世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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40話

全校集会当日、ネイサン達は体育館へと集合していた。

体育館に集まった生徒達は静かに佇み、学園長(十蔵の奥さん)の挨拶から始まり次々に注意事項等の説明が行われた。

 

『では最後に、生徒会長からのお言葉です』

 

そうアナウンスされ、壇上に楯無が立つ。

ネイサンは壇上に立った人物に注意深く観察する。

 

(あれが日本政府直轄のカウンターテロ組織の長、更識楯無か。俺の部屋に盗聴器を仕掛けたとすればアイツだと思うが、証拠が無いんだよなぁ)

 

そう思いながら壇上に立った楯無を眺める。

 

「皆さん、おはようございます。IS学園生徒会長、更識楯無です。1年生の方々は初めての学園祭となりますので、精一杯クラスの人達と協力し盛り上げてください。2年生の皆さんも1年生に負けない程の気合で頑張ってください。3年生の皆さんは今年最後の学園祭になります。最後の学園祭、悔いのない出し物に期待しております。以上で終わります」

 

そう言い楯無は一礼し壇上から下りて行った。すると2,3年生の生徒の間で少しざわつく。

 

「ねぇ、更識さんが今普通に進行したわよね?」

 

「うん、一瞬見間違えたかと思っちゃった」

 

「今年も変なイベントを盛り込んでいると思ってたけど、何も無かったわね」

 

そう言いながらどよめく上級生達。そんなどよめきを無視し進行役は生徒達に解散を言い渡した。

 

クラスへと戻ってきたネイサンは教壇に立ち、クラスメイト達と出し物について話し合いを始めた。

 

「えっとそれじゃ、何かアイデアがある人挙手をお願いします。それと先に言っておきますが、僕がメインになる様な出し物の場合は即却下しますので」

 

そうネイサンが言うと、クラスの何人かの生徒がガクッと肩を落とした。そんな中、肩を落とす生徒達以外はそれぞれ思い思いの案を出していく。

 

「『喫茶店』、『科学実験』、『ゲームセンター』……。う~ん、どれも他のクラスが出しそうなものですね」

 

黒板に出されていく案を書いていくものの、ネイサンは他のクラスが出しそうなものだと感じた。

 

「それじゃあ、マクトビア君は何か案があるの?」

 

生徒の一人がそう言うと、ネイサンはうぅ~ん。と考え込む。

 

「喫茶店は休憩などで寄って行って貰えるうえにコーヒーやサンドイッチなどの軽食を出せば売上が出ますが、他と被る可能性が大きい為寄ってもらえる可能性が低いです。其処に何か気を引けるものが有れば大勢招けて、売り上げが上がる為黒字になるし……ブツブツ」

 

「……マクトビア君。貴方深く考え過ぎよ」

 

スコールは呆れた様な表情を浮かべながらそう注意すると、ネイサンは我に返り苦笑いを浮かべる。

 

「すいません。つい癖が」

 

「あ、いい事を思いついたぞ兄さん」

 

そう言ってマドカが手を挙げる。

 

「ん? 何だマドカ?」

 

「教室の中に出店を幾つも出すのはどうだ? ジンジャという場所でマツリという行事が行われるときに幾つもの店が出て射的だとか綿あめだとか色んなものを出していると聞いた。この教室なら2つか3つくらいはいけると思うぞ」

 

そう言うと生徒達は

 

「それいいかも!」

 

「お祭りの出店みたいな感じ……。いいんじゃない? 売り上げも出るし、小さな子供とかにも人気がありそうだし」

 

「それにお祭りに出る料理って、調理も簡単だし手軽に食べられる所が良い所だもんね」

 

次々と祭りの出店風にしようと言う声が上がり、ネイサンはパンパンと手を叩く。

 

「はい、皆さん静かに。それじゃあこのクラスの出し物はお祭り風出店でいいですか?」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

そしてネイサンは黒板に『お祭り風出店』と書く。

 

「それじゃあこのお祭り風出店に出すモノを考えましょう。それと衛生面から出す料理は火が通ったモノにしましょう」

 

そう言うと生徒達は次々に手を挙げて出していく。

 

「焼きそば!」

 

「たこ焼きは外せないでしょ」

 

「フランクフルトも定番じゃない?」

 

「それだったら焼きトウモロコシは?」

 

「あれは季節が違うでしょ」

 

「射的とかもいいんじゃない? 子供と大人の人が一緒に遊べるし」

 

「それもいいねぇ。それだったら金魚すくいは?」

 

「生き物は駄目でしょ。代わりにヨーヨーすくいは?」

 

「それも面白そうだね」

 

生徒達は自分達が見てきた出店を次々に案として出していく。そして黒板一杯となりネイサンはこの中から選ぼうと決め体をクラスメイト達の方へと向ける。

 

「結構出ましたね。それじゃあこの中から多数決で3つ決めましょう」

 

そう言いネイサンはクラスメイト達に顔を伏せる様に言い、案を一つずつ言っていき手を挙げた手の数を数えていく。そして最後の案を言い終え、全員が顔を上げる。

 

「それじゃあ集計の結果、『フランクフルト』、『飲み物屋』、『ヨーヨーすくい』を出店に出します。宜しいですか?」

 

「「「「「いいでぇ~す!」」」」

 

こうしてネイサン達の3組は祭り風出店となり、出すモノなどが決まった。

そして放課後、ネイサンは出店に必要なモノ、特に生徒で用意できるモノを買いに行こうとしていた。すると

 

「あ、ネイサン君何処かに行くんですか?」

 

そう声を掛けてきたのは真耶だった。真耶の腕の中には書類などが抱えられていた。

 

「えぇ、少し買い物に」

 

