拓海「遅い」
作「すまんね。行事の準備で筆が進まなかったんだよ」
拓海「おう、とりあえず書ききった事は誉めてやる」
作「えー、それでは第十一話、どうぞ」
女悪魔side in
──私の名は『リアス・グレモリー』。グレモリー家の次期当主で今代の魔王ルシファーの妹よ……何故自分の肩書きを羅列したのかって?それは───
「──多分あの子には悪気は無いんですよ! ただHIGUMAさんの威圧に気圧されて反射的にやってしまったんですよ!」
「──グルゥ…グルル、グルゴゥッ」
「と、という事は許してくれるんですか!?」
「グルル。ゴゥグゥ、ゴルルゴグッ」
「ああ、ありがとうございます! あの子にはきちんと言いつけておきますので!」
「グルルゴゥ、ゴゥルル、グルグ」
「はい、では私達はここで
───
つい先日、兄であるサーゼクス・ルシファーから『
「──ホレホレー、キビキビ歩ケー(棒)」
「ソウデスヨー、キビキビ歩イテクダサーイ(棒)」
───腕を縄で縛られて引っ張られている。……まさか人間界に来て虜囚の真似事をするとは思っていなかったわ……あと棒読みなのがちょっとイラっとするわね。
「……よし、そろそろ到着だな」
「………そう、ならこの縄を解いて貰っても──」
「ダメだね。そもそもコレ無いと安全地帯に入れないぞ?」
「──えっ?この縄って意味があったの!?」
「大アリです。意味が無かったら普通に『後を着いてこい』だけで済ませてますよ?」
───この二人、意外と優しいのね……もしかしたら、私の眷属になってくれるかも──
「──おーいあんた、もう着いたぞー」
「あ、あんた!?」
「いやだって、まだあんたの名前聞いてないし。とりま落ち着いてから聞くさね」
「さ、さね!?何よその語尾は……え?」
そう返事をした直後、正面を見ると───
「──えええええええっ!!!? な、なんでこんなに開けた場所があるの!? 外からは全然見えなかったわよ!!?」
────広大な草原が目の前に広がっていたのだ。
「おお、ナイスリアクション。朱乃姉はちょっと落ち着いたリアクションだったけど、こういう派手なリアクションも嫌いじゃないな!」
「………まあ、それは一度忘れて……貴女のお名前を聞かせてほしいのですが?」
──ああ、そういえばまだ名前を言ってなかったわね……悪魔という事は──隠さずに言っておく方が良いかしら?
「自己紹介がまだだったわね。私はリアス・グレモリー。種族は悪魔で、少し旅を──」
「「ダウト」」
「どう見ても貴族の箱入り娘なのに旅なんて出来る訳ねぇだろ」
「旅をしてると言っても荷物は何処に在るのですか? その格好で旅だなんて、自殺行為其の物ですよ?」
「────うぅ…」
流石に『自分の眷属探してます』なんて言えないから誤魔化そうとしたら、物凄い勢いで捲し立てられてしまった。───いくらなんでもこれは酷くないかしら?
「まあ目的は後で良いだろう。俺は来谷拓海。修行中の人間だ」
「なら私も──姫島朱乃。種族は……」チラッ
ん?タクミの方を見てどうしたのかしら?
「………」チラッ
「──!………ハーフの堕天使ですわ」
なっ!? 堕天使のハーフですって!? ──という事はタクミも私達の事情を知っているのかしら……少し聞いてみましょうか。
「───ねえタクミ、貴方h
「なんでいきなりファーストネームで呼んでんだよ?初対面なら普通名字で呼ぶだろ」……ご、ごめんなさいクルヤ、人間界の事はあまり知らないかr
「いや、何故タメ口なんですか?年上には敬語で話せって教わらなかったのですか?」──と、年上だったのですか!?そ、それは申し訳ごz
「「あ、でも年下と同い年だから別に大丈夫だぞ(ですよ)?あとアンタ(貴女)の好きな呼び方で構わないぞ(構いませんよ)」」もうヤダこの二人!!」
冥界のお父様、お母様、お兄様にグレイフィア、そしてミリキャス……初めての人間との会話がこんなのでこの先大丈夫なのかしら……泣きたくなってきたわ……
女悪魔改め、リアスside out
拓海side in
(……朱乃姉、この悪魔──)チラッ
(ええ、この悪魔は──)チラッ
………件の悪魔───リアス・グレモリーと邂逅して分かったことがある。それは───
いやなんて言うか、プライドが高くて外面が強気そうな人をイジるとこうなるんだね? いや人じゃなくて悪魔なんだけども。
「うぅ………と、兎も角!貴方達に少し聞きたいことがあるのだけれど……」
「別に大丈夫だが?(仕切り直したな)」チラッ
「ええ、何でしょうか?(仕切り直したのね)」チラッ
「──貴方達、私の眷属n
「「丁重に御断りさせて頂きます」」まだ全部言い切ってないのに断られた!?そして何故急に敬語に変えたの!?」
こういう手合いは自分のペースに乗ると付け上がるからな、そういう流れを作らないようにするのが一番だ。
「せ、せめて!せめて反応だけでも!
