キャスパーやMr.Kが学園長達と会談を行っている頃、アリーナでは一機のISが立っていた。
「クロナさん、此方の準備は出来ました」
そう言いIS【打鉄弐式】を纏った簪はそう言うと、管制室に居たクロナが返事した。
『了解しました。此方もデータ収集のシステムは全て準備OKです。ではまず、指定のポイントを歩行で回ってください』
そう言われ簪の目の前にポイントとそのポイントまでの距離が表示された。
「分かりました、移動を始めます」
そう言い簪は歩行で移動を始めた。その頃ネイサンはアリーナの観客席で様子を見ていた。自身は企業代表の為、データ収集を行っている管制室に居ては不味いと思い観客席に居たのだ。
「歩行システムは問題なさそうですね。あと5項目、無事にチェックをパス出来ればいいのですが」
そう言い、テストを眺めているとその傍に人がやってくる気配を感じ顔を向けると、一人の男性がネイサンの傍にやって来た。
「お隣宜しいでしょうか?」
「別に構いませんが、貴方は?」
そう聞かれ、名を名乗った。
「おっと、それは失礼しました。私は鬼鉄一輝。Purgatory.Eden.Companyの社長護衛官を務めております」
そう言い一礼する一輝。
「Purgatory.Eden.Company……。確かISとは異なるパワードスーツで急成長している企業でしたか。それで社長の護衛官がどうして此方に? 護衛官が護衛対象から離れるのは不味いのでは?」
そう言うと一輝は苦笑いを浮かべながらその訳を話した。
「実は社長から、余り来れる様な場所じゃないから散策してきたらどう?と言われて、最初は断ったのですがMr.キャスパーからも、自分の護衛官が付いているので大丈夫ですよ。と言われて、それでこうして散策しておりましたら此方に足が赴いた次第です」
「そうですか。まぁ、見ての通りISの試験運転をしているのみですよ」(キャスパーが此処に? PEC社が居るという事は大方商談か何かでしょうね)
そう言いネイサンはキャスパーが此処に居る訳を予想しながら、顔をアリーナの方へと向ける。一輝もネイサンの隣に座り、アリーナを眺める。
「彼女は確か、日本代表候補生の更識簪さんでしたか?」
「えぇ。よくご存じですね」
「社長の護衛官をしておりましたら、各国の代表や代表候補生の情報は嫌と言うほど入りますからね」
そう言いアリーナを眺める一輝。
すると今度はネイサンが口を開いた。
「そう言えば先程キャスパーの名前を出しましたが、何故彼と貴方の社長は此処に?」
「HCLI社に我が社が開発した製品の販売をお願いしようと思いましてね。その際此方の条件を呑んでくれれば、安く提供すると持ち掛けたのです。それで今日はその商談を成立させるべく、此処に来たのです」
「なるほど。それで、その条件とは?」
「シャルロット・デュノア。彼女の身柄引き渡しです」
そう言うとネイサンの顔に若干驚いた表情を浮かべた。
「それはまた……、何故?」
「社長は、身寄りの無い人や家族等から迫害されている人を見つけては、保護されているのです。……自分もその内の一人なんですけどね」
「えっ?」
ネイサンは突然の一輝の告白に驚いた表情を浮かべた。
「実は僕、家族に見捨てられたんです。その後社長に保護されてこうして今も生きて来られたんです。だから僕は社長に恩返しがしたくて、社長の護衛官になれるほど体を鍛えているのですが、なかなか社長の強さに追い付けないんですよ」
「な、なるほど。そんなことが」
そう言いネイサンは何とも言えない表情を浮かべ、アリーナの方へ顔を向ける。
(何だか俺と似ている。実の両親に見捨てられ、血の繋がった姉からも見てもらえない。だが本当の自分を見てくれる人との出会いなところが)
そう思いながらアリーナを眺めるネイサン。
『データ収集終了しました。それとチェック項目も全てクリアです』
そうアナウンスが入り、ネイサンは立ち上がった。
「僕は彼女の元に行きますが、貴方はどうします? 御宅の商品を宣伝するいい機会だと思いますよ」
「そうですねぇ。では【プルルルル、プルルルル】おっと、すいません」
そう言い一輝はポケットに入れているスマホを取り出し、電話に出る。
「はい、一輝です。終わったんですね。分かりました、正門の方に車を着けておきます。では、失礼します」
そう言って通話を切り、体をネイサンの方へと向けた。
「申し訳ない、社長達の商談が終わったようなので、これで失礼させていただきます」
「そうですか。では、また何処かで会ってお時間が有ったら話しませんか?」
「えぇ、構いませんよ。ではこれで」
そう言い一輝はその場から去って行き、ネイサンも簪が戻って行ったピットへと向かった。
次回予告コラボ編最終話
正門に着けられた車にMr.Kが乗り込み、キャスパーに別れを済ませ学園から去る2人。そして一輝とMr.Kこと鬼鉄陽太郎は本来の仕事の事を話し始めた。
次回
転生者が居ない世界