金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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今回から視点は変わり、再びラインハルト様で(^^

ラインハルト、なんか妙に優しいです(笑




第03章:”金髪さんは駆逐艦がお好き?”
第040話:”イナヅマにて友を思う……と、いきなりか?”


 

 

 

ふむ、何やら実家でどえらいことが起きてるような気がするが……ラインハルト・ミューゼルだ。

ん? 今日は名前ネタはないのかだと?

一応、「ラインハルト・ロックンロールだ」というのを考えたが、ロックはリンチ少将改め中将の代名詞だからな。

 

それに俺は同じ地球単独時代の古典(オールド・アーシアン)時代の音楽なら、もう少し柔らかい曲調の物の方がいい。

例えば、”愛唄”とか”そっと溶けゆくように”とかな。

ん? 誰がロマンチストだ!

 

まあ、俺がロマンチストかどうかなど宇宙に比べればどうということはない。

そう、宇宙だ!

俺は今、宇宙に戻ってきたのだ!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

俺の乗る同盟駆逐艦”イナヅマ”は、リンチ中将の元で編成されつつある”エル・ファシル特別防衛任務群”に参加する1隻としてイゼルローン回廊方面に来ていた。

航海士長という立ち位置は正直少々物足りなさを感じるが、中尉という階級を考えれば妥当なところだろう。

 

”エル・ファシル特別防衛任務群”とは名前こそ仰々しいが、実質的にはエル・ファシルを拠点に防備と回廊への哨戒を任務とする防人(さきもり)役を務める半個艦隊……7000隻ほどの”雑多な寄せ集め集団”だ。

 

7000隻の内訳は、300隻ほどは旧エル・ファシル防衛艦隊……リンチ一家の生き残りの志願者に新造艦を手渡し編成されたもので、言わばこれが艦隊の”()()”となる。

まだ真新しい船に慣れてないせいで今のところ動きはぎこちないが、慣れさえすれば間違いなく中核に相応しい練度を誇るだろう。

残る6700隻は本当の意味での寄せ集め、同盟全域から明らかに余剰な船を各地方艦隊や警備艦隊などからかき集めて来た物だ。

例えば、この”イナヅマ”も惑星ハイネセンを守る正規第1艦隊とはまた別に存在する、バーラト星系警備艦隊から抽出された船だった。

 

集められたのは比較的新しく程度のよい船とのことだったが……いかんせん、乗ってる人間の練度がバラバラすぎた。

とにかく所属艦隊以外の船との連携機動などやったことのない船がほとんどで、現状では7000隻が一丸となって戦術艦隊機動を行うなど、夢のまた夢だろう。

 

事態を重く見たリンチ中将は、とりあえず比較的まともな動きが出来る船から順に100隻以下(現状、寄せ集めの船で集団航行できる上限値がその程度と判断された)の小戦隊を編成、順番に訓練航海を兼ねたイゼルローン回廊方面へのパトロールへと送り出されていた。

無論、合格が出されない船は延々とエル・ファシル宙域で艦隊行動訓練が課される。

遭遇戦の可能性もあるパトロールも居残り訓練もリンチ中将らしいスパルタだが、そうでもしなければいつまで経っても艦隊行動などできないだろう。

 

幸い、”イナヅマ”は寄せ集めの中でも比較的練度が高い船で、早い段階から他の船共々小戦隊を組み、今回はイゼルローン回廊内にあるアルトミュール恒星系へと哨戒任務についている。

 

 

 

(それにしても中尉で駆逐艦に乗り、アルトミュール恒星系での哨戒任務か……)

 

妙な符号の一致を感じた。

俺の中にある”もう一つの人生の記憶”でも、同じようなシチュエーションがあった。

 

その記憶によれば、俺は同盟軍ではなく幼年学校を卒業しただけの軍人で、”ハーメルンII”という古ぼけた駆逐艦に乗り……ロクな目に合わなかったらしい。

まあ、キルヒアイスと言う赤毛の無二の親友がいたから、そこまで不幸だとは思わないが……やはり姉上が寵姫というのは納得できんな。

 

B夫人に何度も殺されかけたのは正直、勘弁して欲しいが……まあ、”今の現実”でないのなら問題あるまい。

 

(それにしても……)

 

キルヒアイスは、この世界でも帝国にいるのだろうか?

