そして……祝! 100話到達!!
いや~、これまで他の場所でも色々連載してきましたが、連載話数3桁に突入したのは実は生まれて初めてなんですよ(^^
ホント、未知の領域です。
これも読んでくださる、応援してくださる皆様のおかげです。ありがとうございました!
今回は、前々から100話に到達したら書こうと思っていた話を投稿しました。
原作では望んでも見れなかったシチュエーション……そんな感じです(^^
第100話:”青天の霹靂 そして、綺麗な涙”
世には、”青天の霹靂”という言葉がある。
英語で言えば、”A Bolt from The Blue”。
東西を問わず似たような言い回しで、同じような状況を表すのは実に興味深い。
そして”それ”は、表現通りに宇宙歴790年のある晴れた日、首都惑星ハイネセンのとある高級住宅地の一角で起こった。
「あのね、ウェンリー様……」
アンネローゼ・ミューゼルは大輪の花がほころぶような満面の笑みで、
「できちゃった♪」
アンネローゼは、ヤレば出来る
まあ、生物学的には極めて自然なことだ。むしろあれだけバブ〇シャス……もとい。バブらせれば当然の結果だろう。古事記にもそう書かれている。
こうして、同盟ミューゼル家第二世代艦……というか、アンネローゼの強い希望で同盟
ただ、ヤンが供出した(というか搾り取られた)激レア素材と、アンネローゼの圧倒的な母性に裏打ちされた高性能ドックのおかげで(あるいは、そのせいで)、妙な化学反応でもおこしたのか生まれてくる子はとんでもない
「あはっ……あははっ! よくやったよアンネ!!」
真実を告げられたヤン・ウェンリーの行動は、後に幾つもの特異過ぎる二つ名で呼ばれる(黒魔術師とか、全自動殲滅機とか、宇宙時代に間違って生まれたロキの化身とか、ヨルムンガンドもしくはニーズヘッグの地上代行者とか)ことになるこの男にしては月並みなそれで、
「ウェンリー様ぁ♪」
最愛の女性を抱き上げ、お姫様抱っこのままミューゼル家のリビングでくるくる回るくるくる回るという物だった。
なんか妙に懐かしいフレーズだが、アンネローゼの気分はまさに『ふわり雲の上』な天国気分だろう。一人じゃなく、ヤンに抱っこされたままなら余計にだろう。
「
ま、まあそんな深い意味ではなく、家事スキルをはじめいろいろ自分には欠落してると言いたいんだろう。
確かに原作でもユリアン少年が来るまでは、『自宅にいるより軍艦に乗ってた方が健康的な生活をおくれる』だの、『敵より先に不摂生に殺される』と評判高かった(?)男なのだから仕方がない。
いや、それだけではない。
実は、この世界線においてのヤン・ウェンリーという男は、原作以上に”家族という物と縁が薄い男”だったのだ。
折も良く、今回でちょうど100話……この世界線で生まれ、数奇な運命を歩むことになったヤンの人生を、少しだけ振り返ってみたい。
☆☆☆
ヤン・ウェンリー、漢字表記にすれば”楊文里”。
この時代、遥か祖先を探る術は13日戦争~90年戦争で多くの資料が散逸してしまい不可能だが、辛うじて中華大陸が
読者の皆さんにだけにこっそり彼のルーツを教えると……この世界線では更に前も前、ヤン・ウェンリーが生きる宇宙時代では古代に分類される、後漢前期時代に生きた政治家、”楊震”にまで遡れる。
家系的には三国志にも出てくる”楊修”の流れを組み、直系の子孫は東晋末期の楊思平の処刑で潰えたとされるが、どうやら一門の
蛇足ではあるが、三国志演義の”曹操と楊修の逸話”……有名な『
さて、先祖の話はこれくらいにして、ヤン・ウェンリー本人のバイオグラフィーを紐解いてゆけば……
生年月日は、宇宙歴767年4月4日、父はフェザーンと同盟の間で交易していた船主兼自由商人の”ヤン・タイロン(楊泰隆)”、母は”カトリーヌ・ルクレール・ヤン”。この時代に意味はないかもしれないが、名前から考えて父は中華系で母はフランス系というところだ。
母が病死したのは原作と同じく5歳の時、だが彼の運命が原作と大きく逸脱し始めたのが、6歳の時だった。
そう、片親になったばかりのヤンは、その日、父や家族同然の父の部下たちと共に交易船に乗り、同盟領を航行していた。
誰が悪い、何が悪いという訳でもなかった。
ただただ、間が悪いとしか言いようがなかった。
特に整備不良でもない交易船の動力炉が突如悲鳴を上げ、暴走を始めたのだ。
ありきたりな宇宙船事故……そして、ヤン少年は母に続き父を、家族を失った。
