学園祭が間近へと迫っているある日、ネイサン達は溜まり場の様になっている整備室の一角で自分達のISを整備し終え、談笑をしていた。
「それで、簪のクラスは何をするの?」
「私のクラスはISの解説。小さな子供や普段ISに触れた事が無い人達に、ISとは何かを分かりやすく教えようって」
「へぇ~、かんちゃんのクラスってそう言うモノなんだぁ。私のクラス、コスプレ喫茶をやるって決まったんだけど、なんかクラスの中がそんなに明るい雰囲気じゃないから面白いって感じしないんだぁ」
「うわぁ、なんか1組の学園祭の出し物の相談がウチとはえらく静かだと思ってたらそう言う訳だったのね」
鈴は本音達のクラスが静かだった訳を聞き、何とも言えない表情を浮かべながらお菓子を食べる。
「そう言う鈴はどう言った出し物を出すんですか?」
「ウチは中華喫茶。クラスの皆はチャイナ服を着て対応するのよ。……悩殺されてみる?」
そう言い学生服で悩殺ポーズをする鈴。
「……マドカ、そのお菓子僕にもくれないか?」
「……はい」
「何か言いなさいよ‼」
フシャー!と怒った表情を浮かべる鈴。そんな光景を簪は楽しそうに見ていると、整備室の扉が開き、一人の生徒が入って来た。
その人物はしっかりとした足取りでネイサン達の元へやって来た。
「ちょっとごめんなさい」
そう声を掛けられると、簪の体が強張った。そして顔をゆっくりと向けると其処には楯無が立っていた。
「あぁ、どうも更識先輩。何か?」
「えぇ、ちょっと簪ちゃんとお話があるの」
そう言い顔を簪の方に向ける。簪は少し嫌そうな顔を浮かべていた。
「私には話なんか「分かりました。それじゃあ僕達はジュースとお菓子を買ってくるので、ごゆっくり」えっ!? じゃ、じゃあ私も行く!」
ネイサン達は簪だけ置いて買い物に行こうと立ち上がると、簪も立ち上がろうとしたが本音がその肩に手を置き座らせた。
「ううん。かんちゃんは此処で待ってて。主のジュースやらお菓子を買ってくるのは従者の役目なのだぁ」
そう言って本音は行こうとする。
「じゃ、じゃあ本音だけでいいんじゃないの?」
「ネイネイ達は荷物持ちだよぉ」
「そうですね。ついでにお菓子を大量に買って来そうですから、その監視も含めて行きますか」
「そうね。1人より2人。2人より3人てね」
「カラ○ーチョが食べたくなったので、私も行きます」
そう言って4人は整備室から出て行った。残された楯無と簪は何も話さず、ただお互いに口を閉ざしていた。すると最初に楯無が口を開く。
「あのね、簪ちゃん」
「……何?」
「その、……御免なさい!」
「えっ?」
突然謝りだした楯無に簪は思わず声を漏らし、顔を向ける。其処には深々と頭を下げている姉楯無が居た。
「危険な目から簪ちゃんを守る為とは言え、傷付けるようなことを言って御免なさい。それに簪ちゃんが困っていたのに、全然助けてあげられなくて御免なさい」
そう涙声で謝ってきた。簪は突然謝りだした姉に、自分が今まで感じていた事を全部吐き出そうと思った。だが、姉が自分の本心を言ったんだ。だからあの時思っていた事を言おう。そう思い口を開く。
「……昔『貴女は無能のままで居なさい。私が守るから』って言われた時確かに私は酷く傷付いた。私だって、私だって、お姉ちゃんを守れるくらい強くなれるって思っていたから!」
そう訴える簪。
「……そうだったの。御免なさいね、簪ちゃんがそう思っていたのに知らずに、酷いことを言って。本当に、本当に御免なさいね」
「ううん。私も意地張って、御免なさい。私も何であの時あんなことを言ったのか、もっとお姉ちゃんの気持ちを理解してさえいれば、こんなに長く擦れ違いなんかしてなかった」
そう言い二人は涙を流していた。そして自然と手が上がり二人は握手を交わした。その顔は笑顔が浮かんでおりもうそこには擦れ違っていた姉妹はおらず、仲の良い姉妹が其処に居た。
その頃、砂と岩が広がるS国にある女性権利団体の過激派の秘密基地にオータムが居た。だがその表情は酷く焦った表情を浮かべており、通信機で連絡を取っていた。
『はぁ~い、束さんだよぉ。オーちゃんどうかし「不味いことになったぞ束!」ん~? もしかして其処に居る馬鹿共がもう逃走してたの?』
「逃走してたとかじゃねぇ、血祭りにあげられてやがる」
そう言いオータムは周りを見渡すと其処かしこに絶命した女性達が転がっていた。どの死体も射殺された状態だった。
『どう言う事? 生き残りは一人も?』
「あぁ、一人もいねぇ。それにお前が回収を頼んだISも消えてる」
『ッ!? すぐにその辺で何があったのか調べる。オーちゃんはすぐに其処の処理をして戻って来て』
そう言われオータムは足早に秘密基地に爆弾を設置して脱出した。
建物から出たオータムは束特製のステルス迷彩を展開しそのままその場を離脱する。そんな中、ある疑問を零した。
「情報だと、3,4体の何処からか強奪したISがあると聞いていたが、何で展開して応戦しなかったんだ?」
そんな疑問を残しながらオータムは隠れ家へと戻って行った。
―――S国のとある街に建てられている寂れた倉庫内では何人かの女性と男性が居り、それぞれ武装していた。
「それで、回収したISはどうするんですか?」
「まぁ、本国にでも送っておきましょう。テロリストが使っていたとはいえ、ISは貴重なものですもの。それに私達には
男性からの質問にリーダー格の女性はそう答え、座っていた椅子から立ち上がる。
「さて次の戦いに行きましょうか。貴方達が満足いく戦いが待っているわ。……Stand By Ready Move!」
狂気じみた笑顔で言うと、彼女の部下達は「いえぇあーー!」と声をあげ、一斉に銃を掲げ、引き金を引く。銃声と共に薬莢が落ち、辺りに硝煙が漂った。
移動を始めたグループを衛星で監視していたブラックははぁ。とため息を吐いた。
「やはり、杭の刺さりが甘かったか」
「ブラック課長、如何しますか?」
部下の一人がそう聞くと、ブラックは眼鏡のブリッジ部分を持ち上げ、掛け直す。
「監視の続行、及び奴が何処で、誰から、何を買ったのかの監視もだ」
「分かりました」
そう言いブラックは指令室から出ると、食堂へと歩み出す。すると仕事用の携帯にメールが届き、ブラックはそれを開き中身を見る。
「……こいつはちょっと不味いな。少し手を回しておいた方が良いな」
そう言い食堂へと向かった。
次回
日が経ち、学園祭が翌日に控えたある日。ネイサンは学園長の元に行きあるお願いをしに行く。
それと同時にそれぞれ目的を持った者達が動き出した。
次回
学園祭前日