俺や姉上がいなければ、よほどのことが無い限り軍人にはなってはいまい。

そこ、フラグとか言うな。

 

しかし、仕方の無い事情があったとはいえ、友人がキルヒアイス一人とは我ながらひどいコミュ障だな。

そういう意味では、俺は”もう一人の俺”よりはマシな生き方をしてるのかもしれんな。

 

俺とアッテンボローとフォークで”士官学校三羽烏(さんばがらす)”と呼ばれ……口の悪い奴は”士官学校三馬鹿”と言っていたが、まあその手の輩は実力(物理)で黙らせもしたな。

 

アッテンボローは時々どころか”有害図書愛好会”を筆頭にしょっちゅう阿呆な行動をとるが、「伊達と酔狂」がアイツの持ち味である以上は納得してやらんでもない。

しかし人を「付き合いのいい変人優等生」と呼ぶのはやめろ。

それと人を反体制側の同調者扱いするのもだ。

俺はあくまで中庸、バランス型の軍人だぞ? タイプで言うなら恋姫ではなく演義の趙雲だ。

 

フォークは、パイロットへの道を示し背中を押してやったことは我ながらファインプレーだと今でも思う。

”もう一つの記憶”によれば、あいつが参謀なんてストレスフルな仕事をすれば、ろくな事にならんらしいからな。

精神疾患系の持病を知る前から、あいつが豆腐メンタルだってことに気づいたのは俺ぐらいだったが……生真面目な人間は余計なストレスを溜めやすい。

あいつは自由気ままに、誰に縛られることも無く宇宙(そら)を駆ける位がちょうどいい。

人間が人間である以上、本当に自由になることなど不可能なのだが、それを夢見ることくらい許されてもいいはずだ。

 

 

 

”ぱしゃ”

 

これも様式美と言う奴なのか? 不意にまるで銀塩カメラの機械式シャッターを切るような音が聞こえた。

銀塩カメラとはなんだだと? アナログ・フィルムに画像を写しこむ、現在のデジタル記録式カメラが一般化する前の時代にあったクラシカル・カメラのことだ。

オリジナルなら骨董マニア垂涎らしいが、流石にオリジナルは完全動作品はないだろう。

ただ、同盟では”アマチュアでも使える最古の映像機器の一つ”として古典趣味として人気があり、かくゆう我が父も小説執筆以外の数少ない趣味の一つとしている。

「アナログ・カメラにはデジタル・カメラには無い味わいがある。手間がかかるのが逆にいい」とは父の弁だが、どうせ母しか撮らないのだからどんなカメラでも同じだろうと俺は思っている。

 

”はぁ~”

 

そして、俺は思わずため息をついた。

なぜなら、俺はその音に心当たりがあった……この駆逐艦”イナヅマ”に乗ってから何度も聞いて、半ばうんざりした音だったからだ。

 

「あっ、ひっどーい! ()()()()の顔を見るなり溜息つくことないじゃない!」

 

ときゃんきゃん抗議の声を上げるのは、カメラ片手の黒髪をポニーテールに結んだ女性、というか少女といいたくなる見た目の娘。でも、俺より年上らしい……が、せいぜい同年代か下にしか見えん。

いかにも好奇心旺盛そうな大きな瞳が印象的だ。蛇足だが、160cmはなさそう(どちらかといえば150cm台前半くらいか?)なので小柄と言えば小柄だが、出るところは出てるぞ?

軍艦に乗ってる以上は、もちろん同盟女性士官で、

 

「”()()()大尉”、前にも言ったでしょう? 写真を撮るならせめて一声かけろと」

 

 

 

まったく、俺は休憩がてらに友へと思いを馳せる時間さえもないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いきなり新キャラです、しかもオリ(挨拶

なんか、ふとラインハルトがアッテンボローとフォークをどう思ってるか書いてみたくなったんですよ~。
はっきり言えるのは、原作においての赤毛のノッポさんの位置には、この二人は絶対に来ないでしょう。
というかこの世界のラインハルトには必要ないでしょうから。
今の彼には、”二人だけの閉じられた世界”は意味を持たず、上でも下でもなく横の繋がりがひろくなっていくでしょうしね(^^

さて、新オリのアオバ大尉は、その”繋がり”に入ってくるのか?


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