多分、”彼”視点の書き方は銀英伝二次でも珍しいのではないかな~と。
俺が軍大学のカフェでコーヒーを相棒にこれからの任務の方針を思案していると……
「やあ、始めまして。君がバグダッシュ大尉かい?
”ぶほっ!”
テーブルを挟んだ前の席にいきなり座った男……
思わず飲んでたコーヒーを吹いた俺は悪くないと思うぞ?
「な、何を言ってるんだ? 私は主計科の……」
「いや、普通に情報部だろう? 立ち振る舞い、言動、食事の作法まで全てが君が情報部の人間であることを、無言かつ雄弁に告げているんだけどね」
ちょっと待て……何か聞き捨てならないというか、ツッコミ所満載な話を聞いた気がするんだが?
「コホン……それでは流石に小官を情報部将校と断定するには……」
すると、眼前の
「私は情報将校とは言っても、情報
グッ……しまったぁ~っ!
「か、仮定として……もし、貴官の言うとおり小官が情報将校だとして、一体何の用だね?」
すると事も無げに、
「どうせ任務は私の監視とかだろう? なら、どうせ暇じゃないのかと思ってね。調べてわかったかと思うけど、私にはこれと言った後ろ盾も無ければ、特殊な交友関係も無い。生まれはともかく育ちは船上でってのは同盟では珍しいかもしれないけど、フェザーンじゃありふれたものだ。事故で天涯孤独ってのは、確かにそうありふれたものじゃないけどね」
ばれてーら。
いや、どうすんだよこの状況……
「ああ、私の護衛名目で監視者が来るのは予想してたことだから、正直迷惑な反面、ありがたいとも思ってるよ。少なくともボディガードや警備員を雇う手間が省けそうだしね」
「そりゃ結構なことで」
頭を抱えたくなる衝動を無理矢理押さえ込みつつ、舌先三寸でどう言いくるめてやろうと思案していると、
「結構ついでに言わせてもらえれば、私のスケジュール帖には生憎と”
……絶対ろくな提案じゃねぇだろ!!
「君があえてどこの所属かは深く追求しないことにするけど、情報関係の軍人ってことは私より確実に上位情報へのアクセス権限をもってるね?」
「まあ、そりゃ確かに……」
普通の新任大尉よりは、確実に機密度の高い情報へはアクセスできるだろうが……
「そこでバグダッシュ大尉、君の権限を使って情報提供を頼みたいのさ」
☆☆☆
言ってることは極めて合理的で、考えようによっては妥当な要求かもしれんが……
(だが、この得体の知れなさはなんだ……?)
俺は無意識に懐に忍ばせてる護身用の拳銃、ブラスターではなく今時珍しい火薬式の実体弾拳銃”コルト・パイソン・レプリカ”に手を伸ばしたくなる衝動に駆られた。
普段なら下手なハンドブラスターよりずっと頼りになる相棒だが、
(しかし、抜いて眉間に狙いをつけて引き金を引いたところで……)
本当にコイツを殺せるのか?
人間に対する感想じゃないが、俺はそう思うことを止められなかった。
軍人という職業とは対極にあるような温和な雰囲気と、大して鍛えられてないことが丸わかりの体つき……一見すると苦も無く抹消できそうだが、
(だが、そうはならない気がする……)
根拠なんてのは無い。
ただ、目の前の男を”
つまり、死ぬべきときが来る瞬間までこの男は殺せない……そう思わせるだけの何かがあった。
「大尉の望む情報とは?」
だから俺は切り口を変える。
とりあえず、この男を知ることからはじめるのが賢明だろう。
欲するものがわかれば、その人格の欠片程度は見えてくる。
「とりあえず欲しいのは、イゼルローン要塞の概要。特に主要塞砲の
「は?」
「集められるなら……そうだな。帝国側の提督と、将来提督になりそうなその予備軍の情報が欲しい。これも、”同盟軍側の主観でどう見てるか?”が重要だね」
「大尉、貴官は一体何を調べようと……」
いや、そうじゃない。
「何を探ろうとしているので?」
本気で、この男が何を考えてるかわからないんだが……
「究極的に言えば、”帝国との
その男は頭を掻いて、
「だけど、今はまだ”その段階”じゃない。だから、」
小さな笑みを浮かべ、
「とりあえず取っ掛かり易いとこから始めようと思ってね」
「大尉は、イゼルローン要塞が取っ付き易いと?」
あの難攻不落の代名詞がとっつきやすいと?
「これまで4回攻めてるんだ……それなりに信頼できる精度の資料がそろってるだろ?」
同盟が持つ情報学的な意味でやりやすいってことか?
そりゃあ、同盟将兵の血と引き換えに得た情報だからな……
「敗戦の歴史なのに?」
「敗戦の歴史”
コルト・パイソンは実は微妙に中の人ネタ(挨拶
今回はちょっとだけ”本気を見せ始めたヤン”の片鱗でもかけたらな~と思ってたら、何故かバグダッシュに「得体の知れない奴」認定されたくさいでござる(笑