牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

11 / 48

今回少し短いです



第10話

 

「ふぁ〜…ねみぃ…」

 

長野に越してきてから半年ぐらい経っただろうか。こっちの生活にも大分慣れてきた。でも小学生としての時間は残り半年。小六でこっちにきたから最初はクラスの輪に入るのが大変だった。でも幸いなことに咲(仲良くなってから呼び捨てになった)と一緒の学校で一緒のクラスだった。でも咲もそこまで人と話す方ではなかったので休み時間とかはよく二人で図書室に行っている

 

「おはよう、翔くん」

 

「ん?おう、咲〜。おはよう」

 

毎朝通っている道のいつもの曲がり角で咲と会う。このようにいつも咲と一緒に登校している

 

「おーい。翔〜、咲〜」

 

「あ、京ちゃん」

 

「よぉ〜」

 

「翔はいつも眠そうだな」

 

「朝は弱くてな…」

 

二人で歩いているところに後ろから走りながら声をかけてきたのは同じクラスの須賀 京太郎(すが きょうたろう)だ

 

「それにしても今日も夫婦で登校ですか」

 

「ふ!夫婦!!!?」

 

「夫婦じゃねぇよ」

 

まぁ冗談だとはわかってるんだが恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている咲の姿を見るとイジるのも程々にしてほしい…

 

「あ、そういえばお前ら聞いたか?」

 

「何を」

 

「うちの学校に幽霊がいるって噂」

 

「えっ!」

 

幽霊という言葉を聞いて今度は怖がる咲。感情豊かだな〜。照さんとは大違い

 

「んなのただの噂だろ?」

 

「でも見たって言う人が何人もいるんだぞ」

 

「う〜ん…その幽霊はどんな姿なんだ?」

 

「聞いた話によると黒髪のオカッパで身長は普通らしい」

 

「それだけじゃわからんな」

 

「だから今日の放課後一緒に探そうぜ!」

 

「えぇぇ!」

 

京太郎の提案に咲は大声をあげる。オレは別にいいんだがオバケの類が苦手な咲にはちと厳しいかな

 

「オレはいいぞ。咲は別に先に帰ってていいぞ?」

 

「…えっと、翔くんが一緒なら大丈夫、かな」

 

咲はそう言いながら手を握ってきた。そしてオレ達三人で放課後その幽霊を探すこととなった

 

 

 

 

 

 

 

 

ー放課後ー

 

授業が終わって幽霊探しを始めた

 

「それで、どこへ探しに行くんだ?」

 

「それが……あてはないんだ」

 

「は?」

 

「なんか見たって人の場所がばらばらでさ…」

 

「帰る」

 

オレは咲の腕を掴んで体の向きを変えて歩こうとする

 

「ま、待ってくれよ!」

 

「そんなあてもないのに付き合ってられるか」

 

「そこを何とか!な!?頼む!」

 

「はぁ…」

 

そこまで言われたら仕方ない。だがあてもないのにどこをどう探すんだ?すると…

 

「きゃっ!」

 

咲がいきなり驚きの声をあげた

 

「どうした?」

 

「そ、そこに今誰かが…」

 

咲は右手で口元を押さえて左手で教室の中を指差した

 

「幽霊か!?なんだ、誰もいねぇじゃん」

 

「え…本当だ」

 

二人に続いてオレも教室の中を覗いてみると、二人はそう言うがオレにははっきりと()()()()()()が目に入った

 

「あれ、東横じゃん」

 

「は?何言ってんの翔。誰もいねぇじゃん」

 

「お前こそ何言ってんだよ。ちゃんといるじゃねぇか」

 

オレと京太郎の言っていることは完全に食い違っている。あぁ、確か東横さんは究極に影が薄くって周りからは認識されにくいんだっけ

 

ガラガラ

 

オレは教室のドアを開けて東横の元に近づいていった

 

「おっす。まだ残ってたのか?」

 

「っ!」

 

オレが話しかけると東横は驚いた顔をする

 

「…私が、見えるっすか」

 

