悲鳴や銃声で木魂していた学園は今は静まり返っていた。被害は甚大で、学園に来賓していた民間人や学園に通っていた生徒を含め約50人以上の死傷者が出た。
女権達は多くは射殺され、生き残った者は拘束され連行された。カットスロート達は全員射殺されていた。
生徒や一部教師達は突然銃撃戦が起きたことに精神的に参っている者が多く、特に友人や親が目の前で撃たれた生徒は酷くカウンセラーが付いていないといけなかった。
生徒達がカウンセリング受けている中、政府から派遣された検視官達が死亡したカットスロートや女権の過激派の検視を行い、死体を運び出していた。
「女権以外に武装した死体はアメリカ人などが多いな」
「学園の門前で死んでいたのはアメリカ人みたいだったぞ」
「国際問題待った無しかもな」
検視官達はそう呟きながら死体を見て行き死体を袋に詰めていく。
それから深夜1時程にはほぼ終わり、死体を詰めた袋を車へと積み込んだ検視官達は学園を去って行った。
シーンと静まり返る学園の中、コツコツと廊下を歩く人物が居た。その者は誰もいない職員室に到着し鍵を開け中へと入る。そして机の一角に置かれているパソコンの元へ行き電源を入れる。そして立ち上がったパソコンの本体にUSBを挿し込む。そしてUSBのファイルを開いた瞬間、ドクロマークが画面いっぱいに現れた。
「ッ!?」
『ガッハハハハハ! これは偽物だ!』
そうパソコンから音声が漏れたと同時に職員室の電気がついた。
「アンタが欲していたUSBはもうこっちで回収している。残念だったな、織斑千冬」
職員室の扉に居たネイサンはコルトカスタムを構えながら職員室に居た人物、千冬に言う。他の扉にはスコールや真耶、そしてマドカが居た。
「…一体何の真似だ?」
「織斑千冬、貴女にはテロ幇助の容疑が掛かっている。いえ、ほぼ確定よ」
スコールは鋭い視線を千冬に向けながら、そう宣告する。
「テロ幇助だと? 一体何のことだ?」
「しらを切るつもり? 春野先生が証言したわよ、貴女に突然殴られ気絶させられたって。その後あの事件は起きた。なら貴女しかいないし、証拠映像もあるわよ」
そう言いスコールは空間ディスプレイを投影し、千冬に見せる。それは衛星からの映像で春野と千冬が歩いていると、突然千冬が止まる。そして暫くして千冬は春野を殴り倒し何かをしている様子が映り、海に何かを投げた後海から上陸していく者達が映った。
「海から出てきたのは恐らく今回のテロリスト達でしょうね。そして貴女は手を差し出すような仕草をしている。貴女はテロリストに何かを引き換えに手助けをした。そしてその引き換える物はこれでしょ?」
そう言いスコールはポケットからUSBを出した。
「中は見させてもらったわ。どれも貴女の亡き弟さんに関する情報が入っていたわ。そしてネイサン・マクトビア君が織斑一夏だと言う証拠も入っていたわ」
そう言うと千冬は若干動揺が走った。
「…やはりお前は「けどどれも捏造された物だったわ」な、なに? だったら私にも見せろ」
そう言いスコールに詰め寄ろうとしたが、真耶とマドカが銃を突きつけた。
「山田先生、誰に銃を突き付けているのか分かっているのか?」
「テロリストに手助けした犯罪者に銃を突き付けているんです。何か問題でも?」
そう言い真耶は鋭い視線を向けながら銃を突きつける。
「さて、織斑千冬。貴女を拘束する。大人しく拘束されるなら手荒い事はしない。けど、反抗するならば容赦はしないわよ」
スコールはそう言い手錠を出す。
「拘束だと? 私はブリュンヒルデだ。そんなことをすれば日本政府は『あの無能な政府共がお前を救う訳ないじゃん』た、束?」
突然スコールのディスプレイから束が現れ、無表情でその訳を答えた。
『お前がテロを手助けした事を委員会、特に女尊男卑に染まっていない幹部連中に垂れ込んだのさ。それと国連にはあの事件の真相をぶちまけてやったよ』
