寮の入り口から中へと入ったネイサンと真耶は、荷物を置きに真耶の部屋へと向かっていた。そして暫くして壁に立て札で山田真耶と書かれた部屋へと着いた。中へと入ると簡易的なキッチンが入り口付近にあり、奥へと行くと机と椅子が置かれているリビングの部屋となっており、その隣の部屋が寝室となっていた。
「結構整理整頓が行き届いてますね」
「は、はい。どうしても散らかっていると落ち着かなくて。それで休みの日はよく掃除しているんです」
真耶は頬を赤く染めながら部屋が綺麗な理由を話し、ネイサンはなるほどと呟く。
「そう言えば、寝室に置かれているベッドって、今一つしかないんですよね?」
「は、はい。用具室に簡易ベッドがあるはずなので、後で持ってくる予定ですけど、それがどうかしましたか?」
「いや、何でも」(一応そう言った用具も備えられているのか)
ネイサンはベッドが無かったら廊下に布団でも敷こうかなと考えていたのだが、要らぬ心配だったなと思う。
「それじゃあ、暫く一緒に住むという事になるので、簡単にルールでも決めておきましょうか」
「は、はい!」
真耶は照れながら、ネイサンが提示するルールをメモしつつ、自分が風呂に入る時間などを伝えた。そしてある程度ルールが決まった後、ネイサンはスマホを持って部屋から出て行こうとする。
「あ、山田先生。俺、ちょっと上司に電話して来るんで」
「あ、はい! お気を付けて」
ネイサンは何に?と真耶の発言に疑問しつつ、部屋から出て人が少ないと思われる屋上へと足を向けた。
ネイサンが部屋から出て行き、部屋に一人残った真耶は、ネイサンと暫く同室となるため簡単に歓迎用の料理でも出そうかなと思い、キッチンへと向かった。
寮の屋上に到着したネイサンは、スマホの電話帳からココの番号を選び、呼び出す。数回コールした後、電話に出る音が鳴った。
「もしもし、ココさん。そっちはどうですか?」
『うん、ネイサンがいないから皆と外食に来てるんだけど、やっぱりネイサンの料理が食べられないから皆少し残念がってる感じ』
その返答を聞き、ネイサンは笑いながらそうですか。と言う。
「こっちはまぁ特に問題とかはない感じです。あるとすれば部屋割り位でしたか」
『部屋? 確か一人部屋にしてくれって、本社を通して学園にお願いしたんだっけ』
「えぇ。それで放課後に部屋の場所を聞いたら――――」
ネイサンは部屋が一人部屋では無く、教員と同じ部屋になったと報告。ココはホテルではダメなのか聞いたが、警備上の問題で駄目だと言われたと報告する。
『はぁ~、それじゃあネイサンは今、教員と同じ部屋で暫く暮らすっていう事なんだ?』
「えぇ。まぁ、こればっかりは流石に仕方がありませんよ。何しろこの学園一つで世界中のISのパイロット達を育成しているんですから、部屋だって限られてくるから仕方がありません」
ネイサンの言葉にココは盛大なため息を吐きつつ、注意を促す。
『……はぁ~~、分かった。手紙で書いた事は無しにしてあげる。あ、それとハニトラとか注意するように。あぁ言う連中はどんな手段を使ってでも、ネイサンから情報を引き出そうとしてくるから注意してね? ……それと、織斑千冬にも』
ココからの忠告にネイサンは同意するように返事する。
「えぇ、分かってます。ハニトラしてくるような奴らが出てきたら、部隊流で歓迎してやりますよ」
そう言うとココもふふん。と笑う。
『そう言えば、同室になった教員の名前って何? 一応受け入れてくれたお礼の手紙と粗品を送りたいから教えて』
「分かりました。名前は山田真耶先生。僕が入ったクラスの副担任で、荷物を届けに行った際に学園長と一緒にいた先生です。」
『……へぇ~、あの人とね』
ネイサンはココの返事が可笑しいことに気づき、内心冷汗が流れっぱなしだった。
「こ、ココさん?」
『うん? 大丈夫。何でもないよ』
ネイサンがココの名前を呼ぶと、何時もの口調に戻っているが、あ、やばい怒ってると瞬時に判断できた。
『それじゃあ、ネイサン。また明日もちゃんと掛けてきてよ』
「え、えぇ分かってますよ」
そう言うと同時に電話が切れ、ネイサンはココと久しぶりに会った時に、マジでロケットに括り付けられて打ち上げられるんじゃ?と思い、冷汗を滝のように流しながら屋上から去って行った。
一方ココはと言うと、自分達が宿泊しているホテルからほど近い料亭で食事を終え、ホテルに戻ってきて、プライベートバーでお酒を飲んでいた際にネイサンから電話が掛ってきたのだ。ココは内心ウキウキしながら電話を取り、ネイサンと話していたのだ。そして同室の住人が教員で、しかも荷物を届けに行った際にいた胸のデカい人物と同じ部屋だと知り、オデコに青筋を浮かべていた。
その様子は同じプライベートバーにいたココの私兵達も、ココが怒っていると瞬時に読み取れた。
「お、お嬢? どうかしたのか?」
アールが心配そうに聞くと、ココは小刻みに震えながら呟く。
「フ、フフ、フフフフ。ネイサンが、あの教員と同じ部屋だって……」
その様子に恐怖を感じたアール達はそっと逃げ出したかったが、あの教員とは誰なのか気になり、トージョがココに聞く。
「……こ、ココさん。あの教員って誰なんだ?」
「……学園長と一緒にいた山田って言う先生」
山田と言う名前を聞いたアール達は誰だと思い、トージョはパソコンでIS学園の教員で山田と言う先生を調べる。そして数分で山田と言う名前を見つけ詳細を出す。それを見たアール達は絶叫をあげた。
「アイツ、この凶悪ボディーの持ち主と一緒の部屋だとぉ!!」
「IS学園に行くだけでも羨ましいのに、こんな胸デカボディーの持ち主の教員と同じ部屋とか、羨ましすぎるぞ!!」
「チクショーー!! ネイサンが帰ってきたら思いっきり殴ってやる!!」
アール、トージョ、ルツはネイサンに嫉妬の声をあげている中、ココはと言うと
「バルメ、離して。ネイサンをロケットに括り付けるために許可を貰わなきゃいけないんだから」
と、ロケットにネイサンを括り付けるために企業に許可を貰おうと携帯を手に取っていた。
「ココ!? そ、そんな早まっては駄目です!」
バルメは必死にココを押さえつけ、電話させまいと頑張っていた。レーム達はそんな様子をただただ笑って見ていた。
次回予告
次の日となり、3組ではクラス代表が選ばれようとしていた。女子達はネイサンが良いなと推薦するが、面倒ごとが嫌いなネイサンは断ろうとしたが、代表選で勝てばデザートフリーパスが貰えると聞き、引き受ける。放課後となり、ネイサンが帰ろうとしたところに一人の女性が現れた。
次回クラス代表~面倒ごとは嫌いだが、報酬があるなら話は別だ~