「何言ってんだ?当たり前だろ」

 

「おい翔、誰と話してんだよ」

 

「翔くん?」

 

後からきた咲と京太郎はまだ東横を認識できてないようだ

 

「おいおい、二人とも失礼だろ。ここにいるだろ」

 

オレは東横の肩に手を置いた

 

「うぉっ!いつの間に!」

 

「最初からだ」

 

「えっ、でもさっきまでは本当に…」

 

二人には東横がいきなり目の前に現れたように感じたためすごく驚いている

 

「二人も私のこと、見えるっすか…?」

 

「え、あ…あぁ。今は」

 

「私も」

 

「そ、そっすか」

 

さっきから失礼極まりないことを言われているのにオレらに認識されたってわかった東横はすごい笑顔だ

 

「それで東横はこんな時間までなにやってたんだ?」

 

「なんで私の名前を…?」

 

「なんでって、同じクラスだろ」

 

「そうなの!?」

 

「全然知らなかった」

 

「お前ら…」

 

「私、影薄いっすから」

 

東横はそう言うが顔はすごく暗くなった

 

「二人とも…」

 

「な、なんだよ…」

 

「翔、くん…?」

 

「すぐに東横に謝れ」

 

「菊池くん…」

 

「東横はこう言ってくれたがクラスメイトに名前も覚えられてなくて悲しくないわけないだろ!」

 

「「っ!」」

 

オレの言葉に二人は目を見開く

 

「東横さん…ごめん!」

 

「わ、私もごめんなさい!」

 

二人はオレの気持ちをわかってくれたのか頭を下げて精一杯の謝罪をした

 

「二人とも頭をあげてほしいっす」

 

東横の言葉に咲と京太郎はゆっくりと頭をあげる

 

「菊池くん、須賀くん、宮永さん。私と友達になってほしいっす!」

 

「あぁ、いいぞ」

 

「もちろんだ!」

 

「うん!よろしくね」

 

オレ達の応えに対してさっきよりも一層笑顔になる東横

 

「それと菊池くん、ありがとうっす」

 

「なにが?」

 

「私のことを見つけてくれて。二人に私を見せてくれて」

 

「そんなのお礼するほどじゃない。他にも友達がほしかったら言ってくれ。なんでかわからんがオレが触れたらみんなに見えるみたいだからな」

 

さっきもオレが東横の肩に手を置いた瞬間に咲と京太郎は認識できたからな

 

「それはいいっす。私は私のことを見てくれる友達がいればいいっす」

 

東横はオレ達三人の顔を見ながらそう言う

 

「それと菊池くん。私のことは、その…モモと呼んでほしいっす…」

 

「おう、いいぞモモ。オレのことも翔でいいぞ?」

 

「わかったっす!翔くん!」

 

最後に名前の呼ばれ方を言い出したときだけ頰を赤くしていたが、こうしてオレにも新しい友達ができた

 

 

 

 

それから咲と京太郎にモモも加わって遊ぶことが増えた。咲と京太郎はまだ自分たちだけでモモを認識するのに苦労しているみたいだ。でも意識していれば見れるそうだ

 

そしてオレ達は小六、そろそろ行く中学を決めなきゃいけない時期になってきた

 

「みんなはどこの中学に行くっすか?」

 

「オレは○中だな」

 

「オレも」

 

「私もそこかな」

 

「そうっすか…」

 

「モモは違うのか?」

 

「私は鶴賀学園っす」

 

「そっか…離れ離れになるのは寂しいな」

 

みんな明らかに表情が曇る。短い時間だが一緒にいた友達と離れるのは寂しいことだ

 

「でも一生会えないわけじゃない。お互いどこに住んでのか知ってるんだし、すぐ会えるさ」

 

「そうだね」

 

「そうっすね!」

 

「そっか。中学生になっても遊べるんだな!」

 

咲とモモは笑顔になり、京太郎は嬉しさから腕を振り上げて喜んでいる

 

オレももう中学生…どうなるんだろうな〜

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。