牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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第13話

中学生の夏休みなんてものはなかなかすぐに終わってしまうもので、夏休みの宿題なんてものは生前大学生だったオレにとっては朝飯前だ。ただ理科はほとんど頭から飛んでいたので少しヤバかった…ただ自分の宿題をしている時間よりも咲や京太郎、モモに教えてた時間の方が長かった気がする

 

しかも龍門淵にお邪魔してからというもの衣姉さんからのお呼び出しが頻繁で何度も透華さんの家に通い詰めていた。だって行かないと衣姉さんが不機嫌になって部屋に閉じこもっちゃうって透華さんが言うんだもんよ

 

学校の方は楽しく過ごすことができいている。友達も多くはないが増えた。文化祭では劇で主役に抜擢された。なんでオレが?とも思ったのだが、クラスの女子全員からの指名だったので断ることもできずに劇に出た

 

そして年が明け新しい年になった。年末は美穂子さん家と過ごし、年始は咲達と過ごした。悲しいことに三月に照さんが高校進学で東京に行ってしまう。いや、悲しいというより向こうに行って迷子にならないか心配の方が強いかな…

 

冬休みが明けて学校に行ったがみんなこんな短時間で変わるやつはおらず、話すことと言えば新年何食べただの初夢は何を見たのだのとやはり中学生という会話をしていた

 

さて春休みに入ってオレは今新幹線の中にいる。この前怜と約束していたように大阪に向かうのだ。交通費とか宿泊費はどうしようかと父さん達に相談しいていたらなんと交通費は怜の両親が出してくれるしそれに怜の家に泊めてくれるらしい。実質タダで大阪旅行できるのだ

 

新幹線と電車を乗り継ぎオレも見知った駅に着くとそこには既に二人が迎えに来てくれていた

 

「あ!翔くん!」

 

「ぐはっ!」

 

オレが改札を出た瞬間竜華さんが飛びついてきた

 

「りゅ、竜華さん…痛いです」

 

「あ、ごめんなさい…でも、嬉しくって」

 

「顔を見せないですいません」

 

「ううん、こうやって来てくれたから大丈夫」

 

抱きついたまま顔だけをあげてオレの顔を見上げる竜華さん。てか竜華さんいろいろ成長していて、オレの理性が!!!

 

「なんや〜、うちは空気かいな…」

 

「あ、ごめん!翔くん!」

 

「あ、あぁ」

 

怜の声で今の状況に気づいたのかオレからパッと離れて顔を赤くする

 

「怜も久しぶり」

 

「その言い方だとうちは竜華のついでみたいやな〜」

 

「そんなことはないぞ。怜がお願いしてくれたから来れたんだからな」

 

オレは怜のおかげで来れたことを怜の頭を撫でつつ伝えた

 

「そうか〜、ほなそういうことにしとこか〜」

 

怜はそんなことをそうは言いつつも顔はめっちゃ笑顔だ。でもそれに伴って竜華さんの頰はどんどん膨れていく

 

「ほな行こうか〜」

 

「お、おい。腕を組むなよ」

 

「ええやん。長い付き合いなんやし」

 

「関係ないだろ」

 

「怜だけズルい!私も!」

 

「りゅ、竜華さん!?」

 

怜がオレの右腕に、竜華さんが左腕を組んできた。恥ずかしいし歩きずらいからやめてほしい…

 

 

 

怜の家に着いたら怜お母さんがいた

 

「翔くん、お久しぶり」

 

「お久しぶりです。これ、つまらないものですがどうぞ」

 

「あら、ありがとう。さすが翔くんね」

 

なにがさすがなのかわからないままオレはニヤついている怜のお母さんを見ていた

 

「翔、部屋に案内するわ」

 

「あぁ、頼む」

 

どうやら泊めてもらうときに使わせてもらう部屋に怜が案内してくれるようだ

 

「と〜き〜、そっちはあなたの部屋でしょ〜?」

 

「…あ〜、せやったせやった。こっちや」

 

お母さんの指摘に対してすかさず体の向きを変える怜。しっかりしてくれよ

 

「ここや」

 

「おう、ありがとな。ところで…」

 

「ん?」

 

「その荷物はなんですか…?竜華さん…」

 

「なにて、うちも泊まるからや」

 

「なんでこの部屋に…?」

 

「うちもここで寝るからや」

 

そんな「何言ってんの?」みたいな顔しないで。オレが間違ってるのか!?いや、そんなはずはない

 

「ダメです」

 

「なんで〜?」

 

「健全なる男女が同じ部屋で寝るのはダメなんです」

 

「うちは気にせーへんよ?」

 

「オレが気にします」

 

「りゅーかがここで寝るならうちもここで寝るわ」

 

「怜まで何言ってんだよ」

 

「ええやん」

 

「よくない」

 

一つ屋根の下でもダメな気がするのに同じ部屋でしかも二人となんて、ダメだダメだ!絶対ダメだ!

