牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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第19話

翌日、オレは一人でして校門をくぐったところで声をかけられた

 

「翔、おはよう」

 

「おぉ、京太郎」

 

「今日は咲と一緒じゃないんだな」

 

「毎日一緒ってわけじゃねぇよ。それにいくら咲でも学校の道ぐらい覚えただろ」

 

「それもそうか」

 

その人物は京太郎であり、いつも咲と一緒に登校してたから一人でいるのを不思議がられた。そして玄関に入ったところでは

 

「おはよう。翔くん、京ちゃん」

 

「おう、おはよう」

 

「お、おはよう」

 

咲と和が一緒にいた。京太郎は何を見てか頰を赤らめた

 

「おはようございます」

 

「あぁ、おはよう。和」

 

「それじゃあ」

 

「うん。お昼、一緒に食べようね。あ!翔くんも一緒にどう?」

 

「は?」

 

「っ!あの!宮永さん!?」

 

「オレがいたら迷惑だろ」

 

「ううん。そんなことないよ。ねっ?原村さん」

 

「え、えっと…はい…ご、ご一緒しません、か…?」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えて」

 

咲の提案でオレも一緒にお昼に誘われる。和がそれを聞いて焦るような言動を見せたから迷惑かと思って断ろうとしたんだが、咲も和にも了承されたので一緒することにした。返事を聞いた二人はパーッと明るい笑顔になった

 

「それでは、また後で」

 

「うん。私達も行こ?翔くん」

 

「はいよ。じゃあな、京太郎」

 

「おい待て!俺も同じクラスだろ!それと、俺もお昼ご一緒させてください!」

 

「…なんで敬語?」

 

和を見送った後にオレらも教室へ向かった

 

 

 

そしてお昼、オレ達は和と合流してから外で待ってる優希の元へ向かった

 

「遅い!もうお腹ぺこぺこだじょ!」

 

「なんだ、タコスもいるのかよ」

 

「なんだとはなんだ!タコスわけてやらねぇぞ!」

 

「いや、いらんし…」

 

そこでは優希がシートを広げて待っていた。こいつは毎食タコスなのか?

 

オレはカバンから二つもお弁当を出し、その一つを咲に渡す

 

「ほらよ」

 

「ありがとう!」

 

「翔、咲の弁当もお前が作ってるのか?」

 

「ん?まぁな。昔作ってあげたらそれ以来オレに弁当を頼むようになった」

 

「だ、だって〜…美味しいんだもん」

 

「それはそれは、ありがとな」

 

まぁその代わりにたまに咲がオレの弁当の分まで作ってくれることがあるがな。咲はおっちょこちょいだけど意外と家事ができる

 

「翔!あれは持ってきたか!?」

 

「あぁ、はいはい。持ってきましたよ」

 

「なんだ?」

 

「この前タコス作れるって言ったらなら作ってこいって言われてな」

 

オレはカバンから紙袋を出しながら京太郎の質問に答える。そしてそれを優希に渡す

 

「あ、あの…翔さん」

 

「ん?どうした?和」

 

「えっと…よろしければ、私の作ったお弁当食べていただけませんか…?」

 

「え、いいのか?」

 

「…はい」

 

「それじゃあ、少しだけ」

 

和に言われてオレは和が出したお弁当から一つ拝借する

 

「おぉ、美味いな」

 

「本当ですか!?」

 

「あぁ。美味しいだろうなとは思ってたけどこれは想像以上だ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「和はいいお嫁さんになるな」

 

「っ!そ、そんな…」

 

「よ、嫁!!」

 

オレの言葉に恥ずかしいのか顔を赤くする和。そして嫁という言葉に極端に反応した京太郎

 

「むー…」

 

「さ。咲…どうしたんだよ」

 

「別に」

 

「なんか怒ってる?」

 

「怒ってなんかないよ!」

 

咲は反対にオレを睨みながらふくれっ面になっている。怒っているのは目に見えて明らかなのになぜか怒ってないと言い張る。なぜだ…?