原作より10年も早い、早すぎる永遠の別離だった。
☆☆☆
事故から数時間後、救助に駆け付けたパトロール中だった警備艦隊所属の駆逐艦にヤンは無事に助けられる。
メルトダウン直前、咄嗟に父が脱出ポッドに幼いヤンを押し込めたおかげで、動力炉や宇宙線などの被曝は幸いにしてなかった。
ただ、問題となったのは、ヤンの国籍は父同様にフェザーンであり、何度か出てきたがこの世界線において自由惑星同盟の公式見解は『フェザーンは
フェザーンが国家ではない以上、この時のヤンは『
第059/060話でラインハルトの口から語られたが、当時の同盟はもう”
だが、価値観は21世紀の日本人の視点では首を傾げる部分はあっても、決してモラルや民度が低いわけではない同盟ならではの話だが、6歳の少年を『たった一人で敵国に送還する』のはいかがなものか?という議論が当然のように起きた。
そして、ここである意味同盟の
子供とか大人とかの概念や年齢ではなく、『一人の人間、独立した人格として、自由意志を尊重する』という判断だ。
つまり、ヤン少年に置かれている現状を懇切丁寧に説明し、『フェザーンに帰還するもよし、同盟に
ヤンが現在、自由惑星同盟軍の少佐である以上、その時どちらを選んだのかは今更語るまでもないだろう。
幸い、里親は直ぐに見つかった。
救助にきた駆逐艦の艦長が、里親を申し出たのだ。
更に幸いなことに、多少クセはあるが、そのようやく中年と呼ばれるようになった年代の男性は好人物であり、男としても親としても過不足ない人格だった。
それにクセと言っても、リンチ中将ほどではない。ただ、ふと思い出したようにRV車に乗せてキャンプに連れていかれたり、突拍子もないことを時たまするぐらいだ。
ついでに言えば、ヤンに酒の味を教えたのも”彼”だった。
さて、少年期のヤンはどんな感じだったのかと言えば……実父から受け継げた物が、記憶が10年分少なかった事が思いの外影響していたのだろうか?
原作と異なり、彼は技術関係、特に宇宙船舶関係に強い興味を示したようだ。
無論、歴史も元々好きだが、父が愛し、そして父を殺した船により惹かれたのだ。これと歴史好きが混ざり合い、技術史方面にも強い関心を示した。
おかげで原則では特徴の一つであった『機械音痴』が鳴りを潜め、むしろ逆にそちら方面は一般的な水準より明るいぐらいだ。
紙媒体の古典的な書物も好むが、かと言って自作でパソコンも組める……例えるなら、そんな少年だったらしい。
もし、里親が軍人でなければ、あるいはヤンが慕っていなければ、きっとヤンは士官学校には行かず、船舶関連の技術専門学校に進路を決めていただろう。
だが、仕方ない。少年期のヤンは思ってしまったのだ。今ほどはっきりした感情ではないけれど、『守りたい』と。
漠然とした、何を守りたいのかもはっきりしないあやふやな思い……愛国心や国防意識と呼ぶには、あまりにもあやふやな感情だったが、それでも確かに心に宿る思いだった。
16歳になったヤンが、自分の進路を士官学校に決めたとき、里親は行けとも行くなとも言わなかった。
ただ、
『お前が自分の意志で決め、後悔しなければそれでいい』
そう微笑んでいた。
☆☆☆
「なあ、アンネ」
「はい♪」
「お腹が大きくなる前にちゃんと結婚、しようか?」
「嬉しくて……涙が止まりませんわ。大好きです! ウェンリー様!!」
アンネローゼの碧眼から零れ落ちる光の雫は、とても綺麗にキラキラ輝いていたのだった……
読んでくださりありがとうございました。
いや~、デキ婚ですw
だってこうでもしないとこの世界線のヤン、踏ん切りつかなくて結婚しそうもなかったし(^^
次回は結婚式準備編かな?
まあ、ラインハルトを筆頭に濃い面子集まりそうだしな~。
100話でどうしても書きたかった話が書けて、個人的には大変満足です♪
そして、100話記念の詰め込みサービスってことで、今まで散発的に出してきた、『この世界線のバイオグラフィー・オブ・ヤン・ウェンリー』を載せてみました。
いや、ようやく、そして初めて3桁まで来れました。
これも、何回もの長期休載を挟んでも、応援してくださった皆様のおかげです。
重ねてありがとうございました!
ヤンがユリアンでなく実子持ちというのも珍しいシチュエーションですが……原作乖離が決定的になったこの世界においてヤンが、ラインハルトがどう生きてゆくか?
これからも応援いただければ幸いです。