世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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37話

学園長室から退室し、学園の正門へと向かうMr.Kとキャスパー、そして護衛のチェキータ。

そして正門へと着くと、一輝が一礼し車の後部座席の扉を開ける。

 

「どうぞ社長」

 

「ありがとう。それじゃあMr.キャスパー、後日商品の方ご用意いたします」

 

「えぇ。お待ちしてますね」

 

そしてMr.kは「では、これで」と言い車は本島と繋がっている道へと向かった。それを見送るキャスパーにチェキータが話しかけた。

 

「それで、キャスパー。彼、どう言った人物か分かった?」

 

「いやぁ~、全く。何度か商談の打ち合わせとかしたけど、彼の本性、目的とか一切分からなかったよ」

 

両手を上げ、肩をすくめるキャスパー。多くの企業社長と商談を交わしてきたキャスパーは相手のペースに呑まれる前に、自身のペースに呑ませる腕に自信があった。だが、Mr.Kにはそれが効かなかった。逆にキャスパーのペースに合わせて、自身の目的に誘導すると言った話術を使ってきた。なぜそうしたのか。その目的などを悟らせずに商談は終わった。

 

「まぁ、あちらがどういった目的を持っていてようが、新しい顧客を得られるチャンスを得たんだ。どうでもいいけどね」

 

そう言いキャスパーも車に乗り込み、走らせた。

 

その頃、先に本島へと向かったMr.K達は車の中で話し合っていた。

 

「それで義兄さん。商談の方は上手くいったんですか?」

 

「えぇ、無事了承してもらえました。まぁ、彼女の担任が阻止しようとしましたが、何とかなりましたよ」

 

そう言いMr.K事鬼鉄陽太郎はふぅ~。と息を吐きながら首元のネクタイを緩める。

 

「担任……。()()()()織斑千冬だったんだよね?」

 

「えぇ。ですが原作以上に無能と言いますか、生徒からの信頼は余り無いようですね」

 

そう言い外を眺める陽太郎。外は既に日が沈み始めており、夕日が照らされていた。

すると運転席に居た一輝が気になっていた事を陽太郎に聞く。

 

「そう言えば、義兄さん。この世界の事なんだけど気になることがあるんだ」

 

「ん? もしかしてこの世界が原作と大きく違う事かい?」

 

「うん。初めてこの世界に来た時、世界初の男性操縦者の名前が『織斑一夏』ではなく、『ネイサン・マクトビア』と言う傭兵。そして本来なら存在しないはずの『ヨルムンガンド』のHCLI社のキャスパー・ヘクマティアル達。原作と大きく異なっている理由は転生者がこの世界に侵入したからじゃない。まるで織斑一夏や、原作に登場する主要キャラ達が登場する以前から原作が大きく変換されている感じなんだ」

 

一輝は陽太郎達家族と共に多くの世界に行き、原作を崩壊させようとする転生者を狩っているが自分達が降り立ったこの世界に転生者と言う存在が感じられなかった。それなのに原作と大きく違う事に一輝は疑問に思っていたのだ。すると陽太郎が笑みを浮かべながらその訳を話し始めた。

 

「恐らくだけど、<神の防護システム>が働いたんだと思う」

 

「神の防護システム?」

 

「そう。一輝も知っていると思うけど、転生者は神の不手際で死んだ者を漫画やアニメなどの世界にイレギュラーのキャラ、もしくは原作キャラに憑依させて転生させた者を言う。勿論転生させるのは自分達が管理している世界でだ。だが、神の中には他所の神が管理している世界に自分の管理している世界で死んだ者を放り込んで好き放題暴れさせてその光景を楽しむ最低な神もいるんだ」

 

陽太郎がそう言うと一輝はハンドルを握る手に少し力を入れる。

 

「そんな時対転生者用システム、<神の防護システム>が現れたんだ。一体誰が、どうやってできたのか不明なこのシステムは転生者を入れたくない神にとっては有難いシステムだった。そして幾つもの神はこのシステムを導入し自分達が管理している世界を守った。だがこのシステムにはある欠点があったんだ」

 

「欠点?」

 

「このシステムは転生者が侵入しようとするのを感知したら即座に侵入しようとした世界の本来のストーリー、つまり原作を大きく改変させるんだ。しかも一度発動すればもう誰にも止められない。更にこのシステムは転生者が結局侵入してこなかった場合でも止められないんだ」

 

「そ、それって不味いんじゃ?」

 

「えぇ。ですが、転生者の手によって崩壊するくらいなら致し方が無いと判断する神もいれば、それは出来ないと判断しシステムを外し何かしらの手で転生者を止める方法を模索する神もいます」

 

そう言われ一輝はなるほど。と納得し、転生者を防ぐか原作の改変を守るか。どちらか一択しかない選択なのか。と思った。

 

「この世界の神は幾つもの世界を見守って来たが、どの世界も神の防護システムが起動し物語が変換されていると言っていた。そして物語に登場する人物は辛い目や酷い目にあいながらも最後は幸せな日が来る者が居れば、そのまま地獄を見る者が居る様だった。そんな時、この世界もまた神の防護システムが発動した時、神はこの世界の結末を覗いたら、シャルロット・デュノアが刑務所に収監され二度と塀の外に出ることが出来ない結末だったそうなんだ。流石の神もこの結末が来るのは非情に不味いと思い掟を破って助けるか、このまま結末通り進めるか悩んだそうだ」

 

「そんな時に義兄さんが助けに入ったと言う訳?」

 

「そう。神自身も助ける事には賛成してくれたけど、条件を付けられたんだ」

 

「条件?」

 

「シャルロット・デュノアが卒業するまではそちらの仕事には加担させない事。それが神の出した条件だよ」

 

そう言われ一輝は何故神がそのような条件を出したのか、頭を捻りある仮説を口にした。

 

「神はもしかして他の未来を見たとか?」

 

「えぇ、そのまさかです。近い将来あの学園で事件が起きると。だからその出来事に備えて少しでも戦力があった方が良いとの事です」

 

そう言いながらパソコンを取り出し画面上にISと思わしき設計図を出した。

 

「さて、その出来事が起きるまでにこれを作らないといけませんね」

 

そう言い陽太郎はパソコンの画面を閉じた。




次回予告
商談が終わった数週間後、放課後の職員室で書類チェックを行っていた真耶とスコール。すると1組の副担任が千冬に文句を言っていた。
その頃真耶の部屋でネイサン、鈴、マドカ。そして簪と本音はお菓子を食べていていると、とあるお客がやって来た。
次回
鬱憤
~担任の仕事を私に押し付けないでください!~

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