「必死すぎんだろ
あーめんどくさ。多分断り続けても喰らいついてくるだろうな……
「──へいへい、分かったよ。反応だけな」
「────へ?良いの?」
「反応を見るだけだ。その
「う……分かってるわよ」
「なら良し(……朱乃姉、監視お願い)」チラッ
「(……ええ、分かったわ)」チラッ
──とりあえず、コレで
「
「ほうほう、良く考えられてるな」
「そうでしょう?じゃあとりあえずこの
「──おいちょっと待てや
「────へ?」
「今までの話を纏めて整理して推理すると、チェスの
「ええ、そうだけど……」
「──てことは、
「───ええ、そうよ……」
「そうか………じゃあなんで初対面の人間に側近ポジの駒で反応見んだよこの
「愚…!? 貴方今私の家名を馬鹿にしたわね!?」
「普通に別の駒出せば良いだろうが!?」
「今
「他の駒も持ってこいよ愚レモリー!」
「別に良いじゃない! 反応を見るだけなんだから!!」
「あらら…なんか仲が良くて妬けちゃうわね」
「……とりあえずさっさと反応見るぞ。これ以上は面倒だ」
「───ええ、それに賛成よ……コホン。それじゃあ掌を出して。そこに駒を載せて反応を見るから」
「りょーかい」
そう言われて右手の掌を出し、グレモリーがその上に駒を置いた瞬間───
───駒が、跳んだ。スッゴい勢いで。
「「「…………へ?」」」
「──わ、私の駒がァァァァア!!?」
「──す、座ったままの姿勢! 膝だけであんな跳躍を!?」
「拓海君、駒に姿勢も膝も無いわよ?」
「──で、あれが反応か?」
「あんな反応しないわよ! せいぜい駒が鈍く光るかどうかよ!」
「あ、駒が落ちて来ましたよ?」
「良かった……とりあえず一度回収しt「ほい」
俺はグレモリーが駒を回収する前に左手で駒の下に触って──
───もう一回駒を飛ばした。
「「……え?」」
「──あ、ごめん。勢い良く飛ぶのが面白くてついうっかり…」
無論、うっかりではなく故意である。
「うっかりじゃないわよ!? どうしてくれるのよ!?」
「まあまあ、落ち着いて。ほらそろそろ落ちてくるぞ?」
──まあ、また飛ばすんだけどな。
そうして角度をつけて飛ばしたり、グレモリーが飛ぶ前に跳んで阻止したりする事10分。強気で(一般的に)見た目パーフェクト美少女のグレモリーが───
「ヒグッ……エッグ……返じてよぉ……
──なんということでしょう。涙をポロポロ流す(鼻)水も滴る良いオンナ(現在幼児退行中)に───
「拓海君、やり過ぎ」
「うん。流石にコレは申し訳ない───あ、駒落ちてきた」
流石にもう飛ばさない。可哀想だし。(やったのは自分だがな)
「おーいグレモリー。お前の
「うぅぅ……もういじわるしない?」
「おう。もうしないぞ」
俺がそう言うと、ぺたん座りをしていたグレモリーは這い這いで駒の方に向かい、女王《クイーン》の駒を取ると──
「うう…よかったよぅ……わたしのこまもどってきたよぅ……」
──幼児退行が悪化した。(勿論その時の写真は撮った。面白そうだからね)
それから三分ちょっとがたった頃…ようやくグレモリーが元に戻った。
「───コホン。とりあえず、次にアケノの反応を見てみましょう。アケノ、掌を出して頂戴」
「ええ、良いですよ」
そう言って朱乃姉は俺と同じ右手の掌を出した。その上にグレモリーが駒を載せる。流石に駒が跳躍する事は無く、何の反応もなかった。
「──あら? 反応が無いようなのだけど……これはどういう意味かしら?」
「───悪魔にはなれない、という事よ…」
「あら……で?何故なれないのかしら?私はその駒の事はあまり知らないので、転生できない理由を聴きたいのだけど……」
「───の──が私より───たから…」
「え?今なんて言いました?」
嘘つけ絶対聴こえてるぞ朱乃姉。
「ア──の実─が私より─だったから…」
「んー聴こえませんねぇ……もっと大きな声で言ってくれませんか?」
あれ? なんか朱乃姉の魂が興奮してるような形になってる?(
「──ッ、アケノの実力が私より上だったからよっ!!」
「───あらぁ?そうだったのねぇ…」ニヤリ
──へ? もしかして朱乃姉って……
「ねぇ、リアス?」
「──え?ええっと、何かしら?」
「貴女、一度冥界に帰った方が良いんじゃないの?」
───
「────え、えーっと、アケノ?今貴女の口から罵倒が飛んだような気がするのだけど…」
「あら?貴女はそう捉えたのね」
