ISが展開できなくなったネイサン達は、兎に角応戦すべく物陰から撃っていた。
「クソッ! さっきから敵の数減ってるのか? 増えてる気がするんだが?」
「減っているようですが、どうやらさっきから倒しているのは女権の連中がほとんどですよ。どうやら私達が何かしらの方法でさっきのIS操縦者たちを殺したと思い込まされているようですよ」
アールが悪態をつきながら撃っているのを、バルメがマガジン交換をしながら答える。鈴やマドカ、真耶も各々撃ちやすい物陰に移動して攻撃をする。
「鈴、左方向!」
「了解!」
「また来ます! 2時の方向!」
互いにカバーを取りながら敵を撃つも、カットスロート達は女権達を煽ってネイサン達に差し向けている為一向にカットスロートを片付けられなかった。
「女権が邪魔で片付かないな」
ネイサンはマガジンを交換しながら応戦し、女権達を片付けるも肝心のカットスロート達が減らず絶えず攻撃をしてくる。
学園のあちこちで銃撃戦が起きている中、学園長室に居た十蔵は鋭い眼光を外に向けていた。
「……私の大切な学園を戦場に変えるとはな。いい度胸だ」
そう呟き十蔵は部屋の一つに掛かっている絵画を外すと、電子キーが壁についていた。十蔵はそれに数字を入れると隠された扉が開かれた。十蔵はその中へと入ると、其処にはさまざまな銃火器が置かれており、十蔵はタクティカルベストを着こみマガジンをポーチへと入れ、壁に掛かっているAKM
を持ち部屋を出て行った。
ヘックスはじりじりとココ達を追いつめて後は女権達を片付けるだけ。そう思っていた。
(課長は何もわかっていない。ココ・ヘクマティアルはいずれ我が国を脅かす怪物になる。監視だけ? そんな悠長なことしていれば、あっと言う間に我が国は崩れる。なら此処で消し去るのに限るのよ)
そう思っていた瞬間、突然無線から声が入った。
「ッ!? 何をしているの! 何故ジャマーを『なるほど、彼等が持っていた装置はそう言った物でしたか』誰だ!?」
突然部下とは違う男性の声にヘックスは驚き声を荒げる。
『私ですか? 元傭兵の学園長ですよ』
そう言われ、ヘックスは目つきを鋭くさせる。
「なるほど。それで、私の部下を射殺されたわけは?」
『決まっている。お前達は此処に争いを持ち込み、何の関係も無い生徒達を巻き込んだ。なら私はお前達を殲滅する』
無線越しからでも分かる殺気を込めたヘックスはこれ程の殺気を出す者に会うのは初めてだったが、頭は冷静に動いていた。
「そうですか。ですが、貴方の行動は間違ってます。撃つべきはココ・ヘクマティアル達です。彼女達は戦争を延長させ、多くの国民を殺させる兵器を売っている。つまり犯罪者です」
『そうですか。ですが、そんなのは今此処では関係ない。何の関係も無い者たちが集まっているところで突如銃撃戦を行った。そして彼等はそれに反抗すべく武器を出し応戦している。そしてお前達は争いを持ち込んだテロリスト集団だ』
そう十蔵が言った後無線は切れた。ヘックスは何も知らない爺が。そう思い当初のプランを変更させる。
「ジャマー部隊がやられた。プランBに移行。アルファーは女権の援護を止めて狙撃位置に行け。ブラヴォーは女権を片付けつつ奴らを撃て」
そう指示を出すと、突如アルファーから無線が入る。
『こ、こちらアルファー! 一部学園教師が武器を手に反抗! マルコがやられた! [ジャックダウン!ジャックダウン!] ジャ、ジャックもやられた! 応援を―――』
「おい! アルファ―! 報告をしろ!」
ヘックスは突然無線が切れた事に奥歯を噛み締める。どいつもこいつも私の邪魔をする。と。
女権やカットスロートが混乱しているのはネイサン達でも感じられた。
「どうしたんだ? 向こうの統制が乱れだしたぞ」
「どうやらアクシデントが起きてるみたいですね」
「なら有難いですね。こっちはもう弾が尽きそうだったんで」
アールやバルメ、そしてネイサン達は向こうの統制が乱れだしてきた事に好機だと感じ取り、一気に制圧射撃をしていく。
すると遠方から射撃音が響き、2人のカットスロートの頭が撃ち抜かれた。
「ッ! レーム達の狙撃!」
『待たせて済まねぇな。今から狙撃していくから射線に入るなよ』
『同じく位置に着いた。クソッタレの野郎どもをどんどん頭撃ち抜いてやるぜ』
「無線が回復してる。ネイサン、ISは?」
ココにそう言われネイサンは腕の部分展開をすると、A-10の腕が現れた。
「行けます!」
「よし。一気に片を付けて」
「了解!」
ネイサンはA-10を身に纏うと、鈴やマドカ、そして真耶もISを纏う。
「一気に片を付ける。射撃用意!」
そう言ってネイサンはMK-57を構える。マドカ達もそれぞれ武器を構える。ISが出てきた事に女権達はISを持っている者達は既に死んでいた為、逃げ始めカットスロート達はダメもとに撃ち続けた。
「撃てぇー!」
ネイサンの掛け声と共に引き金を引き、弾をばら撒く。弾丸は次々に女権やカットスロート達に命中していく。すると屋上にM72 LAWを持った女権達が現れ、撃とうとしたがレーム達の狙撃により撃たれていく。
次々に部下やついでに潰す予定だった女権の過激派達が撃たれていく姿にヘックスは苦渋に満ちた顔を浮かべる。そして傍に居た2人の生き残りがヘックスに寄る。
「ヘックス! 生き残っているのは我々のみです! 指示を!」
そう言われヘックスは手を握りしめる。
「撤退する。邪魔する者は何であろうと撃て」
「了解…」
2人の部下と共にヘックスはその場から逃げ出す。
ヘックス達が逃げ出すのを目撃したアールはすぐさまその後を追った。
「逃がすか!」
「アール! ネイサン、アールと行って!」
ココがそう叫ぶと、ネイサンはアールが走って行く姿を見つけその後を追う。
ヘックス達は脱出しようと学園と本島を繋ぐ橋の所まで行き、用意されていた車へと乗り込もうとする。
「まて、ヘックス!」
そう呼ばれヘックスは顔を向けると其処にはMASADAを構えたアールが居り、引き金を引こうとしていた。
ヘックスも同じく銃を構え引き金を引こうとする。
「この、裏切り者がぁ!!」
そう叫ぶヘックス。2人は同時に引き金を引くと弾丸は互いに放たれた。ヘックスが撃った弾丸はアールのこめかみをかすり、アールの弾丸はヘックスの右目を貫きそのまま倒れた。
ヘックスが撃たれたのを見た2人はヘックスを置き去りに逃げようとしたが、追い付いたネイサンのアヴェンジャーによって蜂の巣にされ絶命した。
その後女権の生き残りも捕縛、もしくは射殺され戦いは終わった。
次回予告
悲鳴と銃声が木魂していた学園は静かになっていた。
だがその静かになっている中、ネイサンは最後の仕事をすべく動いた。
次回最終回+エピローグ
過去を捨てた傭兵