 

「あ、そうだ。じゃあオレの弁当少しやるよ」

 

「え、でも…」

 

「いいのいいの。お返しってことで」

 

「では、少しだけ…」

 

和はオレが出した弁当に箸をやって掴んだおかずを口に頬張る

 

「んっ!」

 

「どうだ?」

 

「お、美味しいです」

 

「それはよかった」

 

「少し、自信をなくしました…」

 

「え、なんで?」

 

「わかるよ、原村さん!」

 

「咲まで?」

 

わけのわからんことに二人が結託した

 

その後自分の肉まんを優希に取られた京太郎が優希を押し倒したり、それをオレ達三人が笑ったりなど平和な昼を過ごした

 

 

 

そして放課後。いつも通り部室に集まるといきなり部長がホワイトボードに何かを書き始めた。書き終わってホワイトボードをバンッ!と勢いよく叩いたそこには“目指せ!全国高校麻雀大会 県予選突破!!”とあった

 

「というわけで、十日後の来月頭に県予選があります。予選には団体戦と個人戦があります。今年からうちも県予選に出場することにしました。目標はもちろん!県予選突破です!あ、そっちのは県内の主な強豪校の牌譜ね。それからこっちは予選のルール。パソコンにも入ってるから、各自目を通しておくように」

 

「パソコン使うじぇ〜」

 

「全員で100000点持ち?」

 

「五人で交代?なんだこれ」

 

咲は今まで団体戦なんてやったことないし、京太郎はそもそも初心者だし、わからないのは当然か

 

「それは団体戦のルール。詳しいことは後でまとめて教えるから、各自確認しといて」

 

「団体戦と個人戦」

 

「あっ!男女別だから、オレが出れるのは個人戦だけか…」

 

「オレもだけどな」

 

「えっと、去年の団体戦の優勝は…龍門淵?」

 

優希はパソコンで去年のデータを確認しているみたいだ

 

「ちょっ!ありえないんですけど、この人!」

 

「あぁ、龍門淵高校の天江 衣か」

 

「咲ちゃんより変だじょ…」

 

「そうね」

 

「それまで六年連続全国を行っていた風越女子が去年の決勝でその天江 衣を含む龍門淵に惨敗したんだ」

 

「へぇ〜」

 

「あら、菊池くんは知ってたの?」

 

「えぇ、まぁ」

 

だってその両校に知り合いがいるからな。話は聞いてる。するとオレの携帯が振動した

 

「ん?すいません、部長。電話きたんで少し外します」

 

「えぇ」

 

オレは部長に断って部室の外に出て携帯の画面を確認する。そこには『透華さん』とあった

 

「もしもし、翔です」

 

『しょー!』

 

「衣姉さん!?どうしたんだ?」

 

『しょーに呼ばれた気がしたのでな!』

 

「そっか。さすがだな姉さんは。ちょうど姉さんの話が出たところだったんだ」

 

『やはりそうか。だが衣の相手はしょーだけだ!』

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、気をつけなよ?姉さん」

 

『?なにをだ?』

 

「まぁいいよ。ごめん、これから部活だから。またお菓子でも作ってお邪魔するよ」

 

『おぉ!待っているぞ〜!』

 

オレはそこで電話を切った。だがすぐには部室に戻らなかった。壁にもたれかかってこれからのことを考えてみる。オレや京太郎は個人戦だから個人個人の実力アップでいい。だが女子はそうはいかない。お互いを助け合う必要がある。まぁ部長が考えているだろう。だがやはり衣姉さんは別格に強い…唯一戦えるとすればオレか咲ぐらいだろう。となると必然的に咲が衣姉さんの相手をしなければいけなくなる。とまぁ考えも仕方ないと思って部室へ戻った

 

「あら、もういいの?」

 

「はい」

 

「あれ?そういえば、染谷先輩は今日は来ないんですか?」

 