そう捉えたも何もそうとしか捉えられないんですが。いやグレモリーを擁護する訳じゃないんだけどさ。
「いや、そうとしか捉えられないのだけれど…」
あ、考えてることダブった。
「私は『眷属とかそういうの考える前に冥界で一から鍛え直してこい』という意味で言ったのだけれど……分からなかったのかしら?」
ごめん朱乃姉全ッ然分からなかった。
「結局罵倒にしか聴こえないのだけど!?」
「あら…それくらいは理解出来るのね」
朱乃姉、罵倒したって認めちゃったよ……
「そもそも貴女、どうせ礼儀作法や魔力のコントロール位の努力しかしてないのでしょう?」
「うっ……」
「───図星のようね…ここは冥界じゃない。貴女を護っている権力や名声は無い。一度も訪れた事もない場所に
「どうせ
「そうしていざ眷属候補を見つけたら実力不足で転生不可……それって結構恥ずかしいと思うのだけれど…?」
おおぅ…朱乃姉の容赦ない
「──朱乃姉ちょっとストップ。罵倒一回止めて」
「もし転移場所が悪かったら
「ふぇっ…ひぐっ……うぇぇえぇええぇえええん!!!」
───コイツまた幼児退行しやがった。……今回は同情するわ、うん。
「─────コホン……アケノは兎も角、タクミに触れた駒があんな風になった原因は考えると二つ。
「──
「ええ、そうなるわね……タクミ、何か心当たりは?」
───心当たり、ねえ……もしかしたら『
「───いや、無いな。強いて言うなら『
「──とりあえず、この話は終わりだ。じゃあさっさと帰れグレモリー。修行の邪魔だ」
「………えっ?」
「えっ?」
……………
「お前まさかまだ何か
「ね、強請らないわよ!ただ、私も修行を「却下」なんでよ!」
「修行の邪魔って言ったろ。どうせ『私も鍛えて~』って言うんだろ?結局強請ってんじゃねーか」
「だって、ハーフのアケノは兎も角、純粋な人間のタクミがここまで強くなってるのよ!?私がその人に教われば──」
「無理だ。師匠は動物や妖怪以外の人外が嫌いだからな。お前が行っても門前払いされるのがオチだ」
「そんなの行ってみないと分からないじゃない!」
「い~や、無理だね。断言しよう。悪魔のお前は師匠の『最初の試煉』すら受けられない。そもそもやってくれないからな」
「何ですって!?」
「ア"? 文句あんのか?」
「───あらあら…」
「──とりあえず、師匠が鍛えるのは人間だけだ。朱乃姉も一度きりの特例という事で許されてる。お前を受け入れる余裕は、無い。諦めろ」
「うう……そんなぁ……」
ふぅ……やっと諦めたようだな。気付いたらもう10分も経ってるし……さっさと送り返して修行しよう。
───と、そう俺が考えていた時、グレモリーがトンでもない事を言い出した。
「───じゃあ、タクミが教えなさいよ!」
……………は?
「───ハァァァアアアア!!!?」
俺!? ナンデ!? ついに頭がトチ狂ったか!?
「──おい、どうしてその結論になったのか説明しろグレモリー」
「簡単よ。何も無理に貴方の師匠から教わる必要は無いわ。目の前に私より強い人物がいるからね」
まさかそう来たか
「……そうだとしても、俺がお前を鍛える義理はない。さっさと冥界に帰ってろ」
「へぇ~?良いのかしら?教えなければ私を泣かせた事をお兄様に言いつけるわよ?」
───ファッ!?
「てめっ、それは卑怯だろ!」
「恥も外聞も捨てろと言ったのは貴方でしょう?」
「それはそうだが、これは恥でも外聞を捨てる事でもなく虎の…いや
クッソ、コイツ開き直りやがった……嘘かどうかは知らんが、流石に魔王相手はヤバすぎる───
「────ッチ…ああ分かった、分かった! 俺がお前を鍛えれば良いんだろ!? やってやるよ!」
「ええ!それで良いの「たーだーしー!」ん?」
「俺がどんな
「わ、分かってるわよ!これでも悪魔よ。交わした契約は破らないわ」
───と、言い放ったグレモリーがこの言葉を後悔するのは然程遅くはなかったのであった。
「───むぅ、リアスばかり話しててズルいわ…」
「本当ゴメン朱乃姉!」
拓海side out
──その後、YAMAから家に帰った拓海は、自分の部屋に直行してクロ(猫化してる黒歌)の腹に顔を
拓海「魔法体系が違ったから教えるのクソ疲れた……」
クロ(黒歌)「ニャー(よしよし、お疲れ様。とりあえず風呂入ってご飯食べてグッスリ寝とくニャ。今日は一緒に寝てあげるニャ)」
拓海「一緒に寝てるのは毎回でしょクロ……」