牌」

 

「聴牌」

 

そして咲槍槓を躱すという成長を見せたその局は流局となった

 

ここまで咲はいい調子だ。だがまだ動いていない。あの人が…

 


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