そう言うと真耶は少し考えこんだ表情を浮かべ、直ぐに顔を上げる。

 

「それでしたら私もご一緒してもいいですか?」

 

「え? 僕は別に構いませんが、何を買われるんですか?」

 

「実は以前売り切れで無くなっていた服が最近入荷したらしいので、買いに行こうと思ってまして」

 

「そうなんですか。分かりました、それじゃあ此処で待ってましょうか?」

 

「い、いえ! 先に行ってて下さい!」

 

真耶は慌てた声でそう言うとネイサンは首を傾げながらも先に出発した。ネイサンを見送った真耶は胸をドキドキさせながら部屋の中に入り書類を机の上に置き、最近気になって買ってみたフローラルな香りがする香水をする。

 

「うぅ~、緊張しますがこれもネイサン君と共に行く為の第一歩です!」

 

そう自分に勇気づけ部屋を後にした。

 

 

先にレゾナンスへと来ていたネイサンは最も人目が付きやすい噴水付近でジュースを飲みながら真耶の到着を待っていると、

 

「あら、ネイサンじゃない」

 

「ん? あぁ鈴でしたか。学園祭の買い出しですか?」

 

鈴はそんなところ。と返しながら自販機で買ったであろうスポーツドリンクを口にする。

 

「それでアンタは何で此処に?」

 

「僕も同じですよ。それと山田先生の買い物も少し」

 

「……ふぅ~ん、そう」

 

鈴は面白くないと言った無表情を浮かべながらネイサンの隣に立つ。

 

「あ、あの、鈴。買い物に行かないんですか?」

 

「行くわよ。どうせ行くところは同じだろうし私も山田先生を待つわ」

 

そう言いスマホを取り出し操作する鈴。ネイサンは、荷物持ちに抜擢された。と思いため息を吐き顔を鈴から外すと女性が3人の男性に絡まれているのが見えた。

 

「山田先生?」

 

そう呟きネイサンはその場へと向かう。

 

「で、ですから私は約束があるんです!」

 

「いいじゃねえかよ、そんな約束ほっといてよ。俺達と遊ぼうぜ」

 

「あ! もしかしてその約束してるのって女の子? だったらその子も一緒に遊ぼうぜ」

 

「ほら、行こうぜ」

 

そう言い一人の男性が真耶の腕を掴もうとすると、横からその腕を掴まれた。

 

「あ? 何だてめぇ?」

 

「あ、ネイサン君」

 

「この人の約束していた者ですよ。だから何処かに行って貰えませんか?」

 

ネイサンは笑顔でそう言いながら、掴んでいた男の腕を突き放し真耶から遠ざけた。3人は睨んだ表情を浮かべ、ネイサンを睨んでいた。

 

「うるせんだよぉ! 横からしゃしゃり出てくんじゃねぇ!」

 

そう言って男は殴り掛かってくるがネイサンはそれを難なく躱しその殴ってきた腕を掴み相手の膝部分を思いっきり蹴る。男は蹴られた膝から崩れるとネイサンはそのまま掴んでいた腕を捻り男を完全に転ばせ顔目掛けて蹴るように見せて地面を思いっ切り踏む。

 

「ひぃいい!!??」

 

男は恐怖から情けない声をあげる。

 

「もう一回言います。……さっさと失せろ」

 

ネイサンはそう言うと残った男達はネイサンから出る殺気に怖気づき倒れ込んだ男を立たせて足早に逃げて行った。

 

「ふぅ~大丈夫ですか、山田先生?」

 

「は、はい! ありがとうございますネイサン君!」

 

真耶は頬を赤く染めながらお礼を言いネイサンと共に噴水の元に向かう。

 

「あら、お帰り」

 

そう言いスマホを片付ける鈴。

 

「えぇ、最近の日本はあぁ言った男性が増えたんですかね?」

 

「この国は女尊男卑(糞風潮)に染まった国ですもの。下手にナンパしたら即警察沙汰ですもの。だから山田先生みたいな若干内気な女性を狙ったんでしょうね」

 

そう言いながら鈴は嫌だ嫌だと今の世の中に呆れていた。

 

「そうですね。以前の私だったら泣き出してたかもしれませんが、今は護身用のこれがありますから」

 

そう言いながら真耶は肩下げ鞄からスタンガンを見せる。

 

「……ネイサンが助けに入らなかったら、彼らもっと痛い目に遭ってたかもしれなかったわね」

 

鈴はそう言いながら真耶が持っていたスタンガンを見せてもらう。すると裏の注意書きに目が行く。

 

「『最大電力250万ボルト放電します。濡れた手などで操作しないでください。大変危険です』め、滅茶苦茶危ないわね、これ」

 

そう言い鈴はスタンガンを真耶に返す。

 

「そうですね。けど、これ結構電池を食うんですよ。だからこれが万が一使えなかったら最終手段を使うしかないんですよね」

 

そういうと2人は何を出すのか見当がつき、あぁ~。と声を揃えてあげて頷く。

 

「まぁIS学園の教師の為護身用として持っていたと言えば、問題ないはずです」

 

「そうね。そう言えば私達は学園から許可を貰って携帯してるのよね?」

 

「はい。僕達は企業代表ですし、ちゃんと学園に銃器携帯許可を貰っているので大丈夫です」

 

そう言うと鈴はそうよね。と返し当初の目的を口にする。

 

「さて、トラブルはあったけど買い物に行きましょ」

 

そう言うとネイサンはそうですね。と返し3人はレゾナンス内へと入って行った。




次回予告
レゾナンスで必要な物を買い物し、学園へと戻って来たネイサン達。ネイサンは電話をすべく屋上へと行きココに報告を行う。その帰り楯無と鉢合った。
次回
本当に守ろうとした物

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