牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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第2話

鹿児島は岩手とは違って日差しが強く、まだ2月なのに暖かく感じる。オレ達家族は岩手から飛行機に揺られ約3時間、長い空の旅からようやく降り立ち鹿児島に着いた

 

オレ達の二つ目の家は鹿児島県内じゃ有名な″霧島神鏡″という大きな神社がある町の近くらしい。

 

オレは今その霧島神鏡にやって来ている。普通は霧島神鏡という場所は一般の人ははいれないのだが、母さんがどうやらこの神社に関わる一族の親族だそうだから、オレもここに入れるらしい。しかし入るにさしあたって一つ問題があった。ここには女性しかいないらしい。そんな中に男のオレが1人で入るのはいかがなものかと思うが、そんなオレの気持ちとは裏腹に母さんはスイスイと長い階段を登っていく

 

「な〜に〜?翔緊張してるの?」

 

「当たり前だよ」

 

「ま、そりゃそうよね」

 

なら聞くなよ!と言いたかったがオレは心の中に我慢した

 

もう何段登ったか忘れたぐらいの階段を登りきったそこには大きな鳥居があり、1人の女性とその人の子供なのか1人のメガネをかけた女の子が立っていた

 

「まみちゃん!久しぶり!」

 

「京香ちゃん!ようこそ!」

 

京香とはうちの母さんの名前だ。そして母さんが呼んだ名前の人、まみさんと手を取りながら再開を喜んでいるようだ

 

「それでこの子が?」

 

「えぇ。うちの息子」

 

「菊池 翔です」

 

「狩宿(かりじゅく) まみです。よろしくね。そしてこっちが私の娘の」

 

「狩宿 巴(ともえ)です」

 

メガネをかけた女の子の巴さんは礼儀正しくお辞儀をした

 

「じゃあ京香ちゃんはこっちね。翔くんは巴について行って」

 

「わかりました」

 

いきなり親と離れてしまうことに緊張は増すが、それが悟られないように顔には出さないようにした

 

「では翔さん、こちらへどうぞ」

 

「あ、はい。あと多分ボクの方が年下なんで敬語とか大丈夫ですよ?」

 

「ふふっ、優しいのね。ならこれからは翔って呼ぶわね」

 

「はい。狩宿さん」

 

「私のことも巴でいいわよ」

 

「わかりました。巴さん」

 

少し距離が縮まった気がしたところで巴さんに案内される

 

案内された早にはまたもや2人の女の子が今度は座っていた

 

「巴ちゃん、その子が?」

 

「今日からここでお世話する子ですか〜?」

 

「うん。菊池 翔くんよ」

 

「菊池 翔です」

 

オレは座っている2人にあいさつをする

 

「薄墨 初美(うすずみ はつみ)です〜。よろしくですよ〜」

 

「滝見 春(たきみ はる)。よろしく...」

 

「私とはっちゃんが新三年生ではるるが新一年生」

 

「あ、ボクはも次小学一年です」

 

「そうでしたか〜。じゃあ私達がお姉さんですよ〜」

 

薄墨さんは小学生だとわかるが、巴さんと滝見さんは落ち着きすげてて小学生っぽくない

 

「あのー?それでお世話って...」

 

「あら?聞いてないの?あなたは学校後の放課後と休日はほとんどここで過ごすのよ?」

 

「えっ?」

 

「ご両親が共働きで家に一人にするのは心配だからって聞いてるけど」

 

「何も聞いてないです...」

 

母さん!何でこんな大事なこと話さなかった!

 

「まぁあとお二人紹介したい人がいるから、その方達が来るまでここで待ってて」

 

「わかりました」

 

オレは巴さんにそう言われてその場に座った。するといきなりオレの掻いたあぐらの間に薄墨さんが入ってきてチョコンと腰をかけた

 

「あのー、薄墨さん」

 

「初美お姉ちゃんでいいですよ〜」

 

「...薄墨さん」

 

「初美お姉ちゃんですよ〜」

 

「...初美姉さん」

 

「はい♪何でしょうか〜?」

 

「何でそこに座ってるんですか?」

 

「お姉ちゃん特権です〜」

 

豊ねぇもそうだっけど、今は姉ブームなのか?

 

どうやらどいてはくれなさそうだ。まぁ力づくでどかすのはなんかあれだし別に辛くはないしこのままでいいか。だが問題が一つ。巴さんや滝見さんはきちんと巫女の装束を着ているのだが初美姉さんは着崩している。いや、気崩しすぎている。袖が長く広がっていて、袴は短い。それはもう袴というよりミニスカートのようだ。しかも肌蹴ているので目のやり場に困る…

 

「私のことははるるって呼んで?」

 

「へ?」

 

なぜかそんな状況の中滝見さんはそんなことを言い出した

 

「ちょっと、滝見さん」

 

「...」

 

「...滝見さん」

 

「...」

 

何度呼んでも滝見さんはこっちをジーっと見てくるだけで何も言わない

 

「...はるる」

 

「よろしい」

 

何の承認だ!

 

「翔はモテモテね」

 

「こんな状況で何言ってるんですか巴さん。もしや楽しんでますか?」

 

「そんなことないわよ。さて、翔。あなたは麻雀ができると聞いたのだけど」

 

「えぇ、できますよ?」

 

「本当ですか〜!?」

 

初美姉さんが驚いた声で聞いてきた

 

「はい」

 

「じゃあこの四人でできますよ〜」

 

「巴さん達もできるんですか?」

 

「えぇ。私達は巫女の力を制御する訓練の一環で麻雀をしているの」

 

「そうなんですか」

 

「早くやりますよ〜」

 

初美姉さんは立ち上がって待てない子供のようにはしゃいでいる。だか雀卓は?と思ったらどこからともなくはるるが雀卓を出していた

 

「姫様達が来るまで」

 

「姫様?」

 

「あとで紹介する。今はこれやろう」

 

はるるも表情は全く変わらないがやる気満々のようだ

 

それぞれが決まった位置に座り親は巴さんからになった。位置的にはオレの上家にはるる、対面に初美姉さん、下家に巴さんとなった。ということは初美姉さんが()()である

 

(ん?なんか場の空気が...)