 

「ぶ〜、翔くんのイケず」

 

「翔ノリ悪いな〜」

 

「こんなノリはいらん」

 

「仕方ないな〜。じゃあうちは怜の部屋で寝よ」

 

最初からそれでいいじゃないか。まったくいつからこんな慎みのない子になってしまったのか…

 

「あ、そうだ」

 

「ん?」

 

「どうしたん?」

 

オレはハッと思い出し、バッグの中から綺麗にラッピングされた袋を二つ取り出した

 

「まだちょっと早いけどこれ。二人とも中学卒業&高校進学おめでとう!」

 

「お〜」

 

「しょ、翔くんが…うちに…」

 

「気に入らなかったらごめん」

 

二人は袋を開けて中を確認する

 

「これ」

 

「かわいいやん!」

 

「二人は親友って知ってるからな。お揃いのブレスレットにしてみた」

 

「ありがとう、翔。嬉しいわ」

 

「翔くんありがとう!これから毎日つける!」

 

「いや、高校につけて行けないでしょ…」

 

まぁでも喜んでくれてよかった

 

その後怜が変な力に目覚めたとかで麻雀を打った。すると怜は原作通り一巡先を見れるようになったらしい。でもあんま使いすぎると危ないからそれとなく注意しておいた

 

いつの間にか夜になっていて怜と竜華さんが今日はオレの料理が食べたいと言い出したから買い物に行って夕飯を作った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、オレは午後の今出かけている。目的地は愛宕家。怜や竜華さんが高校進学ということは同い年の愛宕家の洋姉もそういうことだ。だから洋姉にもお祝いをと思って家を訪ねることにした

 

最寄りの駅に着いてすごく見慣れた道を進み、前に住んでいた家を見つける。今はもう他の人が住んでいるみたいだ。ということは振り返った先が愛宕家である。オレはその家のチャイムを鳴らす

 

ピンポーン

 

「はい」

 

「おっす、絹姉。久しぶり」

 

「え、うそ…翔くん…?」

 

「あぁ、オレだよ」

 

チャイムの音から少しして出てきたのは絹姉だった。前に見たときよりも大人っぽくなっている。メガネは変わらないけど

 

「うぅぅ…翔くん!」

 

「おわっ!絹姉!?」

 

「翔くん!翔くん!」

 

絹姉は昨日の竜華さんみたいにオレに抱きついてきた。しかも涙を浮かべながら。オレは絹姉の頭を撫でながら泣き止んでくれるのを待つ

 

「落ち着いた?」

 

「…うん。ごめんな〜」

 

「こっちこそ、全然会いに来なくてごめん」

 

「それはいいんよ。でも今日来るのなんで知らせてくれなかったん!?」

 

「わりー」

 

「もう!でもまた会えて嬉しいわ〜」

 

「オレも嬉しいよ」

 

ようやく泣き止んでくれた絹姉は今度は笑みを浮かべる

 

「絹を泣かすんはどこのどいつやー!!!」

 

「おぉ、洋姉。久しぶり」

 

絹姉の鳴き声が聞こえたのか家の中から飛び出てきた洋姉

 

「なんや自分、うちは絹を泣かす弟なんておらん!」

 

「違うのお姉ちゃん!私が勝手に泣いちゃったんよ!」

 

「へ?そうなんか?お、翔やないか!久しぶりやな!」

 

「どうも洋榎さん」

 

「…なんでそんな他人行儀やねん」

 

「さっき弟じゃないと言われたので」

 

「あれは、言葉の綾や!」

 

さっき言ったことをよほど気にしているのか洋姉はおどおどしながら言ってくる

 

「翔くんもお姉ちゃんのこといじめんのやめて〜な」

 

「絹姉がそう言うんなら仕方ないな」

 

二人とも元気そうでなによりだ

 

「それで?今日はなんでまた急に」

 

「ちょうど大阪に来る予定があってな。洋姉に高校進学のお祝いをね」

 

「ほぉ〜、一丁前に気使うやん」

 

「オレももう中二になるからな」

 

家に上がらせてもらいカバンから取り出したものを洋姉に渡す。洋姉にはいろんな種類の髪留めをプレゼントした

 

「なぁ、翔くん。うちには〜?」

 

「絹姉は高校進学来年だろ?」

 

「そやけど〜」

 

「心配しなくても来年何か送るよ」

 

「直接はくれへんの〜?」

 

「そんな頻繁に来れるとこじゃないからな…ごめん…」

 

「む〜…しゃ〜ないな〜。なら来年期待しとくわ〜」

 

長野から大阪まででもなかなかお金がかかる。今回はほぼただで来れたけど、来年はおそらく違うとこの姉さんのとこに行かないといけなくなるだろうから、申し訳ないが絹姉には我慢してもらおう

 

「せや、今日お母ちゃん帰ってくんねん。翔、今日は夕飯うちで食うてき」

 

「え、でも…」

 

「さすがお姉ちゃんや!翔くん!久しぶりに一緒に食べようや!」

 

「…じゃあお言葉に甘えて」

 

「よっしゃ!!」

 

「よかったな〜、絹」

 

絹姉そんなガッツポーズしなくても…怜に連絡入れとくか。帰ったらブツブツ言われそうだな

 

そして雅恵さんが帰ってきてから四人で夕飯を食べ、遅くなる前にお暇した。怜の家に帰ると予想通り怜も竜華さんも不機嫌になっていて機嫌直しにとても時間がかかった

 

ちなみに他にも豊ねぇや霞姉さん、初美姉さん、巴さん、宥さんにもお祝いは送っておいた。照さんにも東京に出発する前にプレゼントを渡しておいた


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