世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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7話

1週間後、ネイサンは自身の専用機を受け取りにアリーナへと行くと、入口に真耶とスコールが立っていた。

 

「山田先生それに、スコール先生も。何故ここに?」

 

「あら、知らされて無いの? ISは使用者の設定を入れないとまともに動かすことが出来ないのよ。だからその設定を私達教師が手伝うっていう事で此処に居るのよ」

 

「あぁなるほど。そうだったのですか」

 

ネイサンはスコールの説明に納得し、2人と一緒に建物の中へと入って行った。アリーナに備えられているピットへと行くと其処にはネイサンのよく知っている人物達がいた。

 

「やっぱり貴方でしたか、キャスパー」

 

ネイサンがそう呼ぶと、キャスパーは笑みを浮かべ手を差し出す。

 

「やぁ久しぶりだね、ネイサン。勿論僕の担当地域はアジア圏だから僕が来るのは当たり前だろ?」

 

ネイサンも同じように手を差し出し握手を交わす。

 

「そうでしたね。それとお久しぶりですねチェキータさん」

 

ネイサンはキャスパーの隣にいたチェキータに挨拶をする。

 

「久しぶりネイサン」

 

そう言いチェキータはネイサンの頭を撫でる。突然の事にネイサンは照れながら慌てた。

 

「ちょっ、チェキータさん! 突然頭を撫でないでくださいよ!」

 

「あらいいじゃない」

 

そう言いながらチェキータはふふふ。と笑いながらネイサンの頭を撫で続けた。その光景を見ていたキャスパーは笑いながら止めに入った。

 

「チェキータさん、ネイサンを弟みたいに可愛がるのはいいですが、今日来た目的忘れないでくださいよ」

 

「……止める気があるなら笑わないでくださいよ」

 

そして漸く解放されネイサンはキャスパーにISのことを聞く。

 

「それで僕のISは?」

 

「こいつだよ」

 

そう言ってキャスパーは背後にあったコンテナを指さす。そしてキャスパーはコンテナを開けると其処には以前トラックに載っていた時と同じ深緑色に染められた一機のISが収められていた。

 

「A-10thunderboltⅡ。開発チーム曰く、火力だったら今世に出ているISの中で断トツトップに入るって言ってたよ。因みに武装は僕が選定させてもらったよ」

 

「えっ!? マジですか?」

 

ネイサンはキャスパーの言葉に驚く。

 

「キャスパーが選んだってことは色々エグイ武装とかにしてるんじゃ?」

 

ネイサンの呟きにチェキータが答えた。

 

「キャスパーったら、子供みたいに生き生きした表情で選定してたわよ」

 

それを聞いたネイサンはあ、これはマジな奴だ。と自身が乗るISに不安を覚え始めた。

 

「だって面白そうじゃないですか! 僕のお気に入りの傭兵が乗るISだったら、そんじょそこらにあるISとは全く違うんだぞって見せしめたいじゃないですか!」

 

キャスパーの生き生きとした表情での力説にネイサンは呆れ顔になる。

 

「……人が乗る物で遊ぶなよ」

 

「仕方ないじゃない、キャスパーだもの」

 

チェキータのその一言にネイサンも、そう言う人物だったと思い出させられた。

 

 

「さて、武装について説明するよ。まず両肩にGAU-8アヴェンジャー。使える弾種は36㎜砲弾と120㎜砲弾だ。36㎜砲弾は劣化ウラン貫通芯入り高速徹甲弾(HVAP弾)で、120㎜砲弾は劣化ウラン貫通芯入り仮帽付被帽徹甲榴弾(APCBCHE弾)装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS弾)、キャニスター弾、粘着榴弾(HESH/HEP弾)だ。勿論今回は全ての弾種を用意してあるから好きに使ってくれ。弾が無くなったら僕に連絡をくれたらすぐに配達するよ。」

 

「GAU-8アヴェンジャーって確か航空機のA-10に載せられている装備ですよね?」

 

「そうだよ。こいつは航空機のA-10をコンセプトに造られたISらしい。だから僕はこいつを装備させたんだ」

 

ネイサンはキャスパーの言い方に違和感を覚えた。

 