「おぉ、忘れてた。まこの家は喫茶店をやってるんだけどね、掻き入れどきのうえに店の人が病欠で人手が足りないらしいのよ」

 

「んじゃあ染谷先輩もウェイトレスを?」

 

「というわけでね、和と宮永さん、まこの家を手伝ってくれる?」

 

「「えっ!」」

 

「部長は行かないんですか?」

 

「えっ!?あ、あぁ…私、歳だから!それに、学生議会の仕事もあって…!」

 

「歳ってまだ十七歳なんじゃ…」

 

「とにかく!社会勉強だって麻雀に強くなるには必要よ。これも県予選に向けての一環ということで」

 

「「はぁ…」」

 

それは無理がありますよ

 

「あ、菊池くんも行ってね」

 

「え…」

 

なぜかオレも行く羽目になった

 

 

 

そして部長から言われた喫茶店へと向かっている

 

「うまく丸め込まれちゃったね」

 

「うまくなんでしょうか…」

 

「喫茶店で本当に勉強になるのかな」

 

「部長のホントの意図はなんなんだろうな」

 

そして少し歩いて行くと

 

「おーい!こっちじゃ」

 

「あれ?」

 

「これは?」

 

「よぉ来たのぅ」

 

「なんでそんな格好を?」

 

「コスプレ?」

 

「これはのぅ」

 

すると外に出ていた立て札に手を置いた。そこには“本日メイドデー”と書かれていた

 

「メイド…」

 

「喫茶…」

 

「よろしくな!」

 

どうやら二人はメイドの格好をさせられるらしい。ん?オレは…?

 

「先輩、オレは?」

 

「あぁ、お主はこれじゃ」

 

そう言ってどこに持っていたのか執事用の服を出した

 

「マジっすか…」

 

「大マジじゃ」

 

オレは諦めて更衣室へ行った。前に一さんに着させられたときにハギヨシさんに着方を習ったのでスムーズに着る

 

咲と和はオレが終わってから少しして出てきた

 

「お、二人とも似合ってるじゃないか。可愛いぞ」

 

オレの言葉を聞いた二人はモジモジしながら顔を真っ赤にした

 

メイド姿の二人は大盛況で、来るお客さん(主に男性)はみんな二人に注文する。最初は二人とも恥ずかしがっていたが和はすぐに順応した。咲はまだ少し恥ずかしいみたいだ

 

オレはというとまぁ慣れてるから…

 

そしてその喫茶店には麻雀卓があった

 

「いらっしゃい」

 

「「お帰りなさいませ、ご主人様」」

 

「お、空いてるじゃん。打てる?」

 

「はいはーい。お二人様麻雀卓にご案なーい」

 

どうやら今来たお客さん二人と咲と和は打つみたいだ

 

「あの、よろしく…」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしくな、お嬢さん達」

 

「じゃあ始めますか」

 

じゃあオレは観戦…

 

「菊池く〜ん」

 

…できないようだ。オレはお客さん(女性)に呼ばれる。しかも指名だ

 

「ツモ。2000・4000」

 

「今度はこっちの嬢ちゃんがトップか」

 

「んじゃ、切りのいいところでオレは帰るよ」

 

「あぁ」

 

お客さんの一人が帰ってしまった

 

「いやー、強いねお嬢ちゃん達」

 

「そうですか?」

 

「そんなこと…っ!」

 

それで咲は立ち上がって入口のドアを睨む。そしてドアが開いて入って来た女性は来ていたコートを染谷先輩に投げ渡す

 

「いらっしゃい」

 

「あら、今日のバイトは可愛らしい子だね」

 

この人がプロの藤田 靖子(ふじた やすこ)か。確かに強者の貫禄だ

 

「いつもの、特盛りで」

 

「はい、いつものですね」

 

常連なのか注文を早々と終わらせ麻雀卓に近づいていく

 

「よろしく。さぁ、始めようか」

 

和や咲にとって初めてのプロとの対局。おそらく二人はその人が誰だかわかっていないようだが、さて、どうなるかな…

 

 

対局中藤田プロは注文したカツ丼をバクバク食いながら打っていた。序盤は咲と和がそれぞれ1、2位で進んでいる

 

「ごち!」

 

藤田プロが食べ終わったか。これまではほとんど和了ってないからこれからどうなるかな?