 

オレは現実に起こっていることを知ってはいても現に受けるのとはわけがちがうことに気がついた。でも麻雀の神様はオレにも運を与えてくれている

 

オレの手牌は

{一萬一萬一萬二萬三萬四萬五萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬}

となっていた。既に九蓮宝燈(チューレンポウトウ)を聴牌していた

 

「翔。あなた何者?」

 

「はい?」

 

対局がまだ始まっていないときにはるるがオレに問うてきた

 

「はっちゃんに負けないくらいの気を感じる」

 

「はるるも気づいていましたか〜」

 

「もしかしたら姫様よりもすごいかも…」

 

三人はどうやらオレの手牌がすごいことになっているのを感じ取ってすごく驚いているようだ。オレも最初はこの力にビックリした。神様もすごい能力をくれたものだよ…まぁその力に慢心はしないけどね

 

「何者と言われても…ただの5歳児だよ」

 

「…その辺は姫様達が戻られたら詳しく聞かせてもらいましょう」

 

「詳しくも何も…」

 

「今はこっちに集中」

 

「元はと言えばはるるが言い出したんだけど」

 

「細かいことは気にしてはいけませんよ〜」

 

「はぁ…」

 

なんともマイペースな方々の相手をするのは大変なものだ

 

さて、気をとりなおして対局に集中しますか。親の巴さんはいきなり切る牌を悩んでいた。数秒して決まったのか、{九筒}を切った。次の初美姉さんは最初から何を切るか決めていたのか、すぐに{白}を出した。はるるは初美姉さんに合わせて 白 を切った。そしてオレの番。オレは山から牌をツモる。ツモった牌は{東}だった。これを切ったらどうなるか分かっていたが、あえてそれを切ることにした

 

「ポン!」

 

すかさず初美姉さんがポンを宣言し、オレの切った{東}の取り代わりに{發}を切った。そしてはるるは一度オレを見てから山から牌をツモった。そして{九筒}を切った。今度はまたオレだ。オレはさっきと牌をツモり、それを確認すると{北}だった。オレは勝負と思いながらその牌を切った

 

「またポンですよ〜!」

 

初美姉さんはさっきと同じようにオレの捨てた 北 を取って、今度は{九索}を切った。これで初美姉さんの小四喜(ショウスーシー)への準備が整った。あとは初美姉さんが{南}と{西}を揃えるのが先か、オレが和了るのが先かだ。当然巴さんとはるるももう揃っているかもしれないから、警戒はする。

 

そしてまたはるるの番。今回もオレを一度見てから牌をツモった。その視線にはどういう意味があるのだろうか?そう考えていると春ねぇは 發 を捨てた。そんでオレの番で山から牌をツモる。オレは指の感触でその牌が何かわかった。オレはその牌を表向きに起き、直後に自分の手配をみんなに見せるように倒す

 

「ツモ。8000・16000です」

 

「うわ〜」

 

オレのツモった牌は{二萬子}で九蓮宝燈を和了った。オレの宣言を聞き巴さんが驚愕の声をあげた。確かに役満の親被りはキツいな

 

「負けたのですよ〜」

 

「まだ終わってませんよ?」

 

「そういうことじゃないと思う」

 

まだ対局は続いているのに初美姉さんが負けた宣言をしたのでオレはそれを指摘すると、今度ははるるに注意された

 

その後オレは早々と巴さんに倍満をお見舞いして対局は終了した。どうやらさすがに役満二連続はなさそうだ。それでも倍満できたけど…

 

「あらあら、楽しそうね」

 

対局が終わったところである1人の女の子が入ってきた。その子は初美姉さんよりも背丈は小さいがとても大人っぽい子だった

 

「霞さん。お疲れ様です」

 

「お疲れ様ですよ〜」

 

「お疲れ様」

 

巴さん達はその子に労いの言葉をかけた

 

「ありがとう。それでその子が?」

 

「あ、菊池 翔です」

 

オレは一度立ち上がり一礼しながら名乗った

 

「これはご丁寧に。私は石戸 霞(いわと かすみ)と申します。よろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ」

 

初美姉さんよりも背丈は小さいが初美姉さんよりも礼儀正しい人だ

 

「霞さん。姫様は?」

 

「ふふふ、翔さんがいるからなのか緊張して入ってこれないみたい」

 

「あぁ」

 

「姫様は恥ずかしがり屋さんですよ〜」

 

それを聞いて襖の方を見てみると入るのを躊躇っている女の子が目に入った

 

「ほら小蒔ちゃん」

 

石戸さんが小蒔ちゃんと呼んだ子の手を引いてきた

 

「は、初めまして…じ、神代 小蒔(じんだい こまき)です…」

 

「菊池 翔です」

 

「私ははっちゃんと巴ちゃんと、小蒔ちゃんは一つ下よ」

 

すごい区切れ区切れで自己紹介してくれた神代さんのあとに続いて霞さんが付け足した

 

「ならお二人共ボクより年上なんですね。ならボクのことは翔でいいですよ」

 

「あらそうなの?なら翔くんと呼ばせてもらうわね」

 

「わ、私も…翔くんで…」

 

「はい。これからよろしくお願いします」

 

原作の六女仙とも会い、これからオレはここでどうなっていくんだろうか


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