「もしかして最初は別の装備が載ってたんですか?」

 

「そうなんだよ。開発チームの連中、最初はこいつじゃなくて20㎜口径のM61バルカンを載せてたんだ。全く面白みの欠片もないから外してやったよ」

 

ネイサンは、開発チームに武装のことでケチを付けている光景がすぐに思い浮かべてしまい、呆れた表情を浮かべる。

 

「そして更に両肩にはアヴェンジャー以外にもサイドワインダー(AIM-9)を計6本載せてある。空中にいるハエはそれで叩き落してやれ」

 

「……空対空ミサイルまで積んだんですか」

 

ネイサンはもうこれ以上驚くことはないだろと思い、手持ち武器について聞く。

 

「肩の武器についてはよく分かりました。で、手持ち武器は?」

 

「手持ちの武器は2種類ある。1つ目はAMWS-21戦闘システムと言う、36㎜突撃機関砲(チェーンガン)に120㎜滑腔砲が付けられた武器だ。それとこの武器にはレーザー測距装置が組み込まれているから120㎜を使う場合重宝するよ。それともう一つの武器が近接用のナイフだ。これがこいつに積んだすべての武器だ」

 

「……さいですか」

 

ネイサンはキャスパーの説明を聞き終え、実弾兵器ばっかだなと思いつつ自身のISに手を触れる。

 

「それじゃあマクトビア君、早速フィッティングを行いましょうか?」

 

スコールにそう言われネイサンは頷き、ISの身に纏い方を真耶にレクチャーされながら身に纏う。そしてフィッティングを行い、一次移行を終わらせアリーナへと出る。

 

『ではマクトビア君、簡単に動き方などを教えますので言う通りにやってみてください』

 

管制室に移動した真耶からのアナウンスにネイサンは頷き、指示通り動かそうとすると、反対のピットから1機のISが出てきた。

 

『あれ? 確か1組のセシリア・オルコットさんでしたか? 今アリーナは関係者以外立ち入り禁止ですよ』

 

そう真耶が言うとセシリアと呼ばれた生徒はネイサンに指を指す。

 

「ネイサン・マクトビア、わたくしと勝負しなさい」

 

「はぁ?」

 

突然の申し込みにネイサンは呆れた顔になる。

 

「お前さっきの放送が聞こえなかったのか? 今アリーナは関係者以外立ち入り禁止だ。さっさと出て行け」

 

「男のくせしてわたくしに命令しないでくださる? それにわたくしは織斑先生に頼まれて此処にいるので問題ありません」

 

「なに?」

 

ネイサンはセシリアが言った事を確かめるため、管制室に通信を繋げる。

 

「山田先生、今アイツが言ったことは本当ですか?」

 

『い、いえ。私達はそのような事は聞いてません。『私が指示した。問題ない』お、織斑先生!?』

 

ネイサンは突然通信に入ってきた織斑に小さく舌打ちする。

 

「……訳を聞いても?」

 

『ISをモノにするには実戦が一番だ。だからわざわざそいつに頼んだんだ、ありがたく思え』

 

(何がありがたくだ、ありがた迷惑だ)

 

ネイサンは心の中で文句を言いつつどうするか悩んでいると、次に通信してきたのはキャスパーだった。

 

『ネイサン、やってあげたらどうだい?』

 

「……どうせ宣伝の為でしょ?」

 

『勿論それもあるが、彼女は女尊男卑と言う僕が一番嫌いな風潮に染まった人間の様なんだ。だからそいつをぶちのめしてほしいと思ってね』

 

「なるほど」

 

するとセシリアは何時までも返事を返さない事に苛立ち、挑発する。

 

「まったく、どれだけ待たせる気ですか? これだから男は嫌いなんです。そう言えば此処に来る途中で見かけた黒髪の女性、なぜあんな優男の様な男と一緒にいるのか意味が分かりませんわ」

 

(あぁ~あ、言っちゃいけないことを)

 

ネイサンはセシリアが言ってはならんことを言った事にご愁傷様と心の中で合唱していると、キャスパーから

 

