ハイスクール・フリート ~Sky of liberty~ 作:鮭愊毘
「オメガ、一応言っておくが高1と交際してたら今頃私は殺されてるからな。社会的な意味で」
「じゃあなんだよ」
「こいつはな、昔孤児院に引き取られてたんだ。といっても、あそこは人手がたりなかったからな」
「ということは……」
「ああ。俺がボランティアに行って世話してるうちになつかれたんだ。……といっても、全然人の助けを借りようとはしなかったがな」
ーーーー
政宗たちが入り口で生徒のエスコートをしている一方、午後の飛行のため整備士と一緒に自分の機体を整備していたフェンサー。そこへ隊員ではない一人の老人が敷地に入っていることに気づく。
「すみません。ここはブラックファルコン兼大河重工の敷地です。お引き取りを……」
フェンサーに声をかけられた老人は口を開く。
「…………に」
「え?」
「……ここに、震電があるというのは、本当か?」
「震電Ⅱなら」
「……そうか。これが、そうなのだな。ありがとう」
こう言うと老人は後ろを振り向き帰路につこうとする。
「あ、あなたは、まさか……!」
「儂の時代では震電は完成しなかった。今でもそれは悔しいと思っている。だがそれの意思を継いだものが今、飛んでいる。うれしいよ。まるで自分に孫ができたみたいだ」
そう、彼はブラックファルコンにはいない戦時中の震電開発チームの一人だった。
「日本の、そして世界の空をよろしくお願いします」
「「「はい!!」」」
フェンサーと整備士は老人に敬礼をする。すると老人は震電Ⅱを子供の頭のように撫で、帰路につく。
ーーーー
このころ政宗たちは、生徒たちを自由に見学させている最中だった。一人はオメガの機体の上に立たせたクラスメイトを「キャーマッチー!」と叫んで写真を取り、一人はエンジンの整備風景を見学し、一人は隊員と一緒に飛行機そっちのけでゲームをしていた。
~15:00~
午後の講座を終え、最後に第01飛行隊の飛行を見せるときが来た。
カナードや尾翼が下に垂れている状態から、エンジンが始動し、油圧が働いたことで正規の位置に可動する。
その後タキシングで移動し、管制官の指示を待つ。
《第01飛行隊 離陸を許可する》
指示が出た。本来は一機ずつ指示されるが、今回は時間の都合上、全機同時に指示を出す。
エンジンを唸らせ離陸。海洋学校の生徒たちは講座を聞いてもあんな鉄の塊がなぜ飛ぶのか理解できなかった。
そして戦闘機が急に上昇、旋回するときの轟音が地上に響く。生徒にはヘッドホンをさせていたが、あまり意味はなかったようで皆怯えていた。
十分程度の飛行をした後、第01飛行隊は着陸態勢に入る。
《第01飛行隊 着陸を許可する。ベイルアウトは厳禁だぞオメガ》
「……了~解」
翔とオメガの機体は普通の着陸、ブロンコとフェンサーの機体は垂直離陸を披露。これで今日の横須賀女子海洋学校の社会科見学は終わった。