そう言われ千冬はあの事件とはすぐに察せなかった。
「お、おい束。あの事件とは何だ?」
『おいおい、お前が引き起こした白騎士事件に決まっているだろう。なぁ、白騎士?』
そう言われ真耶は驚いた表情を浮かべ、他は前から知っていた為表情は変わら無かった。
「な、何を言っている? あの事件の真相はお前と私がやった。そうだろう?」
『はぁ? 何言ってるんだよ。あの事件の真相は全く違うだろうが』
そう言い束はある映像を出した。それは束が隠れ家で見ていた映像だった。
『これは昔、まだ私がとある場所に作った秘密基地の映像だよ。…日付を見て何か分かるよね?』
そう言われそれぞれ日付を見る。
「これ、白騎士事件が起きた日ですよね?」
真耶がそう言うと、束はコクリと頷く。
『そう。そして暫くしてコイツが現れた』
そう言われ映像には千冬が現れ、何かをしていた。
『こいつは事もあろうに、私が留守にしている間にISを勝手に持ち出した。そしてあの事件を起こした』
そう言われ千冬は驚愕に染まった顔を浮かべる。
「な、何を言っているんだ束! あれはお前と私とでやった事じゃないか!」
『はぁ? お前と私とで? ふざけんなよ、お前。私はISを宇宙で使うために作ったんだ。それを戦争兵器みたいな事を計画するわけないじゃん。それにこんなものも見つけたしね』
そう行って束はまた別の空間ディスプレイを出しある文章を見せた。
『これは女権幹部の一人に送られたメールだ。これにはお前がこいつらに各国の軍上層部に紛れ込んでいる女権に日本に向けて巡航ミサイルを撃つよう指示し、女性しか使えないISでそれらを撃墜すれば、女性だけの権利を勝ち取れる。って言う内容だった。お前はこれを消去したつもりだったけど、詰めが甘いね。携帯の自動バックアップで携帯会社に残ってたよ』
千冬は自分の知らないメールを見せつけられ、直ぐに反論した。
「そ、そんなメール、私は知らない! お前が捏造した奴じゃないのか!」
『そんな証拠何処にあるのさ? それと、さっきも言ったけど国連にはこのメールや映像はすでに提出済みだから。それと、日本政府の中で特に反女尊男卑の議員にもこれを提出したし。今頃政府の中に居る膿を出してるだろうね』
そう言われ千冬は自身の逃げ道を次々と潰す束に恐怖しだした。
「お、お前はそうまでして私に罪を擦り付ける気か?」
『何言ってるのさ。私の罪? 私は別に人殺しなんてしたことないもん。いや、未遂なら一回あるか』
そんな感じに言いながら束は見下すような目線で千冬を見つめる。
『兎に角もうお前に逃げ道なんてない。大人しく拘束されれば? それじゃあ束さんは色々準備しないといけないことがあるから』
そう言って束は通信を切った。
「という事よ。もう貴女には逃げ道は無いわ。大人しく拘束されなさい」
そう言いスコールは千冬にゆっくりと近づく。近付いてきたスコールに千冬は捕まるわけにはと逃げ出した。
「待ちなさい!」
そう叫びスコールは逃がすまいと掴もうとスーツを掴むも、上着を脱ぎそのまま窓に向かって飛び出そうとしたが、ネイサンは冷静にコルトカスタムの引き金を引き千冬の左膝を撃ち抜いた。
「がぁ!」
撃たれた千冬はそのまま前のめりに倒れた。ネイサンは警戒しつつ近付く。
「逃がすかよ」
そう言いネイサンは千冬を拘束した。
「ありがとうね、マクトビア君」
「いえ、後の始末はそちらにお任せしても?」
「えぇ、分かったわ」
スコールに後の始末を任せ、ネイサンはマドカと一緒に職員室を出て行こうとする。
「な、なんで私を撃ったんだ一夏!」
千冬は痛みで顔を歪ませながらそう聞く。ネイサンは冷めた視線を千冬に向けながら答えた。
「何故? そりゃあ決まっています。依頼を遂行するため、それだけですよ」
そう言いネイサンは淡々と言った口調で言い職員室から出て行った。
次回エピローグ
旅をする武器商人と仲間達