『ネイサン、宣伝とかもういいからあいつぶっ飛ばしてくれ。チェキータさんをバカにするのは流石に僕でも許せないからね』

 

「……まぁいいですけど。あ、そうだ。隣にいるチェキータさんの事、ちゃんと抑えておいてくださいよ」

 

そう言いネイサンは管制室にいる真耶に通信を繋げる。

 

「山田先生、審判してもらってもいいですか?」

 

『え!? やるんですか? む、無茶ですよ! まだISにまともに乗ったことが無いマクトビア君とじゃ勝負になりませんよ!』

 

「大丈夫です。大体5分か10分くらいでモノに出来ると思うんで」

 

ネイサンの言葉に真耶は驚いた。本来ISは練習を重ねていく内に、漸くまともに動かせるようになる。だがネイサンはそれを5分か10分でモノにすると言っているのだ。

 

『む、無理ですよ! 5分か10分だなんて、そんな時間だけでは!』

 

すると真耶と一緒にいたであろうスコールが出てくる。

 

『マクトビア君、本当に5分か10分でモノにできるのね?』

 

「えぇ、問題ないです」

 

スコールはしばし考えた後に返答する。

 

『……分かったわ』

 

そう言いスコールは真耶に審判をするよう告げた。そしてネイサン、セシリアはアリーナ中央へと移動する。アリーナ中央に着いたネイサンにセシリアはまた挑発してきた。

 

「漸くですか。全くこれだから男は嫌なのですわ。何かを決めるのに時間がかかる。貴方、本当に愚図な男ですわね。」

 

セシリアの挑発をネイサンはただ黙って聞いていた。ただしボイスレコーダーで録音しながらだが。そしてネイサンはあることを閃く。

 

「なぁ一つ提案があるがいいか?」

 

「いいでしょう。言いなさい」

 

「もし俺が勝ったら、今日使ったこいつの弾代、お前が払え。逆に俺が負けたら次のクラス代表戦、俺は出ない」

 

セシリアはネイサンの提案に、少し考えた。メリットは勝てばクラス代表にネイサンが出ない。そうなればクラスのみならず全学年から使えない男として見られると考えつく。逆にデメリットは、負けた場合弾代を請求される。だがセシリアは自分は今年の学年で主席の成績を出したから負けるはずがないと考えが行き付き、セシリアはネイサンの提案に乗った。

そして試合開始のアラームが鳴り響いた。

 

 

 

用語

・劣化ウラン貫通芯入り高速徹甲弾

36㎜チェーンガンなどに使用される通常砲弾。ケースレス弾となっており、射撃時に排莢は行われない。

 

・劣化ウラン貫通芯入り仮帽付被帽徹甲榴弾

120㎜用の砲弾。発射後にロケット推進による補助加速が行われる事で、初速を上昇させ装甲貫徹力を向上させている砲弾。

 

・装弾筒付翼安定徹甲弾

高い貫通力を発揮する120㎜砲弾で、上と同じく初速を上昇させるためにロケット推進を採用している。硬い装甲などを貫くのに適している。

 

・キャニスター弾

120㎜砲に用いられる散弾。発射された砲弾が空中で分散して、無数の小さな弾が広範囲にばら撒かれる。高速力を必要としないためロケット推進ではない。近接戦闘でも威力を発揮する。

 

・粘着榴弾

弾頭部分が対象物にへばり付くように潰れてから起爆する。ホプキンソン効果によって目標内部が飛散して、内部に打撃を与える。こちらも速度を必要としないためロケット推進ではないが、一方で運動エネルギーを利用しない弾種であるため遠距離目標に対してもある程度有効である。

 

・サイドワインダー

正式符号はAIM-9。短距離空対空ミサイルで、その飛び方が独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と、赤外線を探知して攻撃することから、ヨコバイガラガラヘビにちなんで名づけられた。




次回予告
勝負することとなったネイサンとセシリア。勝負はセシリアが優位だと真耶は思っていたが、最初はそうだが後半から大きく変化した。そしてネイサンの戦い方に真耶は、なぜか見入るように見てしまう、そんな自分に疑問する。
次回初戦闘~そりゃあ慰謝料は請求されるでしょ?~

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