 

「リーチ!」

 

藤田プロに気をとられていたらお客さんが親リーチをかけた

 

「カン!」

 

「っ!」

 

親リー相手に藤田プロはカン。そして続いて和の切った{二筒}が狙われた

 

「ロン!断么九、ドラ1、60符の3900(ザンク)

 

「なっ!?」

 

藤田プロが二巡前に切ったのは{七索}。{一筒}{四筒}{七筒}待ちを捨てて{二筒}待ちにしてたのか。最初から狙ってたか

 

「まくった」

 

さすが“まくりの女王”。その打ち方は和には理解できないだろう。でも…

 

「カン!」

 

「っ!」

 

「ツモ、嶺上開花」

 

その程度じゃ咲には勝てない

 

その後も終始トップは咲がかっさらってった。和は調子が戻せず、実力の半分も出せていなかった

 

「ふぅ〜」

 

「お疲れ、咲」

 

「ありがと、翔くん」

 

「和もな」

 

「ありがとうございます…」

 

オレは対局の終えた咲と和にお茶を出す

 

「あんたプロだろ?」

 

「ほぅ、知ってたのか」

 

「「えっ!」」

 

「あぁ。でもなんでプロなんかがこのタイミングでここに来た?」

 

「ふふっ、偶然さ」

 

「ははっ、そういうことにしときますよ」

 

咲と和をここでバイトさせたのは部長だ。ということはそういうことだろう

 

「どうだった?咲」

 

「うん、強かったよ。でも…」

 

「ん?」

 

「翔くんの方が強かったよ」

 

「…そっか」

 

「ふふふふ、ははははは!そうか!これでもプロなんだがな」

 

「笑ってるあんたはどうだったんだ?二人の実力」

 

「あぁ、そっちの短髪の子は結果が物語っているよ。もう“強い”部類に入る」

 

「だろうな」

 

「だが、そっちの胸の大きい子は別だ。てんでダメだな。筋はいいがまだまだ甘い」

 

「…」

 

和はそう言われて悔しいのだろう、スカートの裾を思い切り掴んで俯いている

 

「だがお前は別格だろう」

 

「ん?オレとは対局してないでしょう?」

 

「しなくても経験上わかるんだよ、強いやつってのは。お前は強い。それこそプロの中でもやっていけるほどにな」

 

「それはどうも」

 

「だが女子二人には悪いが、今のままではあの天江 衣には勝てない」

 

「どうだろうな」

 

オレは堂々と藤田プロの前で言い返す

 

「ふふっ、精々頑張りな」

 

藤田プロはそう言い残して店を出て行った

 

「さて二人とも、あんなこと言われたままでいいのか?」

 

「そんなわけない!」

 

「はい!もっと強くなって今度は倒します!」

 

「その粋だ。どうせ部長がなにか企んでるんでしょう?染谷先輩」

 

「ははは…バレとったか」

 

その後、実力向上のために合宿を行うことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおまけー

 

「…」

 

原村 和は喫茶店でバイトして帰った後、ベッドに横になってひたすら携帯の画面を見つめていた

 

「…」

 

誰に電話をかけるでもなく、誰かからのメールを待っているわけでもない。ただひたすら携帯の画面を見て頰を赤らめていた

 

「…カッコいい……」

 

ふと口から出た言葉で顔をさらに赤くして携帯をその発達しすぎている胸に埋めてベッドを転がる。そして携帯の画面を見ては転がり、画面を見ては転がりを繰り返す

 

携帯の画面には“執事姿の菊池 翔”が写っていた

 

「…翔さん……」

 

その行為は三十分以上続いた

 


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